新鹿山荘控帳

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濱嘉之「列島溶解」

2013-03-20 17:55:08 | 読書
またまた濱嘉之の新刊が出ておりましたので、即購入です。

今回は今までの警視庁ものではなく、若手政治家の話です。
今までの警視庁警察官、特に警視や警視正のスパー能力には喝采を送っておりました。従来の警察小説にはない問題解決能力に、足で稼ぐ刑事とは全く異質の人間を歓迎していたからです。

今回は政権を奪回した自民党を想像させる党の、三回生の若手議員の日本再生にかける情熱を書いています。
ですが読了してみるとがっかりしてしまいました。日本のエネルギー問題に取り組む若手議員が、東京電力の出身で後援母体が当然電力各社だと言う設定です。数十年後の日本の姿を経済や生活をもう一度取り返すためには、原子力発電は必要だという主張です。
そこには、原子力政策の反省や与党としての長年の原子力村の癒着などの反省は全く描かれていません。

一方民主党と思はれる野党についてはかなり辛辣に書かれています。胸のすくような、そうだったのかと言う個所もあります。
警視庁警視であった作者が、政治小説を書くとこの程度になってしまうのかもしれません。

東京電力出身の政治家が、ニューリーダーとして将来の総理大臣をも期待されるといった設定は、昨日来の停電の記者会見のお粗末さからも、想像できません。認められません。
「夜も遅かったから」と言う若い女性の広報官のセリフは、笑ってしまいました。
ノルマンディーに連合軍が上陸してきたとき、ドイツ軍の将軍たちが温存している機甲師団の派遣を総統に要請した時、近くにいたおつきの将軍が「総統はお休み中ですからあす朝報告します」といった事を思い出しました。(史上最大の作戦)
停電が福島の事故の最大の原因ではなかったのですか。

一方、政治の話の間に出てくる事件の描写はさすがと思わせる説明です。福島の事故の後、日本の優秀な工場を社員ともども買い取っていた国があったとか、その技術をコピーして部品を輸出して欧米の企業でトラブルが発生したとか、その他いろいろ書かれています。

政治以外の情報だけでも700円の価値はあります。
私としては、警視庁各シリーズの方が断然好きです。


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