作雨作晴


日々の記憶..... 哲学研究者、赤尾秀一の日記。

 

武道と伝統

2013年11月01日 | 教育・文化

 

Yoshio Sugino sensei Katori Shinto Ryu.flv(+ 再生リスト)

武道と伝統

YOUTUBEで音楽やドキュメントなどを視聴していると、たまに武道、武術関係の投稿映像に出会うことがある。学生時代に剣道や合気道をやっていたこともあって武道には興味や関心がないわけではないので、ついつい引かれて見て時間を潰してしまうことになる。先日もどこで迷い込んだのか、YOUTUBEで武道関連のいくつかの投稿映像を見ることになった。

学校を卒業してからもしばらく、たまたま近くに道場のあった関係で継続して練習していた。しかし転居を切っ掛けに近所に道場もなくなり、また多忙にもかまけてそれ以来、今では剣道にも合気道からもスッカリ離れてしまっている。それでも武道や武術に興味や関心を失ってしまったわけではなく、この歳になっても環境さえ許すならば再開したいという思いもある。卒業して以来進級はないが段は持っている。廿歳前後の学生時代に習得した技は今も忘れてはいない。合気道の創始者である植芝盛平翁なども、私の学生時代にはまだ存命中で何度か演武も近くで見た記憶がある。藤平光一の指導を受けたこともある。ただ、とっくの昔に「武道」から離れてしまっているので現在の武道界の実際についてはほとんど知らない。

最近は学校などでも授業で武道教育が採用されるようになっているらしい。私たちの中学高校時代にもフォークダンスや武道などの授業があったから、世代交代の中で途中でなくなっていたのが復活したのかもしれない。よくわからない。新しい教育基本法が制定され、教育の目標に「伝統と文化を尊重する」という項目が掲げられた成果だという。武道の科目としては、剣道、柔道、相撲など外に、合気道、薙刀、弓道、空手などもあるらしい。

この武道の必修化についても様々な意見があるようだ。私自身としては基本的にはこの方向を支持したいと考えている。武道を伝統文化の一つとして捉える。公教育における「武道教育」の採用は、戦後に失われた多くの伝統文化の復活の一つとして評価できるものと思う。

武道は歴史的には封建時代に軍事力を担った武士階級が、彼らの利害をめぐる様々な抗争、戦争を繰り広げる中で、いかにして敵を制し勝利を手に入れるか、戦いの技術、方法を研鑽してゆく中で、特に、剣や槍などの武器を所持した戦いの中での肉体を行使した戦闘技術として磨かれ発展してきたものである。

やがて戦国時代を経て、織田、豊臣、徳川と時代が変遷し、徳川幕府が支配権を確立してからは実際には戦争は行われなくなったが、それでも軍事力がその統治の背景に存在した。軍事力の担保することなくして平和が存在しないことは、今日においても江戸時代においても変わりはない。

武道はそうした軍事力の担い手であった武士たちが戦闘技術を向上させて行く過程で発達してきたものであるが、それは肉体を行使するものであり、肉体は精神と深く関係するものであるから、禅仏教の影響などを受けるとともに「精神修養」としての性格も深めていった。また、とくに当時は封建社会の主従関係における倫理道徳の思想として儒教が深く浸透していたから、武道においてもその倫理観に深く影響されながら発展してきたものである。

だから今日の私たちの眼前に伝統として文化遺産として残されている「武道」には、身体的な技術と倫理教育的な要素が含まれている。ただ今日においては「武道」などが古い「儒教思想」の影響を受けているからという理由で否定される傾向もないではない。しかし「武道」が「封建時代の遺産だ」という理由で全否定されてしまうのは、それこそ「盥の水といっしょに赤子も流してしまう」のと同じで大きな損失だと思う。それらは貴重な伝統遺産であって現代においても復活され活用されるべきものである。新渡戸稲造がその著書『武士道』で明らかにしたように、『武士道』には時代や民族を超えた普遍的な価値は存在する。それを「武道」の修得を通じて現在に活かして行くことは、とくにGHQ教育政策の名残として、伝統的な普遍的な倫理観を単に過去の封建時代の遺産として盲目的に否定されてきた傾向のある戦後の、否定の否定を通じて回復することは意義のあることである。

とくに青少年の身体機能の開発と発達の方法論の一つとして、また、それを社会に倫理規範の修得の機会とすること、また、精神的な修練の手段として、武道における伝統的な遺産を活用することの意義は大きい。自らの経験としても、青年時代に「武道」に関わって肉体と精神を多少なりとも「鍛錬」する機会を持ち得たことの恩恵を、この年齢に至っても痛感することもある。

 

 


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