作雨作晴


日々の記憶..... 哲学研究者、赤尾秀一の日記。

 

雪中ノ鷹狩

2018年01月31日 | 西行考

                            20180127 

今年は寒い日が多く、東北の雪国ほどではないけれども、雪の日がありました。久しぶりに、西行のことを思い出して『山家集』を繙きました。もちろん西行も雪を詠んでいます。

山家集の524番から543番まで。

524

雪中ノ鷹狩

かきくらす  雪に雉子(キギス)は 見えねども

   羽音に鈴を  くはへてぞやる

あたり一面の視界を閉ざすように激しく降る雪。獲物のキジの姿は見えない。じっと耳を澄ませていると、キジの飛び立つ羽音が聞こえた。鷹匠はその方角に向けて、一気に、タカをその足に結いつけられた鈴の音とともに、飛び立たせる。

山深く激しく降る雪、静寂の中にひたすらキジの飛び立つ羽音に耳を澄ませる。その一瞬を捉えたタカは、足に結いつけられた鈴の音を激しく鳴らしながら、ひたすら獲物を狙って羽ばたいて行く。

激しく降る雪に閉ざされた奥山の中で、キジの飛び立つ羽音と、タカの足に結いつけられた鈴の音が、一瞬、雪の谷間に響きあう。静と動、白と黒、キジの羽音とタカの羽ばたきと鈴の音。

奥深い雪山の自然の中に溶け込むように点在する人間と鳥の、激しくも美しい動きの一瞬をとらえた和歌。

525

ふる雪に  鳥立※も見えず      うづもれて

  とりどころなき  み狩野の原

降る雪のために、鳥たちの集まる草むらや沢地も、すっかり埋もれて
どこにあるのかさえ、見えない。獲物の鳥も見当たらないみ狩野の原は、取り(鳥)つく島もないような。

※鳥立(とだち)⎯⎯鷹狩りの折に鳥が集まるように作られた草むらや沢地。鳥の飛び立つことをもいう。(新潮社版解説より)

 

 


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