「日本に取り目下の重大問題は対支問題である。若し此問題が満足に解決し得なければ日本に由々しき一事件が起るであらう。米国に於ける共和党の大勝利と支那に於ける南京政府の出現とは日本の安全を脅す事非常である。日本国民は此事に気附いてゐないらしい。
そして此難局に当たりて日本を指導し得る政治家は今の所見当らない。日本に歴史哲学者がゐない。故に斯かる場合に世界の大勢に処するの道を示す者がない。縦しあっても国民に之に傾ける耳と心がない。困った者である。自分は日本の衰運に傾くを見るに忍びない。時に地団駄踏んで悲しむ。