風のささやき 俳句のblog

訪問ありがとうございます
オリジナルの俳句を中心にご紹介しています
詩や短歌も掲載しています

混線した夜空 【詩】

2019年03月07日 | 
「混線した夜空」

窓辺にもたれて
僕はあなたに電話をかけている
耳に当てる小さな携帯が
僕とあなたとを結ぶ道具
その軽さがとても心もとなくて

おずおずとした僕の言葉は
途切れ途切れに夏の空を渡り
あなたの耳元にぎこちなく届けられる

そうしてあなたの声は
星屑の合間を抜けて来るからか
輪郭を削り取られ
淡く遠くに聞こえている

あなたの声をしっかりと聞こうと
耳をすませる僕の電話には
あなたの声に混ざる誰か見ず知らぬ人の声

男か女か
老いているのか若いのかさえ分からぬが
確かに僕には聞こえている小さな声
その人にも僕の声が届いているとしたら

今この時間に二人だけ
結ばれているはずの僕とあなたと

けれど夏の夜空にはつながりあう何万という言葉
その言葉がいつしか
蜘蛛の糸のように絡み合い混線し
知らない二人が会話を続けているとしたら

僕の声があなたに届かなかったとして
何の不思議もないことだと思え
話しかける自分の声が
冷たく空虚になることに気がついている

僕はやりきれなくなり
あなたに「おやすみ」を告げて
会話を終わらせるために電話を切る
僕が枕元に置く携帯電話

けれどあなたがまだ誰かと
話を続けたままだったらと
僕は疑いをもって眠れない夜の寝床を過ごす
さっきまで僕は誰と話をしていたのだろうと

人々が寝静まる深夜にも
夜空の混線は続き
その混線はそうして
僕の頭も犯し始めているらしい
電話もしていないのに
僕は誰かにつながれて
意味不明な会話を強要されている

おやすみよまだ笑いたい寝ない子よ明日も笑える時間をあげるよ 【短歌】

2019年03月06日 | 短歌
いつもよりも長く
昼寝をしたせいもあったのでしょうが

いつもは早寝の子供が
いつまでも起きていました
まだ遊んでいたいようで
寝かしつけようと
暗いところに一人で置くと泣き出します

仕方がないので
遊んでやると機嫌を良くして笑っています

まだまだ笑い足りないのでしょうが
明日もまた楽しく遊べるからねと
子供に話しかけて
寝かしつけようとやっきになっていました

はや冬はすすけて襟の汚れかな【季語:冬】

2019年03月02日 | 俳句:冬 時候

ここのところコートが邪魔に思えます

穏やかな陽気のその日も
コートを手に歩きました
すると気がついたコートの襟汚れ

覇気をなくして煤けた冬の日々が
いつの間にかこびりついたようです

冬将軍の寒い日々を思い出しながら
季節の移ろいを感じました

コートを手放す春になれば
その汚れをクリーニングで
綺麗にするつもりです