夢と希望と

そして力と意志と覚悟があるなら、きっと何でも出来る。

希望の光。

2012-03-01 | 中身

 前回の記事のコメント欄で予告致しました通り、今回は「メタルファイトベイブレード」の登場人物の一人である湯宮ケンタについて書き連ねようと思います。
 さて、湯宮ケンタというのはどんなキャラクターかと言いますと……そうですね、北斗の拳でいう所の種モミじいさん、男塾でいう所の田沢や松尾辺りと同等というのが順当でしょうか。正確には「順当だった」という事になりますけれど。
 彼は小学校低学年程度の年齢であり、一応ブレーダーではありますが、その実力は決して卓越した物ではありませんでした。使用するベイはスタミナタイプのフレイムサジタリオ、これは主人公である銀河のペガシスや竜牙のエルドラゴ等とは事なり、星の欠片から生まれた訳でもなんでもない、単なる市販品です。しかもシリーズを重ねる毎に他の主要ベイが二段階、三段階と進化していく中でサジタリオは一切進化成長無しという冷遇っぷり。今作においてはオープニングでベイを撃つシーンさえ与えられず、非戦闘要員扱いされるという酷さです。
 そんな湯宮ケンタですが、彼が凡百の雑魚とは一線を画する点がたった一つ存在します。それは、己の弱さを自覚し、それを恥じ、強くなろうと足掻くという事です。湯宮ケンタは銀河との友情から今作でも同行していましたが、仲間のレジェンドブレーダーから「弱すぎて練習相手にもならない」という意味合いの言葉をかけられるに至り、銀河との決別を決意します。銀河の腰巾着としてただ傍に居るだけの自分を許容出来ず、友の力となる為に、その力を得る為に。そして彼が目指したのが、竜牙でした。全ブレーダーの中でも隔絶した能力を誇るけれど、その性情から断じて銀河達に協力する事の無い竜牙を、説得して引き入れる。この途轍もない難題に挑んだのです。それにつきましては百聞は一見に何とやら。此方を御覧下さいな。
Metal Fight Beyblade 4D 109 ケンタの決意


 ちなみに竜牙は、湯宮ケンタを練習相手にもならないと称した輩を含むレジェンドブレーダー三人を三連戦で容易に打ち破り、他にもそれぞれ無敗を誇った最強クラスのレジェンドブレーダー二人をあっさり撃破する、はっきり申し上げて出鱈目な強さです。湯宮ケンタ如きでは、百年かかっても足元にも及ぶまいと、私は本気で考えていました。
 ところが、それがこんな事に。
Metal Fight Beyblade 4D 134 サジタリオの一撃


 同じキャラなのに、顔つきが随分と異なります。より有り体に申し上げるなら「良い男」になりました。この歳で、戯言ではなく決意として刺し違える覚悟を持てるのも好ましい事です。どんな相手であろうと挑まれたなら受けずにはいられないという竜牙の気性を把握し、互いの力量差をしっかりと認識した上で、それでも仕掛けるのも素晴らしいと私は感じます。出来るからやるのではなく、やりたいからやる。そして、やるからには全力を尽くす。こうありたい物です。
 結果として湯宮ケンタは、ほんの一瞬ですが竜牙を本気にさせ、究極転技・竜皇剛覇翔を繰り出させました。この技は、相手のエネルギーをラバーウィールで吸収するという特性的に真上から攻められる事が多いエルドラゴが、主にカウンターとして放つ代物で、これに耐えたベイは後にも先にも破壊神ディアブロネメシスだけ。喰らいながらエルドラゴに傷を与えたのは、湯宮ケンタ唯一人です。

 そして、この時点で……竜牙の死は、ほぼ確定的な物となりました。竜牙は誇り高い男ですから、交わした約束を破りはしません。本気にさせたなら力を貸してやると口にしたからには、それを違える事は彼の矜恃に反します。しかし、湯宮ケンタの望み通りに銀河達と一致団結してネメシスに対抗するというのもまた、竜牙の美学に反する事です。ラディッツに勝てないからといって、悟空と手を組むようなどこかの惰弱な自称大魔王とは違うのです。
 では、どうするのか。簡単な事です。自分一人の力で、ネメシスを打ち倒してしまえば良い。力及ばずそれが叶わないのであれば、死して力だけを湯宮ケンタに渡してやれば良い。湯宮ケンタが求めているのは、レジェンドブレーダーとしての竜牙の力であって、竜牙の矜恃ではないのですから。
 更に付け加えるなら、竜牙は知った筈です。圧倒的な力の差があっても諦める事なく、挑む事で見える何かがあるという事を。竜牙はその圧倒的な実力により、これまで常に挑まれる側でした。その結果は大抵瞬殺、或いは圧勝であり、刃向かう気概すら根こそぎ粉砕して来ました。その彼が湯宮ケンタの意地と気迫と努力によって、一瞬とはいえ本気にさせられたのです。湯宮ケンタに出来た事が、自分に出来ない筈がない。そう考えるのは、至極自然な事のように私には感じられます。

 現在、竜牙は湯宮ケンタにレジェンドブレーダーとしての力の全てを渡してエルドラゴ諸共消滅しました。破壊神ディアブロネメシスの桁外れの力に、主人公である鋼銀河を含む全員が絶望して膝をつく中で、唯一人諦めず立ち向かい続けたのは、他ならぬ湯宮ケンタだったのです。フレイムサジタリオは竜牙の力を受け継ぎ、フラッシュサジタリオとして進化しました。しかしベイの進化など、湯宮ケンタ自身の持つ強さに比べたなら些細な事です。どんな状況にあっても失われない希望の光、それは彼自身の胸の内にこそ存在するのですから。


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2 コメント

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Unknown (万里)
2012-03-04 23:21:29
 とりあえず、見てみました。
 なるほど、そういうことだったんですね。ならいくらか納得はいきます。
 ですがもう一つ納得のいかないことが出てしまったんですよね。ピッコロ大魔王は、あれは懦弱だから悟空と手を結んだのではないはずです。しかも、ラディッツ戦後はむしろ父親としては全くの欠陥品だった悟空の替わりまで務めていますし。
 
 まあ、とりあえず納得できた部分もあるのですが、やはり釈然としない部分も残ります。
 嫌な言い方をするなら、背負っているものが無い人間は楽でいいなあ、とか。自分の思いのままに戦って負けて死んでおしまい、とはいかない人の方が多いのではないか、と思うのです。背負っているものがあるから、意に沿わない手段に手を染めなければならないこともある。手段を選んでなどいられなくなる。それを懦弱という一言で切り捨ててしまうのには、やはり違和感が残るのです。

 それはともかく、貴女も随分と感傷的な解釈をしている気はするのですけどね。特に後半部分は。
 
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レスが遅れてごめんなさい。 (中身)
2012-03-12 04:55:34
ピッコロにつきましては、単身ではラディッツ相手に勝算が皆無であり命を失う事が明白でした。最強最悪の大魔王としての自負があるのなら、彼にはあの場で死んで頂きたかったというのが個人的な感想です。まぁ自称魔族のピッコロに、矜恃やらを求めるのがそもそも筋違いである、という事なら反論の余地は無いのですけれど。
御飯を育成した事は、あくまでもラディッツ戦で異常な戦闘力を示した存在を手駒として利用しようとしただけの筈ですし、そうであるのに情が移って当初の目的を遂行出来ないのなら、その甘さは褒められたものではないと考えます。
悟空が父親失格であるのは御言葉の通りかと。しかし悟空というのは人類ではなくサイヤ人であり、サイヤ人は戦闘民族です。元より赤子を手厚く育成したりする文化はなく、生後まもなくカプセルに詰めて異星侵略の先兵として放り出すような種族なのですから、仕方のない事ではないでしょうか。サイヤ人にとって闘いこそが務めであり、また悦びなのです。彼等に比べればフリーザ辺りの方が遙かに建設的ですよ、きっと。

背負っているものがない、という御言葉につきましては……私自身も良く、他の方々からそう言われます。思考決定のプロセスがシンプルだからだと思うのですけれど、これまた後程記事にしてみますね。
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