荒川三歩

東京下町を自転車で散策しています。

本郷館の消滅

2016年08月02日 | 散文
2011年の夏の話です。

文京区本郷に、明治38年に建てられた木造3階建てのアパートがありました。
多くの学生が暮らした建物で名前を「本郷館」といいます。

長い間街に風情を提供してきた本郷の顔役で、山の手ウォッチャーにも有名な建物です。何度も何度も取り壊しの話が起こり、何度も何度も反対運動が起こって、その都度話が沙汰止みになって108年間も生き延びてきました。

取り壊しの噂を耳にしながら、本郷に行く度に何度も何度も訪れて、坂の上下からその佇まいを味わってきました。
その本郷館がとうとう本当に取り壊される事に決まった、と新聞記事で知りました。

お別れに行かなければ・・・。

工事用のフェンスが張られ始めました。

これで見納めです。

私と同じように、お別れに訪れた人たちが居ました。


次の週、建物全体がシートに包まれていました。


言問通りから見た工事前の本郷館の裏側です。


いよいよ解体工事が始まりました。
私の横で、本郷館に住んだことのある人たちでしょうか、女性を含めた数人の集団が目を真っ赤に泣き腫らして「メリメリ!」と取り壊していくパワーショベルの動きを見ていました。
彼らの気持ちが心に沁みました。


次の日も見に行きました。
解体が進み、玄関部分だけが残っていました。

ポッカリ開けた空が悲しい・・・。

翌週、本郷館が消失していました。

そして街の姿が変わりました。

次の日、跡地が整地されていました。

青い空と白い雲が眩しくて悲しい・・・。

その翌週、すっかり工事が終わり、フェンスが張り巡らされていました。

心の中が喪失感でいっぱいです。

隣のアパートの2階に上がって覗いてみました。
ブルーシート上に整然と並んだ土嚢の姿が悲しいです。


もう杉山先生のペン画で偲ぶだけです。

昔、本郷館という素敵な木造3階建てのアパートがありました・・・。

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2 コメント

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Unknown (クリン)
2023-09-06 16:34:35
どうして本郷館をのこせなかったのかな・・と残念でなりませんね!!(一度見に行ったことがあります🐻無関係のクリンでさえ心にせまるものがありましたから、東大生ならお金を出し合ってでも守りたかったのではないかと思われますが・・)
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クリンさん (荒川三歩)
2023-09-06 17:50:59
仰るとおり、沢山居る東京大学OBの成功者が、夫々行使できるお金と技術を持ち寄れば、保存できると思います。
加藤登紀子さんも保存運動していました。
最後は、所有者の生活をどうするのか?所有者がどうしたいのか?になると思います。

結局、所有者がしたのか、売却した先がしたのか、学生向けアパート「本郷館」に建て替えています。
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