梅雨時の「矢切りの渡し」です。
旗が出ているので営業中です。
声が掛かります。「乗る?」即答します。「乗らない」「あっそ」
船頭は寂しそうです。
声を掛けます。「今日はダメだよ。帝釈天参道に人が居ないもの」「分かってるよ」
励まします。「梅雨時はしょうがないよ」「分かってるよ」その時サラリーマン風の男の人が江戸川の土手を降りて向かって来ました。位置的に私の方が先に見つけました。「客が来たよ! 絶対客だよ!」
船頭が声を掛けます。「乗るかい?」「初めてなんだけど、いくら?」「片道200円、一周400円」「一周で」渡し舟に乗った客が聞きます。「出発は何時だい?」船頭が答えます。「時間は無いよ。ある程度客が来たら出すよ」
暫く待ちますが、ある程度どころか、一人も来ません。「今日は来ないから出すよ」と1人だけで出発です。
2人の後ろ姿が素敵です。
映画のワンシーンみたいでした。