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Studies about acupuncture and moxibustion and Massage.

鍼灸甲乙経

2015-02-16 | 中国医学の歴史

晋代(265-316)、皇甫謐(こうほひつ:215-282)著。
意義:黄帝内経の経穴は、160穴であったが、349穴の位置、交会穴を明らかにした。

学生時代に、『鍼灸甲乙経』を読んだ際に、以下の部分を読んで、「鍼の配穴はまず局所が基本(笑)」との思いを新たにしました。

『鍼灸甲乙経』手太阴阳明太阳少阳脉动发肩背痛肩前皆痛肩似拔第五

「肩が痛み、挙がらないものは、天容(SI17)および秉風(SI12)がこれを主る」
肩痛不可举,天容及秉风主之。

「肩背が痛み、上腕が挙がらず、悪寒発熱するものは肩井(GB21)がこれを主る」
肩背髀痛,臂不举,寒热凄索,肩井主之。

「肩が腫れてふりかえることができないものは、気舎(ST11)がこれを主る」
肩肿不得顾。气舍主之。

「肩背が挙がらず、オ血が肩中にあり、動かすことができないものは巨骨(LI16)がこれを主る」
肩背髀不举,血瘀肩中,不能动摇,巨骨主之。

「肩の中に熱があり、指と上腕が痛むものは肩ぐう(LI15)がこれを主る」
肩中热,指臂痛,肩ぐう主之。

「肩が重くて挙がらず、上腕が痛むものは肩りょう(TE14)がこれを主る」
肩重不举,臂痛,肩 主之。

「肩が重くて、肘と上腕が痛み、挙がらないものは天宗(SI11)がこれを主る」
肩重肘臂痛,不可举,天宗主之。

「肩甲の中が痛み、ひえて、肘に至るものは肩外兪(SI14)がこれを主る」
肩胛中痛而寒至肘,肩外俞主之。

「肩甲の周りが痺証なら曲垣(SI13)がこれを主る」
肩胛周痹,曲垣主之。

「肩が痛み挙がらず、欠盆に引いて痛むのは雲門(LU2)がこれを主る」
肩痛不可举,引缺盆痛,云门主之。

肩の痛みに、肩外兪(SI14)、肩井(GB21)、肩ぐう(LI15) 、肩りょう(TE14)、曲垣(SI13)、秉風(SI12)、巨骨(LI16)、天宗(SI11)、雲門(LU2)を使うのは基本中の基本なので、逆に感動しました。

『鍼灸甲乙経』の「六经受病发伤寒热病第一」は、『傷寒論』の内容と鍼灸を結合させた最初の試みですし、「经络受病入肠胃五脏积发伏梁息贲肥气痞气奔豚第二」は『難経』などの積聚の理論と鍼灸を結合させています。巻の九、「大寒内薄骨髓阳逆发头痛第一」は、頭痛の際に、ツボではなく、「足少陽経を取る(取足少陽)」と経絡による治療を指示しています。これは、経絡弁証です。

 「邪在肺五脏六腑受病发咳逆上气第三」は『素問・咳論』の内容を踏まえつつ、臓腑弁証の肺にあたります。神蔵(KI25)、中(KI26)、兪府(KI27)など腎経のツボ、魄戸(BL42)や譩譆(BL45)など膀胱経のツボなどを使っています。
「咳証」のツボは以下になります。
任脈:だん中(CV17)、華蓋(CV20)、廉泉(CV23)。
肺経:雲門(LU2)、天府(LU3)、侠白(LU4)、尺沢(LU5)、太淵(LU9)
大腸経:扶突(LI18)
胃経:水突(ST10)、気舎(ST11)、庫房(ST14)
脾経:天溪(SP18)、周栄(SP20)
心経:陰げき(HT6)
小腸経:天容(SI17)、前谷(SI2)
腎経:兪府(KI27)、中(KI26)、兪府(KI27)、大鐘(KI4)
心包経:
三焦経:支溝(TE6)
胆経:維道(GB28)
肝経:行間(LR2)

 これは、臨床家ならある程度、納得できる配穴だと思います。胸部や上腕・前腕の反応点が中心で、足は大鐘(KI4)や行間(LR2)です。もともと「五臓六腑はみな咳を起こす」というのが『素問・咳論』の理論だからです。

「肝受病及卫气留积发胸胁满痛第四」 は肝鬱気滞による積聚で胸満・脇肋痛となった場合の治療法で、臓腑弁証の肝に相当します。

 「邪在心胆及诸脏腑发悲恐太息口苦不乐及惊第五」は心胆気虚などの臓腑弁証の心に相当する精神病です。

 「脾受病发四肢不用第六」は臓腑弁証の脾に相当しますが、太白(SP3)しか記述がありません。「脾胃大肠受病发腹胀满肠中鸣短气第七」で、足三里(ST36)、上巨虚(ST37)、脾兪(BL20)、胃兪(BL21)、三焦兪(BL22)、胃倉(BL50)、巨闕(CV14)、中かん(CV12)などの記述があります。

 「肾小肠受病发腹胀腰痛引背少腹控睾第八」では、小腸気痛や腰痛の記述が中心であり、臓腑弁証の腎に相当します。『素問・刺腰痛論篇』の内容を踏まえて記述されています。

 「三焦膀胱受病发少腹肿不得小便第九」や「三焦约内闭发不得大小便第十」は膀胱・三焦の腑病の臓腑弁証に相当します。

 しかし、これらは、現代中医学の臓腑弁証とは、似ても似つかないもので、『素問』『霊枢』の咳証や腰痛の理論を知らないと理解できません。


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