朱氏頭皮鍼について、『東洋医学とペインクリニック』に良質の論文があった。脳血管障害48例について、朱氏頭皮鍼+理学療法+低周波通電で治療し、一次合併症の痙性固縮に著明な効果があったというもの。この論文は読み応えがあった。
1993年
「朱氏頭皮鍼の脳血管障害による片麻痺に対する効果」
永野剛造; 国安則光; 梶間育郎; 他
『東洋医学とペインクリニック』 23(3) 127ー135
患者は38歳から81歳までの男性35例、女性13例の合計48例。痙性固縮が77.1%、弛緩性麻痺が25%。
12段階片麻痺機能テスト(Recovery Grades in Hemiplegia:RGIH)を用い、約三ヶ月間の1クール終了時を比較検討した。
一次合併症として痙性固縮、弛緩性麻痺、知覚障害、視野障害、構音障害、運動性失語、基底核障害。
二次合併症として亜脱臼、肩手症候群(Shoulder Hand Syndrome:SHS),シビレ、関節周囲炎、疼痛、関節痛の13症状の有無をチェックし、その変化を検討した。
【治療】朱氏頭皮針+理学療法+低周波通電療法の組み合わせ
《額頂帯(がくちょうたい)》神庭から百会
前4分の1:頸部顔面・咽喉・舌の病証に対応:寧神定驚・利咽開竅
後4分の1:下腹部(膀胱・尿道・会陰部・生殖器)の病証:益腎利尿・調経・昇陽固渋
《頂顳帯(ちょうしょうたい)》前頂から頭維
運動障害・知覚障害:疏通経絡・強筋止痛
リレー透刺
《合併症対応》
肩関節症状:頂結後帯(ちょうけつごたい) :絡却から百会の幅0.5寸の帯:肩関節と頚部。
頸部腰背部症状:頂枕帯(ちょうちんたい):百会から脳戸
言語障害:顳前帯(しょうぜんたい):頷厭から懸り:片頭痛、失語症、顔面神経麻痺。
排泄障害:頂枕帯(ちょうちんたい)下4分の1:頂枕帯は、百会から脳戸で4分の1は仙骨部および会陰部に対応する。
理学療法は、ボバース法、PNFなどのファシリテーションテクニックを併用し、一部の頭鍼はパルス通電、筋運動を目的とした低周波通電を1週間に1-2回施行した。
【結果】
12段階片麻痺機能テスト(Recovery Grades in Hemiplegia:RGIH)で、上肢は6ヶ月以内、5年以上に2以上の変化があったが、下肢では2以上の著明な変化は見られなかった。
一次合併症、二次合併症は痙性固縮に86.5%と著明な効果が見られた。視野異常以外の一次合併症では42-66%の改善が見られた。
二次合併症においては、シビレに44%、関節周囲炎、疼痛、関節痛には70%以上の改善が見られた。
【ケーススタディ】
73歳男性
脳血栓後遺症による右片麻痺
すでに7年8ヶ月経過しており、理学検査法は行っていなかった。
初診時は右上肢挙上が乳頭位以下。肘関節・手関節の固縮は軽度。手指屈曲は可能、伸展は不能で共同運動が著しかった。
膝伸展は可能、屈曲は不十分、足関節の背屈は不能、下腿後側に拘縮が認められ、下腿後側に拘縮が認められ、立位・歩行時に痙性が強まった。立位膝上げは不十分、内反尖足となり、歩行時に短下肢装具と杖を使用し、装具なしの独立歩行は不能であった。ぶん回し歩行や上下肢の連合反応が見られ、患側上下肢筋には軽度の廃用性萎縮が見られた。12段階片麻痺機能テスト(Recovery Grades in Hemiplegia:RGIH)では上肢は4、下肢は6であった。
治療経過は、初回治療後より上肢筋の反応が改善され、坐位での膝屈曲が良くなった。
患者は治療に意欲的であったが、遠方のため、週2回の通院は無理で1週間1回の治療を継続した。
5回目で手指が鼻尖に触れられるようになり、室内では装具なしで歩行可能となった。
そこで、筋反応の強化と共同運動軽減を目的にファシリテーションテクニックを開始した。
第8回目で足関節の背屈が可能となり、第22回(初診より4ヶ月目23日目)では上肢は頭部まで上がり、歩行は装具・杖が不要となった。
12段階片麻痺機能テスト(Recovery Grades in Hemiplegia:RGIH)は上肢9、下肢8と改善された。
※故・梶間育郎先生は、他にも朱氏頭皮針の論文を書かれています。
2002年
「朱氏頭皮鍼の刺鍼部位と治療」
梶間育郎『鍼灸OSAKA』 VOL18(3): 81ー83、2002
2004年
「朱氏頭皮針療法の応用と実際」
梶間育郎『鍼灸OSAKA』VOL20(4).NO.1、55-59
1993年
「朱氏頭皮鍼の脳血管障害による片麻痺に対する効果」
永野剛造; 国安則光; 梶間育郎; 他
『東洋医学とペインクリニック』 23(3) 127ー135
患者は38歳から81歳までの男性35例、女性13例の合計48例。痙性固縮が77.1%、弛緩性麻痺が25%。
12段階片麻痺機能テスト(Recovery Grades in Hemiplegia:RGIH)を用い、約三ヶ月間の1クール終了時を比較検討した。
一次合併症として痙性固縮、弛緩性麻痺、知覚障害、視野障害、構音障害、運動性失語、基底核障害。
二次合併症として亜脱臼、肩手症候群(Shoulder Hand Syndrome:SHS),シビレ、関節周囲炎、疼痛、関節痛の13症状の有無をチェックし、その変化を検討した。
【治療】朱氏頭皮針+理学療法+低周波通電療法の組み合わせ
《額頂帯(がくちょうたい)》神庭から百会
前4分の1:頸部顔面・咽喉・舌の病証に対応:寧神定驚・利咽開竅
後4分の1:下腹部(膀胱・尿道・会陰部・生殖器)の病証:益腎利尿・調経・昇陽固渋
《頂顳帯(ちょうしょうたい)》前頂から頭維
運動障害・知覚障害:疏通経絡・強筋止痛
リレー透刺
《合併症対応》
肩関節症状:頂結後帯(ちょうけつごたい) :絡却から百会の幅0.5寸の帯:肩関節と頚部。
頸部腰背部症状:頂枕帯(ちょうちんたい):百会から脳戸
言語障害:顳前帯(しょうぜんたい):頷厭から懸り:片頭痛、失語症、顔面神経麻痺。
排泄障害:頂枕帯(ちょうちんたい)下4分の1:頂枕帯は、百会から脳戸で4分の1は仙骨部および会陰部に対応する。
理学療法は、ボバース法、PNFなどのファシリテーションテクニックを併用し、一部の頭鍼はパルス通電、筋運動を目的とした低周波通電を1週間に1-2回施行した。
【結果】
12段階片麻痺機能テスト(Recovery Grades in Hemiplegia:RGIH)で、上肢は6ヶ月以内、5年以上に2以上の変化があったが、下肢では2以上の著明な変化は見られなかった。
一次合併症、二次合併症は痙性固縮に86.5%と著明な効果が見られた。視野異常以外の一次合併症では42-66%の改善が見られた。
二次合併症においては、シビレに44%、関節周囲炎、疼痛、関節痛には70%以上の改善が見られた。
【ケーススタディ】
73歳男性
脳血栓後遺症による右片麻痺
すでに7年8ヶ月経過しており、理学検査法は行っていなかった。
初診時は右上肢挙上が乳頭位以下。肘関節・手関節の固縮は軽度。手指屈曲は可能、伸展は不能で共同運動が著しかった。
膝伸展は可能、屈曲は不十分、足関節の背屈は不能、下腿後側に拘縮が認められ、下腿後側に拘縮が認められ、立位・歩行時に痙性が強まった。立位膝上げは不十分、内反尖足となり、歩行時に短下肢装具と杖を使用し、装具なしの独立歩行は不能であった。ぶん回し歩行や上下肢の連合反応が見られ、患側上下肢筋には軽度の廃用性萎縮が見られた。12段階片麻痺機能テスト(Recovery Grades in Hemiplegia:RGIH)では上肢は4、下肢は6であった。
治療経過は、初回治療後より上肢筋の反応が改善され、坐位での膝屈曲が良くなった。
患者は治療に意欲的であったが、遠方のため、週2回の通院は無理で1週間1回の治療を継続した。
5回目で手指が鼻尖に触れられるようになり、室内では装具なしで歩行可能となった。
そこで、筋反応の強化と共同運動軽減を目的にファシリテーションテクニックを開始した。
第8回目で足関節の背屈が可能となり、第22回(初診より4ヶ月目23日目)では上肢は頭部まで上がり、歩行は装具・杖が不要となった。
12段階片麻痺機能テスト(Recovery Grades in Hemiplegia:RGIH)は上肢9、下肢8と改善された。
※故・梶間育郎先生は、他にも朱氏頭皮針の論文を書かれています。
2002年
「朱氏頭皮鍼の刺鍼部位と治療」
梶間育郎『鍼灸OSAKA』 VOL18(3): 81ー83、2002
2004年
「朱氏頭皮針療法の応用と実際」
梶間育郎『鍼灸OSAKA』VOL20(4).NO.1、55-59