赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

③日本経済を衰退させる「コスパ病」

2024-01-12 00:00:00 | 政治見解



③日本経済を衰退させる「コスパ病」 :240112情報

続きです。伊勢雅臣さんの許可を頂いて転載しています。


■5.「あそこは、有田焼を使ってるお店だよ」

現在は、歴史的な円安と、コロナや中国、ロシアによる国際貿易リスクの増大によって、多くの企業が生産の国内回帰を図っています。それは自損型輸入を縮小するという意味では追い風ですが、消費者のコスパ病がそのままでは、企業は限界までの低コストを国内でも求めざるを得ず、その結果、国内賃金の低迷、あるいは外国人労働者の採用拡大など、日本経済の病気は続きます。

日本経済の真の健康回復には、我々消費者自身がコスパ病から回復しなければならないのです。小島氏の著書には、そのいくつかのお手本となる事例が紹介されています。

4百年の歴史を誇り、わが国の陶磁器を代表する有田焼でも、百円均一ショップや量販店の価格攻勢で廃業した窯元や、安さに屈して伝統を捨てた窯元もあったそうですが、その中で200年以上も続く窯元「華山」の第11代社長・山本大介氏は、こんな経験をしたそうです。

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ある大手飲食店に食器を提案した際、購買担当者から開口一番、「このくらいの食器なら、わが社は中国で三分の一の値段で作れますよ」と言われたそうです。山本さんは黙って担当者の話を聞き、お店の雰囲気や客層、メニュー構成を理解して、数日後にその会社に適したデザイン、質感、使いやすさ、取引条件を備えた食器を再提案。すると、山本さんの提案力と食器の完成度に感動した担当者は、中国製の安い食器ではなく、同社の食器を採用することになりました。・・・

実際、その店のお客は、「あそこは、有田焼を使ってるお店だよ」と自慢し始め、メニューと会社の価値も同時に高めてくれるようになりました。規模と納期と「三分の一の値段」しか誇れない食器では、こんな結果をもたらすのは不可能でしょう。[小島、p144]

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■6.越前漆器で給食をいただく子供たち

このエピソードから、小島氏は次のように指摘します。
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このように、モノに顔がなく、安さしか強みがない大量生産の輸入品は、長い歴史を通じて蓄積された知識、製法、ブランド力、提案力という強力な武器を持つ国産品には勝てないのです。[小島、p144]
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JOG(742)では福井県で給食に地元の越前漆器を使っている小学校を紹介しました。越前塗りの職人さんたちが学校に提案し、給食に合わせて熱風消毒可能な漆器を開発し、値段も導入可能な価格に抑えて、導入できました。栄養教諭の先生はこう言っています。

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お椀の木をくりぬく職人さんがいる、塗りをする職人さんがいる。いろんな人が手をかけて一つのお椀を作っている。全国でもこんな漆の食器を使って給食を食べている子どもたちはいないんだよ、と伝えているので大切に扱ってくれますね。予算や保管場所の関係でひと学年分しか漆器の食器はないため、学年ごとに交代で使うのですが、順番が回ってくると子どもたちも「きた、きた」と反応がいいんですよ。[太田、p74]
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店で有田焼の食器で料理をいただく、越前漆器で出された給食を食べる。こういう文化的体験を一つずつ積み重ねることによって、我々はコスパ病から立ち直れるのです。

■7.「消費者」から「愛用者」へ


私自身もこんな経験があります。イタリア駐在の際に、トリノの中心街にジャケットを買いに行った時のことです。店員がまさしくプロフェッショナルで、私の体型にぴったりのものを見繕ってくれました。柄も気に入り、日本で買うよりも2~3割は高かったのですが、思い切って買ってしまいました。

そのジャケットは私の一番のお気に入りとなり、縫製も良いので、10年経っても着崩れがしません。それを着るたびに、着心地の良さを味わっています。代金を支払う一瞬は高い買い物をした、と思いますが、それからはずっと着るたびに心地よい思いをしています。良い物を大事に、大切に使う、ということの喜びを知りました。

小島氏は「消費者」から「愛用者」になることを進めています。日本国民が愛用者になることで、国内の文化と産業の活性化、若い人々の職と収入の安定化、それを通じて未婚化・少子化に歯止めをかけることができます。

さらに経済が活性化してこそ、防衛予算も災害対策予算も増額して、国民の安全安心を高めることができます。コスパ病からの脱却は、一石三鳥も四鳥もの国益につながるのです。






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