新BRICS通貨は米ドル支配を終わらせるのか!? :230721情報
一昨日の『ドル体制に「穴」をあけるアジア決済同盟(ACU)』の続きになるかもしれません。
世界経済を大きく揺るがすと恐れられる「新国際通貨」計画があります。これは、BRICSと呼ばれるブラジル、ロシア、インド、チャイナ、南アフリカによるもので、8月に行われるBRICS首脳会談では、この「共同国際通貨を作る」という共同声明が発表されるのではないか、と言われています。
現在、金融市場では様々な憶測が飛び交っていますが、実際のところどうなのでしょう? 国際政治学者に解説いただきました。
■一部の専門家の不安
今回の共同国際通貨を作ろうという話。一部では、「『金本位制』が復活するのでは…」、「ドル基軸通貨体制を揺さぶる 大変なことになるのではないか」ということを言ってる人もいます。
「1ブリック=金1オンスと決めていれば、昔の金1オンス=35米ドルと言うような『ドル金本位制』に近い形になるのではないか」、「ドルは慢性的にインフレで 価値がどんどん下がっているので、それに代替する とても強い安定した国際通貨となり国際金融制度そのものが 揺さぶられるのではないか」、「今の世界銀行と IMFを中心とする国際通貨制度が揺さぶられるのではないか」、と言っている専門家もいます。
■金本位制の難しさ
もちろん、BRICS通貨を発行することはできます。ですが、「金本位制」にすることは非常に難しいと思います。BRICSの国も、中国、ロシア、南アフリカなど金の産出国であり、また金を買い集めています。しかし、BRICS共同通貨を実施するとなると、その金を1カ所に集め、それに見合った通貨を発行しなければなりません。
また、本当の金本位制を行なうためには今ある、鳴かず飛ばずのBRICS銀行を改組しなければいけません。国際的に強力な中央銀行を作って、そこに実際に金を集めてその金に応じてBRICS通貨を発行する。
果たして、そこまでできるのでしょうか?
皆んな、そこまでのやる気、団結心がありません。チャイナからすれば、人民元が強くなっているから、人民元そのものを国際化すれば良いと習近平は思っているようです。国力のバランスから言えば当然そう考えるでしょう。
ロシアは金本位制はいい考えだという節もある。インドとしては、ヨーロッパやアメリカに相反してまで、孤立化している中露と組むことはできません。このことから、各国の足並みが乱れると思います。
■裏で糸を引く超大手民間企業
ただ、この新国際通貨の背後で糸を引いている大きな存在があるのです。それがゴールドマン・サックスです。
そこに、このBRICS論を一生懸命プロモートしてきた人がいました。それがジム・オニールという人物で、BRICSという言葉を作ったのもこの人です。彼は、3月26日に学術雑誌で「BRICS各国は共同通貨を発行して ドル覇権体制に挑め」という、半ば煽るような論文を発表しました。
彼は、ゴールドマン・サックスの会長を2013年に退任し、その後、イギリスの財務省で政府高官を務めていた「英国守旧派」です。つまりは、英国のタックスヘイブンを維持して無国籍金融資本でうまくやっていこうと考えているのでしょう。
■各国の思惑
ゴールドマン・サックスが裏で糸を引いているのなら、「BRICS通貨の金本位制」も逆に説得力があるのではないかという考え方もあると思います。しかし、当のBRICS各国は思惑が違います。ロシアにしてもチャイナにしてもゴールドマン・サックスのような国際金融資本と今の政権はかなり対立しています。
習近平は、国際金融は排除し、ロシアやイランなどの一部の国と団結して、西側の先進国中心の経済システムとは別の鎖国的システムを構築しようとしています。プーチンも、国際資本とはつかず離れずの立場でしたが、ウクライナ戦争を始めてからは国際的な金融資本はむしろ彼の敵となっています。
以上の理由から、BRICS共同通貨が現実化する可能性は非常に低いと私は見ております。
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