赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

降伏という奴隷の道を勧める人へ――私の素朴な国防論②  コラム(402)

2022-03-26 09:46:44 | 政治見解



コラム(402):
降伏という奴隷の道を勧める人へ――私の素朴な国防論②

(「私の素朴な国防論①」の続き)

「メディア報道に欠落する国防論」で、「海に四方を囲まれた日本人に国外退避する方策はなく、有事には、降伏して奴隷の道を選ぶのか、無為無策で玉砕に至るのか、防衛力を高めて国を守るのか、この三つの選択しかない」と述べました。

この中で、奴隷の道を選んだ場合はどうなるのかをもう少し考えてみたいと思います。

戦争犯罪ではナチス・ドイツのホロコーストがよく取り上げられるのですが、実は20世紀におけるジェノサイド(大量虐殺)は、ソ連のスターリンによる1000万人にもおよぶ粛清や中国の毛沢東に至っては数次にわたっての数えきれない人命が奪われている事象があります。

しかし、いずれも、ナチス・ドイツほどメディアではとりあげられませんでした。理由は、旧ソ連と中国が共産主義で、メディアの多くに共産主義の信奉者がいたために、彼らにとって共産主義のイメージを損なうこれらのジェノサイドは取り上げてはならないタブーだったからです。


中国人は同胞でさえ簡単に殺す

たしかに毛沢東のジェノサイドは中国という国に嫌悪を覚えるほどひどいものです。朝鮮戦争では人海戦術によって50万人の同胞である中国兵をしに至らしめました。人海戦術の犠牲となった兵士たちは毛沢東と戦ってきた旧中華民国の兵士たちで、共産党軍の毛沢東にとっては邪魔ものです。武器らしい武器も与えられず最前線に送り出された上、彼らの後ろに督戦隊がいて退却すら許されない、死ぬことしかしか許されませんでした。

次に毛沢東が行ったが、チベット侵略と虐殺です。人口600万人といわれていたチベットは、中国の侵略で120万人、 人口の20%が犠牲になりました。以降、チベットは中国の自治区になっています。

現在、これ以上のことが新彊ウイグル自治区で行われており、人権団体は「ものすごい人数が収容所で洗脳、拷問などの人格を破壊するような扱いを受け、何百万人もが強大な監視機関におびえながら暮らしており、人間の良心が問われている」と国連に報告しています。しかし、国連はいつものように無力で、しかも無為無策です。

また、集団虐殺ではありませんが、毛沢東はその愚かさで「大躍進政策」を提起し、結果的に2000万~3000万人が死亡する大飢饉を招来させたことがあります。さらに、文化大革命では、間接の被害者も含めて2000万人に及ぶ死者を出したと言われています。同じ中国人でも、共産党員以外の中国人の命は虫けら以下なのかもしれません。


旧ソ連の日本人に対する所業

1945年8月9日、ソ連軍は対日参戦し満州国に攻め入りました。敗戦の翌日の8月16日以降も日本兵を武装解除しながら、南樺太や千島列島に侵攻しました。

このとき捕らわれの身となった日本兵、満州開拓団の農民,満州の官吏,南満州鉄道株式会社など国策会社の職員,従軍看護婦など7万5000人がシベリアの収容所に抑留され、鉄道建設,炭坑・鉱山労働,土木建築,農作業などさまざまな労働に強制的に従事させられました。

粗末な食事と厳しい労働環境の中で5万5000人が死亡したと言われ、生還した人たちの多くは洗脳されており、日本共産党員となった人も多かったようです。ただ、抑留生活については、あまりにも過酷だったのか、帰還者の多くは何も語りませんでした。

同じような過酷な運命にあったのが27万人のぼる満蒙開拓団の人たちたちです。ソ連軍の侵攻で逃避行を余儀なくされた人々は、満州の広野でコーリャン畑に身を潜めながら歩き、寒さと栄養失調、疫病で8万人も命が奪われたと言います。死者に対してロシア人は弔うこともせず、金歯や腕時計を簒奪していったと言われています。日本中を涙に包んだ「中国残留孤児」もこのときの出来事でした。

あまりに壮絶な体験なのでご本人たちが何も語ろうとはしません。NHKなどがたまにこの問題を取り上げますが、日本批判目的で見るに堪えません。

実は、私の母も満州引き上げ者です。満州の高級官僚の後妻として戦時中に満州に行き、敗戦と同時に命からがら大分県に帰ったとのことです。そのとき、先妻の娘2人を連れて帰りましたので、私と血つながっていない姉たちは「おかあさんは命の恩人」と言っていたのを覚えています。ただ、私も満州からの帰還の話はいろいろ慮って詳しく聞いたことはありません。

余談になりますが、息子が小学5年のときに「戦争の話を家の人に聞いて感想文にまとめなさい」という宿題が課せられました。熱心な日本共産党員が担任の指示したようです。そこで、息子に母の実体験を書かせ、ソ連の非道ぶりを強調させたところ、「平和授業」はどうも不成立になったようです。ソ連が崩壊してから2年後のことです。共産党員もソ連崩壊で思想的な拠り所を失った時期だったようです。

それはさておき、日本が侵略されて多くの日本人が捕らわれの身になったらどうなるのでしょうか。仮に人権意識の高い欧米諸国で捕らわれても人間扱いしてくれるかどうか、本当のところわかりません。京都大学名誉教授の会田雄次先生の名著『アーロン収容所』には、欧米人にとって黄色人種は動物扱いだったことが実体験を通して書かれています。

まして、日本周辺の中国、ロシア、朝鮮半島の国々に私たちが捕らわれの身となった場合、まさに奴隷扱いになるのは必然です。最初から、奴隷扱いしようという気、満々であることは誰もが理解していることです。

現在、ウクライナではロシアに占領された南東部のマリウポリの住民、6千人が連れ去らさられました。住民らはいったんロシア国内の「選別キャンプ」に送られた後、最終的に極東のサハリンなど「経済的に貧しい地域に送られる」可能性があります。

したがって、現在のウクライナの悲劇を見ながら「戦うな」と言い放つ人がどれだけ罪深いことを言っているのか、そして日本が侵略された場合、「戦わず降伏せよ」ということがどれだけ犯罪的なのか、恥を知るべきだと思います。歴史を知らない観念論の戯言をいう人ほど危険人物、侵略者側の工作員とみるべきだと思います。

(明日につづく)




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