赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

米中貿易摩擦の真実 コラム(293)

2019-03-20 10:18:03 | 政治見解



コラム(293):米中貿易摩擦の真実


米中貿易協議の裏側では、サイバー空間と宇宙空間をめぐる熾烈な主導権争いが起きています。


インターネット空間からの支配

なぜ、アメリカが中国の一企業にすぎないファーウェイの徹底排除を行おうとしているのか。なぜ、国防権限法で、ファーウェイと事実上の中国国営の通信会社ZTEの関連の機器などを政府調達禁止にしたのか。なぜ、トランプ大統領が次次世代6G通信の早期実現を望んでいるのか。

その理由のすべては、次世代通信の5G【※1】が中国基準に統一されそうになっていることに対するアメリカの苛立ちにあります。

中国基準による世界の標準化が実現されれば、インターネット空間の情報はすべて中国政府に筒抜けになります。個人の嗜好から経済状態のみならず、各企業の商取引から国家の外交機密まで、ネット環境にあるものすべてが中国政府に把握されるのです。言い方を替えれば、個人と国家すべての情報が中国の監視下にあり、あらゆる自由が中国の手により規制されることを意味しています。

【※1】5G:超高速、超大容量、超大量接続、超低遅延の通信を実現することで、様々なモノがインターネットに接続され、情報交換することにより相互に制御する仕組みができる。この仕組みをIoTと呼ぶ。



宇宙空間からの軍事支配

中国は、宇宙で軍事的優位を打ち立て世界経済を支配するため、2016年の軍制改革では戦略支援部隊という名の宇宙専門の部門を創設しました。宇宙機器に対するサイバー攻撃やジャミングなどを通じた他国への宇宙活動能力を奪うことを目的とし、高高度の宇宙から地球上のどの国もどの地域も制圧しようと考えています【※2】。

これに対抗して、トランプ大統領は昨年(2018)末、国防総省に宇宙に関連する任務を統括する統合軍の創設を命じました。将来は陸海空軍と海兵隊、沿岸警備隊と並ぶ宇宙軍に昇格させる予定ですが、対策はかなり遅れている模様です。

そのため、アメリカは貿易協議の中で、中国における知的財産保護の規則改定・実施や外国からの投資にともなう技術移転の強要の停止を要求し、習政権肝いりの「中国製造2025」(=世界の製造強国の先頭グループ入りを目指す技術覇権戦略)の国家補助を止めることを強く求めています。

【※2】中国は、地球規模で衛星を追跡コントロールする監視基地網を、パキスタン、ケニア、ナミビア、チリ、オーストラリア、アルゼンチンに築いている。


軍拡競争の果てに

アメリカは中国に恐怖を感じています。アメリカは今のところ、サイバー空間や宇宙空間からアメリカに挑戦状を叩きつけている中国人民解放軍をねじ伏せる力はありません。したがって、アメリカができることは、同盟国と協力してファーウェイなどの技術の伸展を妨げることと、予算を増額して新たな軍事システムを開発に取り組もうとしています。トランプ大統領が同盟国に対して駐留費の全額負担を求めている理由の一つでもあります。

しかし、同時に中国も軍事予算を大幅に増額させています。

米中貿易摩擦の本質は両国の覇権をめぐる争いであるだけに、どちらかが勝利するまでは形を変えてでも続くことになります。この影響は深刻で、グローバル化した国際社会に、長期間の経済停滞をたらし、人びとに戦争への恐怖をかきたてることになります。


世界の富を独占しようと考える国家や指導者が、いかに世界中の人々を苦しめているのかをあらためて考える時期に来ているのではないでしょうか。



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