赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

戦後70年の歴史認識をめぐって(4)  「アメリカの正義」とどう向き合うのか

2015-03-18 00:00:00 | 政治見解
赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』(10)

戦後70年の歴史認識をめぐって(4) 
「アメリカの正義」とどう向き合うのか





拡張主義にみる「アメリカの正義」

アメリカの国旗は、The Stars and Stripesと呼ばれるように、建国時の13州から現在の50州まで領土を拡大してきた歴史を示しています。

アメリカは1776年イギリスから独立したのち、その領土を西に西へと広げてきたのです。フランスからルイジアナを、スペインからはフロリダを購入。インディアンの居住地を奪い、さらにテキサスを併合。1846年の米墨戦争で、カリフォルニアとニューメキシコを獲得しています。その後ハワイ併合を行っています。

第二次世界大戦後にはイギリスに代わって「覇権国家」となり、ソ連崩壊後は唯一の超大国として国際社会に君臨しています。

アメリカは帝国主義と非難されるほどの徹底した拡張主義で、現在では領土の拡張よりも、経済面での間接支配をするようになりました。自国の利益のために、軍事力を背景にして他国に圧力をかけ、その手法は、意図的に対立を煽り、対立を解決することを理由に武力を用い「アメリカの正義」を示します。第二次世界大戦時の日本との戦争やイラクとの湾岸戦争でも、「アメリカの正義」が強調されました。

現在でも、国際社会での「正義」は、「アメリカの正義」を意味することが多いようです。


「アメリカの正義」は力の正義

日本は、「アメリカの正義」を補完する立場をとっていますが、これは敗戦後、アメリカの占領を受けたことによるものです。占領政策の主眼(※1)は「アメリカに歯向かわない日本」をつくることでした。

※1 3R原則;復讐(Revenge)、改組(Reform)、復活(Revive)。5D政策;武装解除(Disarmament)、非軍事化(Demilitarization)、工業生産力の破壊(Deindustrialization)、中心勢力の解体(Decentralization)、民主化(Democratization)

この影響で、日本は「大東亜戦争」を「太平洋戦争」と呼称変更され、「アメリカの正義」の前に、日本の戦争責任を断罪され贖罪意識(※2)を植え付けられました。しかも、勝者のアメリカに対しては、東京大空襲(※3)(※4)や広島・長崎への原爆投下は不問(※5)にされたのです。

※2 日本国民は軍部に欺かれて侵略戦争に誘導された。日本は戦争中にこんな残酷なことをした。日本を救うため、100万のアメリカ兵を救うためアメリカは原爆を落とした。日本国民は過ちを反省すべきである・・・、

※3 ハーグ陸戦条約及びジュネーブ傷病者条約において、非戦闘員の殺傷、非軍事目標、無防備都市への攻撃は禁止されている。

※4 これらの問題は、いまさらアメリカに抗議する問題ではないが事実として認識しておかなければならない。なぜなら、民主党の細野氏のような「東京大空襲は国策の誤りの結果である」という「アメリカの正義」に依拠する発言が横行するからである。

※5 アメリカ政府は、原爆投下について正当化はしても、これまでに国際法違反と認めて謝罪したことはない。


このように、現代の国際間での「正義」とは「力(軍事力)」によって体現され、戦争の勝者が常に「正義」となる力の論理に過ぎないのです。

しかし、いかなる戦争においても「正義の戦い」などは存在するものではありません。

人間を殺戮しあう悲惨な戦争に「正義」が付与されるはずはないのです。



アメリカと相似形の中国

現在、西に西にと領土を拡大しつづけたアメリカと同じようなことをしている国があります。覇権国家をめざす中国です。そんな相似形の中国にアメリカは親近感を抱いているようです。

第二次世界大戦前の中国(中華民国)に肩入れしたのも、アジアにおける「姉妹共和国(※5)」とみなしていたからだと言われています。また、戦後、共産主義化した中国に対しても、「ソ連の脅威に対してバランスを取ること」と、「巨大なマーケットであること」を見越して、米中国交正常化が図られました。人権問題を重視するアメリカが、中国の「人権問題」には言及しません。

※5「中国人はいまや世界で一番民主的な共和国である」、「アジアにおいて最も西洋的な国は、もはや日本ではなく中国である」とかいった言論が花盛りとなった。

ただしアメリカは、中国が軍事的に太平洋に進出することだけは許しません。アメリカは「アメリカの正義」を実現するために戦略を使いわけているのです。


「アメリカの正義」が中心の日米関係 

このようにアメリカの正義は、アメリカの都合次第で内実が次々に変わります。

日本の占領初期には、日本を「従属国家」にしようと考えていたようです。東西冷戦がはじまると「反共の防波堤」にと位置づけを変え、日本をアメリカの核の傘のもとに保護する政策に変更しました。

他方、日本が高度経済成長をはじめると一転して、日本バッシングを行っています。繊維産業や自動車産業を叩き、日米構造協議で市場開放を要求、さらには現在のTPP交渉と、アメリカの国内事情で日本は振り回されていると言っても過言ではありません。

戦後70年、常に日本の前には「アメリカの正義」が立ちはだかり、アメリカの枠組みの中から一歩も抜け出せない状態であったということなのです。


国際社会を力で支配する時代の終わり

「国益最優先がアメリカの正義」という前提で国際社会を眺めると、現在の紛争地域、国際的な問題を抱えている地域は、何らかの形でアメリカの利害が関わっているということがわかります。ウクライナ紛争、イランの核軍縮、中東和平、北朝鮮の核開発、そして、中南米の反米政権の存在・・・。これらは、アメリカの国益優先主義によって、その地域の国々と衝突しているのです。

もし、アメリカの軍事力を背景した「正義の押し付け」が無ければ、これほど事態は深刻にはならなかったのではないでしょうか。国際社会における正義の数は国の数だけ存在しますが、アメリカが他国の正義と協調できたなら、国際社会はもっと平穏であったはずなのです。

しかし、アメリカの「力による正義」の時代は終わりつつあります。戦後70年かけてもアメリカによる「力の正義」では、国際社会を平和にすることができなかったからです。

ここに、一つの文明実験の答えが出たということです。


期待される日本の「和の原理」

国際社会の発展と人類の調和を考えるとき、もはや、アメリカの正義によって実現することは不可能です。これからの時代は、覇権主義的な力による支配や、現在のアメリカのような自国の利益優先の正義の押し付けでは国際社会はまとまらず、二国間の協調さえ不可能にしてしまいます。

国際社会には200近くの国がありますが、文明や文化、人種や宗教、伝統や習慣などの違いがある中で、それらを対立させることなく、互いに調和と発展をもたらすこと、全ての国々、人びとが幸福になっていこうという姿勢を積極的に示すことができなければ、真実の意味での平和は達成できません。

現在の国際社会を見まわした時、このような考えができるのは日本だけではないでしょうか。

日本は世界の紛争に加担せず、経済的にも安定し、なによりも穏やかな国民性を持っています。今から1300年もの前に、聖徳太子が17条の憲法の最初に掲げられた「和を以て貴しとなす」の精神、また、日本の国号の別称である「大和」の精神を前面に打ち出してこそ、万人が希求する絶対的平和が訪れるのではないでしょうか。

「和」とは互いの立場を理解し、尊重するようになってはじめて達成される調和の状態です。


日本はこの精神を人類普遍の原理として、新しい共通の「言語」として提唱し、国際社会を調和的に発展させる方向にリードしていかなければならないと思います。

この考えに立ったとき、世界中が「戦後70年の縛り」から解放されるのではないのでしょうか。



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