11月、一週間ほどかけて北海道まで旅をしようと計画していたのですが、お仕事が重なってしまい、どうも行けない雰囲気が濃厚です。
それでも買ったカメラはうずうずしているし、なにかこうたまったものを吐き出すようなことをしたいな、と思ったのでした。
北海道じゃなくてもいい、どこか日帰りででも。
そんな週末、思い立ったように読んでいた『つげ義春 幻想紀行』に行き先を求めました。
そこで手ごろだったのが千葉県は大多喜町。
しかもここに関連したつげ作品はかなり多くあるようです。
「初茸がり」「紅い花」「沼」「リアリズムの宿」「不思議な絵」、そして「西部田村事件」。
前日の金曜日。
西新宿の事務所で夜中まで仕事をし、4時間ほどソファで寝ました。
起きて歌舞伎町のサウナでひとっ風呂浴び、JRに飛び乗ります。
外房線からローカル線のいすみ鉄道に乗り換え。二両編成の可愛い車両。
車窓からの眺めも期待を煽ります。当日は曇っていたけど、こうしてひとりで寂しさを楽しむ旅にはいいものです。
と、自分に言い聞かせます。
到着。
眼前にクレープ屋。観光客ほとんどいねえ。いい感じです。
にゃんこがタクシーの運ちゃんに「なんかクレ」とやっています。運ちゃんもヒマそう。
確かに楽しそうなところがどこにもないです。頑張って駅前に観光案内とか作ってましたが、普通に観光で来るにはあまりにも何も無さ過ぎる。
過剰な自然もなく、楽しい施設もない。
あるのは、変わらない空気だけ。
でもそれが、実は何より欲しいもの。
行き先への手がかりが、前記の本と、いくつかのサイトの記事をプリントアウトしたもののみだったので、観光案内的な地図を駅で入手。
それを元に行き先を照らし合わせます。
つうか、猫多いな。
廃屋なのか、他人のお家なのか分からない軒先に、また猫ちゃん発見。
「にゃんだ」と終始臨戦態勢のぬこ。
買い物帰りのおばさんから「あらなーに、なにがターゲット?」と声をかけられました。
他人ちを覗き見るような格好でカメラを構えていたので相当怪しいです。あせります。
「あ、ぬ、ねこちゃんを・・・」
「あら、カワイイ。そうなのー」とすごい周波数の高い声で対応されたので、まず猫がびびって逃げました。
なにすんだ。
「あら、ゴメンなさいねー」。去ってゆくおばさん。
すぐ近くに神社がありました。
おっと、すばらしいではないか。
いちいちめんどくさくない、そこら辺の神社って感じだけど、造りがなんかしっかりしてるような気がします。気が。
朱色が目に沁みるな。日本の紅。
なんかこの神社で朝市みたいなのやってました。
魚がどっさしとあったので「ああ、海か」と思い、猫が多い点にも合点がいったのでした。高周波おばさんはここの帰りだったみたい。
目にするものがいちいち裏切らない。
観光って、こういうのが何より大事だと思うんです。
町そのものが頑張ってないのもいい。お役所はなんとか観光客誘致のため、ちょっとしたところに看板たてかけて「ここがいかに由緒ある場所か、建物か」という説明を施しておりますが、何より住んでる人たちがその気ない。
そのため全体、すごくゆるーい空気が漂っています。いいなァ。
過去の空気に触れてるんだけど、未来や過去っていう時間の概念を無視した生活感、リアリズムがあるんですね。
てくてく歩き、やがて目的地その1。「大屋旅館」に到着。
大屋旅館は登録有形文化財。つげ漫画では『リアリズムの宿』(73年)より、主人公の旅人が「理想の商人宿」として思い描く一コマとして登場します。ちょうど、以下のアングルで(漫画見ながら撮った)。
女中さんが写ってますな。すてきなポージングです。
このお宿は漫画に登場する他にも、実際つげ義春が何度か宿泊した宿でもあるようです。
女中さんと話すと「あら、つげさんのファンの方なの。つげさんのファンって、途切れないわよねえ」とのこと。
それにしてもこうした物見遊山な客とは呼べない人間を、きっちりともてなすところに、お宿の善意が感じられます。
「上がって観てらっしゃい」と、願っても無いご招待にあずかりました。
そしてそれは、確かに文化財として誇れるものでした。何かいちいちどこ見ても「すげー」って感じです。漫画発表当時から30年以上もたつのに、雰囲気がまるで同じ。
泊まりたい!
二階へ。
今の時期はたまに宴会客が入るとか。
いいなぁ、こういうところで宴会。どういう立場の人達なんだろう?
ひとしきり観終えると、女将さんらしき人がなにやらしに出て来ました。
女中さんから「つげさんのファンなんだって」と聞くと「ああ、寿恵比楼(すえひろ)も近くにまだあるわよ」と教えてくれました。
何も言ってないのに、次の目的地を察する女将さん。
「もうやってないんだけどね。ご主人が亡くなっちゃって。息子さんも勤めに出てらっしゃるから」とのこと。
帰り際「これ飲め」と、女中さんから缶コーヒーをいただきました。
旅先でこういう親切されると、すごく心に響きます。
旅館を出て、教わった通りに道を行き、かつてつげ義春先生と白土三平先生が常宿にしたという『寿恵比楼』をめざしました。
それでも買ったカメラはうずうずしているし、なにかこうたまったものを吐き出すようなことをしたいな、と思ったのでした。
北海道じゃなくてもいい、どこか日帰りででも。
そんな週末、思い立ったように読んでいた『つげ義春 幻想紀行』に行き先を求めました。
そこで手ごろだったのが千葉県は大多喜町。
しかもここに関連したつげ作品はかなり多くあるようです。
「初茸がり」「紅い花」「沼」「リアリズムの宿」「不思議な絵」、そして「西部田村事件」。
前日の金曜日。
西新宿の事務所で夜中まで仕事をし、4時間ほどソファで寝ました。
起きて歌舞伎町のサウナでひとっ風呂浴び、JRに飛び乗ります。
外房線からローカル線のいすみ鉄道に乗り換え。二両編成の可愛い車両。
車窓からの眺めも期待を煽ります。当日は曇っていたけど、こうしてひとりで寂しさを楽しむ旅にはいいものです。
と、自分に言い聞かせます。
到着。
眼前にクレープ屋。観光客ほとんどいねえ。いい感じです。
にゃんこがタクシーの運ちゃんに「なんかクレ」とやっています。運ちゃんもヒマそう。
確かに楽しそうなところがどこにもないです。頑張って駅前に観光案内とか作ってましたが、普通に観光で来るにはあまりにも何も無さ過ぎる。
過剰な自然もなく、楽しい施設もない。
あるのは、変わらない空気だけ。
でもそれが、実は何より欲しいもの。
行き先への手がかりが、前記の本と、いくつかのサイトの記事をプリントアウトしたもののみだったので、観光案内的な地図を駅で入手。
それを元に行き先を照らし合わせます。
つうか、猫多いな。
廃屋なのか、他人のお家なのか分からない軒先に、また猫ちゃん発見。
「にゃんだ」と終始臨戦態勢のぬこ。
買い物帰りのおばさんから「あらなーに、なにがターゲット?」と声をかけられました。
他人ちを覗き見るような格好でカメラを構えていたので相当怪しいです。あせります。
「あ、ぬ、ねこちゃんを・・・」
「あら、カワイイ。そうなのー」とすごい周波数の高い声で対応されたので、まず猫がびびって逃げました。
なにすんだ。
「あら、ゴメンなさいねー」。去ってゆくおばさん。
すぐ近くに神社がありました。
おっと、すばらしいではないか。
いちいちめんどくさくない、そこら辺の神社って感じだけど、造りがなんかしっかりしてるような気がします。気が。
朱色が目に沁みるな。日本の紅。
なんかこの神社で朝市みたいなのやってました。
魚がどっさしとあったので「ああ、海か」と思い、猫が多い点にも合点がいったのでした。高周波おばさんはここの帰りだったみたい。
目にするものがいちいち裏切らない。
観光って、こういうのが何より大事だと思うんです。
町そのものが頑張ってないのもいい。お役所はなんとか観光客誘致のため、ちょっとしたところに看板たてかけて「ここがいかに由緒ある場所か、建物か」という説明を施しておりますが、何より住んでる人たちがその気ない。
そのため全体、すごくゆるーい空気が漂っています。いいなァ。
過去の空気に触れてるんだけど、未来や過去っていう時間の概念を無視した生活感、リアリズムがあるんですね。
てくてく歩き、やがて目的地その1。「大屋旅館」に到着。
大屋旅館は登録有形文化財。つげ漫画では『リアリズムの宿』(73年)より、主人公の旅人が「理想の商人宿」として思い描く一コマとして登場します。ちょうど、以下のアングルで(漫画見ながら撮った)。
女中さんが写ってますな。すてきなポージングです。
このお宿は漫画に登場する他にも、実際つげ義春が何度か宿泊した宿でもあるようです。
女中さんと話すと「あら、つげさんのファンの方なの。つげさんのファンって、途切れないわよねえ」とのこと。
それにしてもこうした物見遊山な客とは呼べない人間を、きっちりともてなすところに、お宿の善意が感じられます。
「上がって観てらっしゃい」と、願っても無いご招待にあずかりました。
そしてそれは、確かに文化財として誇れるものでした。何かいちいちどこ見ても「すげー」って感じです。漫画発表当時から30年以上もたつのに、雰囲気がまるで同じ。
泊まりたい!
二階へ。
今の時期はたまに宴会客が入るとか。
いいなぁ、こういうところで宴会。どういう立場の人達なんだろう?
ひとしきり観終えると、女将さんらしき人がなにやらしに出て来ました。
女中さんから「つげさんのファンなんだって」と聞くと「ああ、寿恵比楼(すえひろ)も近くにまだあるわよ」と教えてくれました。
何も言ってないのに、次の目的地を察する女将さん。
「もうやってないんだけどね。ご主人が亡くなっちゃって。息子さんも勤めに出てらっしゃるから」とのこと。
帰り際「これ飲め」と、女中さんから缶コーヒーをいただきました。
旅先でこういう親切されると、すごく心に響きます。
旅館を出て、教わった通りに道を行き、かつてつげ義春先生と白土三平先生が常宿にしたという『寿恵比楼』をめざしました。