田舎の倉庫

Plala Broach から移植しました。

新田次郎著「雪のチングルマ」

2013年02月14日 | 読書三昧

遭難(死)をテーマにした著者円熟期の山岳小説短編集。
表題作の他、「春富士遭難」、「羽毛服」など6編を収録。

物語~「赤い徽章(バッチ)」:19歳の文子は、初めて参加した冬山訓練で講師の朝倉真一を意識し、彼が止めるのもきかずグリセードを行って左腿に重症を負った。山を止め結婚したが、夫に先立たれ再開した冬山訓練で朝倉に再会する・・・。

彼の小説には、登山パーテイーや救助隊が、急変し猛威を振るう天候や自然と闘う姿だけでなく、彼(彼女)らを取り巻く人間模様もつぶさに描かれる。

そこには、遭難という非日常がもたらす人間関係の脆さやエゴなども同居していて、物語に現実感を与えている。彼の小説が長く読み継がれる理由はその辺にあるのではと思った。