たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

星組『鎌足』ライブビューイング_安見児得たり

2019年07月07日 16時46分45秒 | 宝塚
2019年5月26日:星組『鎌足』ライブビューイング_カッコ悪い姿が美しかった
https://blog.goo.ne.jp/ahanben1339/e/dc41132368e53925a4513a73e137ad4b

与志古を妻にすると中大兄皇子に告げられたとき、声をふるわせ「与志古は志の全て」、一番大切なものをとられたくない、だか主君に逆らうことなど許されないと目を見開いて苦悩するときの表情も凄まじかった。鎌足が試されていることを感じ取り、自分が人質として宮中に入らなければ鎌足の立場は危うくなることに気づいた与志古は、鎌足を守るため、こんなにありがたい話はないではないか、「そうでしょ、鎌足」と鎌足を諭し自ら宮中へと入っていきます。宮中に入ってから、「本当に必要なのは私ではなく鎌足様なのではないですか」「私の体に触れることはできても私の心に触れることはできません。この悲しみは、私と鎌足様、二人だけのものです」(ニュアンス)と中大兄皇子に言い放つ与志古の毅然とした姿もまたとてつもなく美しく、『エルベ』を経てすごくいい役者になったと驚きました。与志古を自分の妻にした交換に采女を一人やろうと鎌足に遣わされたのが安見児でした。普通は結婚できない采女である安見児を妻にできて嬉しくないのか、嬉しいだろ、その喜びを歌にしてみろと中大兄皇子に言われて詠んだのが、万葉集にある「安見児得たり~」という設定でした。そうくるのかと唸りました。安見児の星蘭ひとみさんもすごく小顔で美しい娘役さん、与志古を中大兄皇子にとられて「つらい」と絶望しきった表情で言い放つ鎌足に、「采女になったときから感情をもつことは許れずに生きてこなければならなかった、愛することも愛されることもなく生きてきた」(ニュアンス)、「与志古が羨ましい」と。そんな安見児を絶望しきった表情で抱きとめずにはいられない鎌足、心は鎌足にある与志古を抱きとめる中大兄皇子、二組をオーバーラップさせる演出もなかなかだと思いました。



************************


藤原鎌足(万葉集巻2・95)

われはもや 安見児(やすみこ)得たり 皆人(みなひと)の

得かてにすとふ 安見児得たり

(口訳)おれはよ。安見児をおれのものにしたぞ。誰も彼もが、自分のもにはしきれなかった、その評判の、安見児をおれのものにしたぞ。

 この安見児と、鏡大王と同一人だという説もある。伝説では、天智の御子を懐妊したまま鎌足の妻となり、そして生まれたのが不比等(ふひら)だという。これは平清盛皇胤説と全く同じ類型だから、事実とは考えられないが、しかし、この歌などが、不比等皇胤説に、後になるほど拍車をかけたことは確かだろう。


 安見児は采女の名。采女は奈良時代までは身分が高く、大和の朝廷に半独立の形であった国々から、その国の豪族の娘が、宮廷に召され、大和の宮廷の神のまつりを国々に伝え、信仰的に大和の宮廷に統一されていった、その原動力となった者だ。だから、宮廷の奥深くにいて、宮廷の神に仕えていたのだから、これに対して手を触れることは、信仰的に許されなかった。やすみこのやすむという語は、今日でも寝ることの敬語として生きているが、その名にも、神の嫁であることを示していると思う。宮廷の正殿が「やすみ殿」、天皇のことを「やすみししわが大君(おおきみ)」という。そういう女性を、天皇からいただいたのだから、鎌足が、手放しで、大喜びの心を歌い上げているのだ。」

(池田弥三郎・折口信夫著『国文学』慶応義塾大学通信教育テキストより)



 脚本家の想像の翼がおおいに羽ばたいた『鎌足』。日本青年館の公演プログラム、大劇場公演よりも薄く脚本家の弁は特に書かれていないのですが、ずっとあたためていたものを、機会と役者を得てやっと書ける~というほとばしりを感じます。そうでなければこういう作品は生まれないと勝手にひとりで納得しています。そうかそうでないかはどっちでもいい、勝手にそう思っていたい、這いつくばりながら生きる人間の物語。

「(天智天皇即位の)祝いの席で鎌足は功績を称えられ、帝から褒美として新たな名を賜ることになるが、鎌足はそんなものよりもただひとつの希望、与志古を返してほしいと懇願する。自らに刃を向け、命と引き換えにでも彼女を取り戻そうとする姿、そして鎌足の背信などあり得ないという与志古の説得もあり、二人は長年の苦難の末、再び夫婦として共に歩むことになる。

 だが、与志古はその時密かに帝の子を宿していた。その事実が明るみになれば、夫婦はまた離れ離れになってしまう・・・。二人が思い悩む様子をみた安見児は、与志古には都を離れて密かに出産させ、その子供を鎌足と自分の子として育てようと提案。夫婦はそれに従うことにする。

 そして生まれた男児は不比等と名付けられ、鎌足は血の繋がらない息子を大切に育てあげるのだった。」

(『宝塚グラフ』2019年7月号より)


 不比等が天皇の子なのか否か、史実はわかりませんが鎌足が「志のすべてを教えた」不比等とその子供たちによって、藤原氏繁栄の基礎が固められていきます。鎌足は藤原の姓を賜った翌日世を去ったとのことですが、世の中をよくしたいという鎌足の志は不比等へと受け継がれていきました。平安時代、源氏物語を書いた紫式部の日記にも登場する藤原道長は鎌足の何代目かあとの子孫。鎌足の足跡はたしかに遺ったのだと思うとなんだか胸あつで、1000年以上前のことなのにこうして舞台化されるとすごく近しい物語にも感じられる不思議。

 安見児の星蘭ひとみさん、これぞ宝塚の娘役という一般人の追随を許さない美人さん。SNSなどであまりよく書かれていないのをみかけるのは歌が上手くないから?なのかな。采女となったとき人としての感情を封印しなければならなかった安見児が鎌足との出会いによって封印を解かれ、苦悩しながら、慟哭しながら生きる人の姿に触れて、人としてのあたたかい感情を取り戻して心を震わせる様、感情を取り戻した安見児が生まれてくる子を鎌足と自分の子として育てるたおやかさ、病に倒れた鎌足を見舞いに天智天皇が訪れた時、不比等に「一緒にこちらで遊びましょう」と声をかけるときなど、いずれもこの物語の中での安見児の体現ぶりが素晴らしいと思いました。不比等に自分のことを母と名乗っていたか、重要ポイントなのに記憶曖昧・・・。与志古との関係性、かなり微妙なところですがこの頃はまだ奥さんが何人も一緒に暮らすの当たり前の時代だったからそこはよかったのかな。安見児もまた鎌足を深く愛するようになったのでしょう。『霧深きエルベのほとり』では、船乗りを連れて帰ってきたマルギットを軽蔑しきった目でみる良家のお嬢様ぶりがはまっていたし、役者としていいものをもっている方だとわたしは思うのですが・・・。

 なんども同じことを書きますが、鎌足を信じ続ける与志古の姿が力強く物語全体を支えていました。綺咲愛里さん、お人形のように可愛いので可愛いばかりフューチャーされがちなところがあるのかなと思うのですが紅ゆずるさんとコンビを組んだ頃には想像できなかった、芯の強い女性を演じられる役者へと成長していったのかなと思います。そして這いつくばりながら生きる鎌足の姿を、人として尊いものとして魅せてくれる紅ゆずるという役者さんは唯一無二。最高にみっともない姿をかっこよく魅せられる。そして自分がこの舞台全体に責任をもつんだというオーラであったかく包み込んでいる。だからエルベ以来かなり星組モードになっています。


せん
 
 明日で雪組の『壬生義士伝』が宝塚大劇場で千穐楽を迎えると、いよいよ星組トップコンビ退団公演開幕。わたしこうして自分は徒然に観劇日記を書いていますが、人が書いた宝塚ブログを読むことはほとんどありません。昨日たまたまツィッターのリンクから上位にランクしているブログを読んでしまい、読まなければよかったと思いました。人の感じ方はそれぞれですが、こっちとあっちを比べてこっちはあっちよりもここが素晴らしくてあっちはダメであっちのダメなところがこっちは素晴らしい、だからこっちは素晴らしいみたいなの、どうもなあ・・・。

ねんどろいどになった紅ゆずるさん、買った方がSNSにアップした写真を拝見しているとこうしてお人形になってもキラキラオーラを放ちまくりのすごい存在感で、個性的だからキャラクター化しやすかったかな。着せ替えて遊んだり、大人がすごく楽しそう。



日刊スポーツのベルちゃん、一昨日あたりからただの愛里さんファン状態、テンション高くお写真アップしてくれています。朝日新聞の記者さんたちもただのファンになっているっぽい。普通にただ可愛いという違いますもんね。これぞ宝塚の娘役という、芸の域の可愛らしさ。ツィッターからお借りした写真は2015年1月撮影。今よりも幼い雰囲気が漂っていて成長ぶりをうかがわせます。

つらい記事ばっかり並ぶなかで可愛らしいお写真は癒されます。現実を忘れさせてくれます。

蘭乃はなちゃんを舞台とお茶会で至近距離でみたとき、小顔で色白で手足長くてあり得ないぐらい細くって折れるんじゃないかと心配になるぐらい細くって、でも綺麗に筋肉がついていて体幹がしっかりしていて、一般人にはないキラキラオーラを放っていました。神様に選ばれた方なんだと思いました。

愛里さんもすごく可愛いでしょうね。自分が恥ずかしくっていられないぐらいに・・・。





 まとまった時間でやっとまた書きたかったことを書けました。ささやかなブログへの訪問、励まし、ありがとうございます。ようやく8時間ほど眠ることができました。歳をとってくると睡眠もエネルギーが要るのである意味つらいですが、なんとか生き延びています。


連休は運よくキャンセル待ちで手にした大劇場新幹線日帰り。朝すごく早いの。体動くかしら。今はそのことばっかり。月組の『ON the town』の日帰りツアーもあるようなのでいきたいけど体がついていくかしらね。梅田芸術劇場、いったことないですが迷うっていう話だし、うーん、どうしよう・・・。