時々新聞社

慌ただしい日々の合い間を縫って、感じたことを時々報告したいと思います

民主党の現実路線を歓迎?

2009年07月26日 | 政治問題
先日発表された民主党の政策集に対して、産経新聞が早速、歓迎のメッセージを送っている。
民主党が、国連安保理決議に基づいて北朝鮮船舶に対する貨物検査を実施する方針も明記したことに対して、産経は、政権獲得後には、外交・安全保障政策で現実的な対応をとろうとする姿勢の表れと受け止めたい、とエールを送っている。
貨物検査特別措置法案は、解散により廃案となった。国会終盤、民主党は早期成立に協力せず、国連や国際社会に厳しい対北朝鮮制裁措置を求めておきながら、日本の法整備ができない状況を招いた。民主党が態度を明確にしたのは評価できなくはないが、まず廃案にした責任を総括すべきだと苦言を呈している。
また、民主党は海賊対処法に反対していたが、ソマリア沖での海賊対処活動は継続する姿勢を示し、インド洋で補給支援を行う海上自衛隊を「即時撤収する」との従来の方針も引っ込めたと、この点も産経は評価している。
また在日米軍の裁判権などに関する日米地位協定について、従来は「抜本的改定に着手」としていたものの、「改定を提起」にとどめ、米国との対決色を薄めたと、歓迎している。
一方、憲法改正問題をはじめ、不明確な課題が多い。財政健全化は目標年を定めておらず、年金財源に充てる消費税は4年間、税率(5%)を引き上げないという。これでは政権全体の方向性が見えないと不満を表明している。
米軍への追随、自衛隊の海外派兵、憲法とりわけ憲法9条の放棄、消費税の引き上げなど、アメリカに追随し、庶民に負担を押し付ける政策が現実路線であるとして評価しているのが産経の態度である。
しかし、国民は、現実を維持することを望んでいるのではない。このような閉塞した現実を何とか「改革」してもらいたいと願っているのである。
そういう意味では、産経新聞のこの論調は、まるで国民の意識からかけ離れている。
今は、アメリカでさえ、軍事力で世界を動かせなくなっている。ドルの威信も低下し、経済的にもイニシアチブが発揮できなくなっている。
だからこそ、大統領が、核兵器の廃絶に言及し、北朝鮮に対しても、イラクやアフガニスタンで取ったような軍事一辺倒の対応ではなく、「わがままな子供」をあやすような対話路線を取らざるを得なくなっているのである。
こういう世界の流れの中で、日本がなぜ非核三原則を見直し、憲法9条を放棄して、自衛隊を海外に派兵し、さらに武力行使ができるような政策を採らなければならないのだろうか。
こういう点から見れば、民主党が掲げている「現実路線」は、時代に逆行し、国民の期待を裏切るものになるだろう。
江戸時代には、江戸に将軍様がおり、各藩には領主様がいることを、ほとんどの庶民は当たり前だと思って260年間も暮らしてきた。
同じように、戦後、多くの国民は、自民党の政権がずっと続くと思ってきた。しかし、この政権はどうもおかしいぞと思うようになり、この政権に代わる新しい政権、政治を模索しているのが現在の政治状況である。また、国民の中には、資本主義への懐疑の感情さえ含まれているのが現状ではなかろうか。産経新聞の激励に沿って、民主党が「現実路線」を採用すれば、すぐにも国民から見放されることになるだろう。