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●《陸上自衛隊と米海兵隊が、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブに、陸自の離島防衛部隊「水陸機動団」を常駐させる…極秘合意》

2021年02月04日 00時00分43秒 | Weblog

[※ 辺野古は破壊「損」 【米軍飛行場の移設先として工事が進む沖縄県名護市の海岸】(東京新聞 2020年4月3日)↑]


 (2021年01月31日[日])
琉球新報の【<社説>シュワブ共同使用合意 文民統制逸脱する暴挙だ】(https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1261432.html)。
沖縄タイムスの【社説[辺野古に陸自部隊]軍事要塞化を拒否する】(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/697914)。

 《陸上自衛隊と米海兵隊が、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブに、陸自の離島防衛部隊「水陸機動団」を常駐させることで2015年に極秘合意していたことが判明した。防衛省全体の決定を経ておらず、政治が軍事に優越するという民主主義国家の大原則文民統制」(シビリアンコントロールを逸脱する大問題だ》。
 《当時の岩田清文陸幕長と在日米海兵隊のニコルソン司令官(在沖米四軍調整官)が常駐に合意した。報告を受けた安倍政権の中枢から計画の存在が広まったら、沖縄の反発は抑えられなくなると待ったがかかり、凍結されている状態だという。加藤勝信官房長官は25日の記者会見で、「合意や計画があるとは承知していない」と否定した。この種の政府説明後になって覆されるケースを県民は過去何度も味わってきた政府が否定しても、疑念は晴れない》。

 琉球新報の記事【玉城知事「県民感情としても認められない」 陸自が辺野古に離島部隊 米海兵隊と極秘合意】(https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1261522.html)によると、《玉城デニー知事は25日午前、報道陣の取材に対し「海兵隊が退いていく代わりに陸自が入ってきて海兵隊と基地を共同使用するということは、県民感情としても認められない」と語った。「SACO日米特別行動委員会)そのものを再点検する必要が出てくる」と指摘…日本政府が造っている名護市辺野古の新基地と一体運用が想定されることから「そもそも辺野古に基地は造らせないというのがわれわれの明確な意志だ。その点も踏まえて対応を検討したい」と強調した》。
 《政治が軍事に優越するという民主主義国家の大原則文民統制」(シビリアンコントロールを逸脱する大問題だ》というのに、「本土」はとても静か。《戦争で亡くなった人の血や肉が染みこんだ土や石を、新たな軍事基地建設に使用するのは人間のやることじゃない》…《人柱》問題についても、漸く最近報じられるようになってきた。

   『●《思いやり予算日本要請…必死に米軍を引き留めつつ、沖縄に負担を
     押し付け続ける日本政府の手法はかつての植民地主義をほうふつさせる》
   『●《埋め立てに使う土砂を、沖縄戦の激戦地だった沖縄本島南部から
      採取することが新たに盛り込まれた…「戦没者に対する冒とくです」》
   『●《戦争で亡くなった人の血や肉が染みこんだ土や石を、新たな軍事基地
      建設に使用するのは人間のやることじゃない》…《人柱》でいいのか?

 これも裏で暗躍していたのは、元・最低の官房長官なのでは? 《安倍政権の中枢》とは、元・最低の官房長官、陰湿悪質陰険強権的な利権漁りカースーオジサンではないのか?

   『●沖縄イジメ、辺野古は破壊「損」の張本人が元最低の官房長官。
     そして今、さらなるデタラメ・ヒトデナシをやろうとしているオジサン

 ニッポン政府が〝防波堤〟《標的の島》を意図した、デタラメな沖縄イジメ。一体どこが、《安倍首相は基地負担軽減に全力を尽くす》なのか?

   『●新作『標的の島~風かたか~』の監督・三上智恵さん、 
          「あなたが穴をあけた森はもう元には戻らない」!
   『●映画タイトルは、稲嶺進さんが「我々は、
      また命を救う《風かたか》になれなかった」という嘆きの言葉」から
    《三上智恵監督の新作映画『標的の島 風かたか』の試写に行ってきました。
     前作の『戦場ぬ止み』から2年近く。その2年の沖縄の状況が、
     あますことなく描かれた映画》。
    「《稲嶺進・名護市長が口にした「我々は、また命を救う風かたか
     なれなかったという嘆きの言葉から》映画のタイトルは採られたそうだ。
     《沖縄のことばで「風よけ」のこと》だそうです。
      番犬様には何も言えないアベ様ら。一方で、番犬様にシッポを
      振るために沖縄でやっていることは、「沖縄イジメ」そのもの」

   『●「なぜ巨大な権力にあらがえるのか。
      人々は「世代の責任」を語る」「子を守る「風かたか」になる」
   『●中学生を「青田買い」する自衛隊: 
     「体験入隊や防衛・防災講話」という「総合的な学習の時間」も
   『●自衛隊配備で「住民分断」: 
     「自衛隊の配備計画…いずれの島でも人々は分断されている」
    「東京新聞の半田滋さんによるコラム【【私説・論説室から】
     島を分断する自衛隊配備】…。《「賛成派が新たな職を得て
     優遇される一方、反対した人は干され、島を出ている」という。
     …自衛隊の配備計画は与那国に続き、奄美大島、宮古島、
     石垣島でも急速に進む。いずれの島でも人々は分断されている》」

   『●「しかし、沖縄にはいまだ“戦後”は 
     一度たりとも訪れていない」…安倍昭恵氏には理解できたのだろうか?
   『●現在進行形の「身代わり」: 「反省と不戦の誓いを…
             沖縄を二度と、身代わりにしてはならない」
   『●「防波堤」としての全ての「日本全土がアメリカの「風かたか」」
                …米中の「新たな戦争の「防波堤」に」(その1)
    《しかし、三上監督は最新作『標的の島 風かたか』で、さらに切迫した
     問題を沖縄から日本全国へ提起する。それは現在、安倍政権が
     進めている石垣島、宮古島、奄美大島、与那国島への
     大規模な自衛隊とミサイル基地の配備についてだ。政府は南西諸島の
     防衛強化を謳うが、その実態はアメリカが中国の軍事的脅威に
     対抗すべく打ち出した「統合エアシーバトル構想」にある》

   『●「防波堤」としての全ての「日本全土がアメリカの「風かたか」」
                …米中の「新たな戦争の「防波堤」に」(その2)
   『●三上智恵さん「結局は止められなかった」という現実…
           でも、《人々は分断されている》ことを止めなければ
    「マガジン9の記事【三上智恵の沖縄〈辺野古・高江〉撮影日誌 第71回:
     高江から宮古島へ~雪音さんと育子さんからのエール~】(…)」
    《『標的の村』の主人公、高江の安次嶺雪音さんと伊佐育子さんだ。
     …そう思って特集を連打し、放送用ドキュメンタリーの限界を超えよう
     と映画にまでして突っ走ってきた私は、「結局は止められなかった
     という現実に、正直に言ってまだ向き合えていない。…でも、
     ひしゃげている私にもわかることがある。これから自衛隊の
     ミサイル基地建設着手、という局面を迎える宮古島石垣島で、
     何とかそれを止めようともがく人々にとって、
     高江の人たちは大事な存在になるということだ》

   『●米中戦争の「防波堤」: 
     与那国駐屯地による「活性化」? 「島民との融和」か分断か?
   『●「戦争マラリア」…いま再び自衛隊配備で先島諸島住民を分断し、
                     「戦争や軍隊の本質」の記憶を蘇らせる…
    《島中央部では、陸上自衛隊宮古島駐屯地(仮称)の隊舎などの工事も始まり、
     近い将来、警備部隊やミサイル部隊などが配備される。
     「島では軍隊と『カジノ』がやってくるとささやかれています」。駐屯地前で
     毎朝、抗議活動をしている上里清美さん(62)が皮肉交じりに語る》

   『●沖縄デマによる市民の分断: 『沖縄スパイ戦史』の両監督
               …「反基地運動は中国のスパイ」デマも同根
    《一方、安倍首相は基地負担軽減に全力を尽くす」と述べた。嘘だ
     政権に辺野古新米軍基地の建設強行を止める気配は微塵もない。
     石垣島、宮古島、与那国島への大規模な自衛隊とミサイル基地の
     配備も推し進めており、石垣市では中山義隆市長が7月18日に
     陸自配備受け入れの方針を正式に表明した》

   『●「武力によって平和を創造することはできない」…
         「真の平和をつくっていく…「憲法宣言」を採択」
    「《石垣島宮古島への陸上自衛隊配備などを念頭に
     「沖縄の基地負担への影響が大きい」》…壊憲が及ぼす影響は、
     沖縄では計り知れない。「森」を殺し、「美ら海」を殺し続け、沖縄の
     市民を分断、基地から出撃する番犬様は「人」を…。
       沖縄の地で、《「武力によって平和を創造することはできない」とし、
     日本国憲法の精神米軍基地のない平和を求める沖縄の心
     大切にし、真の平和をつくっていくことを掲げた「憲法宣言」を採択》
     にも肯ける」

   『●現在進行形の「身代わり」: 「反省と不戦の誓いを…
             沖縄を二度と、身代わりにしてはならない」
    《先島諸島と呼ばれる沖縄県南西部の島々が自衛隊配備で揺れて
     います。蘇るのは戦争による悲劇の記憶です…宮古島には
     七百人規模、石垣島には六百人規模のミサイル部隊と警備部隊を
     配備する計画です。地元では…住民の意見は割れているのが実情です。
     …有事には自衛隊が標的にされ、周辺住民が巻き込まれると心配する
     声が聞こえてきます。底流にあるのは先の戦争の悲惨な記憶です。
     大戦末期、米軍の攻撃を避けるため、この地域の住民はマラリア発生
     地帯への疎開を軍部によって強制され、多くの人が罹患して亡くなり
     ました。患者数は当時の人口の約半数とも言われています。同じく
     大戦末期には、軍命により石垣島から台湾に疎開する際、船が米軍に
     攻撃され、多くの犠牲者が出ました。
     自衛隊配備でこうした戦争の記憶が蘇るのです》

   『●石垣島陸上自衛隊ミサイル部隊配備: 
       《菩提樹》を切り倒すのか? ささやかな願いさえも打ち砕くのか?
    「子どもさへSLAPPSLAPP)する国・ニッポン。こんな国でいいのですか?
     宮古島石垣島に《標的の島》を押し付けて恥じぬ「本土」…。
     答えは一つだけではない」

   『●事実誤認の常習犯…《聞きたくない質問、
      都合の悪い質問を遮るような、その先に国民がいることを無視…》
    《進む米軍との一体化、つけは子どもたちの世代へ…弾一発1.6億円する
     巡航ミサイルの導入、護衛艦いずもの「空母化」など、専守防衛を
     逸脱する動きは加速し、沖縄本島には新たにミサイル部隊が配備され、
     宮古島には巨大な弾薬庫をつくることが決まりました》

   『●与那国島や石垣島、《沖縄は名護市辺野古だけでなく、宮古島もまた
                    国防のために政府に翻弄されている》
   『●沖縄イジメ…《この74年間、沖縄戦以来、
     陸兵が軍服を着て宮古島を闊歩する姿など誰も見たことはない》
   『●《中国の海洋進出への対抗策というが、住民の安心をないがしろ
               にして、地域の平和を守るといえるの》か?


 目取真俊さんのブログ【海鳴りの島から 沖縄・ヤンバルより…目取真俊/有志による座り込みと日米共用が策される辺野古新基地】(https://blog.goo.ne.jp/awamori777/e/8603c35604e92ff992a8003124578b9b)によると、《今朝の県内紙に、キャンプ・シュワブに陸上自衛隊の水陸機動団を常駐させることが、2015年の段階で陸自と米海兵隊との間で極秘に合意されていた、という記事が載っている。辺野古新基地を自衛隊も共同使用することはかねてから言われていた。日本政府が辺野古新基地建設にこだわる主な理由は自衛隊使用にある、ということもだ。それが明確になったことで、沖縄の「負担軽減」どころか、中国に対抗する日米の軍事拠点として、沖縄の軍事負担がさらに増大していくことが明らかとなった…昨年12月25日発行の『越境広場』8号に、「米軍基地問題に関する万国津梁会議」の提言に対する批判を書いた。その最後のところと注釈で、自衛隊についても触れた。その部分を引用して紹介したい。…〈※4 鹿児島県の馬毛島や奄美大島、沖縄島、宮古島、石垣島、与那国島における自衛隊強化、基地建設に対して、故翁長前知事や玉城知事は明確に反対せず、黙認の姿勢をとってきた。中国の海洋覇権拡大を阻止する拠点として、米軍と自衛隊の強化が沖縄全体でなされている現状に対し、万国津梁会議の「提言」や玉城知事の認識は楽観的過ぎる米海兵隊の「移設」に問題を矮小化するのではなく自衛隊の強化と米軍の一体化を含めて、沖縄、日本の軍事強化に反対していかなければ、沖縄県民はこれまで以上に軍事的脅威にさらされる〉》。

 相変わらず、番犬様はやりたい放題ではないか? トンだ《基地負担軽減》。
 琉球新報の記事【高江にヘリ発着場新設か 北部訓練場内に看板 東村】(https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1261978.html)によると、《東村高江の米軍北部訓練場内の空き地に、25日までに「LZ17A」と表示された看板が設置された。「LZ」は米軍基地内のヘリ発着場を示す略称で、沖縄防衛局は米軍に事実関係を確認している。空き地をヘリ発着場として整備する準備作業の可能性もある。看板が設置されたのは県道70号沿いの空き地の前。ここ数日中に設置されたとみられ、空き地の入り口も幅数メートルにわたって木が伐採されていた。空き地は以前からあったが、木々に覆われ、県道からは見えない状態だった。これまで空き地で米軍ヘリコプターの離着陸などは確認されていないという。垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの沖縄配備前の2012年4月に、米海兵隊が公表した環境レビューには、北部訓練場内のヘリ発着場一覧が示されているが「LZ17A」の表記はない。16年の北部訓練場過半返還に伴い新設された発着場にも同地点は含まれていない。當山全伸村長も25日、現場を確認した。當山村長は「全く知らなかった。沖縄防衛局などを通して確認していきたい」と話した。伊佐真次村議は「新設の発着場なのか明らかにしてほしい」と述べた。同訓練場返還地の米軍廃棄物問題などを調査しているチョウ類研究者の宮城秋乃さんは「仮にヘリパッドとして使うのであれば、高江の負担はより重くなる」と訴えた》。

 沖縄タイムスの記事【岸防衛相、検討認める 辺野古の自衛隊常駐 菅首相は将来的な可能性も否定】(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/699010)によると、《岸信夫防衛相は陸自内での検討を事実上認めた。施設の計画図案を作成したか問われ、「共同使用についてきちっとした計画があったわけではないが、そういう形での図があったという話はある」と述べた。これに対し立憲民主党の白眞勲氏が「やっと認めていただいた」と返したが、岸氏は、否定しなかった。部隊配備については「今考えていない」と繰り返し強調した》。
 琉球新報の記事【陸自施設の図面認める 岸防衛相 辺野古新基地への常駐計画】(https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1263158.html)によると、《岸信夫防衛相は27日、同基地への常駐が計画されていた陸自離島防衛部隊「水陸機動団」の関連施設の設計図案について、「そういう形での図があった」と述べた。陸自と海兵隊が調整し作成していたとされる設計図案の存在を認めた。計画について「政府としての合意はない」としたが、陸自と米海兵隊のトップ間で合意が交わされた可能性については否定しなかった》。

 最後に、日刊ゲンダイのコラム【高野孟 永田町の裏を読む/辺野古新基地を造りたいのは米軍よりもむしろ陸上自衛隊】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/284435)によると、《米海兵隊のためにと称して日本政府がしゃにむに建設を強行してきた辺野古新基地に、陸上自衛隊の「水陸機動団」を常駐させることで陸自と米海兵隊の間で密約が交わされていたことが発覚した(沖縄タイムス1月25日付)。これは前々から言われていたことで、例えば私自身、昨年9月に那覇で開かれた講演会で「辺野古は、完成した暁には『日米共同管理』の名で自衛隊が入り込み、19年に創設された『水陸機動部隊』もオスプレイを伴って佐世保から移駐するでしょう。辺野古を何が何でも造りたがっているのは米軍よりもむしろ自衛隊」と語っていた。…これに先立って、陸自はすでに与那国、石垣、宮古、奄美などに着々と基地を建設し、それを「南西諸島戦略」と呼んでいるが、その行き着く先が陸自の辺野古移駐である》。

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https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1261432.html

<社説>シュワブ共同使用合意 文民統制逸脱する暴挙だ
2021年1月25日 06:01

 陸上自衛隊と米海兵隊が、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブに、陸自の離島防衛部隊「水陸機動団」を常駐させることで2015年に極秘合意していたことが判明した。防衛省全体の決定を経ておらず、政治が軍事に優越するという民主主義国家の大原則「文民統制」(シビリアンコントロール)を逸脱する大問題だ。

 当時、陸自と在沖米海兵隊のトップ同士が合意し、双方で調整して陸自施設計画案などを関係先に提示していた。

 「日本版海兵隊」といわれている水陸機動団の常駐は明らかに基地機能の強化であり、基地の永久固定化につながる。中国との緊張を高め、沖縄が標的として狙われる恐れも一層増す。

 そんな大きな負担を強いる重要な安全保障上の問題を、主権者である国民、その代表で構成される国会が預かり知らないところで、決めていいはずがない。明らかに文民統制から逸脱し、平和国家として再出発した国家の成り立ちを破壊する暴挙である。

 在沖米海兵隊約9千人が20年代にグアムなど国外に移転する。その後に水陸機動団が配備されれば、沖縄の負担軽減策の一つとされる海兵隊グアム移転の意味がなくなる。

 水陸機動団は18年に長崎県に配備された。現在、長崎に二つの連隊があるが、23年度に三つ目を九州に置き、将来はいずれかの連隊を辺野古に移転する考えだという。

 背景には米軍と自衛隊の一体化がある。昨年1~2月に金武町の米軍ブルービーチ訓練場や沖縄近海で行われた日米共同訓練に、水陸機動団が初参加した。今月下旬にもブルービーチで共同訓練を予定する。水陸機動団の沖縄配備に向けた地ならしと言える。

 共同使用は、全国の約7割が沖縄に集中する米軍専用施設を専用から外し、数字の上で沖縄の負担を軽く見せる狙いもあるのではないか。まやかしである。

 そもそも南西諸島への自衛隊配備強化は沖縄にとって新たな基地負担となっている。県内の自衛隊施設面積は18年現在で、沖縄の日本復帰時の約4.3倍に上っており、先島などへの陸自配備が進めば、さらに拡大する。

 政府が言う「沖縄の基地負担軽減」はもはや絵空事である。キャンプ・シュワブでは、政府が新基地建設を強行している。県民投票で投票者の7割が埋め立てに反対し、軟弱地盤のある大浦湾側で着工の見通しも立っていないにもかかわらずにだ。

 辺野古新基地は将来、陸自基地になると陸自幹部は見込む。文民統制を逸脱した合意によって、先の大戦のように沖縄に犠牲を強いることは決して許されない。軍部の暴走を許した昭和史が沖縄戦の悲劇を招いたことを忘れてはならない。沖縄が戦後76年間も過重な基地負担を押し付けられ、危険と隣り合わせの環境に置かれることを拒否する。
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https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/697914

社説[辺野古に陸自部隊]軍事要塞化を拒否する
2021年1月26日 06:29

 政府は例によって否定するが、火のないところに煙は立たない、という。思い当たることがいくつも浮かぶ。

 陸上自衛隊と米海兵隊が2015年、陸自の水陸機動団を辺野古新基地に常駐させると、極秘に合意していたことが日米両政府関係者の証言で明らかになった。

 当時の岩田清文陸幕長と在日米海兵隊のニコルソン司令官(在沖米四軍調整官)が常駐に合意した。

 報告を受けた安倍政権の中枢から「計画の存在が広まったら、沖縄の反発は抑えられなくなる」と待ったがかかり、凍結されている状態だという。

 加藤勝信官房長官は25日の記者会見で、「合意や計画があるとは承知していない」と否定した。

 この種の政府説明が、後になって覆されるケースを県民は過去何度も味わってきた。政府が否定しても、疑念は晴れない。

 ニコルソン司令官は17年11月の記者会見で、水陸機動団について「沖縄に配備されるのが望ましい」「非常に期待している」と述べた。

 在沖米海兵隊トップのエリック・スミス司令官も19年3月、朝日新聞のインタビューに答え「我々にとってすばらしいことだ」と答えている。

 陸自にとって米軍演習場の共同使用は沖縄配備以来の念願だった。

 辺野古新基地とキャンプ・シュワブは、普天間飛行場の代替施設としての機能を超えて、日米の軍事一体化を象徴する多角的拠点、として建設されようとしている。

■    ■

 自衛隊は部隊編成、装備、訓練など、いずれの面でも、中国の動きをにらんで「南西シフト」を鮮明に打ち出している。

 離島防衛を主な任務とする水陸機動団が創設されたのは18年3月。部隊の拠点は長崎県佐世保市の相浦(あいのうら)駐屯地に置かれた。

 水陸機動団はこれまで、沖縄の海兵隊と鹿児島県・種子島で離島奪還の共同訓練を行った。フィリピンや米カリフォルニアなどでも共同訓練を重ねている。

 負担軽減の掛け声とは裏腹に、宮古・八重山、沖縄本島、奄美に至るまで軍事化が急速に進む。

 懸念されるのは沖縄が戦場になることを前提にした作戦計画が立てられ、訓練が重ねられていることだ。

 昨年11月、徳之島で行われた大規模な訓練は、同島の防災センターを「野戦病院」と位置付けた戦時の医療訓練だった。

■    ■

 離島が戦場になったとき、住民にどのような事態が起きるか。戦傷者の発生を想定した何とも生々しい訓練は、沖縄戦の女子学徒隊を想起させるものがある。

 沖縄戦で起きたことを沖縄の人々は戦後76年たっても忘れていない。私たちは沖縄が戦場となることを前提にした軍事要塞化に反対する。

 軍事力偏重の安全保障政策は他国との緊張を高め、思わぬ事態を招きかねない。

 沖縄の歴史経験を真に生かすことができるかどうかが、切実に問われている。
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●《基地を造ることで、沖縄県民の生活を踏みにじってでも安心したいと、一体、誰が思っているんでしょうか。私が闘っている相手》は?

2021年01月30日 00時00分37秒 | Weblog

(2021年01月03日[日])
集英社新書プラスの記事【プラスインタビュー/『証言 沖縄スパイ戦史』第63回JCJ賞日本ジャーナリスト会議)三上智恵氏贈賞式スピーチ/三上智恵】(https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/interview/%e4%b8%89%e4%b8%8a%e6%99%ba%e6%81%b5%e6%b0%8f%e8%b4%88%e8%b3%9e%e5%bc%8f%e3%82%b9%e3%83%94%e3%83%bc%e3%83%81/12549)。

 《沖縄北部で展開された陸軍中野学校の青年将校が仕掛けた秘密戦と国土防衛戦の本質を圧倒的な取材で描き、第7回城山三郎賞、第63回JCJ賞を受賞した三上智恵著『証言 沖縄スパイ戦史』。これを記念して2020年10月10日に行われたJCJ賞贈賞式での三上氏のスピーチを掲載します》。

 三上智恵さんのスピーチ、《なぜこれ以上、軍事要塞の島として、私たち沖縄県民は生きていかなければいけないのかという怒り基地を造ることで、沖縄県民の生活を踏みにじってでも安心したいと、一体、誰が思っているんでしょうか。私が闘っている相手の正体というのは、一体、何なんでしょうか…》。
 《軍隊が自分たちを守ってくれる、どうして自信を持ってそんなことが言えるんですか》 沖縄の過去の経験に何も学ぼうとしない〝本土〟。「軍隊は住民を守らない」…「戦争や軍隊の本質」を学ばない〝本土〟。《狂ったシステムが再起動してしまわないか、私たちは目を光らせていないといけない》。

   『●『沖縄スパイ戦史』(三上智恵・大矢英代共同監督): 
           「「スパイリスト」…歪んだ論理が生み出す殺人」
   『●三上智恵・大矢英代監督映画『沖縄スパイ戦史』…
       「戦争というシステムに巻き込まれていった人たちの姿」

   『●「改めて身に迫るのは、軍隊というものが持つ
      狂気性」(高野孟さん)と、いまも続く沖縄での不条理の連鎖
    《マガジン9連載コラム「沖縄〈辺野古・高江〉撮影日誌」でおなじみの
     三上智恵さんが、大矢英代さんとの共同監督で制作した
     映画『沖縄スパイ戦史』が7月下旬からいよいよ公開…
     「軍隊は住民を守らない」…「戦争や軍隊の本質を伝えたい」》。

   『●『沖縄スパイ戦史』と《記憶の澱》…
     「護郷隊…中高生の年頃の少年たち…スパイと疑われた仲間の処刑…」

    《▼日本軍第32軍の周辺で起きた本島中南部の激戦を「表の沖縄戦」と
     すれば、映画が描くのは北部の少年ゲリラ兵部隊護郷隊」や八重山
     戦争マラリアなどの「裏の沖縄戦」。綿密な取材による証言と資料映像で、
     6月23日以降も続いた遊撃戦の実相をつづる》

   『●自衛隊配備・ミサイル基地建設…『沖縄スパイ戦史』「自衛隊
              …昔と同じく住民を顧みない軍隊の本質」暴露
    「レイバーネット…のコラム【<木下昌明の映画の部屋 243回> 三上智恵
     大矢英代監督『沖縄スパイ戦史』/住民500人を死に追いやった犯罪】」

   『●沖縄デマによる市民の分断: 『沖縄スパイ戦史』の両監督…
               「反基地運動は中国のスパイ」デマも同根
   『●大矢英代さん「私たちは、過去の歴史からしか学べません…
               私たちが何を学ぶのかが今、問われている」①
   『●大矢英代さん「私たちは、過去の歴史からしか学べません…
               私たちが何を学ぶのかが今、問われている」②
   『●『沖縄スパイ戦史』: 「それまで『先生』と島の人たちに
           慕われていた山下が抜刀した」…「軍隊の本性」
   『●2019年度文化庁映画賞《文化記録映画部門の優秀賞》を受賞
               …三上智恵・大矢英代監督『沖縄スパイ戦史』
   『●《「遊撃戦遂行の為特に住民の懐柔利用は重要なる一手段にして
     我が手足の如く之を活用する」…住民同士を監視させ…批判している…》
   『●《「慰霊の日」を迎えた。…鉄血勤皇隊やひめゆり学徒隊の悲劇が
      伝わる一方、護郷隊の過酷な運命は長年ほとんど知られていなかった》
   『●「戦争マラリア」…いま再び自衛隊配備で先島諸島住民を分断し、
                 「戦争や軍隊の本質」の記憶を蘇らせる…
   『●《戦争体験の継承はどうして必要》? 大矢英代さん《二度と同じ手段で
      国家に殺されないように、生活を奪われないように、知恵をつけること》
   『●《8月ジャーナリズム》と《沖縄にとって戦争は遠い昔話ではない。
     沖縄は、今も一年中、戦争の延長線上を生きている》(大矢英代さん)

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https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/interview/%e4%b8%89%e4%b8%8a%e6%99%ba%e6%81%b5%e6%b0%8f%e8%b4%88%e8%b3%9e%e5%bc%8f%e3%82%b9%e3%83%94%e3%83%bc%e3%83%81/12549

プラスインタビュー
証言 沖縄スパイ戦史第63回JCJ賞日本ジャーナリスト会議三上智恵氏贈賞式スピーチ
三上智恵(みかみ ちえ)
2020.12.25

なぜ彼らは鬼になってしまったのか?

沖縄北部で展開された陸軍中野学校の青年将校が仕掛けた秘密戦と国土防衛戦の本質を圧倒的な取材で描き、第7回城山三郎賞、第63回JCJ賞を受賞した三上智恵著『証言 沖縄スパイ戦史』。これを記念して2020年10月10日に行われたJCJ賞贈賞式での三上氏のスピーチを掲載します。


どこかを犠牲にしてでも安心したいというような無意識な欲望

 皆さん、こんにちは。今日は、本当にこんな晴れがましい席に立つことができて、皆さんに感謝しています。

 私、2013年にも、「標的の村」というテレビドキュメンタリーで、同じ場所に立たせていただきました。そのときは、琉球朝日放送の三上智恵でしたが、今、フリーになって6年たち、その間に3本、全部で4本の映画を作りました。もうJCJ賞にかかることなんて一生ないと思っていたんですが、映像作品を離れて書いた750ページのこの活字で、まさか再び選んでいただくことがあるとは、夢にも思っていませんでした。

 この本は「沖縄スパイ戦史」という映画を作った後に、別に誰からも頼まれてもいないし、期待もされていなかったんですが、自分の暴走が止まらなくて、なぜか自分一人で書き続けて、集英社さんにどうか出してくださいと、自分から頼むような形でできた本です。私一人で、黙々とやった仕事を見つけていただいて、本当にどうもありがとうございました。

 私は、沖縄に移り住んでもう26年になります。その報道生活全てをかけてでも止めたかったことがあります。それは、まず高江ヘリパッド建設であり、オスプレイが来ることであり、大浦湾が埋め立てられることであり、それから、今、宮古八重山にどんどん造られています新しい自衛隊のミサイル基地です。

 なぜこれ以上、軍事要塞の島として、私たち沖縄県民は生きていかなければいけないのかという怒りの中で、報道以外にも物を書いたり、講演で全国を回ったり、映画を作ったり、あらゆることをやりましたが、何一つ止めることができず敗北感を積み重ねています

 基地を造ることで、沖縄県民の生活を踏みにじってでも安心したいと、一体、誰が思っているんでしょうか。私が闘っている相手の正体というのは、一体、何なんでしょうかということをいつも考えます。

 もちろん、皆さんの頭の中にまず出てくるのは、日米両政府でしょう。対中国戦略、北朝鮮戦略の中で、日本列島全体をアメリカ軍が使おうしている。沖縄だけではないです。日本列島全体を盾にしようとしているアメリカ軍、アメリカ政府がいます。そして、そこにコバンザメのようにしがみつくことでしか国防を語ることのできない日本政府、この日米両政府が確かに沖縄を軍事要塞化していく大きな力なんですが、でも、これらをエンパワーメントしている日本の国民、大衆が「北朝鮮が怖い、中国が怖い、自衛隊に守ってほしい、アメリカ軍にもっと守ってほしい」と考えている大衆の欲望、安心したい、どこかを犠牲にしてでも安心したいというような無意識な欲望が、彼らに力を与えています。

 そこで私が言いたいのは、軍隊が自分たちを守ってくれる、どうして自信を持ってそんなことが言えるんですか?ということです。皆さん、沖縄戦のことを知らな過ぎるのではないですか?ということを、私はいつも、基地を造りたい大きな力、目に見えない力に対して、空に叫んでいたようなところがあります。

 私は、今まで基地建設に苦しんでいる人たちのところに行って、カメラを回すということをやってきたんですが、もうそういうことをしていても追いつかない。これを止めるためには、沖縄戦から直接、苦い薬を抽出して、日本国民の“強い軍隊に守ってもらいたい”というような妄想を解体していく、そういう作業が必要だと思って、「沖縄スパイ戦史」というドキュメンタリーを作りました。その後に、この本を書いたわけです。


被害者の視点だけでは見えてこないもの

 この750ページは分厚くて非常に評判はよくないわけですが、750ページを一遍に書かなければいけない必然がありました。

 最初の三分の一ぐらいは少年兵の証言です。先ほど丁寧に説明がありましたから、護郷隊の説明は省きますが、そのように自分の故郷を守るんだというような名前がつけられて、沖縄の15、6歳の少年たちが、陸軍中野学校の22、3歳のエリート青年将校たちに訓練をつけられて、千人規模のゲリラ兵部隊がいたということは、まず知られていません。

 本土の優秀な大学生、22、3歳が、沖縄の中学校、高校の子供を引き連れて、最後、沖縄が玉砕してからも、沖縄からどんどん本土に爆撃しにいくアメリカ軍を、後方からずっと攪乱し続けろという、物すごい命令を大本営も下したものだとあきれ果てる上に、こうやって子供たちを戦わせたということを日本の歴史の汚点としてちゃんと刻んでほしいと思いますが、その歴史秘話を伝えたかったわけではないんです。この少年兵たちを通して戦った側の視点から沖縄戦を見直していくことが可能になる、その必要があったんです。

 沖縄戦というのは、住民の視点でその被害を語るということを一生懸命やってきた分野なんです。もともとは、防衛省が軍隊側の視点から沖縄戦を記録していくということがまず最初にあって、占領下に生きていた沖縄県民が、住民の視点で沖縄戦を語れるようになるまで長い長い積み重ねがありました。私は、ずっと沖縄戦のことを何十年もテレビ報道の企画やドキュメンタリーでやってきたわけですが、沖縄戦を住民のほうから見るのが当たり前ということでそればかりやってきたので、戦う側の論理は重視して来なかった。でも特に、北部の戦争の場合、戦った日本兵の二、三割は沖縄の人たちです。だから、日本軍は数々の残虐行為を住民にしていますが、それは差別の構図だけでは語れない被害者の視点だけでは見えてこないものがあります。


   (贈賞式での三上氏)


「軍の機密を知ってしまった人は殺してもいいんだ」

 では、何が起こっていたのか。この少年たちは、刀に憧れて、上官たちに、ここにいる村上(治夫)さん、岩波(壽)さん、とても格好いい隊長たちです。人格者でもありました。戦後も生き残って、いろいろな証言も残してくれています。彼らに憧れて、自分たちの故郷を守るんだということで戦いに入っていくわけです。でも、その視点から見ていくと、住民というのは労働力なんです。食料を作って自分たち軍隊に渡してもらう。それから、陣地構築を手伝ってもらう。陣地構築を手伝ってもらうと、どういうことになるか。軍の機密を皆さんが知ってしまうんです。だから、ここが皆さんの村だとすると、護郷隊でも、日本軍でもそうですが、手伝ってもらうと、皆さん、もう知ってはいけないことを知ってしまうわけです。

 だから、ここにアメリカ軍が上陸してくるという段になったら、お互いに監視をさせます。それで、スパイにならないよう、つまり皆さんが知っている知識を、アメリカ軍に捕まったからといって、絶対にしゃべるなといってもほぼ不可能なんですが、この中でスパイになりそうな人たちを順番にリストアップして、上から殺していくということをやりました

 沖縄の北部では、複数の箇所で証言がちゃんと残っているんです。そのスパイリストに載せられて、最後は使われた上に始末される、消されていくというような運命に、どうしても住民はなってしまうわけです。

 三二軍の参謀だった神直道さんは、琉球新報の取材に対して、戦後にはっきり「沖縄戦では住民を守るという任務はなかった。作戦に入っていなかった。住民は足手まといだった」と言っています。軍隊にとって住民は、どのように見えるのか。作戦をつくる側にとって、それから遂行する側にとって。もう敵が来てしまい、住民を守る作戦もない中で、沖縄県民が守ってもらいたいと思って兵隊に寄りかかっていきます。陣地にも入ってきます。もう迷惑でしかないということが、この少年たちの証言を読んでも痛いほど分かります。

 次に私たちが持つかもしれない軍事組織、今の自衛隊が軍事組織であるかどうかということは議論があるかもしれませんが、それが国防軍になっていくといったときに、あの残酷な旧日本軍ではなく、本当に私たち国民を守るための存在として生まれ変わるのかどうかというところは、注視していかなければならない。

 軍の機密を知ってしまった人は殺してもいいんだ、ということの裏づけになったのは軍機保護法です。それと同じ建てつけの法律が特定秘密保護法です。ですから、特定秘密保護法ができたときに、私たち地元の報道機関はものすごい危機感で報道しました。既に、アメリカ軍と日本の軍隊と一緒に生活をしている沖縄県民にとって、特定秘密保護法というのはあの軍機保護法の復活だという危機感を全国の人たちと共有できていないんです。そういう意味でも、この本はぜひ読んでほしいです。

 一つの例ですが、スパイリストに載ってしまった米子さんの話が出てきます。十八歳の中本米子さんは、今帰仁村にある運天港にいた白石隊と呼ばれる魚雷艇部隊で、かいがいしく働いていました。でも、米子さんは、ある日、地下に造られた巨大な弾薬庫を見てしまいます。そのことでスパイリストに載って、18歳の女性が、何も悪いことをしていないのに命を狙われていきます。

 その中で、武下少尉という青年将校が出てきます。この白石部隊の武下少尉は、屋我地島という島に住んでいたヨネちゃんとスミちゃんという十八歳の二人の女の子だけは殺すな、この二人の少女を殺すんだったら、俺がおまえを殺すと言って、ヨネちゃんを守ってくれたというエピソードが映画にも出てきます。

 でも、武下少尉は、ほかに今帰仁の人を殺しています。つまり、住民を粛清する係だったわけです。その後、武下少尉は、アメリカ軍にアジトを暴かれて殺されてしまうので、1945年に亡くなっているんです。


武下少尉は今帰仁で観音様になって祀られている

 この話から、本当にいろいろなことを学ぶことができるんですが、実は私、映画が終わってから知ったんですが、武下少尉は今帰仁で観音様になって祀られているんです。通称、武下観音と言われていますが、南海の塔というところに祭られています。

 彼は、日記を残していて、その日記の中に、オダさんと書いてあるんですが、太田守徳さんを殺害したことをちゃんと自分で書いています。だから、日本軍が沖縄の住民を殺す証拠を唯一、日記に残したのが武下少尉なんです。この人が、なぜ沖縄県民を殺した武下少尉が祀られているのか、最初は意味が分かりませんでした。そこから、また、ずっと今帰仁に通って、いろいろな話を聞いていくわけです。

 確かに、1944年に日本軍が入ってきたときは、もう連戦連勝の輝かしい日本軍だと聞かされているので、沖縄県民はみんな大歓迎しました。どんな協力でもしました。軍と住民の蜜月は確かにあったわけです。ですから、地元の女性たちも、とても軍隊を支えていったんです。でも、その後、やはり裏切られていく。

 では、戦後、何で観音様にまでなったのか。その後、この戦争を引きずっている元兵隊や遺族たちが、ずっと足しげく沖縄に通ってくるわけです。この苦い経験を、どうやって県内、県外の当事者たちが、戦後乗り越えていったのかという第2幕が存在するわけです。


狂ったシステムが再起動してしまわないか、私たちは目を光らせていないといけない

 その虐殺に関わってしまって、名前が知れている人を3人、「虐殺者たちの肖像」という章がありますけれども、私は深追いをしました。もちろん全員亡くなっています。

 結論から言うと、誰も鬼ではなかったんです。沖縄県民に牙をむくつもりで、沖縄戦に参加した日本兵など一人もいません。なのに、なぜ彼らは鬼になってしまったのかどういうシステムが彼らを鬼に変えていったのかということを、私たちは重々知らないといけないんです。そうでないと、本当に善意の、武下少尉なんていう方は、家族がつくった回顧録とかを見ると、とても爽やかで、非の打ちどころのない、学業もできる、文章も上手、優しくて、近くにいたら本当に友達になりたいタイプの方だったと思いますが、なぜ彼らが鬼になったのかその狂ったシステムが再起動してしまわないか、私たちは目を光らせていないといけないんです

 沖縄に住んでいると、この国が戦争に向かって、また加速度的に進んでいくという恐怖をまざまざと感じることができます。沖縄戦の悲鳴が、うめき声が、まだ収まっていない島に住みながら、もう一度ここを戦場にするような世の中には死んでもしてはいけない、ということでこの本を書きました。この本が、本当に日本国民全員に効く、次の戦争を止めるための最高のワクチンとして機能するように、これからも沖縄戦から次の戦争を止めていく、そういう活動を頑張っていきたいと思います。

 どうもありがとうございました。


プロフィール
三上智恵(みかみ ちえ)
ジャーナリスト、映画監督。毎日放送、琉球朝日放送でキャスターを務める傍らドキュメンタリーを制作。初監督映画「標的の村」(2013年)でキネマ旬報ベスト・テン文化映画部門1位他19の賞を受賞。フリーに転身後、映画「沖縄スパイ戦史」(大矢英代との共同監督作品、2018年)は、文化庁映画賞他8つの賞を受賞した。著書に『証言 沖縄スパイ戦史』(集英社新書)など。

本編114分に加え73分に及ぶ特典映像も収録した映画「沖縄スパイ戦史」DVD(紀伊國屋書店)も発売中。
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コメント
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●大矢英代さん《沖縄の状況がいかに理不尽かということも、今回のアメリカ大統領選から日本人は学ぶべきなのではないでしょうか》!

2021年01月20日 00時00分29秒 | Weblog

(2020年12月28日[月])
マガジン9のインタビュー記事【この人に聞きたい 大矢英代さんに聞いた:アメリカ大統領選から見えたこと】(https://maga9.jp/201202-2/)。

 《10年にわたって沖縄・八重山諸島を取材し、映画『沖縄スパイ戦史』を共同監督した大矢英代さんは、2年前、ジャーナリストとしての拠点をアメリカに移しました。11月初めのアメリカ大統領選を取材して見えてきたこと、感じたことは何だったのか。オンラインでお話をうかがいました》。
 《大矢 ただ、日本のマスコミの取材を受けたときにも、「今回の大統領選挙のキーワードは分断ではないか」と言われましたが、こちらではそうした見方はそれほど強くなかったと思います。というのも、アメリカ社会の分断はもうずっと前からあることで、今に始まったことではないと人々は認識しているからです。ただ、トランプがそれを助長させたのは事実だと思います》。

   『●戦争の記憶の継承…《大谷昭宏さんから伺った話。「戦争の記憶が
     風化する中、語り継ぐ一つの手段が見えるのでは」と水を向けられ…》
   『●沖縄イジメ、辺野古は破壊「損」の張本人が元最低の官房長官。
     そして今、さらなるデタラメ・ヒトデナシをやろうとしているオジサン
   『●《自民党右派の議員秘書にトランプの評価を問うと「戦争をしなかった
       大統領」と胸を張った。米国は分断という内戦を戦っていたのだ》
   『●「自衛隊派遣によって治安はかえって悪化する」、政府の政策に
     逆らえば…衆院テロ対策特別委員会委員は国会参考人の発言を打ち切り…
   『●《「真実を後世に伝えることが生き残った自分の義務」と心の傷を
     押して語り部を続け大きな足跡を残した》安里要江さんがお亡くなりに…

 以前も引用させていただいたが、コラム『政界地獄耳』の〆、《自民党右派の議員秘書にトランプの評価を問うと「戦争をしなかった大統領」と胸を張った。米国は分断という内戦を戦っていたのだ》と。一方、《分断という内戦》はニッポンではまだ続いている。7年8カ月にも及ぶアベ様の地獄のような政、それを全て《継承》する陰湿・悪質・強権化した大惨事アベ様政権の違法・違憲オジサン、スカスカオジサン。いつまで《分断という内戦》は続くのか…。利権漁りカースーオジサンの政、3カ月ほどが経過したが、COVID19対策にしろ、第2波高止まりの中、GoToで10月以降感染拡大をもたらし、市民には《自助》を求めるばかり。《勝負の3週間》でも、当然、感染拡大し、12・28まで《勝負》を続ける愚策。第3波のピークは見えず…。故意か、無意識か知らないが、社会の分断を煽っているとしか思えない。大矢さんの最後の御言葉、《「トランプひどい」と言うのなら、日本政府だって同じなのではないかということを自分自身に問い直してほしい。沖縄の状況がいかに理不尽かということも、今回のアメリカ大統領選から日本人は学ぶべきなのではないでしょうか》。

   『●「戦争のためにカメラを回しません。
      戦争のためにペンを持ちません。戦争のために輪転機を回しません」
    「マガジン9…【マガ9備忘録/その145)「沖縄のマスコミは“民”のもの」
     高江で語ったQAB大矢記者の心】」
    《沖縄のマスコミは、皆さん県民のものです。
     たみのものです。
     私たちには武器もありませんし、権力もありません。
     でも、伝え続けることはできます。抗い続けることはできます。
     その一歩一歩が、沖縄の歴史、そして本当の意味で
     この国の、この日本の民主主義を勝ち得る手段と信じて、
     これからも一生懸命、伝え続けていきたいと思っています。》

   『●『沖縄スパイ戦史』(三上智恵・大矢英代共同監督): 
           「「スパイリスト」…歪んだ論理が生み出す殺人」
   『●三上智恵・大矢英代監督映画『沖縄スパイ戦史』…
       「戦争というシステムに巻き込まれていった人たちの姿」

   『●「改めて身に迫るのは、軍隊というものが持つ
      狂気性」(高野孟さん)と、いまも続く沖縄での不条理の連鎖
    《マガジン9連載コラム「沖縄〈辺野古・高江〉撮影日誌」でおなじみの
     三上智恵さんが、大矢英代さんとの共同監督で制作した
     映画『沖縄スパイ戦史』が7月下旬からいよいよ公開…
     「軍隊は住民を守らない」…「戦争や軍隊の本質を伝えたい」》。

   『●『沖縄スパイ戦史』と《記憶の澱》…
     「護郷隊…中高生の年頃の少年たち…スパイと疑われた仲間の処刑…」

   『●自衛隊配備・ミサイル基地建設…『沖縄スパイ戦史』「自衛隊
              …昔と同じく住民を顧みない軍隊の本質」暴露
    「レイバーネット…のコラム【<木下昌明の映画の部屋 243回> 三上智恵
     大矢英代監督『沖縄スパイ戦史』/住民500人を死に追いやった犯罪】」

   『●沖縄デマによる市民の分断: 『沖縄スパイ戦史』の両監督…
               「反基地運動は中国のスパイ」デマも同根
   『●大矢英代さん「私たちは、過去の歴史からしか学べません…
               私たちが何を学ぶのかが今、問われている」①
   『●大矢英代さん「私たちは、過去の歴史からしか学べません…
               私たちが何を学ぶのかが今、問われている」②
   『●『沖縄スパイ戦史』: 「それまで『先生』と島の人たちに
           慕われていた山下が抜刀した」…「軍隊の本性」
   『●2019年度文化庁映画賞《文化記録映画部門の優秀賞》を受賞
               …三上智恵・大矢英代監督『沖縄スパイ戦史』
   『●《「遊撃戦遂行の為特に住民の懐柔利用は重要なる一手段にして
     我が手足の如く之を活用する」…住民同士を監視させ…批判している…》
   『●《「慰霊の日」を迎えた。…鉄血勤皇隊やひめゆり学徒隊の悲劇が
     伝わる一方、護郷隊の過酷な運命は長年ほとんど知られていなかった》
   『●「戦争マラリア」…いま再び自衛隊配備で先島諸島住民を分断し、
                 「戦争や軍隊の本質」の記憶を蘇らせる…
   『●《戦争体験の継承はどうして必要》? 大矢英代さん《二度と同じ手段で
      国家に殺されないように、生活を奪われないように、知恵をつけること》
   『●《8月ジャーナリズム》と《沖縄にとって戦争は遠い昔話ではない。
     沖縄は、今も一年中、戦争の延長線上を生きている》(大矢英代さん)

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https://maga9.jp/201202-2/

この人に聞きたい
大矢英代さんに聞いた:アメリカ大統領選から見えたこと
By マガジン9編集部 2020年12月2日

10年にわたって沖縄・八重山諸島を取材し、映画『沖縄スパイ戦史』を共同監督した大矢英代さんは、2年前、ジャーナリストとしての拠点をアメリカに移しました。11月初めのアメリカ大統領選を取材して見えてきたこと、感じたことは何だったのか。オンラインでお話をうかがいました。
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大統領選を取材して

──大矢さんは2018年から、アメリカ・カリフォルニア州北部のバークレーに拠点を置いて活動されていますね。今回のアメリカ大統領選は現地で取材されていたのですか?

大矢 大統領選の直前までは仕事で日本にいたのですが、投票締め切り日の数日前にアメリカに戻り、締め切り日の当日、11月3日はバークレーの投票所で取材していました。バイデンの当選確実が伝えられた7日は、バークレーに隣接するオークランドにいたのですが、あちこちから人々が道路に出てきてあふれ返り、次々に集まってきた車からも歓声が上がって、お祝いムードに満ちていたのが印象的でした。


──もともと、民主党支持者の多い地域なのですか。

大矢 バークレー、オークランド、サンフランシスコを含むカリフォルニア州北部のベイエリアは、アメリカでももっともリベラルといわれる地域ですね。この地域でトランプ支持者を見つけるのはかなり難しいと思います。CNNの報道によれば、トランプ得票率はバークレーとオークランドがあるアラメダ地域で17.7%。サンフランシスコ地域では12.7%。また、AppleやFacebookなどの巨大テック企業が本社を置くシリコンバレーを含むサン・ホセ地域やサン・マテオ地域は、トランプの減税政策の恩恵を受けてきたと指摘されている富裕層が暮らしていますが、この地域でさえもトランプ得票率は20.2%〜25.2%にとどまり、現職大統領は見事な惨敗を喫しました。
 アメリカって政治的にも社会的にも同じ価値観を持つ人同士が小さな「泡」の中に住んでいて、その泡が集まって一つの地域が構成されているという感じがします。テレビのニュースなどで選挙結果を見ていると、カリフォルニア州は青(民主党)一色で、赤(共和党)は存在しないように見えますが、よく見るとそこにも小さな青赤の泡が混在していて、全体を遠くから眺めたら青に見えるだけに過ぎない。実際、ベイエリアから車で1時間半〜2時間ほど内陸に行けば、トランプ得票率が50%〜60%の地域が南北に帯状に並んでいます。中でもネバダ州との州境にあるラッセン地域やモドック地域では、トランプ得票率は70%を超えました。それでも、それぞれの泡の中では皆同じような政治的主張を持っていて、反対意見に出合うことがないので、疑問も生じない。そんな印象を受けます。


──投票所で取材されたときも、トランプに投票したという人には出会いませんでしたか。

大矢 会いませんでしたね。日本では、マスメディアの出口調査は別にして、だれに投票したか聞かれても答えない人が多いですが、こちらでは皆胸を張って「バイデンに入れた」と答えてくれます。


──実はトランプ支持者なんだけれど表だってはそれを言わない、「隠れトランプ」といわれる人たちも一定数いると言われますが……。

大矢 それらしき人が一人だけいました。台湾出身の大学生で、誰に入れたかは答えたくない、と言っていました。でも、トランプ政権の4年間をどう評価するか聞いたら、トランプが移民規制を強化したことに触れて「移民政策は国防問題でもあるので、一般市民があれこれ口を出す問題ではない。トランプは国の責任として、しっかりやっていた」。それを聞いて「隠れトランプ」かな、と思いました。バークレーでは、トランプ支持だとはちょっと口に出せない雰囲気がありますから。


──他に印象的だったことはありますか。

大矢 バイデンに投票した人も、今後のアメリカに希望を抱いているといった明るい印象は感じられませんでした。バイデンが大統領になったからといって、アメリカが抱えている問題は簡単には解決しないだろう、トランプよりはましだけど……という感じの人が目立ちましたね。


──「問題」とは、たとえばどういうことでしょう。

大矢 特に黒人の場合は、警察による暴力を挙げる人が多かったですね。オークランドはもともと黒人コミュニティが多く、1960年代に急進的な黒人解放闘争組織であるブラックパンサー党が立ち上がった街なんですよ。これももともとは貧しい黒人たちのゲットーを警察の暴力から守ろうということで生まれたものでした。いわば、そのころからBLM(Black Lives Matter運動があったわけで、にもかかわらず今でも警察による暴力事件はなくなっていない。私がバークレーでインタビューをした大学生の黒人女性は「オバマ政権下でさえ警察による暴力、殺人事件はなくならなかった。たった一回の選挙で魔法のように社会が改善するなんて、そんなことは絶対にないと思う」と冷静に話していました。大統領が代わったからといって、簡単に解決する問題ではないことを、皆よく知っているのです。同時に、彼らにとっては最も切迫した命の問題なのだということを、あらためて知らされました。


分断を正当化したトランプ

──「トランプよりはましだけど」という言葉が出ましたが、今回の選挙そのものが、トランプ対バイデンというよりトランプ対反トランプの戦いに見えました。「バイデン当確」のお祭り騒ぎも、バイデンが当選してうれしいというよりも、とにかくトランプがやめることになってよかったという印象でしたね。

大矢 その通りです。「バイデン勝った!」より「トランプをやっつけたぞ!」という声のほうが断然大きかった。選挙期間中も「バイデン好き!」よりも、「くそ食らえトランプ!」といった、トランプに対する激しい罵倒表現のほうをもっぱら耳にしました。
 とにかくトランプを政権からおろしたいという「アンチ・トランプ」を理由に人々がつながって、それが大きなうねりになり、バイデンの勝利につながった。いわばトランプに対する怒りや憎しみという負のエネルギーがひとつになって勝ったと言えるでしょう。ですからトランプが政権から降りた後、反トランプという旗印を失った今後はどうなっていくのだろうという懸念もあります。
 バイデンは11月7日の勝利宣言で「分断から融和へ」というメッセージを発しましたが、その中で「アメリカのデモナイゼーション(悪魔化)した時代を終わりにしよう」と述べました。しかし実際、今回の選挙でトランプは7,389万票を取得しています。前回2016年の選挙での自身の得票数よりも1,000万票も増加しているのです。人々はなぜトランプを支持し続けるのか、その根源的な原因を理解することなしに、トランプの時代を「悪魔化の時代」と呼ぶのであれば、結局は新たな分断をつくり出していることにならないかトランプがやってきたことと変わらないのではないかと、ちょっと気になりました。


──アメリカの分断はそれほど深いということでしょうか。

大矢 ただ、日本のマスコミの取材を受けたときにも、「今回の大統領選挙のキーワードは分断ではないか」と言われましたが、こちらではそうした見方はそれほど強くなかったと思います。
 というのも、アメリカ社会の分断はもうずっと前からあることで、今に始まったことではないと人々は認識しているからです。ただ、トランプがそれを助長させたのは事実だと思います。
 「アメリカ社会には根深い分断がある。それはよくないことだからなんとか克服して国民的な融和をめざそうという共通認識を、トランプはひっくり返してしまった社会に勝者と敗者がいるのは当たり前、分断や格差があって当然、それで何が悪いと開き直ってしまった大統領権限を使って分断を正当化したことが、トランプ政権が残した最大の禍根だと思います。


トランプはなぜ支持されるのか

──バイデンが、というか「反トランプ」が勝利した最大の理由は何でしょうか。

大矢 2020年は、アメリカの全国民が当事者にならざるを得ない大きな問題が二つ起きました。一つは新型コロナウイルスの感染拡大、もう一つが警察による暴力に注目が集まったことです。この二つにトランプがうまく対応できなかったという認識が、反トランプに人々が結集する原動力になったのだと思います。逆に言えば、もしトランプがコロナ対策に成功していたら、勝っていたかもしれません。


──日本から見ていると、トランプはツイッターなどで平気でフェイクやデマを飛ばしたり、政敵を罵倒したりと、めちゃくちゃなことをやっているように思えます。そのトランプが、それでも一定の支持を集めるのはどうしてなのでしょう。

大矢 彼は悪の権化みたいに言われることがありますが、それでも一応は民主的選挙で選ばれた大統領です。先ほども触れたように、今回も決してバイデン圧勝でなく、有権者の半分近くがトランプに投票しています。なぜ彼がそこまで支持されるのか、その社会的背景を精査することこそが大事だと痛感しています。
 私は、テクノロジーの発展と共に、人々が自分の欲しい情報だけを見て、判断して行動するのが当たり前の社会になってしまったことが、トランプという政治家を生み出したのではないかと思っています。インターネットが発達して、検索サイトに知りたいキーワードを入れればいくらでも情報が出てくるけれど、それを全部見ることはなく、最初に出てきた記事だけを読んで、それを信じてしまう。これだけじゃわからない、ほかの意見も調べてみようという視点を持たない傾向が加速している気がします。
 そこからさらに進んで、トランプは自分に批判的なメディアをフェイクニュースだと言って、「敵」に認定するということを繰り返してきました。そういった大統領の態度を見て、国民もまた「自分の好きなものだけを見て信じて行動してもいいんだ」と思うようになってしまったのではないでしょうか。
 私たちジャーナリストにとっては、事実に基づいた報道というのが大前提だったのに、この先のアメリカは、嘘でもフェイクでも、事実かどうかなんてどうでもいいという社会になってしまうのではないかと危惧しています。


──同じような傾向は、日本にもあると感じます。

大矢 日本でも、沖縄の基地建設反対運動について中国の手先だ」「お金をもらっている」といったフェイクが飛び交っていますよね。それを言い立てる人にとっては、事実かどうかなんてどうでもいいのだと思いますそのフェイクを信じることで、自分の沖縄に対する無関心を免罪しているとしか思えません
 同時に、そうした沖縄ヘイト」の背景には、いじめられる側には入りたくない、自分は「強い側」にいるという高揚感を持っていたいという、集団いじめのような心理も働いているのではないかという気がします。これも世界中で起きていることだといえるのではないでしょうか。


──また、バイデンの大統領就任が確実になったことで、非白人で女性のカマラ・ハリスが副大統領になるであろうことも注目されています。非常に画期的なことだと思うのですが、大矢さんはどう受け止められていますか。

大矢 おっしゃるとおり、女性であり有色人種であるハリスが副大統領になるのは、新たな歴史の第一歩です。私が取材した人々からも、初めての女性副大統領誕生に期待するという声が、特に白人女性から聞かれました。
 彼女は勝利スピーチで、「私は、最初の女性副大統領かもしれないが、最後ではない」と、少女たちに自らの可能性を追求するよう励ましました。アメリカは可能性に満ちた国で誰でも夢を叶えることができるというメッセージが、アメリカ人の魂に訴える力には計り知れないものがあります。
 その上で私があえて言いたいのは、女性だから、有色人種だからというだけで無条件に応援するのは違うだろうということです。
 たとえば近年、アメリカでは女も軍隊に入って国を支えよう、強い国を作ろうといった、女性ミリタリズムともいうべき新しい潮流も出てきています。昨年新設されたアメリカ宇宙軍は、コマーシャルで若い女性を主人公として「私が歴史をつくる、それが未来へと繋がる」というメッセージを発しており、このコマーシャルはオンライン動画配信サイトなどで頻繁に流れています。女性だからいいというのではなくハリスの政策がどういうものなのかしっかり見極める必要があるでしょう。彼女が、世界中に軍隊を送って戦争することで強い国を目指すというアメリカの伝統的価値観を持った女性ないことをひたすら願っています
 そして日本に対しても、これまでの対米追従の軍事政策を見直してもらいたい少しでも沖縄の負担を減らし、日本が主権国家として独立できるような政策をとって欲しいと願っています


私たちが考えるべきことは

──すべての州で開票が終了した後も、トランプは「不正選挙」を言いつのり、現時点でいまだ「敗北宣言」をしていません。平和的な政権移行ができるのかどうか、危ぶむ声もありますが……。

大矢 万が一、このまま「敗北宣言」が行われないままであれば、トランプ退陣を求める大規模なデモが起こり、そのカウンターとしてトランプを支持する武装勢力が乗り込んでくる……といったことはあり得ると思います。民主的な選挙で決まった結果なのに、スムースに政権移行出来なくて暴動が起きるのではと不安が広がっているなんて、民主主義先進国とは思えませんよね


──「不正選挙だ」という主張に対しては、一般の人々はどう見ているのでしょう? 

大矢 どのメディアを見ているか、どの情報を信じているかによってかなり異なります。バイデン支持者は、何言ってるんだ、いい加減にしろという反応ですし、トランプ支持者は、証拠はなくとも裏に何かある、誰かが操作していると言いつのっています。ただ、いずれトランプが引き下がるとしても、ずっと不正選挙だとかだまされたと言い続けることで、支持者はそれを真実として信じ込んでしまうことになるでしょう。バイデンが大統領になってもその思い込みは消えず、影響は長引くと思います。
 一方、反トランプの側からは、トランプを「国家冒涜罪で逮捕しろ」といった声もあがっています。ただこれは、法的根拠に基づいてというよりは、とにかくトランプが悪い、嫌いだから逮捕しろ、と言っているように聞こえます。
 選挙前、バイデンとトランプのテレビ討論がありましたが、まるで小学生のけんかでしたよね。お互いを罵倒するばかりで、ディスカッションになっていない。本来アメリカには多様な意見を受け入れる土壌があったはずなのに、相手の意見を聞く耳をまったく持たない者同士のののしりあいに終始していました。
 トランプを逮捕しろという声もそれと同じように、単なる「好き嫌い」の世界になっているようで、気にかかっています。


──その他、今後予測されることはありますか。

大矢 トランプ大統領が残された任期の中で、やけくそになってとんでもない大統領令を出すのではないかということも心配です。たとえば中東のどこかを空爆して、「悪党をやっつけてやったぜ」と力を見せつける、それだけのために軍事行動を起こすようなことはあり得るかもしれない、と思います。
 トランプが怖いのは、何をやるかその瞬間まで全く読めないことです。たとえば9・11後のブッシュのイラク攻撃は、そこに至る過程がカウントダウンで読めました。1週間後には戦争が始まるだろうと、誰の目にも明らかだった。けれどトランプは半径2メートルくらいの側近とだけ相談して、いきなりミサイル打ち込むとか、唐突に実行して国民には事後報告、というパターンなんですよ。それが怖い。
 日本人が考えなければいけないのは、万が一そうなった時に日本はこれまでのように無条件にアメリカに付き従うのかということです。自分たちはどうするべきなのか、責任を持って判断しなければならない。トランプの無謀ぶりを語る時には、常に「じゃあ日本はどうする」ということを、主権国家として考えなければならないと思います。


──日本の私たちがアメリカ大統領選を受けて考えるべきは、そこでしょうか。

大矢 もう一つ、トランプの「不正投票」という主張に対し、民主党支持者が「開票結果がすべて」だというプラカードを出しているのを見て、思ったことがあります。
 日本でも、同じように「選挙結果に従え」といってトランプを批判する声がありますよね。でも、そう主張するのであれば沖縄はどうなのだろう、と思ったのです。
 沖縄の人々はこれまで、辺野古に新基地はいらないという意思を、何回も選挙で示してきましたよね選挙結果がすべてというのが民主主義の基本だというのなら、それを無視し続ける日本政府とはいったいなんなのでしょう。「トランプひどい」と言うのなら、日本政府だって同じなのではないかということを自分自身に問い直してほしい。沖縄の状況がいかに理不尽かということも、今回のアメリカ大統領選から日本人は学ぶべきなのではないでしょうか

(構成・写真/マガジン9編集部)



おおや・はなよ 1987年、千葉県出身。琉球朝日放送記者を経て、フリージャーナリスト、映画監督。ドキュメンタリー映画『沖縄スパイ戦史』(2018年・三上智恵との共同監督)で文化庁映画賞優秀賞、第92回キネマ旬報ベスト・テン文化映画部門1位など多数受賞。2020年2月、沖縄・八重山諸島の知られざる沖縄戦「戦争マラリア」を追った10年間の取材記録・ルポ『沖縄「戦争マラリア」-強制疎開死3600人の真相に迫る』(あけび書房)を出版。本作で第7回山本美香記念国際ジャーナリスト賞・奨励賞受賞。2018年フルブライト 奨学金制度で渡米。以降、米国を拠点に軍隊・国家の構造的暴力をテーマに取材を続ける。早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース修士課程修了(2012年)。現在、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員。ツイッター:@oya_hanayo ウェブサイト:https://hanayooya.themedia.jp/
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コメント
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●《8月ジャーナリズム》と《沖縄にとって戦争は遠い昔話ではない。沖縄は、今も一年中、戦争の延長線上を生きている》(大矢英代さん)

2020年09月14日 00時00分57秒 | Weblog


『論座』の記事【「6・23」で終わらぬ沖縄戦 絶えぬマラリア死、実態追う/大矢英代】(https://webronza.asahi.com/journalism/articles/2020082500003.html?utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter)。

 《「8月ジャーナリズム」と呼ばれるものが存在することなど、私は知らなかったのだ。…そして、被害を受けた土地というだけでなく、戦争のために使われ続ける沖縄の姿がある。これまで沖縄からベトナムイラクアフガン戦場へと米軍が出撃したように。沖縄にとって戦争は遠い昔話ではない沖縄は、今も一年中、戦争の延長線上を生きている》。

   『●斎藤貴男さんの不安…《財界人や自民党の政治家たちが、いつか近場で、
       またああいう戦争を始めてほしい…と願っているのではないか、と》
    《休戦までの3年余で死者300万人を出した戦闘そのものについても、
     すでに憲法9条が施行されていた当時の日本は、占領者としての
     米軍の出撃基地となり、数千人が戦場に出動して、輸送や上陸作戦に
     備えた掃海作業などに従事した》

 『報道特集』(2020年8月29日)にて金平茂紀さんの言葉、「…あとは、沖縄ですよね。歴代の政権の中で沖縄に対して最も冷淡な政権だった」。アベ様や最低の官房長官、その取り巻き連中による沖縄イジメ沖縄差別な7年8カ月。

 さて、『論座』に掲載されていた、映画『沖縄スパイ戦史』(2018年、三上智恵さんとの共同監督)の監督で、「沖縄『戦争マラリア』 強制疎開死3600人の真相に迫る」(あけび書房)の著者・大矢英代さんによる長文の論考。

   『●2019年度文化庁映画賞《文化記録映画部門の優秀賞》を受賞
               …三上智恵・大矢英代監督『沖縄スパイ戦史』
   『●《「遊撃戦遂行の為特に住民の懐柔利用は重要なる一手段にして
     我が手足の如く之を活用する」…住民同士を監視させ…批判している…》
   『●《「慰霊の日」を迎えた。…鉄血勤皇隊やひめゆり学徒隊の悲劇が
     伝わる一方、護郷隊の過酷な運命は長年ほとんど知られていなかった》
   『●「戦争マラリア」…いま再び自衛隊配備で先島諸島住民を分断し、
                 「戦争や軍隊の本質」の記憶を蘇らせる…
   『●《戦争体験の継承はどうして必要》? 大矢英代さん《二度と同じ手段で
      国家に殺されないように、生活を奪われないように、知恵をつけること》

 「戦争や軍隊の本質」の記憶。沖縄での番犬様の居座りや、嬉々として沖縄を差し出すアベ様や最低の官房長官ら。一方、島嶼部では自衛隊が〝防波堤〟や〝標的〟に。《軍隊は人を守らない大田昌秀さん)》、《軍隊は住民を守らない》《基地を置くから戦争が起こる島袋文子さん)》、《軍隊は同じことをするし、住民も協力するし、軍隊は住民をまた殺すことになる三上智恵さん)》…。
 《戦争体験の継承はどうして必要》なのか? 大矢英代さんは、《二度と同じ手段で国家に殺されないように、生活を奪われないように、知恵をつけること》。《「負の歴史こそが、本物の、騙されない強い未来を引き寄せてくれる力につながるということを、この人たちが私に信じさせてくれた」と著者三上智恵は書いている》。

 この長い論考の結びの言葉《軍隊はなぜ住民を守らなかったのか果たして住民の命を守れる軍隊など存在するのか。何が山下のような軍人を作り出したのか。住民はどのように戦争に巻き込まれ、命令に従ったのか。今こそ、戦争マラリアの歴史から学び、現代社会との共通点をあぶり出さねばならない。それが戦後75年の戦争報道の使命だ。理由はひとつ。二度と同じ手段で騙されないよう知恵をつけるためだ。それこそが本当の意味で、戦争を語り継ぐということだと思う》。

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https://webronza.asahi.com/journalism/articles/2020082500003.html?utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter

「6・23」で終わらぬ沖縄戦
絶えぬマラリア死、実態追う

大矢英代 ジャーナリスト、ドキュメンタリー監督
2020年08月28日
沖縄スパイ戦史|沖縄戦|8月ジャーナリズム


■今も戦争の延長線上に

 「大矢さん、あなたの番組企画案は沖縄戦についてですよね? なんで今回の会議に持ってきたんですか?」

 2015年11月、テレビ朝日で開かれたドキュメンタリー番組会議でのこと。プロデューサーは、意味が分からないという表情で私に問いかけた。当時、沖縄の系列局で報道記者をしていた私は、かねて構想を温めていた番組の全国放送枠を求め、渾身の企画書を抱えて会議に望んでいた。記者4年目の私にとって、初めてとなる番組企画。主人公は沖縄戦に従軍した96歳の元日本兵だ。番組内容を説明した直後、プロデューサーから開口一番に問われたのが冒頭の質問だった。私は質問の趣旨が分からず困惑した。企画案のねらいが不明瞭だったのかもしれない。改めて、体験者の高齢化が叫ばれる今、どうしても証言を伝え残したいと強調した。

 「いや、それは分かるんですけど……」とプロデューサーは言った。

 「今回の会議では冬季の番組ラインナップを決めるんですよ。戦争の番組なら夏ですよね?」

 企画案はあえなくボツになった。内容に懸念があるならまだしも、季節がずれているという理由で不採用になるとは想像もしていなかった。「8月ジャーナリズム」と呼ばれるものが存在することなど、私は知らなかったのだ。

 それは、沖縄メディアと本土メディアの間に横たわる戦争への意識の違いを露骨に表していた。沖縄メディアにとって、戦争は避けることのできない永久のテーマだからだ。

 例えば、米軍基地問題の取材のためには、原点である沖縄戦の歴史を学ばねばならない。沖縄の子どもの貧困率は29.9%(沖縄県・2016年)で、全国平均の約2倍といわれているが、深刻な貧困や社会格差の取材をすれば、県民の生活を破壊し尽くした沖縄戦と米軍統治からの社会保障の遅れの問題に行き着く。戦後70年以上が経って戦争トラウマ(PTSD)を発症し、苦しんでいる戦争体験者たちの取材では、彼らにとって「終戦」など決して訪れないのだということを知った。

 今年4月には那覇空港の滑走路近くで不発弾3発が見つかった。沖縄が日本に復帰した1972年から2018年までに処理された不発弾は、3万8003件(沖縄県・平成30年版消防防災年報)に上り、1年間で平均約800件もの不発弾処理が行われていることになる。そして、被害を受けた土地というだけでなく、戦争のために使われ続ける沖縄の姿がある。これまで沖縄からベトナムイラクアフガン戦場へと米軍が出撃したように。

 沖縄にとって戦争は遠い昔話ではない沖縄は、今も一年中、戦争の延長線上を生きている

 その上で指摘したい。沖縄にも本土の「8月ジャーナリズム」なるものが確かに存在するということだ。6月23日の慰霊の日である。毎年6月が近づくと慰霊の日に向けた特集が組まれ、6月23日には県内メディアは総力をあげて取材にあたる。早朝、糸満市摩文仁の平和祈念公園の朝日から始まり、戦争体験者や遺族たちによる平和行進の取材、式典の中継と、報道は沖縄戦一色になる。

 私は5年間、毎年慰霊の日の取材に全力を投じながらも、心のどこかで一抹の疑問を抱いていた。それは私が記者になる以前の学生時代、「6月23日では終わらなかった沖縄戦」を取材してきたからだろう。「もうひとつの沖縄戦」とも呼ばれる八重山諸島の「戦争マラリア」である。


■地上戦なき島々で、なぜ

 その朝、私は手に取った新聞に聞きなれない言葉を見つけた。「戦争マラリア」。初めて聞く言葉だった。

 今から11年前の09年8月。終戦記念日の翌朝、私は石垣島の地元新聞社・八重山毎日新聞社の編集部にいた。将来のジャーナリストを目指して早稲田大学ジャーナリズム大学院で学んでいた私は、夏休みの間、新聞記者のインターンシップをしていた。

 千葉県で生まれ育った私にとって、終戦記念日は広島・長崎など戦争の犠牲者を追悼する日であり、当然、地元メディアも同様のニュースを伝えるものだと思っていた。ところが、実際に伝えていたのは、戦争マラリア犠牲者の慰霊祭だった。

 戦争マラリアは、沖縄戦最中の八重山諸島(波照間島、石垣島、黒島などの離島からなる日本最南端の地域)で起きた。当時、八重山諸島に駐留していた日本軍は、「米軍上陸」を口実に、軍命により一般住民たちを山間部のジャングル地帯へ強制的に移住させた。熱病・マラリアの有病地として、昔から住民たちに恐れられてきた場所だった。粗末な丸太小屋をたてて2~5カ月間の移住生活を続けた住民たちだったが、医療も食糧も乏しい中で、次々とマラリア蚊の犠牲になり、3600人以上が死亡した。

 戦争マラリアを初めて知った当時の私は衝撃を受けた。米軍の上陸も地上戦もなかった島々で、大勢の一般住民が犠牲になったこと。なによりも、相手国の軍隊ではなく、自国軍によって犠牲がもたらされたこと。そして、これほど重大な歴史を22歳になるまで知らなかった自分自身の無知を恥じた。体験者から直接、真実を聞きたいと思った。彼らの肉声を伝え残せるのは、今が最後の機会だ。私は証言をドキュメンタリー映像として記録することに決め、ビデオカメラを抱えて石垣島で取材をはじめた。無論、家族が犠牲になったつらい体験を、突然やってきた若僧に気軽に話してくれる体験者などいなかった。口を開いてくれた体験者たちも「本当は言いたくないんだけど……」と苦しみながら、ときに涙しながら、強制移住の記憶を語ってくれた。取材は体験者たちの傷口を開くことなのだと知ったとき、本土と八重山を短期間で行き来する「パラシュート取材」を続けてきた自分を反省した。本腰を入れて取材をしようと決意し、大学院に休学届を出した。向かったのは日本最南端の島・波照間。戦争マラリアで人口の3分の1(552人)が死亡し、最も大きな被害を受けた島だ

 ここで私は8カ月間を過ごした。自宅に受け入れてくれたのは、サトウキビ農家の浦仲浩さん、孝子さん夫妻だった。孝子さんは13歳で戦争マラリアを体験し、家族11人のうち9人を失った。唯一、共に生き残った妹(当時9歳)と2人で力を合わせて戦後を生きてきた。体験者と共同生活をしながら、一緒にサトウキビ畑で働き、少しずつ心を開いてくれる姿をカメラに記録した。

 「戦争体験者」「証言者」と呼んでいた人たちを、やがて「おじい、おばあ」と呼ぶようになり、さらに島の言葉「ベスマムニ」で「ブヤー(おじい)」「パー(おばあ)」と呼ぶようになった頃、「ウランゲーヌアマンタマ(浦仲家の女の子)」と、私は島の人たちから呼ばれるようになった。


■「慰霊の日」報道に疑問

 11年6月、波照間にきて半年が過ぎた頃、慰霊の日がやってきた。私は朝からビデオカメラを回した。孝子おばあは、いつも通り朝6時過ぎに起きて、庭の草むしりをしていた。昼には好物の氷ぜんざいを頬張る。いつもと何も変わらない淡々とした日常があった。

 孝子おばあは、慰霊祭に一度しか参列したことがないという。考えてみれば、当然のことである。戦時中の6月23日、住民たちはまだ強制移住先のジャングルの中にいた。猛威をふるうマラリアで次々と絶命し、終戦後の9月になっても死者は後を絶たなかった。沖縄本島で牛島満司令官らが自決しても、それは住民たちにはなんら関係のないことだった。

 戦争マラリアの取材で私が見つめたのは、6月23日で終止符が打たれた沖縄戦とは全く異なる戦争の実態だった。沖縄戦=沖縄本島での地上戦という一般的なイメージからこぼれ落ちてきた戦争マラリアの歴史は、「もうひとつの」「第二の」などと呼ばれることで、沖縄戦と区別されてきた。単なる戦病死と勘違いされることも多かった。多くの体験者たちが「自分たちはつらかったけど、それでも沖縄本島の人たちよりは、まだよかったんだ。つらいなんて言っちゃいけない」と心に鍵をかけ、苦しみを語れずに戦後を生きてきた。そんな体験者たちに出会うたびに、学生時代の私は、慰霊の日を戦争・平和報道のピークとする沖縄の報道のあり方に疑問を抱いた。地上戦がなかった島々で、自国軍によって甚大な被害を受けた一般住民の存在こそ、沖縄戦の最暗部の歴史だからだ

 17年、私はフリーランスに転身し、翌年7月、ドキュメンタリー映画「沖縄スパイ戦史」(三上智恵氏との共同監督)を公開した。テーマは沖縄戦の「裏の戦争」だ。地上戦の背後で活動していた日本軍のスパイ・陸軍中野学校卒業生たちによる作戦の実態を描いた。陸軍中野学校とは、ゲリラ戦や情報戦を専門とする特殊教育をおこなっていた極秘機関である。

 彼らによって訓練され、銃を持って米軍と戦わせられた少年兵・護郷隊。「米軍のスパイではないか」と疑心暗鬼になり、互いを監視し、傷つけあった住民たち。そして日本軍に故郷を追われてマラリアで絶命した八重山の人々日本軍がどのように住民たちを作戦に利用し、時に武器を持って戦わせ、そして住民たちが軍にとって「不都合な存在」となった時、一体何が起きたのか。戦後これまで語られてこなかった沖縄戦の最も深い闇を「スパイ」というキーワードで描いた。

 なぜ今、私は沖縄戦を取材するのか。それは他でもない、現代社会を読み解くための鍵が埋もれているからである。私にとって、それはある男の姿を追うことで明確になっていった。波照間の強制移住を指揮した山下虎雄である。


■優しい顔で死を強いた

 「とっても優しい人だったよ。子どもたちはみんな『先生! 先生!』と呼んで親しんでいた。おもちゃの飛行機も作ってくれたよ。教えるのも上手だったさ」

 「非常にユーモアのある人でね、フラダンスとかいって、僕らが見たこともないような面白い踊りをして笑わせてくれたよ」

 波照間島の体験者の多くは、幼い頃に山下虎雄と過ごした楽しい日々を今もはっきりと覚えている。

     (映画「沖縄スパイ戦史」から ©2018「沖縄スパイ戦史」製作委員会)

 山下が青年学校指導員として島にやってきたのは、沖縄戦が始まる約3カ月前だった。教員になりたての若者で、身長180センチほどのがっしりとした体格。色白の顔。住民たちは、遠路遥々やってきた「ヤマトゥーピトゥー(大和人=日本人)」の青年を盛大な歓迎会を開いてもてなし、手厚く世話をした。

 山下先生の来島から2カ月後、沖縄本島で地上戦が始まった頃、山下先生が豹変する。住民たちに「西表島へ移住せよ」と迫ったのだ。波照間と海を隔てた対岸約20キロにある西表島は、全土がマラリアの有病地だった。移住を拒む住民たちに対し、山下先生は軍刀を振りかざし、「これは天皇陛下の命令だ。聞かない奴はぶった切る」と脅した。故郷を追い出された住民たちはマラリアに斃れ、仮埋葬地となった砂浜は足の踏み場もないほど遺体であふれ返った。

 青年学校指導員・山下虎雄の正体は、陸軍中野学校の卒業生だった。

 「殺してやりたいくらい憎い。あの人のせいで、みんな死んでしまったのに……」

 波照間の戦争体験者たちは、戦後75年となる今も、山下への怒りを抱えていた。家族を失った当事者ならば当然のことだろう。

 戦争マラリア取材を始めた頃の私は23歳。波照間に潜伏していた頃の山下と皮肉にも同じ年頃だった。果たして、彼は狂気の軍人だったのだろうか。彼を強制移住に駆り立てたのは、何だったのか。


■なぜ残虐行為ができるのか

 私たちは幼少期から「人を傷つけてはいけない」と倫理観を教わり育つ。にもかかわらず、なぜ軍人になると残虐行為ができるようになるのか。軍隊は人間をどう変えるのか

 疑問を抱えて、米国ドレクセル大学のエリック・ジルマー教授を取材した。軍隊における人間心理を研究するジルマー教授は、「人間を殺人や破壊行為ができる『マシーン』に作り替えるためのキーワード」として三つの指摘をした。

 ①命令の存在。「たとえどんなに残虐な行為だとしても、命令があればできてしまう」とジルマー教授は言う。

 ②残虐行為を集団で行うこと。初年兵訓練では「私=I」という主語が禁止されているという。個を奪い、命令にだけ従うロボットに変えることで、一人前の兵士が出来上がる。

 ③行為を細分化すること。例えば殺人という目的を果たすために、兵士Aは弾を用意し、兵士Bは弾を銃に詰め、兵士Cは引き金を引く。残虐行為を細分化することで個々人の倫理は薄れる。

 山下の行為は、これらにぴたりと当てはまる。

 まず命令の存在について、強制移住は山下の単独行動ではなく、日本軍の作戦計画に基づくものだった。

 沖縄戦開戦の4カ月前、1944年11月、陸軍省と海軍省は、全国の沿岸警備の方針を定めた「沿岸警備計画設定上ノ基準」を沖縄をはじめ全国の軍司令官らに通達した。その中で八重山地域は「主要警備ノ島嶼」と位置づけられ、「在住民の総力を結集して直接戦力化し、軍と一体となり国土防衛にあたるべき組織態勢を確立強化する」とされた。これに基づき、軍事作戦の円滑化のための官民の協力体制づくりと、非常事態における住民の移住を含めた住民対策が計画された。最前線に住民がいては戦闘の邪魔である。ましてや住民が敵の捕虜となれば日本軍の配置や軍施設の情報などが敵に漏洩してしまう。そう懸念した日本軍は、基地建設や食糧生産、戦闘に住民を利用すると同時に、情報漏洩を恐れて住民を監視下におくという矛盾に陥っていく

 45年1月1日付で作成された日本軍の作戦計画書「南西諸島守備大綱」では、住民の移住についてこう取り決められた。

 「直接的戦闘に参加できない老人や子どもなどは、事前に近くの島、もしくは島内の適切な場所に移住させること。これは日本軍の作戦を容易に遂行するため、また混乱を防止し、被害を少なくするためである」

 住民の移住先は「日本軍が配備されている島に限る」とされた。波照間から最も近い島は、マラリア有病地の西表島だった。


■山下が担った秘密作戦

 ジルマー教授が指摘した集団と細分化についても、山下の行動に当てはまる。実は、沖縄戦に送り込まれた陸軍中野学校卒業生は、山下だけではない。総勢42人にも上っていた。彼らの任務は遊撃戦(ゲリラ戦)の展開。沖縄の正規軍である第32軍が壊滅したあと、山間部にこもり、「皇土防衛のために、一日でも長く沖縄で米軍を足止めせよ」という大本営の「沖縄捨て石作戦」を遂行することだった。

 45年6月23日は、牛島司令官らの自決日であり、沖縄戦の組織的終結日とされている。しかし、正規軍壊滅後の作戦遂行を任務とする中野学校卒業生たちにとって、この日は本来の任務開始日に過ぎず、最後の一兵に至るまで戦い抜くという終わりなき沖縄戦の幕開けだった。そのために地元の少年たちでゲリラ部隊「護郷隊」を組織し、米軍との戦闘や、米軍戦車に爆弾を背負って体当たりする自爆作戦を取らせるなど、子どもたちを酷い作戦へと巻き込んでいった。

 その中で「離島残置諜者」と呼ばれていた山下の任務は、「民間人の立場で情報を収集し、万が一、米軍が上陸してきた場合、それまで訓練していた住民を戦闘員と仕立て上げ、遊撃戦を行うことだった。第32軍は、そのために県知事島田叡と交渉し、彼らに正式な国民学校指導員と青年学校指導員の辞令書を出させ、偽名を使い、各島々へ潜伏させたのである」(『陸軍中野学校と沖縄戦』川満彰著、吉川弘文館、2018年)

 山下が優しい先生を演じて、住民の信頼を得たのは、作戦遂行のために住民を懐柔する必要があったからである。

 山下は、波照間の子どもたちで「挺身隊」を組織し、手榴弾の使い方を指導した。しかし、それは「米軍との戦闘のためだけではなかった」と、元挺身隊員の銘苅進さん(取材当時87歳)は語った。

 「自決。手榴弾で死ねなかった時のために、『喉元刺しなさい』と山下から短刀を持たされていた。住民が米軍に捕まったらスパイになるからですよ。山下は結局、日本軍のことを米軍に聞き取りされると思ったんじゃないか」

 取材を進めるごとに見えてきたのは、徹底的に軍の作戦と命令に従い、与えられた任務を着実に遂行したエリート軍人の姿だった。

 しかし、疑問は残る。人間は本当にロボットになりきれるのだろうか。一抹の罪悪感も疑問も抱かなかったのだろうか。


■嘘で固められた正義

 私は2018年秋から取材拠点を米国に移した。プロジェクトのひとつとして元米兵たちの取材を続けている。

 「突然『イラクへ行け』と命令が下った。なぜイラクに攻め込むのか、分からなかった」

 そう語ったのは、元海兵隊員のカイル・ロジャースさん(36)だ。04年、沖縄のキャンプ・ハンセンからイラク・ファルージャに出撃した。

 「世界地図で米軍の配置図を見ると、中東には米軍基地がほとんどない。米軍が行かなければ、どこかの国が基地を造ってしまう。ならば世界一優秀な僕らが行くべきだ。そんな理由づけを自分なりに考えて、納得しようとした」

     (イラク・ファルージャで、米軍の発砲で14人が死亡した事件に
      抗議する市民を監視する米兵=2003年4月)

 出撃前、沖縄ではマシンガンやハンヴィー(軍用車両)などの準備に追われた。「生きては帰れない」「どうせ死ぬんだから」と浴びるように酒を飲んだ。イラクでは、米軍司令部から受信した情報や命令をチームに伝えるラジオ・オペレーターとしての任務についた。

 「ハンヴィーで街中を巡回中、僕らを狙って砲撃が始まったら、敵が逃げ込んだ民家に乗り込んで殺した。怪しい人物は拘束して尋問部隊に引き渡す。でも大抵は容赦なく殺した。僕らはまるで『リトル・ブルドッグ』だった。暴れまくって、たくさんの犯罪をやった。たばこがなくなったら、近くの商店を襲撃した。米軍ヘリは、民間地上空を低空飛行しながらヘビーメタルを大音量で流していた。なんのためって? ただ、イラク人を怖がらせるためさ」

 退役後、PTSDを発症し、退役軍人病院に1年間入院した。今も銃撃事件のニュースが流れるたびに、「次は自分がやってしまうのではないか」という恐怖に苛まれるという。

 カイルさんをはじめ、これまで30人ほどの元兵士たちを取材した。気がついたのは、全ての米兵たちが米国の正義を信じて戦場に向かった訳ではなかったということだ。むしろ多くの兵士たちが、対テロ戦争に疑問を持っていたにもかかわらず、様々な理由づけを考えて、なんとか自分を納得させようとしていた。そして自分が信じた正義が嘘で塗り固められたものだったと気がついたとき、彼らは心を病み、PTSDを発症していく。ジルマー教授が指摘した「命令」「集団」「細分化」がそろってもなお、兵士たちには捨て去ることのできない人間性が残されているように私には思えた。


■民衆の弱さを問う

 「戦争になると、国家は『国』というものを大事にして『民』を犠牲にする。でも『国』は『民』があって初めて成り立つものでしょう? 戦争になるとね、そんなことも国民は忘れてしまうんですよ

 12歳で強制移住を経験した石垣島の潮平正道さんは、私に何度もこう語り、民衆の弱さを問い掛けた。

 「八重山の人たちも、『お国のため』『天皇のため』と言って、マラリアで死ぬと分かっていながら軍の命令に従ったんだから」

 また、波照間島の強制移住について、当時の島のリーダーであり元村議会議員の仲本信幸さんは、戦後のインタビュー取材でこう回想した。

 「慶良間に米軍が上陸し、島人がスパイになったから、沖縄本島が上陸された。だから、波照間でも同様のことが起こりかねないから、日本全体のため、八重山全体のために、波照間島民は犠牲になっても構わないと(山下が言っていた)。(私は)それなら仕方がないということで……」

 強制移住を「仕方がない」と言った仲本さん。国家のために命を捨てることが正しいとする価値観と、軍命に逆らうことなどできない環境の中で、住民は死を覚悟で軍命に従った。それは75年前の昔話なのだろうか。日本軍からの「命令」であれ、現在の国会が次々と生み出す「法律」であれ、行政や警察、自衛隊から求められる「協力」であれ、権力は様々なかたちを変えて私たちを取り巻いている。もしも、それに従うことが私たちの命を危険にさらすことになるとしても、絶対的な権力を振りかざされた時、私たち―あなた、私―は、果たして、どこまで抗うことができるのか

 私たちは、いつでも次の犠牲者にも、次の「山下」にもなり得る。無意識のうちに、あるいは「正義」の名の下に率先して、残虐行為の片棒を担ぎかねない。私たちの中にある普遍的な弱さを、今、ひとりひとりが問わねばならない。


■「尊い犠牲」からの脱却

 「戦争体験者の高齢化による戦争の風化」。日本のテレビや新聞がこう叫びはじめて何年が経つだろうか。体験者がいなくなれば、証言を直接聞く機会が失われ、戦争体験の継承が不可能になるという。しかし、本当にそうだろうか

 対テロ戦争が20年目に突入した米国では、毎年、若い戦争体験者が増え続けている。もし、戦争体験者が増えることで、戦争の恐ろしさが市民に伝わり、平和な社会が実現するならば、米国はとっくに戦争のない国になっているはずである

 〝Thank you for your service.(従軍に感謝します)〟。米国では、軍関係者に感謝の言葉をかける文化がある。serviceをsacrificeに言い換えて、「犠牲を払ってくれて感謝します」という人も多い。今年5月には、毎年恒例の「米軍感謝月間」と戦没将兵記念日「メモリアルデー」が祝われた。戦争と軍隊を賛美する価値観が、文化の根底にある。「米国の自由と民主主義を守ったヒーロー」の名声と共に一生を過ごす元兵士たちが大多数だが、私が取材をした元兵士たちの多くは、「感謝されるのが一番つらい」と胸の内を明かした。「自分が戦場で何をしてきたのか、何も知らないくせに……」と。

 元兵士たちの声を聞く中で気づかされたのは、戦争体験の継承において、体験者の減少は本質的な問題ではないということだ。問題は、戦争体験をどう評価するのかである。米国市民が、元兵士や戦没者を「尊い犠牲」と見なす価値観から脱却することなしに米国政府がいう「正義の戦争」の殻を破ることは不可能だ

 これは日本も他人事ではない。私自身、子どもの頃から受けてきた平和教育では、「戦没者たちの尊い犠牲の上に、今の平和な日本がある」と繰り返し教えられてきた。しかし、戦争の歴史をひもとけば、自国軍の存在ゆえに死亡した3600人以上の八重山の住民たちがいる。彼らを「尊い犠牲」と呼ぶことで、放免されるのは国家と軍隊の責任であり、命令や集団に従う人間の普遍的弱さは学ばれないまま、個人の命を切り捨てることによって国体を守ろうとした歴史は忘却されていく

 軍隊はなぜ住民を守らなかったのか果たして住民の命を守れる軍隊など存在するのか。何が山下のような軍人を作り出したのか。住民はどのように戦争に巻き込まれ、命令に従ったのか。今こそ、戦争マラリアの歴史から学び、現代社会との共通点をあぶり出さねばならない。それが戦後75年の戦争報道の使命だ。理由はひとつ。二度と同じ手段で騙されないよう知恵をつけるためだ。それこそが本当の意味で、戦争を語り継ぐということだと思う。


※本論考は朝日新聞の専門誌『Journalism』8月号から収録しています。同号の特集は「8月ジャーナリズム」です。
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●《署名活動を担ったのは、島の将来を担う若者たち…石垣市の4割近い有権者の権利救済の役割を放棄…あまりに不当な判決》(琉球新報)

2020年09月13日 00時00分14秒 | Weblog

[※ 辺野古は破壊「損」 【米軍飛行場の移設先として工事が進む沖縄県名護市の海岸】(東京新聞 2020年4月3日)↑]



沖縄タイムスの【社説[石垣住民投票訴訟]門前払い納得できない】(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/623074)。
琉球新報の【<社説>石垣住民投票却下 権利救済を放棄するのか】(https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1180866.html)。

 《石垣市平得大俣への陸上自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票の実施義務付けを、市民らが市に求めた訴訟の判決で、那覇地裁は実施するかどうかは行政処分に当たらないとして、原告の訴えを却下した》。
 《署名活動を担ったのは、島の将来を担う若者たちだ次世代の政治参加の意欲を失望に終わらせてはいけない。住民自治の到達点である市自治基本条例を空文化させてもいけない。1万4263筆の思いに向き合う政治、司法の実現をあきらめてはいけない》。

 市民を分断、地域を分断…そして、どこまで司法も腐敗すればいいのか、特に沖縄では…。沖縄では「司法判断」が下されることはなく、アベ様や最低の官房長官の方を向いた「行政判断」ばかり。裁判長や裁判官は、正義無き自身の判決を省みて、恥ずかしいと思わないのだろうか? 今回の裁判長は、那覇地裁・平山馨裁判長(目取真俊さんの件では、アベ様らに忖度した政治判断乱発な裁判所には珍しく、《捜査当局による人権侵害に一定の歯止めをかける司法判断が示された》と思っていたのですが…)。《人権救済の最後の砦》と言えるのか? 《住民の権利を巡る対立に、毅然(きぜん)と法的見解を示すことが司法の果たすべき役割》ではないのか?
 《「憲法上も極めて重要な政治的意思を表明する権利の実現を図るために、司法権をつかさどる裁判所に救済を求めるものであって、いわば最後の手段」(原告団・弁護団声明)として提訴に踏み切った原告の思いは切実だ》。しかし、《前段の議論で原告の訴えを退け、肝心の中身の判断を投げだした。さらに「救済は、実施の義務付け以外の方法により図られるべきものというほかない」と言い放つに至っては、司法権の放棄以外の何物でもない》。

 《南西諸島への陸上自衛隊配備を巡り、防衛省による不誠実な住民対応が目立つ。配備は中国の海洋進出への対抗策というが、住民の安心をないがしろにして、地域の平和を守るといえるのだろうか》。
 日本軍から解き放たれ、今度は、米軍と一体化。《沖縄戦は、軍隊は住民を守らない、という事実》からすれば、自衛隊は、特に沖縄の市民を《守ろ》うとしているか? 市民は分断されゆき、自衛隊と米軍が相まって、《アメリカが中国の軍事的脅威に対抗》するための〝防波堤〟としての役割を押し付けてはいないか。《標的の島》を押し付けていないか。
 《石垣市の中山義隆市長は陸自配備を「国防や安全保障は国の専権事項」と容認する》が、これは本当に市民のことを考えての発言か? 《市民の安全や生命を守る責務がある自治体の長として、生活に影響を及ぼしかねない配備について住民の声を吸い上げ、判断するのがその役割ではないか》?

   『●言いすぎを謝罪・撤回した石嶺香織宮古島市議…
       もはや「見せしめ」、「卑劣」なイジメ、あざとい「狙い」
   『●「防波堤」としての全ての「日本全土がアメリカの「風かたか」」
                …米中の「新たな戦争の「防波堤」に」(その1)
    《しかし、三上監督は最新作『標的の島 風かたか』で、さらに切迫した
     問題を沖縄から日本全国へ提起する。それは現在、安倍政権が
     進めている石垣島、宮古島、奄美大島、与那国島への
     大規模な自衛隊とミサイル基地の配備についてだ。政府は南西諸島の
     防衛強化を謳うが、その実態アメリカが中国の軍事的脅威に
     対抗すべく打ち出した「統合エアシーバトル構想」にある》

   『●「防波堤」としての全ての「日本全土がアメリカの「風かたか」」
                …米中の「新たな戦争の「防波堤」に」(その2)
   『●三上智恵さん「結局は止められなかった」という現実…
           でも、《人々は分断されている》ことを止めなければ
    「マガジン9の記事【三上智恵の沖縄〈辺野古・高江〉撮影日誌 第71回:
     高江から宮古島へ~雪音さんと育子さんからのエール~】(…)」
    《『標的の村』の主人公、高江の安次嶺雪音さんと伊佐育子さんだ。
     …そう思って特集を連打し、放送用ドキュメンタリーの限界を超えよう
     と映画にまでして突っ走ってきた私は、「結局は止められなかった
     という現実に、正直に言ってまだ向き合えていない。…でも、
     ひしゃげている私にもわかることがある。これから自衛隊の
     ミサイル基地建設着手、という局面を迎える宮古島石垣島で、
     何とかそれを止めようともがく人々にとって、
     高江の人たちは大事な存在になるということだ》

   『●米中戦争の「防波堤」: 
     与那国駐屯地による「活性化」? 「島民との融和」か分断か?
   『●「武力によって平和を創造することはできない」…
       「真の平和をつくっていく…「憲法宣言」を採択」
   『●「戦争マラリア」…いま再び自衛隊配備で先島諸島住民を分断し、
                     「戦争や軍隊の本質」の記憶を蘇らせる…
    《島中央部では、陸上自衛隊宮古島駐屯地(仮称)の隊舎などの工事も始まり、
     近い将来、警備部隊やミサイル部隊などが配備される。
     「島では軍隊と『カジノ』がやってくるとささやかれています」。駐屯地前で
     毎朝、抗議活動をしている上里清美さん(62)が皮肉交じりに語る》

   『●沖縄デマによる市民の分断: 『沖縄スパイ戦史』の両監督
               …「反基地運動は中国のスパイ」デマも同根
    《一方、安倍首相は基地負担軽減に全力を尽くすと述べた。嘘だ
     政権に辺野古新米軍基地の建設強行を止める気配は微塵もない。
     石垣島、宮古島、与那国島への大規模な自衛隊とミサイル基地の
     配備も推し進めており、石垣市では中山義隆市長が7月18日に
     陸自配備受け入れの方針を正式に表明した》

   『●「武力によって平和を創造することはできない」…
         「真の平和をつくっていく…「憲法宣言」を採択」
    「《石垣島宮古島への陸上自衛隊配備などを念頭に
     「沖縄の基地負担への影響が大きい」》…壊憲が及ぼす影響は、
     沖縄では計り知れない。「森」を殺し、「美ら海」を殺し続け、沖縄の
     市民を分断、基地から出撃する番犬様は「人」を…。
       沖縄の地で、《「武力によって平和を創造することはできない」とし、
     日本国憲法の精神米軍基地のない平和を求める沖縄の心
     大切にし、真の平和をつくっていくことを掲げた「憲法宣言」を採択》
     にも肯ける」

   『●現在進行形の「身代わり」: 「反省と不戦の誓いを…
             沖縄を二度と、身代わりにしてはならない」
    《先島諸島と呼ばれる沖縄県南西部の島々が自衛隊配備で揺れて
     います。蘇るのは戦争による悲劇の記憶です…宮古島には
     七百人規模、石垣島には六百人規模のミサイル部隊と警備部隊を
     配備する計画です。地元では…住民の意見は割れているのが実情です。
     …有事には自衛隊が標的にされ、周辺住民が巻き込まれると心配する
     声が聞こえてきます。底流にあるのは先の戦争の悲惨な記憶です。
     大戦末期、米軍の攻撃を避けるため、この地域の住民はマラリア発生
     地帯への疎開を軍部によって強制され、多くの人が罹患して亡くなり
     ました。患者数は当時の人口の約半数とも言われています。同じく
     大戦末期には、軍命により石垣島から台湾に疎開する際、船が米軍に
     攻撃され、多くの犠牲者が出ました。
     自衛隊配備でこうした戦争の記憶が蘇るのです》

   『●石垣島陸上自衛隊ミサイル部隊配備: 
       《菩提樹》を切り倒すのか? ささやかな願いさえも打ち砕くのか?
    「子どもさへSLAPPSLAPP)する国・ニッポン。こんな国でいいのですか?
     宮古島石垣島に《標的の島》を押し付けて恥じぬ「本土」…。
     答えは一つだけではない」

   『●事実誤認の常習犯…《聞きたくない質問、
      都合の悪い質問を遮るような、その先に国民がいることを無視…》
    《進む米軍との一体化、つけは子どもたちの世代へ…弾一発1.6億円する
     巡航ミサイルの導入、護衛艦いずもの「空母化」など、専守防衛を
     逸脱する動きは加速し、沖縄本島には新たにミサイル部隊が配備され、
     宮古島には巨大な弾薬庫をつくることが決まりました》

   『●与那国島や石垣島、《沖縄は名護市辺野古だけでなく、宮古島もまた
                    国防のために政府に翻弄されている》
   『●沖縄イジメ…《この74年間、沖縄戦以来、
     陸兵が軍服を着て宮古島を闊歩する姿など誰も見たことはない》
   『●《中国の海洋進出への対抗策というが、住民の安心をないがしろ
               にして、地域の平和を守るといえるの》か?
    《南西諸島への陸上自衛隊配備を巡り、防衛省による不誠実な住民対応
     目立つ。配備は中国の海洋進出への対抗策というが、住民の安心を
     ないがしろにして、地域の平和を守るといえるのだろうか。防衛省への
     住民の不信が噴出しているのが、沖縄県宮古島市だ》

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https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/623074

社説[石垣住民投票訴訟]門前払い納得できない
2020年8月28日 06:50

 石垣市平得大俣への陸上自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票の実施義務付けを、市民らが市に求めた訴訟の判決で、那覇地裁は実施するかどうかは行政処分に当たらないとして、原告の訴えを却下した。

 住民投票の実施義務の有無を問わず、訴えの内容が訴訟の対象ではないとして判断を避ける門前払いである。

 原告・弁護団は「人権救済の最後の砦(とりで)としての役割を放棄するもので、あり得ない判決」と声明を出した。結果的に市自治基本条例を軽視する市の姿勢を容認する判決で、納得できるものではない。

 住民投票を巡っては、2018年に「市住民投票を求める会」が有権者の約4割に当たる1万4千筆の署名を集めて住民投票条例の制定を請求した。だが、市議会が否決した経緯がある。

 市自治基本条例には住民投票の請求が明記されている。

 原告は条例を根拠に、市議会で否決されても市長は有権者の4分の1以上の署名があれば住民投票を実施する義務があると訴えた。

 これに対し、市側は自治基本条例ではなく地方自治法に基づく請求で市議会が否決した時点で、手続きは終了したと主張してきた。

 判決は「(条例に)規則が制定されていない段階で実現しようとするには無理がある」との内容だ。救済については「住民投票の実施の義務付け以外の方法で図られるべきもの」と指摘した。

 訴えの却下は約1万4千人もの民意を切り捨てるようなものだ

■    ■

 今回の訴訟は、住民投票条例案が2度市議会で否決されたことを受け、昨年9月に市民らが提起したものだ。

 だが、同年12月には、市自治基本条例の廃止案を与党系議員らが市議会に提案する動きもあった。

 条例は「主権者の市民が地域のことを考え、市民自治によるまちづくりを行う」とうたい、市民の権利や責務、住民投票制度などを規定しているにもかかわらずだ。

 最終的に、廃止案は否決されたが、市民らが条例を基に住民投票の実施を求める訴訟を起こしたことで「投票つぶし」との見方もあった。

 石垣市の中山義隆市長は陸自配備を国防や安全保障は国の専権事項」と容認する。

 市民の安全や生命を守る責務がある自治体の長として、生活に影響を及ぼしかねない配備について住民の声を吸い上げ、判断するのがその役割ではないか

■    ■

 原告・弁護団は判決後の会見で「政治的意思を表明する権利の実現のため、引き続き全力で取り組む」と決意を述べた。石垣市からオンラインで参加した若者たちは「訴えそのものが認められなかった訳ではない。諦めないで考えていく」と語った。

 司法は門戸を閉ざしたが、有権者の約4割もの民意を市や市議会は無視することはできないはずだ

 「自分たちのことは自分たちで決めたい」という市民らの訴えに、正面から向き合い、救済のための別の道を探る必要がある。
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https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1180866.html

<社説>石垣住民投票却下 権利救済を放棄するのか
2020年8月28日 06:01

 石垣市の4割近い有権者の権利救済の役割を放棄した、あまりに不当な判決だ

 石垣市平得大俣への陸上自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票を巡る義務付け訴訟で那覇地裁は27日、石垣市長に投票実施を求めた原告の訴えを却下した。市長に住民投票の実施義務があるのかといった重要な争点への判断は一切示さず、「入り口」論で逃げたとしか言いようがない。

 裁判は、住民投票の実施などを独自に規定した「石垣市自治基本条例」を巡る解釈が大きな争点だった。

 条例28条は、有権者の4分の1以上の署名があれば市民が直接、市長に住民投票の実施を請求できるとする。同条4項は、直接請求を受けた市長は「所定の手続きを経て、住民投票を実施しなければならない」と規定している。

 平得大俣への陸自配備を巡る住民投票については、市の有権者の36・7%にあたる1万4263筆が集まり、条例が求める条件を達成した。一方で、住民の請求を受けて市議会に投票条例案が提案されたが、議会が2度にわたって条例案を否決し、住民投票はいまだ実現していない。

 間接民主制の欠陥を補完し、住民自治や民主主義をよりよくする制度として住民投票を位置付けたのが、自治基本条例の精神だ。投票のテーマにかかわらず、直接請求の権利が認められた住民投票の実施をしっかり担保することこそ、民主的な議会政治の本来あるべき姿だ

 市議会では自治基本条例そのものを廃止しようという提案まで起きており議会自らが住民の権利や自治を後退させかねない危うさがある

 将来に関わる特定の問題に有権者が直接意思を示したいという市民の思いの前に、住民の代表で構成するはずの市議会が立ちふさがっている。住民の権利を巡る対立に、毅然(きぜん)と法的見解を示すことが司法の果たすべき役割だ。

 「憲法上も極めて重要な政治的意思を表明する権利の実現を図るために、司法権をつかさどる裁判所に救済を求めるものであって、いわば最後の手段」(原告団・弁護団声明)として提訴に踏み切った原告の思いは切実だ。

 だが、那覇地裁は訴訟の要件があるかという前段の議論で原告の訴えを退け、肝心の中身の判断を投げだした。さらに「救済は、実施の義務付け以外の方法により図られるべきものというほかない」と言い放つに至っては、司法権の放棄以外の何物でもない

 本質の議論を避け、権利の救済を求める声に向き合わない今回の決定は、決して受け入れられるものではない。

 署名活動を担ったのは、島の将来を担う若者たちだ次世代の政治参加の意欲を失望に終わらせてはいけない。住民自治の到達点である市自治基本条例を空文化させてもいけない。1万4263筆の思いに向き合う政治、司法の実現をあきらめてはいけない。
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●《戦争体験の継承はどうして必要》? 大矢英代さん《二度と同じ手段で国家に殺されないように、生活を奪われないように、知恵をつけること》

2020年08月14日 00時00分48秒 | Weblog


永田健記者による、西日本新聞のコラム【時代ななめ読み/「戦争体験」というバトン】(https://www.nishinippon.co.jp/item/n/625471/)。
志真秀弘氏による、レイバーネットの書評【〔週刊 本の発見〕三上智恵『証言 沖縄スパイ戦史』/過ちの記録こそ次の過ちを防ぐ地図になる】(http://www.labornetjp.org/news/2020/hon165

 《ジャーナリストの大矢英代(はなよ)さんが今年2月「沖縄『戦争マラリア』 強制疎開死3600人の真相に迫る」(あけび書房)を出版した。悲劇の裏に隠された軍隊の非人間性に切り込んだ労作で、優れた国際報道を顕彰する賞も受賞した。千葉県出身、1987年生まれの大矢さんはなぜ、この問題に取り組んだのか》。
 《映画『沖縄スパイ戦史』(2018年、三上智恵大矢英代共同監督)は埋もれていたこのもう一つの沖縄戦を証言によって描き、大きな衝撃をあたえた。本書は、これに新たな少年兵の証言、軍が全国に遊撃隊を展開しようとしていたことを明かす証言、さらにその後判明した住民虐殺の真相なども加わり、読むものの魂を揺さぶる》。

   『●「戦争マラリア」…いま再び自衛隊配備で先島諸島住民を分断し、
                「戦争や軍隊の本質」の記憶を蘇らせる…

 「戦争や軍隊の本質」の記憶。沖縄での番犬様の居座りや、嬉々として沖縄を差し出すアベ様や最低の官房長官ら。一方、島嶼部では自衛隊が〝防波堤〟や〝標的〟に。《軍隊は人を守らない大田昌秀さん)》、《軍隊は住民を守らない》《基地を置くから戦争が起こる島袋文子さん)》、《軍隊は同じことをするし、住民も協力するし、軍隊は住民をまた殺すことになる三上智恵さん)》…。
 《戦争体験の継承はどうして必要》なのか? 大矢英代さんは、《二度と同じ手段で国家に殺されないように、生活を奪われないように、知恵をつけること》。《「負の歴史こそが、本物の、騙されない強い未来を引き寄せてくれる力につながるということを、この人たちが私に信じさせてくれた」と著者三上智恵は書いている》。

   『●『沖縄スパイ戦史』(三上智恵・大矢英代共同監督): 
           「「スパイリスト」…歪んだ論理が生み出す殺人」
   『●三上智恵・大矢英代監督映画『沖縄スパイ戦史』…
       「戦争というシステムに巻き込まれていった人たちの姿」

   『●「改めて身に迫るのは、軍隊というものが持つ
      狂気性」(高野孟さん)と、いまも続く沖縄での不条理の連鎖
    《マガジン9連載コラム「沖縄〈辺野古・高江〉撮影日誌」でおなじみの
     三上智恵さんが、大矢英代さんとの共同監督で制作した
     映画『沖縄スパイ戦史』が7月下旬からいよいよ公開…
     「軍隊は住民を守らない」…「戦争や軍隊の本質を伝えたい」》。

   『●『沖縄スパイ戦史』と《記憶の澱》…
     「護郷隊…中高生の年頃の少年たち…スパイと疑われた仲間の処刑…」

    《▼日本軍第32軍の周辺で起きた本島中南部の激戦を「表の沖縄戦」と
     すれば、映画が描くのは北部の少年ゲリラ兵部隊護郷隊」や八重山
     戦争マラリアなどの「裏の沖縄戦」。綿密な取材による証言と資料映像で、
     6月23日以降も続いた遊撃戦の実相をつづる》

   『●自衛隊配備・ミサイル基地建設…『沖縄スパイ戦史』「自衛隊
              …昔と同じく住民を顧みない軍隊の本質」暴露
    「レイバーネット…のコラム【<木下昌明の映画の部屋 243回> 三上智恵
     大矢英代監督『沖縄スパイ戦史』/住民500人を死に追いやった犯罪】」

   『●沖縄デマによる市民の分断: 『沖縄スパイ戦史』の両監督…
               「反基地運動は中国のスパイ」デマも同根
   『●大矢英代さん「私たちは、過去の歴史からしか学べません…
               私たちが何を学ぶのかが今、問われている」①
   『●大矢英代さん「私たちは、過去の歴史からしか学べません…
               私たちが何を学ぶのかが今、問われている」②
   『●『沖縄スパイ戦史』: 「それまで『先生』と島の人たちに
           慕われていた山下が抜刀した」…「軍隊の本性」
   『●2019年度文化庁映画賞《文化記録映画部門の優秀賞》を受賞
               …三上智恵・大矢英代監督『沖縄スパイ戦史』
   『●《「遊撃戦遂行の為特に住民の懐柔利用は重要なる一手段にして
     我が手足の如く之を活用する」…住民同士を監視させ…批判している…》
   『●《「慰霊の日」を迎えた。…鉄血勤皇隊やひめゆり学徒隊の悲劇が
     伝わる一方、護郷隊の過酷な運命は長年ほとんど知られていなかった》

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https://www.nishinippon.co.jp/item/n/625471/

時代ななめ読み
「戦争体験」というバトン
2020/7/12 11:00
西日本新聞 オピニオン面 永田健


 「戦争マラリア」という言葉をご存じだろうか。

 先の大戦で沖縄戦中、八重山諸島波照間島石垣島などの住民が日本軍の命令でマラリアの蔓延(まんえん)する地域に移動させられ、感染して死亡した惨事のことだ。米軍上陸のなかった八重山諸島で、どれほど必要性があったかも不明な強制疎開により、人口の1割強に当たる3千人超がマラリアで亡くなったとされる。

 現在コロナ禍に見舞われている私たちなら「感染症で10人に1人が死ぬ」という状況のすさまじさが少しは想像できるだろうか。例えるなら東京で100万人が死ぬようなものなのだ。

 ジャーナリストの大矢英代(はなよ)さんが今年2月「沖縄『戦争マラリア』 強制疎開死3600人の真相に迫る」(あけび書房)を出版した。悲劇の裏に隠された軍隊の非人間性に切り込んだ労作で、優れた国際報道を顕彰する賞も受賞した。千葉県出身、1987年生まれの大矢さんはなぜ、この問題に取り組んだのか。

   ◇    ◇

 大矢さんは2009年、大学のインターンシップ(就業体験)で八重山の新聞社に行き、初めてこの問題の存在を知った。波照間島に移住して住民の家に下宿し、8カ月間農作業を手伝いながら戦争マラリアの体験談を集めた。その後も沖縄のテレビ局に就職するなどして、断続的にほぼ10年にわたり取材を続けた。

 現在、米カリフォルニア州を拠点に活動する大矢さんにメールで話を聞いた。

 -なぜこの問題を?

 「こんな重大な歴史をどうして22歳になるまで知らなかったのか、自分の無知を恥じました。学校で誰も教えてくれなかったのなら自分で調べたい。それがスタートでした」

 「実際に取材してみると、簡単に証言してくれる人はいませんでした。思い出したくもない体験なので、当たり前ですよね。家の前でチャイムが押せず30分ぐらいうろうろしたり…」

 「『自分が生きているこの時間は、体験者にとって最後の時かも知れない』という危機感がありました。今聞いて映像に残しておかないと遅れになってしまう。そんな思いでした」

   ◇    ◇

 私も記者として戦争体験者に話を聞くことがある。長年自問自答していることを大矢さんにも聞いた。

 -そもそも、戦争体験の継承はどうして必要なのでしょうか?

 「二度と同じ手段でだまされないように。これ以外にないと思います」

 「戦争の歴史は、国家と住民の関係性、軍隊の構造的暴力性、そして命令や集団に従う住民の弱さといった、いつの時代にも当てはまる普遍的問題を伝えています。負の歴史を学ぶことは、二度と同じ手段で国家に殺されないように、生活を奪われないように、知恵をつけることです

 「取材するたび、バトンを受け取る気持ちがします。相手から受け取ったバトンを持って、一生懸命走って書いて)、ゴール社会に伝える。私の記事や作品を見た人がまた誰かにバトンを渡す。そのリレーが続いていくことが継承なのかなと思っています」

 大矢さんが取材した住民のうち、すでに3人が亡くなり、3人が証言するのが困難になったという。

 日本の夏は、バトンの重みを感じる季節である。

 (特別論説委員・永田健
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http://www.labornetjp.org/news/2020/hon165

赤白抜き〔週刊 本の発見〕三上智恵『証言 沖縄スパイ戦史』

毎木曜掲載・第165回(2020/7/16)
過ちの記録こそ次の過ちを防ぐ地図になる
証言 沖縄スパイ戦史』(三上智恵、集英社新書、2020年2月刊、1700円)評者:志真秀弘

 1945年3月26日、米軍は慶良間諸島に、さらに4月1日沖縄本島に上陸し、陸軍第32軍との間で凄惨な地上戦が繰り返される。その結果民間人を含む20万人余りが亡くなり、6月23日牛島満司令官の自決によって沖縄を「本土決戦の捨て石」とする作戦は実際上終わる。が、本島北部にはすでに前年9月、スパイ養成を目的とする陸軍中野学校出身者が大本営より配属されていた。第32軍壊滅後も米軍を撹乱するために、徴兵前の15歳から17歳の地元の少年たちを主力に遊撃隊を組織する任務がかれらに与えられた。第一護郷隊(正式名称は第三遊撃隊、村上治夫隊長)は今帰仁村、名護町などの出身者610名、第二護郷隊(第四遊撃隊、岩波壽隊長)は国頭村、大宜味村などの出身者388名からなった。

 映画『沖縄スパイ戦史』(2018年、三上智恵大矢英代共同監督)は埋もれていたこのもう一つの沖縄戦を証言によって描き、大きな衝撃をあたえた。

 本書は、これに新たな少年兵の証言、軍が全国に遊撃隊を展開しようとしていたことを明かす証言、さらにその後判明した住民虐殺の真相なども加わり、読むものの魂を揺さぶる。

 本書は「少年ゲリラ兵たち」の証言から始まる。

 彼ら21人の証言のどれからも戦場となった村の空気、そこで生活する人たちの呼吸、そして一人ひとりの戦後の人生が伝わってくる。

     (*映画『沖縄スパイ戦史』より)

 たとえば1929年生まれの「リョーコー二等兵」こと端慶山良光(ずけやま・よしみつ)さんの証言。戦場で頬に手榴弾の破片を受け傷病兵になる。同じ傷病兵の友人は足手纏いになるからと軍医が射殺する。彼も逃げる途中殺して置いていくと仲間に言われるが、半死半生で生まれた村にたどり着く。が、村に帰ったあと戦争PTSDを発症。村内で暴れ回るために座敷牢に閉じ込められるなど「兵隊幽霊」と呼ばれ苦しむ。が、五十歳を超えてキリスト教の洗礼を受け、信仰に助けられPTSDを克服する。いま彼は一人で暮らす。「沖縄戦のこと忘れたら、また地獄がきますよって。僕は…桜の木を七十歳から植えはじめたんですよ。緋寒桜七十本あまり、…英霊ですね、沖縄戦でなくなった若い人たちの。…これを見てみんなに沖縄戦思い出してもらって。」が、かれに国による補償は何もない。護郷隊は秘密組織だから兵歴とみなさないという「理屈」のようだ。

 当時22、3歳だった村上、そして岩波二人の隊長への敬愛の念を隊員たちは異口同音に語っている。二人とも隊員には暴力を振るわず、生き延びることを指示した。それがゲリラ部隊の基本とも言えるが、それは二人がマニュアル通りに努めたというのとは違う。隊員の誰にとってもかれらは優しく、そして人格者であった。が、同時に戦闘のプロつまり敵を殺すプロだった。その両面が彼らにはあった。

 戦後、村上は沖縄へ家族共々慰霊のために毎年のように足を運んだ。そして最後は車椅子に乗って参列し、「もうわんわん、子供のようにね、顔を崩して」人前も構わず泣きじゃくったという。かれが抱えた戦場の闇はそれほど深かったのだろうと著者は書いている。村上は勇猛なゲリラ隊長であって、91人もの部下を死なせた末に生き延びた。その罪を抱えてかれも戦後を生きなければならなかった。そこに浮かび上がるのは沖縄戦の、ひいては戦争そのものの罪深さだ。

 後半の「スパイ虐殺の証言」「虐殺者たちの肖像」の二つの章が、複雑極まりない過程を丹念に捉えて明らかにしているのも、沖縄の地上戦が強いた戦場犯罪の構造と言える。だからこそこれらのことは、不問に付していいことでは決してない。

 「負の歴史こそが、本物の、騙されない強い未来を引き寄せてくれる力につながるということを、この人たちが私に信じさせてくれた」と著者三上智恵は書いている。

 著者の執念がこの本の力を産んだ。本書こそ2020年ベストワンと言い切っておきたい。一人でも多くの人がぜひとも本書を手にとってほしい。

*「週刊 本の発見」は毎週木曜日に掲載します。筆者は、大西赤人・渡辺照子・志真秀弘・菊池恵介・佐々木有美・根岸恵子、ほかです。
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●《「慰霊の日」を迎えた。…鉄血勤皇隊やひめゆり学徒隊の悲劇が伝わる一方、護郷隊の過酷な運命は長年ほとんど知られていなかった》

2020年07月01日 00時00分23秒 | Weblog


東京新聞の社説【沖縄戦終結75年 少年兵の体験伝えねば】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/37280?rct=editorial)。

 《「やあ、よく来ましたな」−。沖縄本島北部、大宜味村のやんばるの森に暮らす瑞慶山良光(ずけやまよしみつ)さん(91)は、優しげな目にパナマ帽が似合う快活なおじい。おしゃれをして取材に応じてくれた。笑うと右ほほの「えくぼ」がへこみ、より愛らしい。が、実はこれ「(米軍の)手りゅう弾でやられた痕」という。十六歳の時のこと−。 ◆ゲリラ部隊「護郷隊」 …沖縄在住の映画監督三上智恵さん(55)は、二〇一八年公開のドキュメンタリー「沖縄スパイ戦史」で護郷隊の実態を掘り起こし、反響を呼んだ》。

 

   『●『沖縄スパイ戦史』(三上智恵・大矢英代共同監督): 
           「「スパイリスト」…歪んだ論理が生み出す殺人」
   『●三上智恵・大矢英代監督映画『沖縄スパイ戦史』…
       「戦争というシステムに巻き込まれていった人たちの姿」

   『●「改めて身に迫るのは、軍隊というものが持つ
      狂気性」(高野孟さん)と、いまも続く沖縄での不条理の連鎖
    《マガジン9連載コラム「沖縄〈辺野古・高江〉撮影日誌」でおなじみの
     三上智恵さんが、大矢英代さんとの共同監督で制作した
     映画『沖縄スパイ戦史』が7月下旬からいよいよ公開…
     「軍隊は住民を守らない」…「戦争や軍隊の本質を伝えたい」》。

   『●『沖縄スパイ戦史』と《記憶の澱》…
     「護郷隊…中高生の年頃の少年たち…スパイと疑われた仲間の処刑…」

    《▼日本軍第32軍の周辺で起きた本島中南部の激戦を「表の沖縄戦」と
     すれば、映画が描くのは北部の少年ゲリラ兵部隊護郷隊」や八重山
     戦争マラリアなどの「裏の沖縄戦」。綿密な取材による証言と資料映像で、
     6月23日以降も続いた遊撃戦の実相をつづる》

   『●自衛隊配備・ミサイル基地建設…『沖縄スパイ戦史』「自衛隊
              …昔と同じく住民を顧みない軍隊の本質」暴露
    「レイバーネット…のコラム【<木下昌明の映画の部屋 243回> 三上智恵
     大矢英代監督『沖縄スパイ戦史』/住民500人を死に追いやった犯罪】」

   『●沖縄デマによる市民の分断: 『沖縄スパイ戦史』の両監督…
               「反基地運動は中国のスパイ」デマも同根
   『●大矢英代さん「私たちは、過去の歴史からしか学べません…
               私たちが何を学ぶのかが今、問われている」①
   『●大矢英代さん「私たちは、過去の歴史からしか学べません…
               私たちが何を学ぶのかが今、問われている」②
   『●『沖縄スパイ戦史』: 「それまで『先生』と島の人たちに
           慕われていた山下が抜刀した」…「軍隊の本性」
   『●2019年度文化庁映画賞《文化記録映画部門の優秀賞》を受賞
               …三上智恵・大矢英代監督『沖縄スパイ戦史』
   『●《「遊撃戦遂行の為特に住民の懐柔利用は重要なる一手段にして
     我が手足の如く之を活用する」…住民同士を監視させ…批判している…》

 《十五〜十八歳の少年を中心とするゲリラ部隊護郷隊(ごきょうたい)」に加わり米軍と対峙(たいじ)した。同じ少年少女で組織された鉄血勤皇隊ひめゆり学徒隊の悲劇が伝わる一方、護郷隊の過酷な運命は長年ほとんど知られていなかった。だがこれも、記憶されなくてはならない沖縄戦の実相》。
 《映画は過去を告発するだけではない。中国の海洋進出をにらみ、与那国島宮古島など、沖縄の先島諸島には陸上自衛隊の配備が進む。防衛情報を集め住民を監視する情報保全隊も配置される。作品は「戦争は軍隊が駐留した時点で始まる」(三上さん)との視点から、現代でも自衛隊は本当に住民を守るのか−と鋭く問い掛ける》。
 辺野古破壊も《「合理的ではない」と気付い》て下さい、辺野古は破壊「損」です。#辺野古の工事は中止してください! #海を殺すな! #辺野古も白紙にして原状回復を そして、石垣島宮古島など島嶼での対中国のための、番犬様をお守りするための〝防波堤〟・《標的の島》にすることにも反対します。 

   『●地上イージス計画停止、遅すぎる《当然の帰結》…辺野古の工事は
     中止してください! 海を殺すな! 辺野古も白紙にして原状回復を!
   『●どうしたらいいんですかね? 沖縄で、アベ様や最低の官房長官らが
     やることなすことがデタラメばかり…選挙が終われば、辺野古破壊再開

 目取真俊さんのブログ【海鳴りの島から 沖縄・ヤンバルより…目取真俊/沖縄戦体験者が新型コロナ下で、ゲート前に行かざるを得ない状況を作っているのは誰か?それを黙って見ていていいのか。】(https://blog.goo.ne.jp/awamori777/e/ee54b090402faa5bd61764fc9eba773f)によると、《辺野古の島袋文子さんが連日、ゲート前の座り込みに参加し、先頭で抗議を続けている。90歳を超える沖縄戦体験者が、今もこうやって新基地建設反対の行動をとらないといけないのが沖縄の現実だ。この現実を作り出しているのは誰か? それを黙って見ていていいのか。傍観者であっていいのか。明日は沖縄戦の慰霊の日だが、辺野古のゲート前や破壊されている海の現状を見れば、沖縄戦の犠牲者も浮かばれないだろう。75年にわたり占拠を続ける米軍基地と、48年にわたり占拠を続ける自衛隊基地。日本「本土」の防衛と安全のために、沖縄を犠牲にする構図は、1879年の日本による琉球侵略以来、何も変わっていない》。

 マガジン9の鈴木耕さんのコラム【言葉の海へ 第124回:沖縄辺野古と、秋田山口のイージス(鈴木耕)】(https://maga9.jp/200624-3/)によると、《ならば、辺野古も同じではないか。いや、辺野古のほうがもっとひどい。工費も工期もイージス・アショアどころじゃない。当初3500億円程度と見込んでいた工費はいつの間にか9300億円にまで膨らんでいる。しかもそれは政府試算であり、沖縄県の試算では2兆円を軽く超えるという。工期も当初の5年が8年に延び、今では12年かかるとも言われる。それも政府の言い分で、県側ではとてもそれでは完成しないという。10年以上先、国際情勢がどうなっているか見当もつかない。それでも辺野古は諦めないというのが安倍内閣だ。こうなると、やはり「沖縄差別」という言葉が出て来てしまう。秋田と山口は本土であり、沖縄は沖縄だから米軍基地は押しつけておけ。それを「沖縄差別」と言わずして何といえばいいのか。この沖縄の基地問題に関しては、『〈沖縄〉基地問題を知る事典』(前田哲男林博史我部政明・編/吉川弘文館)が参考書としては最適だ。これもぜひ、手許においてほしい一冊である。今年は沖縄戦終結から75年。そして60年安保闘争から60年。もう、アメリカへの貢物外交に終止符を打ってもよさそうな時期じゃないか》。

 沖縄タイムスの【社説[慰霊の日に]知ることから始めよう】(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/589353)によると、《こういう時期だからこそ、沖縄戦の実相をより深く学び、戦争の記憶を引き継ぐ意味を心に刻みたい。きょう沖縄は「慰霊の日」を迎える。県民の4人に1人が犠牲になった沖縄戦から75年の節目となるが、今年の「6・23」は新型コロナウイルスの影響で慰霊祭の中止や規模縮小を余儀なくされている》。
 大門雅子記者による、沖縄タイムスのコラム【[大弦小弦]戦後75年の慰霊の日】(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/589433)によると、《▼本紙と朝日新聞が行ったアンケートで、体験者の62%が「沖縄戦が次世代に伝わっていない」と答えた。風化への危機感が浮き彫りになった ▼身を削る思いで体験者が紡いできた言葉を記録し、伝えるのは戦後世代の責任だ。今なお、言葉にできない体験があることも胸に留めたい。きょうは慰霊の日。(大門雅子)》。
 琉球新報の【<社説>沖縄戦75年 体験継承し平和の構築を】(https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1143131.html)によると、《県民の貴い生命を奪い、祖先が築いてきた独自の文化を破壊した沖縄戦から75年の年月が流れた。「慰霊の日」を迎え、私たちは沖縄戦体験者の証言や戦争遺跡が発するメッセージを胸に刻みながら沖縄戦体験を継承し、平和創造の礎を築くことを誓いたい。小学生のころ沖縄戦を体験した県民は80代となった。防衛隊や鉄血勤皇隊、女子学徒隊として戦場に動員された県民の大半は90代である。体験者から直接証言を聞くことができる機会は限られている。残された時間の中で体験者の証言と向き合う努力を重ねつつ、沖縄戦研究の蓄積を踏まえ、新たな体験継承の方策を探りたい》
 琉球新報のコラム【<金口木舌>平和のいしずえ】(https://ryukyushimpo.jp/column/entry-1143139.html)によると、《▼戦後50年の節目に沖縄県が最重要事業として建立したのが平和の礎(いしじ)だった。25年前の6月23日の除幕式典で県は「悲惨な体験をいしずえとして私たちは世界の人びとへ訴える」と非核・平和を宣言した ▼礎は戦争体験を風化させず、教訓を伝える継承の場である。平和の尊さを学ぶ場でもある。建立によって、恒久平和を永遠に世界に訴える沖縄の役割を確認した ▼図らずも「場」の意味が問われたことしの慰霊の日である。全戦没者追悼式の会場を国立沖縄戦没者墓苑とした県は批判を受け、例年通りに平和祈念公園の式典広場に戻した。戦争を肯定せず、美化せず、後世に語り継ぐ意義を思い起こしたい》。

   『●「まん延する差別」な、「御持て成し」どころでない
        「うらあり」だったニッポン…「病んだ空気」が蔓延
    《▼差別や偏見は人を傷つける。日本が誇る「おもてなし」を台無しにし、
     観光にも大きなダメージを与えかねないチムグクル(思いやりの心)と
     歓待の文化を磨き、沖縄から見本を示したい

   『●「戦争屋のアベ様」やアノ木原稔氏のココロには
       響かない女性の訴え…「基地を造ったら沖縄が戦場になる」
   『●目を逸らす本土…「米国側からみた心温まる
      ヒューマン・ストーリーだけではなく、そこに暮らす人々」に…
   『●「空疎で虚飾に満ち」た弔辞を代読する
      最低の官房長官に怒声…「翁長氏の遺志に応える唯一の道」とは?
   『●《玉城知事が対話を求めた直後にこれを拒否…》アベ様には
       《(他者の痛みに寄り添う)沖縄のチムグクル》は届かず

 COVID19の影響で、《(他者の痛みに寄り添う)沖縄のチムグクル》が届かないアベ様に《やじ》もできず…。
 沖縄タイムスの【社説 [全戦没者追悼式] 「平和の文化」次世代へ】(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/589893)によると、《安倍晋三首相らのあいさつはビデオメッセージとして大型スクリーンに流され、やじもなく静かな式典となった。玉城デニー知事は平和宣言で、昨年同様、平和を希求する「沖縄のこころ・チムグクル」を世界に発信し、共有することを呼びかけた》。
 吉田央記者による、沖縄タイムスのコラム【[大弦小弦] 沖縄戦と安保 二つの「6・23」】(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/589946)によると、《▼その首相は、参加しない代わりにビデオメッセージを寄せた。基地負担の軽減に向け」「できることは全て行う」。どの年も内容がほぼ代わり映えしない ▼ロープ越しに聞いた…さん(55)=埼玉県=は「基地建設を止めないから説得力がないのでは」。首相に沖縄の現場を見てほしい気持ちと、慰霊の場にいるのがふさわしくない気持ちが、半々だと漏らした ▼6月23日は、改定日米安保条約の発効日。米国が日本を守る義務を負う安保条約は、沖縄の犠牲の上に成り立っている日本という国家が自省すべき日でもある。式典の間だけ我慢していたのだろうか。雨は終了後、再び激しく降り出した。(吉田央)》

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https://www.tokyo-np.co.jp/article/37280?rct=editorial

社説
沖縄戦終結75年 少年兵の体験伝えねば
2020年6月23日 07時48分

 「やあ、よく来ましたな」−。

 沖縄本島北部、大宜味村のやんばるの森に暮らす瑞慶山良光(ずけやまよしみつ)さん(91)は、優しげな目にパナマ帽が似合う快活なおじい。おしゃれをして取材に応じてくれた。笑うと右ほほの「えくぼ」がへこみ、より愛らしい。が、実はこれ「(米軍の)手りゅう弾でやられた痕」という。十六歳の時のこと−。


◆ゲリラ部隊「護郷隊

 沖縄は二十三日、「慰霊の日」を迎えた。七十五年前のこの日、太平洋戦争末期の沖縄戦で日本軍の組織的戦闘が終わった。その戦争で、瑞慶山さんは当時十五〜十八歳の少年を中心とするゲリラ部隊護郷隊(ごきょうたい)」に加わり米軍と対峙(たいじ)した。同じ少年少女で組織された鉄血勤皇隊ひめゆり学徒隊の悲劇が伝わる一方、護郷隊の過酷な運命は長年ほとんど知られていなかった。だがこれも、記憶されなくてはならない沖縄戦の実相だ。

 瑞慶山さんが護郷隊に入ったのは一九四五年三月。米軍の本島上陸の一カ月前だ。「赤紙(召集令状)なんて来なかった」。当時の法では召集は十七歳以上だが、戦況悪化で陸軍は十四歳から志願で召集できる規則を作った。瑞慶山さんらは志願していないにもかかわらず、役場から呼び出された

 護郷隊を編成したのは、スパイ養成機関・陸軍中野学校出身の青年将校たち。仮に沖縄守備軍の第三二軍が壊滅しても、ゲリラ戦により敵を長期間かく乱させる任務を負っていた。戦いを想定する本島北部の地理に明るく兵士不足も補えると、地元の少年たちを選んだとみられる。

 軍隊への憧れもあった少年たちだが、長時間の正座や仲間内の制裁などつらい訓練が待っていた。

 そして米軍上陸から間もない四月十二日、瑞慶山さんは実戦として上官らと金武町の米軍陣地の夜襲に向かった。しかし直前、隊は野生のイノシシと遭遇して物音を立て、手りゅう弾攻撃に遭う。


◆口を閉ざした元隊員ら

 斜面に左向きに伏せた瞬間、瑞慶山さんの右顔面を破片が直撃。「あごが吹き飛んだと思った」。口中からは折れた歯と破片が出てきた。他の体験談も生々しい。

 「一人で偵察中、黒人米兵の小隊と遭った時には手りゅう弾をくわえ水たまりに隠れた。見つかったら即、自爆するつもりだった」

 「三人一組で爆薬十キロ入りの木箱を戦車に仕掛ける訓練をした。導火線は一秒で一センチ燃える。二十秒ぐらいでこっちも吹っ飛ぶ。あっという間だから生まれてなかったと思えば、それでいいかと」

 十六歳の少年に、何度も死を納得させた状況に慄然(りつぜん)とする。

 結果的に非力な奇襲はあまり成功しなかったが、千人近い護郷隊員中約百六十人が命を落とした。病気やけがで足手まといになり隊内で殺された例もあった。部隊は四五年七月に解散され、瑞慶山さんは故郷に戻った。ただ何年も、突然暴れるなど心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しんだ。

 幼なじみ同士が罰し合ったり、命じられて地元集落を焼き払ったりした心の傷は深く、元隊員らは身近な人にも体験を語ろうとはしなかった。当時の給料やけがへの補償もなく、少年兵の辛苦は国から無視されたままでもある。

 沖縄在住の映画監督三上智恵さん(55)は、二〇一八年公開のドキュメンタリー「沖縄スパイ戦史」で護郷隊の実態を掘り起こし、反響を呼んだ。三上さんは言う。

 「有事に軍は住民を守らない逆に、戦闘や諜報(ちょうほう)に利用して見捨てることを描きたかった」。映画には、スパイ容疑をかけられた住民が軍により虐殺されるのを住民が手助けした、軍の陣地構築に協力した少女が秘密を知ったと殺されかけた、などの証言も登場する。共同監督の大矢英代(はなよ)さん(33)は、同作品で波照間島に潜入した中野学校出身者が島民を西表島(いりおもてじま)マラリア地帯に疎開させ約五百人が死んだ史実を描いた。

 三上さんによれば、当時の軍部は本土の各地にも中野学校出身者を送り秘密戦の準備をしていた。終戦が遅れたなら沖縄の惨劇が本土で繰り返された可能性がある。


◆亡き戦友を弔う寒緋桜

 映画は過去を告発するだけではない。中国の海洋進出をにらみ、与那国島宮古島など、沖縄の先島諸島には陸上自衛隊の配備が進む。防衛情報を集め住民を監視する情報保全隊も配置される。作品は「戦争は軍隊が駐留した時点で始まる」(三上さん)との視点から、現代でも自衛隊は本当に住民を守るのか−と鋭く問い掛ける。

 沖縄戦から七十五年の夏。瑞慶山さん宅の裏山では、日本一早く咲く琉球寒緋桜(かんひざくら)が濃い緑の葉を茂らせている。瑞慶山さんが約二十年前から死んだ戦友の数だけ植樹してきた。今ではこの桜守(さくらもり)のため長生きしていると感じるという。

 「桜を見てみんなに沖縄戦を思い出してもらおうと。戦のこと忘れたらまた地獄が来ますよって」
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●中村敦夫さん、《経済的に弱い地域が犠牲になって危険を引き受ける構図は、原発も基地も同じだ》

2019年08月15日 00時00分07秒 | Weblog


東京新聞の記事【厚労相、東電に「慎重に」 福島第一 廃炉作業に外国人】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201905/CK2019052102000259.html)。
沖縄タイムスの記事【原発と基地「同じ構図」 俳優の中村敦夫さん、国の姿勢批判 朗読劇で危険性を告知】(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/423195)。
琉球新報のコラム【<金口木舌>切り捨てられる「端っこ」】(https://ryukyushimpo.jp/column/entry-923709.html)。

 《厚生労働省は二十一日、福島第一原発の廃炉作業に、新たな在留資格「特定技能」の外国人を受け入れる方針を表明した東京電力に対し、慎重な検討と検討結果の報告をするよう要請する通達を出した。根本匠厚労相は、廃炉作業の従事者には長期の健康管理が必要であるのに対し特定技能の外国人の大半が五年で帰国することに懸念を示した》。
 《朗読劇「線量計が鳴る-元原発技師のモノローグ」が23日から県内3カ所で開催…。中村さんは「経済的に弱い地域が犠牲になって危険を引き受ける構図は、原発も基地も同じだ」と訴えた》。
 《「宮古島は何かがあれば切り捨てられる『端っこ』なんだ」。宮古島市で自衛隊配備に反対する「てぃだぬふぁ 島の子の平和な未来をつくる会」の楚南有香子共同代表の言葉だ…▼楚南さんはその経緯から沖縄戦、現在の自衛隊配備までの流れを挙げて「ミサイルが配備され、標的になれば住民に逃げ場はない沖縄本島も同じだ」と訴えた》。

 東電核発電人災の尻拭い…《まさしく“奴隷労働”》。「親」会社の意向としては、廃炉作業には携わらせないらいしい…でも、「子」や「孫」、「ひ孫」…はネェ?

   『●東京電力の下請け、孫請け、ひ孫請け…
      核発電人災の後始末や廃炉作業に《特定技能の外国人の雇用》か?

 《権力にへたへた》しない中村敦夫さん、「経済的に弱い地域が犠牲になって危険を引き受ける構図は、原発も基地も同じだ」と訴えたそうだ。《経済的に弱い地域》、そして、外国人労働者のような弱い立場の人々への押し付け。

   『●浅野健一ゼミ企画シンポジウム: 報道と福島原発人災
   『●3.11東京電力原発人災から4年: 
     虚しき「地球にやさしいエネルギー原子力 人にやさしい大熊町」
   『●自公議員や原子力「推進」「寄生」委員会委員らは
                     「闘うみんな」ではないようだ
   『●「植民地気分」な日米共犯・両政府から
      「犠牲だけを強いられる沖縄」…両国に「真の文明」はあるのか?
   『●成田三樹夫さん、《権力にへたへたする役者じゃ意味がない。
                  …バカがどんどん図にのるんだよ、ハハハ》

   『●安仁屋眞昭さん《沖縄では民意よりも米軍が優先。
         沖縄の戦後は終わっていない》…何度事故・事件が起きようとも

 核発電所を《経済的に弱い地域》に押し付け、《標的の島》を沖縄本島与那国島石垣島宮古島などに押し付けて…。《誰かの犠牲の上でしか成り立たない社会》でいいのでしょうか?

 沖縄タイムスの記事【沖縄の中高生ら不戦の誓い 平和引き継ぐメッセージ朗読 「命どぅ宝」語り継ぐ】(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/426114)から:
   《…語り継いでいこう
    「命どぅ宝」
    あの日と同じ過ちを
    もう二度と
    くり返さない為に-》

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https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201905/CK2019052102000259.html

厚労相、東電に「慎重に」 福島第一 廃炉作業に外国人
2019年5月21日 夕刊

 厚生労働省は二十一日、福島第一原発の廃炉作業に、新たな在留資格特定技能」の外国人を受け入れる方針を表明した東京電力に対し、慎重な検討と検討結果の報告をするよう要請する通達を出した。根本匠厚労相は、廃炉作業の従事者には長期の健康管理が必要であるのに対し特定技能の外国人の大半が五年で帰国することに懸念を示した。

 根本氏は同日の閣議後の記者会見で「廃炉作業に特定技能外国人が従事するか否か、極めて慎重な検討を行う必要がある。日本人と同等以上の安全衛生管理体制の確立が必要」と述べた。

 通達は(1)除染作業の際、被ばく線量を管理できるようにすること(2)日本語や日本の習慣に不慣れな外国人に、安全教育や現場での注意喚起時は母国語を使って理解させることなどの検討を求めた。

 東電は四月、外国人の受け入れを表明。廃炉作業に関連する「建設」や「電気・電子情報関連産業」などを対象業種とするとしている。
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https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/423195

原発と基地「同じ構図」 俳優の中村敦夫さん、国の姿勢批判 朗読劇で危険性を告知
2019年5月23日 08:09

 元参院議員で俳優の中村敦夫さん(79)の朗読劇「線量計が鳴る-元原発技師のモノローグ」が23日から県内3カ所で開催されるのを前に、中村さんのトーク&サイン会が22日、ジュンク堂書店那覇店で開かれた。中村さんは「経済的に弱い地域が犠牲になって危険を引き受ける構図は、原発も基地も同じだ」と訴えた。

     (原発や沖縄について語る中村敦夫さん=22日、ジュンク堂書店那覇店)

 1998年に議員になって以降、チェルノブイリ原発事故が起きたウクライナを視察するなど環境や原発問題を提起し続けてきたという。「人類は生物の一種にもかかわらず、環境汚染や原発など生命を破滅するようなことをしている」と強調した。

 福島の原発事故が起きても、責任の所在や莫大(ばくだい)な事故処理費用の負担先などが明確になっていないとし、「肝心なところまでごまかす異常体質の国となっている」と指摘。問題の本質が埋没されないよう「表現者の一人として、告知する責任を感じた」と芝居を手掛けた理由を述べた。

 沖縄では、米軍が沖縄戦で上陸したまま今も続いて駐留しているのは「沖縄への差別。日本の他の地域との扱いの差があまりにも大きい」と指摘し「沖縄が独立してもおかしくない」と話した。

 福島の原発事故を語ることによって「沖縄に置かれている構図も同時に分かってもらえる」とし、沖縄県民に芝居を見てどう思うかを考えてもらいたいと来場を呼び掛けた。

 上演の日程は、23日が那覇市の桜坂劇場、24日が北谷町のちゃたんニライセンターカナイホール、25日が名護市民会館中ホール。開演時間はいずれも午後6時半。

 ……。
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https://ryukyushimpo.jp/column/entry-923709.html

<金口木舌>切り捨てられる「端っこ」
2019年5月24日 06:00
自衛隊 沖縄戦 金口木舌

 「宮古島は何かがあれば切り捨てられる『端っこ』なんだ」。宮古島市で自衛隊配備に反対する「てぃだぬふぁ 島の子の平和な未来をつくる会」の楚南有香子共同代表の言葉だ

▼琉球民族独立総合研究学会のシンポジウムで、楚南さんは1880年に政府が宮古、八重山を清(中国)に割譲する提案をしたことに触れた。先島が実際に分割されることはなかったが、日本が欧米諸国並みの中国内地通商権などを得るための代償にされるところだった

▼楚南さんはその経緯から沖縄戦、現在の自衛隊配備までの流れを挙げて「ミサイルが配備され、標的になれば住民に逃げ場はない沖縄本島も同じだ」と訴えた

▼沖縄戦を前に配備された日本軍(第32軍)は県民を守るためではなく、米軍を引き留めておく目的で配備された。住民保護の視点は欠落し、地上戦での犠牲者は日米合わせて20万人を超えた

▼防衛省が2012年、石垣島での戦闘を想定して島しょ奪回のため必要となる自衛隊の戦力などを検討していたことが分かっている。沖縄本島への地対艦ミサイル部隊の配備も検討されている

▼楚南さんは「『日本は戦争しないんだよねと子どもたちに聞かれても、すぐにそうだよと答えられないのがつらい」と語った。子どもたちの未来は切り捨て可能な「端っこ」ではない。県民全体で議論すべき課題だ。
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●軍隊は住民を守らない: 《情報保全隊…住民の調査・監視のほか、島嶼戦争の際の対スパイ戦任務も想定》…

2019年07月21日 00時00分34秒 | Weblog

[※ 『沖縄スパイ戦史』(三上智恵大矢英代共同監督) (LOFT)↑]



琉球新報のコラム【<金口木舌>75年前、隠された惨劇】(https://ryukyushimpo.jp/column/entry-950062.html)と、
【<社説>自衛隊の情報保全隊 国民に活動内容の説明を】(https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-950055.html)。

 《▼軍国主義の下で情報は統制され、「女性と子どもも潔く死んだ」と美化されて報じられた。権力が隠そうとしたのは南洋戦の実態だけではない軍隊は住民を守らないという正体も覆い隠された》。
 《宮古島市与那国町への陸上自衛隊の配備で、自衛隊の秘密情報を守るために編成された防衛相直轄の部隊「情報保全隊」が配置されていた。防衛省は住民らに説明していない。隠蔽体質がまたも露呈したとのそしりは免れない…情報公開請求で保全隊の情報を入手した軍事評論家の小西誠氏は部隊について、住民の調査・監視のほか、島嶼戦争の際の対スパイ戦任務も想定されると指摘》。

   『●「世紀の大悪法 特定秘密保護法案」
      『週刊金曜日』(11月15日、968号)についてのつぶやき
    「三宅勝久さん【「広報」を通さないと刑務所送り!? 元情報保全隊長
     法廷で漏らした記者監視という任務】、「「働きかけ」を監視」
     「記者も調査対象に」「あらゆる官庁が情報収集」。こんな法案が通ってしまうと
     …(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/a38306f4b58e0871400154b303996c38)」

 wikipediaの「情報保全隊」のページ(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%83%85%E5%A0%B1%E4%BF%9D%E5%85%A8%E9%9A%8A)を見てみると……:

 《情報保全隊(じょうほうほぜんたい)とは、陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊のそれぞれに置かれていた、情報保全業務のために必要な資料及び情報の収集整理及び配布を行うことを任務とする防衛大臣直轄部隊。「情報保全」は「Intelligence Security」、「Counter-Intelligence」の和訳とされており、防諜を意味する》
 《それまで、各自衛隊には「調査隊」という部隊が置かれていた。…2009年7月31日をもって廃止となり、翌8月1日付で防衛大臣直轄の自衛隊情報保全隊が発足(事実上の改組)した》
 《市民活動監視問題
 《日本共産党による批判…この内部資料は、本来任務たる「自衛隊に対する外部からの働き掛け等から部隊等を保全するために必要な資料及び情報の収集整理等」(内部統制)のためであるとして隊が行っていた情報収集(日本共産党、社会民主党、ジャーナリストなど報道関係者や、市民や聖職者による自衛隊イラク派遣反対の活動や反戦運動、また集会などの調査)を示すものであり、活動日時・場所・内容、活動に携わった団体の名称や活動の規模、活動団体の代表の氏名などについての調査結果、及びそれらの活動が自衛隊関係者または国民世論への影響や活動の今後の見通しの分析などが中心となっていた。
 共産党によれば共産党系を「P」、社民党系を「S」、民主党及び連合系を「GL」、新左翼系を「NL」、その他の市民運動を「CV」、個人その他を「その他」と分類し、その活動を記録するほか、活動内容の種類によっては、反自衛隊活動と分類し、適宜、自衛隊活動の正当性を強調する内容の脚注が付けられていた。
 公明党は調査対象にされていなかったことから、調査対象とされた団体・個人から「戦前の憲兵政治の再来だ」、「一般市民の活動を監視している」と批判される結果となった。調査の対象には消費税や年金の問題、あるいは春闘関連の集会、団体には地方議会までも含まれている、「自衛隊、防衛問題とは無関係でないか」とその正当性を問う批判も出ている》
 《社民党党首の福島瑞穂と同党議員の保坂展人は6月8日に市ヶ谷の防衛省を訪問し、防衛事務次官の守屋武昌に市民活動監視は不当・不法として抗議を行った。その際に守屋がキャンプ・シュワブでの基地移設反対運動についても、海自の情報保全隊が事後の情報収集を行っていると言及したと保坂は自身のブログで報告している。ただし、守屋は其の後の記者団との非公式会見ではこの事を否定しており、各社の報道は両論併記となった》

……以上のように、「情報保全隊」の防諜は、《「戦前の憲兵政治の再来だ」、「一般市民の活動を監視している」と批判》され、また、《沖縄でも沖縄弁護士会や沖縄平和運動センターなどの団体や個人が監視され、戦前の憲兵隊や特高警察を想起させるとの批判》が出ている。《市民集会や自衛隊、米軍に批判的な団体・個人の活動を監視》していた訳だ。《憲法で保障された表現の自由思想・良心の自由侵害するような活動許されない》のに…。

   『●「防波堤」としての全ての「日本全土がアメリカの「風かたか」」
                …米中の「新たな戦争の「防波堤」に」(その1)
   『●「防波堤」としての全ての「日本全土がアメリカの「風かたか」」
                …米中の「新たな戦争の「防波堤」に」(その2)
   『●米中戦争の「防波堤」:  
     与那国駐屯地による「活性化」? 「島民との融和」か分断か?
   『●「武力によって平和を創造することはできない」…
       「真の平和をつくっていく…「憲法宣言」を採択」
   『●「戦争マラリア」…いま再び自衛隊配備で先島諸島住民を分断し、
                      「戦争や軍隊の本質」の記憶を蘇らせる…
   『●沖縄デマによる市民の分断: 『沖縄スパイ戦史』の両監督
               …「反基地運動は中国のスパイ」デマも同根
    《 “戦争に備える軍隊”は、本当に人々を守るのか。…沖縄戦における
     少年ゲリラ兵、軍が住民を強制移住させた「戦争マラリア」の問題、
     本土から送り込まれた陸軍中野学校出身者の暗躍、そして、
     軍統制下での秘密保持と相互監視のもとで起きた住民虐殺の真相に迫る》

   『●「武力によって平和を創造することはできない」…
         「真の平和をつくっていく…「憲法宣言」を採択」
   『●現在進行形の「身代わり」: 「反省と不戦の誓いを…
             沖縄を二度と、身代わりにしてはならない」
   『●与那国島や石垣島、《沖縄は名護市辺野古だけでなく、
          宮古島もまた国防のために政府に翻弄されている》
   『●虚偽説明…《宮古島では、島民の基地負担は
      ますます重くなっている。政府がやってるのはいじめそのもの》
    「《いじめそのもの》。《石嶺香織さん(38)は「防衛省は、住民に事実を
     明らかにして説明する義務がある。『住民を守る』と言いながら、
     実際は安心できない生活環境を押し付けている沖縄戦の記憶から
     弾薬庫が真っ先に攻撃されるのは明らか再び島が標的にされる」と訴える》」

   『●石垣島陸上自衛隊ミサイル部隊配備:  
       《菩提樹》を切り倒すのか? ささやかな願いさえも打ち砕くのか?
   『●沖縄イジメ…《この74年間、沖縄戦以来、
      陸兵が軍服を着て宮古島を闊歩する姿など誰も見たことはない》


 「情報保全隊」は《情報保全業務》を担うが、《戦前の憲兵政治の再来》という批判もある。
 コラム<金口木舌>は《軍国主義の下で情報は統制され…美化されて報じられた。権力が隠そうとしたのは南洋戦の実態だけではない軍隊は住民を守らないという正体も覆い隠された》。
 いま南西諸島に自衛隊が配備されている…。《中国の海洋進出への対抗策というが、住民の安心をないがしろにして、地域の平和を守るといえるの? また、《“戦争に備える軍隊”は、本当に人々を守るのか》?

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https://ryukyushimpo.jp/column/entry-950062.html

<金口木舌>75年前、隠された惨劇
2019年7月8日 06:00
タピオカ テニアン 太平洋戦争

 那覇市や福岡市で同じ行列を見かけた。目的はタピオカ入りの甘いドリンク。全国で流行している。もちもちとした食感のタピオカの原材料はキャッサバ。沖縄や熱帯気候の地域で栽培される

▼30年間日本が委任統治した旧南洋群島のサイパン、テニアンなどでも移民した県人が生産していた。パラオにはタピオカ工場もあった。海の幸も含め自然の恵みは豊富で、移民者から南洋は楽園と呼ばれた

▼1944年、戦火が襲い、地獄に変えた。太平洋戦争が起きる3年前、南洋の県人は5万3千人を超え、現地住民の数を上回った。南洋戦の一般邦人死者数は約8千~1万人、このうち県人は約6千人とみられる

▼南洋から本土への引き揚げ船は次々に撃沈された。住民は味方と信じた日本軍から(ごう)を追い出され、食料を奪われた。米軍から辱めを受けるともすり込まれ、住民は崖から飛び降り、家族を手にかけた

▼南洋の組織的戦闘は7月7日に終結した。証言に触れるたびに、がくぜんとする。その後の1年間、同じ惨劇が沖縄や周辺の海で繰り返されたからだ。テニアンからは広島、長崎に原爆を投下する米軍機が飛び立った

軍国主義の下で情報は統制され、「女性と子どもも潔く死んだ」と美化されて報じられた。権力が隠そうとしたのは南洋戦の実態だけではない軍隊は住民を守らないという正体も覆い隠された
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https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-950055.html

<社説>自衛隊の情報保全隊 国民に活動内容の説明を
2019年7月8日 06:01

 宮古島市与那国町への陸上自衛隊の配備で、自衛隊の秘密情報を守るために編成された防衛相直轄の部隊「情報保全隊」が配置されていた。防衛省は住民らに説明していない。隠蔽(いんぺい)体質がまたも露呈したとのそしりは免れない。

 防衛省は3月、宮古島に新たに陸自駐屯地を開設、約380人の警備部隊を先行配備した。鹿児島県奄美大島にも駐屯地を開設し警備部隊と地対空地対艦ミサイル部隊を配備している。与那国島では2016年に約160人の陸自沿岸監視部隊が発足した。

 これらの部隊の配備に伴い宮古島と与那国で情報保全隊が発足していた。規模は数人程度という。奄美でも発足した。建設中の石垣駐屯地にも配置される可能性がある。だがこうした事実を防衛省は明らかにしてこなかった。地元からは不安や批判の声が出ている。無理からぬことだ。

 情報公開請求で保全隊の情報を入手した軍事評論家の小西誠氏は部隊について、住民の調査・監視のほか、島嶼(とうしょ)戦争の際の対スパイ戦任務も想定されると指摘している。

 情報保全隊は、従来は陸海空3自衛隊にそれぞれ編成されていたが、09年8月に統合された。自衛隊への攻撃に対する事前の情報収集や自衛隊員が外部の不審者と接触していないかといった調査を行うが、自衛隊のイラク派遣反対の活動をした団体や個人を監視していたことが07年に発覚し、大きな問題となった。

 イラク派遣反対活動の監視では16年、東北地方の住民が国に損害賠償などを求めた訴訟で、公表していない本名や勤務先の情報収集はプライバシー侵害で違法だと認めた判決が確定した。

 情報保全隊は那覇を拠点に県内でも活動している。防衛省は離島への配置について「内部管理が任務の部隊で、北海道から沖縄まで配置されている。与那国や宮古島が特別なわけではない」と話した。そうであればなぜ事前に地元に説明しなかったのか

 宮古島駐屯地では、住民に説明がないまま迫撃砲弾や中距離多目的誘導弾などの弾薬が保管されていた。与那国では弾薬保管の「火薬庫」を「貯蔵庫」と説明していた。基地問題や防衛政策に関する防衛省説明への不信や疑念は枚挙にいとまがない。今回も都合の悪い情報を隠していたのではとみられても仕方がない。

 情報保全隊は過去に各地で市民集会や自衛隊、米軍に批判的な団体・個人の活動を監視していたことが報告された。沖縄でも沖縄弁護士会や沖縄平和運動センターなどの団体や個人が監視され、戦前の憲兵隊や特高警察を想起させるとの批判が出ていた。

 憲法で保障された表現の自由思想・良心の自由侵害するような活動許されない。今回の配置を含めて、情報保全隊の活動内容をきちんと説明し、県民、国民の十分な理解を得ることは防衛省の最低限の義務である。
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●沖縄イジメ…《この74年間、沖縄戦以来、陸兵が軍服を着て宮古島を闊歩する姿など誰も見たことはない》

2019年04月10日 00時00分02秒 | Weblog

三上智恵監督『標的の島 風かたか』公式ページ(http://hyotekinoshima.com)より↑]



マガジン9の記事【三上智恵の沖縄〈辺野古・高江〉撮影日誌 第90回:島の色が変わった日 ~宮古島に陸上自衛隊がやってきた~】(https://maga9.jp/190403/)。

 《この74年間、沖縄戦以来、陸兵が軍服を着て宮古島を闊歩する姿など誰も見たことはない。だが軍事基地の島になることを望まない住民らのあらゆる抵抗も状況を止めることはできず、ついに陸上自衛隊始動の日が来てしまった》。

   『●与那国島や石垣島、《沖縄は名護市辺野古だけでなく、
          宮古島もまた国防のために政府に翻弄されている》
   『●虚偽説明…《宮古島では、島民の基地負担は
      ますます重くなっている。政府がやってるのはいじめそのもの》
    「《いじめそのもの》。《石嶺香織さん(38)は「防衛省は、住民に事実を
     明らかにして説明する義務がある。『住民を守る』と言いながら、
     実際は安心できない生活環境を押し付けている沖縄戦の記憶から
     弾薬庫が真っ先に攻撃されるのは明らか再び島が標的にされる」と訴える》」

 琉球新報の【<社説>宮古島ミサイル配備 同意なき建設計画撤回を】(https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-898848.html)によると、《陸上自衛隊の警備隊が配備された宮古島市上野野原の宮古島駐屯地に、住民に説明のないまま中距離多目的誘導弾(ミサイル)や迫撃砲が保管されていた。ミサイルを置かないよう求めていた地域住民を欺くだまし討ちであり、決して許されるものではない》。

 《虚偽説明》《だまし討ち》。《軍服》を着た集団が島民を分断、市民の内心をかき乱す。《石嶺香織さん…「…憲法に戦力は持たないと掲げているのに、こんな矛盾を子どもに説明できない。矛盾の最前線に立たされてしまった」》。宮古島に「標的の島」を押し付け。《石嶺香織さん…「…沖縄戦の記憶から弾薬庫が真っ先に攻撃されるのは明らか再び島が標的にされる」と訴える》。《敵の弾薬庫を狙わない作戦などない》…標的。《火器がある場所は必ず標的になる》。

   『●言いすぎを謝罪・撤回した石嶺香織宮古島市議…
       もはや「見せしめ」、「卑劣」なイジメ、あざとい「狙い」
   『●「防波堤」としての全ての「日本全土がアメリカの「風かたか」」
                …米中の「新たな戦争の「防波堤」に」(その1)
   『●「防波堤」としての全ての「日本全土がアメリカの「風かたか」」
                …米中の「新たな戦争の「防波堤」に」(その2)
   『●三上智恵さん「結局は止められなかった」という現実…
           でも、《人々は分断されている》ことを止めなければ
   『●米中戦争の「防波堤」:  
     与那国駐屯地による「活性化」? 「島民との融和」か分断か?
   『●「武力によって平和を創造することはできない」…
       「真の平和をつくっていく…「憲法宣言」を採択」
   『●「戦争マラリア」…いま再び自衛隊配備で先島諸島住民を分断し、
                      「戦争や軍隊の本質」の記憶を蘇らせる…
   『●沖縄デマによる市民の分断: 『沖縄スパイ戦史』の両監督
               …「反基地運動は中国のスパイ」デマも同根
   『●「武力によって平和を創造することはできない」…
         「真の平和をつくっていく…「憲法宣言」を採択」
   『●現在進行形の「身代わり」: 「反省と不戦の誓いを…
             沖縄を二度と、身代わりにしてはならない」
   『●石垣島陸上自衛隊ミサイル部隊配備:  
       《菩提樹》を切り倒すのか? ささやかな願いさえも打ち砕くのか?
   『●事実誤認の常習犯…《聞きたくない質問、
      都合の悪い質問を遮るような、その先に国民がいることを無視…》

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https://maga9.jp/190403/

三上智恵の沖縄〈辺野古・高江〉撮影日誌
第90回:島の色が変わった日 ~宮古島に陸上自衛隊がやってきた~


https://youtu.be/I3fePYc0WOk

 宮古島には地対艦ミサイル部隊、地対空ミサイル部隊、警備隊、合わせて800人規模になる陸上自衛隊駐屯地が開設される計画だが、3月26日、先発部隊の宮古警備隊380人による「編成完結式」なるものが行われた。この74年間、沖縄戦以来、陸兵が軍服を着て宮古島を闊歩する姿など誰も見たことはない。だが軍事基地の島になることを望まない住民らのあらゆる抵抗も状況を止めることはできず、ついに陸上自衛隊始動の日が来てしまった。

 沖縄本島に住んでいると、米兵はもちろん、自衛隊駐屯地のある那覇空港周辺や南部などで、自衛隊員の姿は目に入る。軍服を着た集団を見ることへの免疫はあるほうだと思う。でも、軍事基地と無縁だった宮古島や石垣島の人にとって「迷彩服に軍帽」のいでたちというのは、身じろぐ対象だというのも、これは全くそうだと思う。親戚に自衛隊員がいるご家庭も多い。でも他府県の駐屯地にいるので視覚的にはあまり馴染みはない。島の活性化や災害救助も考えれば、受け入れてもいいのではないかと考えた島民も少なくはないと思うが、いずれにしても3月に港から軍事車両が続々と島に上陸してきたときに、宮古島の人々は度肝を抜かれたという。それらが島の道を走り、迷彩服の青年たちがコンビニにいる風景がいきなり出現してしまった。自衛隊の是非など考えてもいなかった人にも、ついに日常を塗り替える光景が目の前に展開され始めた。島の色が、変わったのだ

 私は意を決して、この前までグリーンのネットに囲まれた「千代田ゴルククラブ」だった敷地に入った。「陸上自衛隊宮古島駐屯地」という立派な看板が掲げられ、入り口付近にはいくつかの監視カメラが目に入る。パリッとした緑色の迷彩服をつけた広報担当の方が「三上さん…ですね?」と迎えてくれた。市ヶ谷から応援できているそうで、物腰も柔らかく頭脳明晰な印象だった。北海道ではヘリのパイロットもしていたというので、陸自に配備されるオスプレイはここにも飛んでくるんですよね? といきなり聞いてみたが、「宮古島に配備される計画はありません」と規定通りの回答。

 「沖縄本島にいるとオスプレイ、嫌いになっちゃうんですけど…。陸自でヘリのパイロットをされているなら、そのうちオスプレイ搭乗ってこともあるんですか?」と聞くと「はい、可能性はあります」と即答した。「シミュレーターで操縦したことはあるんですが…。優秀ないい機材ですよ」と屈託のない笑顔で答えた。

 やがて報道陣はできたての体育館に案内された。そこには「編成完結式」を待つ380人の隊員とゲストがすでに整列していた。式典の目的は、発足する宮古警備隊と諸部隊の士気高揚・団結強化、島民との一体感の醸成だそうだ。そういう割に、島から式典に招待されたのは下地宮古島市長と野津自衛隊協力会会長くらいしか見つけられなかった。たった20分の短い式だったが、独特の号令が叫ばれ、君が代が歌われ、撮影している体の軸が一瞬崩れそうになる。軍ではない、自衛隊だ。軍服ではない、隊服だというかもしれない。でも目の前に広がる光景はどう言い換えたって、日の丸に向かって敬礼し、君が代を歌う数百人の軍服集団。この島で展開される太平洋戦争以来の光景であり、そして彼らは今後、これからずっとこの島に駐留するのだ。眩暈がする。でもそれが現実なら、しっかり伝えなければならない。そのためにプレスの腕章つけてここにいるのだ、個人の感傷などどうでもいい、と自分を叱咤してカメラモニターに集中する。

 お祝いに駆け付けた下地市長が登壇。日の丸にお辞儀をした後、隊員に向かってアドリブだったのか、いきなり敬礼をした。返礼はなく、何となく会場が凍り付いたように感じた。下地市長は「災害に強い、安心・安全な宮古島…」などと祝辞を述べていたが、実はこの日重大な事実が分かった。市長は祝福ではなく怒り狂うべき日だったのだ。この千代田地区に駐屯地が選定され、受け入れるときの条件に「ヘリパッドや弾薬庫など、住民が不安を抱くものここにはおかないという約束があった。2016年9月2日、宮古島市役所を訪れた若宮防衛副大臣のその言葉を受け、「弾薬庫がない、隊員の宿舎や福利厚生施設がメインと聞いて安心しました」と言って受入れたのは下地市長本人だ。しかしこの日、なんと宮古島駐屯地にミサイルを置くということが分かったのだった。

 弾薬庫は置かないと言った2016年の動画を短く再編したので見てほしい。その後、弾薬庫と覆土式の射場は島の南東の端に当たる保良地区に作るということになり、住民が反対しているわけだが、平良市街地に近いこの場所には「弾薬庫は作らない約束は生きていた。



https://youtu.be/1HNNOSYheFM


 ところが、今回の動画にもあるとおり、ピラミッド型の、どう見ても弾薬庫という建造物ができてきて、いやミサイルは置かないが警備隊の所持する89式小銃などを保管する「保管庫」はつくるのだ、と説明は一転した。敵の弾薬庫を狙わない作戦などない火器がある場所は必ず標的になるのだから、弾薬庫の有無に住民はとことんこだわってきたのだ。ところが小銃の保管どころではなかった。この式典の前後に私と数人の記者で担当者にいろいろ聞いている中で、小銃のどんな弾を置くのか? ほかには何か置くのか?と聞いたところ「中距離多目的誘導弾は警備隊が運用するので、その誘導弾は保管します」という。「え? この敷地内ですか?」と思わず聞き返した。今年度中に設置される地対艦・地対空ミサイル部隊の「ミサイル」は保良の弾薬庫に置かれる予定だという。しかし、そのミサイル部隊というのは西部方面隊直轄の大砲も備えた勇ましい部隊で、我々第15旅団配下の、地域密着型の警備隊とは種類がだいぶ違うのです、ということだった。だから彼らの弾は保良に。でも我々の誘導弾はここに置くと。もちろん誘導弾とは、ミサイル

 第15旅団のHPを見ると真っ先に飛び込んでくる「県民のために」というキャッチコピー。そして緊急患者空輸の数、不発弾処理の数が大きく掲示され、沖縄県民の安心と安全に寄与していることが強調されている。確かに離島を抱える沖縄県でドクターヘリがカバーできないところを自衛隊が担ってくれていることに感謝しない県民はいない。不発弾だってまだ莫大な量が地中に眠る中で、自衛隊の皆さんの専門知識があって初めて安全に処理されている。自然災害にとどまらず、自衛隊の沖縄県内での活動に期待される部分は大きい。しかしそれと、南西諸島の軍事要塞化ははっきり分けて考えなければならない。かたや完全に県民の安全のため、しかしミサイル部隊を新たに島々に配置していく今の戦略構想が誰の安心のためなのか は大いに疑問が出ているからだ。

 つまり、今回ミサイル部隊に先駆けて一足早く発足した「宮古警備隊」は、第15旅団の配下であるから地域密着型で、あとから来るミサイル部隊とは性格も役割もかなり違うということらしい。島民の安全を支える、地域と連携する、住民と向き合ってくれる部隊のようだ。そして小銃、機関銃・多目的誘導弾という装備は何に使うのか? と聞いたところ、近接戦闘に対応する部隊なのだと説明があった。不審者、島へのテロ部隊の侵入などあれば接近戦をするのはミサイル部隊ではなく警備隊の仕事。そして最悪の事態、つまり敵が上陸してきたときには接近戦で真っ先に対処するのもこの警備隊だという。

 「ちょっと言い方は悪いけれどこういうことですか?」と私は前置きをして聞いてみた。

 「地対艦ミサイルや地対空ミサイルが抑止力としてもはや機能せず、敵が砲弾を降らせ接近し上陸してきたら、皆さん警備隊が島の上で闘う。せん滅されたら、水陸機動団が島を奪還しに来るわけですね。皆さんは、最初に犠牲になっちゃう部隊ということですか」

 「まあ、そうならないように事前にあらゆる手は打つわけですけれどね」と苦笑した。

 私はいよいよ彼らが気の毒になってきた。私はこの2年、改めて映画製作のために沖縄戦のことばかり考える日々を送ってきたせいか、米兵の上陸と、貧弱な火器で対処させられた日本軍の哀れな陸戦の映像が脳裏に叩き込まれている。山にこもってゲリラ戦をするしかなかった少年兵や、最後まで援軍が来ると信じて住民に協力を強いた無頼漢たちや、あらゆるイメージがあふれ出す。パリッとした迷彩服を着たこの隊員たちには、私の頭に広がる沖縄戦の悲惨な具体的なイメージはほぼないだろう。自衛隊と旧日本軍を一緒にするなとまず言われるだろう。作戦も装備も全く違う、お話にならないと。

 でも、そうだろうか。上陸される事態というのはもう、制空権も制海権もない状態だ。孤立した軍隊は奪還部隊を待つわけだが、食糧は? 水は? どこか安全な場所に住民が隔離されて充分な食糧と水が与えられるという想像は、今の私には全くできない。そもそもこの島がミサイル攻撃の拠点でさえなければ、攻撃対象にもならないだろう。制圧すべき敵の軍隊がいない島なら上陸する必要がない。よもや上陸されても戦闘がなければ犠牲者はでない。沖縄戦では軍隊が駐留していなかった島には死人は出ていない。だから、ミサイル部隊はどんなに「安心のため」と言われても「誰のための安心ですか?」と反問せざるを得ないのだ。

 そんな、不安に胸が張り裂けそうな住民たちが、早朝から駐屯地のゲートの前に集まっていた。宮古島駐屯地の田中広明司令官に直接抗議文を手渡したいと、前日から広報担当者に申し入れをし、9時半くらいに式典が終わった後に対応するという話だったようだが、その場所を巡って押し問答になっていた。ここまで出てきて受け取るということはできない規則だという。代表者数名が中に入って記者も入れずに…という広報官の提示に、集まった人たちは納得できない。なぜここに顔を見せて、みんなが抱えている不安に正面から受け止めてくれないのか。なぜ代表者だけと制限をつけるのか。口惜しさが募って声を荒らげる場面もある。対応した自衛官の困惑の表情を見たら、誰でも気の毒に思うだろう。けれども、自衛隊が来ると決まってから、この4年間に島の人々が味わってきた驚きと不安と怒りと屈辱は並大抵ではなかった。それはこの連載で過去の経緯を振り返っていただければわかってもらえると思う。決して今回の動画だけで、反対運動が過激などと判断しないでいただきたい。

 住民の不満は弾薬庫の件だけではない。軟弱地盤や活断層の存在が指摘されているのに調査もされないこと、地下水の汚染が命取りになる島なのに防衛省の対応はこれまではぐらかしやごまかしだらけだったこと、島に入ってきたと同時に弾薬庫の上から住民を監視していること、迷彩服のまま市街地に出てきて住民が怖がっていること…。そんな住民の切実な訴えに警備隊隊長であり駐屯地司令官である田中隊長がどう向き合ってくれるのか。しかし早朝から待っていた住民に姿を現したのは児玉副隊長だった。

 そのやり取りは動画を見てほしい。つらくなる場面も多かった。私は両方の気持ちがわかるなんて安易なことは絶対に言うつもりはない。ここにあるのは住民VS自衛隊員という二項対立では決してないから、「両方」とか「どっちの見方もできる」とかいう言葉は不用意に使うべきではない。そういう「中立」があるかのような架空の地点から発話するのは問題の所在を見えにくくする有害な行為だ。自分の畑の目の前が駐屯地の正面ゲートになってしまった野原の農業・仲里盛繁さんも繰り返していたように、「自衛隊員に対して怒りも憎しみもない。ミサイル基地を持ってこられることに抗議している」のであって、対峙している相手は住民不在で推し進めてきた防衛省や現政権だ。

 しかし、いざ目の前で職務についている隊員たちに向き合った時に、怒りの拳は行き先を失い宙を泳ぐ。矛先は彼らではないとわかってはいる。隊員たちは家族も連れて、新しい環境で、海がきれいだけど歓迎されていないという話も聞いている南の島で、恐る恐る生活を始める妻や子どもを抱えているのだ。幕僚たちが米軍とどんな戦略を練っているのか、そんな話は知る由もない隊員たちは、島の役に立ちたい、溶け込みたい、島を守りたいし誤解は(誤解であるかどうかはさておき)解きたいと願っているだろう。そのためにこの後あらゆる努力を重ねるのだろう。

 宮古に限らず沖縄の島々では、一緒に生活をする覚悟で島外からきた人に対してどこより温かい歓迎を示してきたし、職業によって差別するつもりなど毛頭ない。だから来てくれたのなら分け隔てなく受け入れたいのだ。けれど。人間対人間として地域に受け入れようと実践しながら、基地の存在や内実については抗議の声を上げ続けるという技は、とてつもなく難しい。追い返せなかった以上、望まずとも「共存」は始まった。毎日心に棘を出していたら自分も傷つけてしまう。だからその棘をしまう。和らげる。地域行事を率先して手伝ってくれる隊員に感謝もしたい。ママ友になり、「自衛隊の子」なんて意識もせず一緒に遊ぶ子どもを世話する。いがみ合う相手ではない。もちろんそうだ。そして「反対運動」も「運用の監視」・「情報収集や抗議」もやる気持ちは萎えていく。

 4人の子供を抱えて反対の先頭に立ってきた石嶺香織さんはこの日、いつもの元気はなかった。「これから一緒に暮らす人たち。うちの子の友達のお父さんになる人たち。この人たちが敵ではないのはもちろんだけど…。今の反対運動のやり方では島の人たちの気持ちは離れて行ってしまうかもしれない」と肩を落とした。

 「迷彩服とか軍事車両とかそういうものを子どもに見せたくないから、反対運動をしてきたのに。だから子どもを連れて現場に来るのが辛くなってきた。憲法に戦力は持たないと掲げているのに、こんな矛盾を子どもに説明できない。矛盾の最前線に立たされてしまった

 「出来てしまった施設に声を上げ続けるのはしんどいね」と、野原出身の上里清美さんは苦しそうに言う。メガホンを持つときには強い口調で気丈に抵抗の言葉をぶつけていた彼女だったが、一対一で話す声は細く、心はかなり痛手を負っていることが伝わってきて苦しくなった。

 「だから私、伊江島に行ってきたの。あそこが(軍事基地と県民が対峙する)原点だと思ってさ」

 「もう配備されてしまった軍隊と、このあとどうやって闘えばいいのか知りたくて。きっとこの闘いは長く続くでしょ。住民が分断されないためにはどうしたらいいか。これから自衛隊ももっとたくさん来て、米軍も来て、となったときに自分の感情をどうコントロールできるのかわからなくて。ちゃんと精神を保ちながら戦うのはどうしたらいいの? と伊江島に教わりたくて行ってきたんだけどね」

 「もう、人間らしく闘うということしかないね。人間らしーく。人として生きながら。相手にも接しながら。それしかないのかなっていうことを思いますね」

 阿波根昌鴻(あはごんしょうこう)さんに象徴される伊江島の闘い。沖縄戦の後、真っ先に土地も畑も米軍に取り上げられた伊江島の住民たちはその惨状を県民全体に訴えるために沖縄本島でムシロ旗を掲げて「乞食行進」をした。そして島では完全非暴力で、農民の誇りを失うことなく堂々と抵抗を続け、そのあと次々に勃発する沖縄基地闘争の手本となった。この闘いとて「勝った」わけではない。伊江島は今現在も米軍基地だらけだ。しかし「負けてもいない抵抗の旗を降ろしてもいないし、辺野古に、高江に、宮古に、石垣に、その精神は確実に受け継がれているから。

 2019年、平成だ令和だと騒いでいる今現在、1955年の伊江島の闘いを振り返って、力を振り絞って野原に立つ女性がいる。彼女が草を摘んで遊んだ野原が、彼女を潤した井戸が、彼女が拝む神さまが住む森は、自衛隊基地になり、奪われ、踏みにじられてしまった。沖縄本島に戻ってこの情景を見ないで大半の時間を過ごす私には、彼女の味わう悲しみの百分の一も背負ってなどいない。私の憤り、悔しさの数千倍の中に野原の人たちはあるのだろう。そして、それは1955年に伊江島の人たちが味わった屈辱や絶望と大差ないことに愕然とする。沖縄県民のささやかな生活は、64年経ってもかくも見事に脆く、米軍統治下でなくなってもなお、民主主義も司法の救いも届かない。なんなんだ、これは!

 「平成が、その名の通り平和の裡に終わってよかったです」という女性タレントの言葉で我慢も限界、テレビを切った。しかし怒っている場合ではない。出来てしまった基地に対して抵抗を続けるという苦しい技を、伊江島も、辺野古も、高江もやっている。あきらめてしまったら、じゃあ、とどんどん負担を増やされるだろう。だから宮古島も今年度やってくるミサイル部隊に抵抗し、保良の弾薬庫を造らせない闘いをし、ここは使えない基地だと国にあきらめて作戦を変更してもらう。それを目指すしかない。一部工事が始まった石垣島にも繋がる、島人が望まない軍事化を止める行動を構築していかなくては。

 今回、宮古島に駐留する自衛隊員たちと直に接して一番驚いたことは、予想よりずっと人間として、誠意をもって私たちに向き合う姿勢を持ってくれていると知ったことだ。これまで説明会などで接してきた防衛省の役人とは大違いだった。私は数年来、講演会で公言しているが、自衛隊員や、機動隊員や海上保安庁の海猿たちや、基地建設を巡って対峙してしまう職業の人たちについて、彼らの仕事の尊厳も命も守りたいと思う。彼らは自ら誇りに思い、国民から感謝される仕事をするべきであり、そのために日々の鍛錬をしてくれているはずなのだ。そうでないなら私たち有権者が、「お互いを苦しめる間違った仕事を命じる狂ったシステム」を変えるべきなのだ。そのためにも、住民の側から見えにくい自衛隊の仕事や隊員の置かれている状況についても取材して知らせていく仕事をしようと思う。私にできることはあまりに小さい。でも宮古島の嘆きに向き合い続けたい。決して逃げたくはない。
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●与那国島や石垣島、《沖縄は名護市辺野古だけでなく、宮古島もまた国防のために政府に翻弄されている》

2019年04月04日 00時00分59秒 | Weblog

三上智恵監督『標的の島 風かたか』公式ページ(http://hyotekinoshima.com)より↑]



AERAの桐島瞬氏による記事【宮古島の軍事要塞化に募る懸念 有事に「島中が敵の標的」リスクも】(https://dot.asahi.com/aera/2019031900089.html)。

 《宮古島への陸上自衛隊配備が3月中に始まる。だが島が軍事要塞化していくことへの島民の懸念は消えない》。

 宮古島や石垣島に《標的の島》を押し付けて恥じぬ「本土」…。《アメリカが中国の軍事的脅威に対抗すべく打ち出した「統合エアシーバトル構想》…宮古島など南西諸島を番犬様らのために差し出し、「防波堤」にしようとしています。与那国島や石垣島、《沖縄は名護市辺野古だけでなく、宮古島もまた国防のため政府に翻弄されている》。
 記事によると、宮古島の隊庁舎の現場でも《地盤の硬さを示すN値がゼロでマヨネーズ状だ》そうですよ。辺野古破壊の現場と同じ。防衛省は正気なのでしょうかね?

   『●言いすぎを謝罪・撤回した石嶺香織宮古島市議…
       もはや「見せしめ」、「卑劣」なイジメ、あざとい「狙い」
   『●「防波堤」としての全ての「日本全土がアメリカの「風かたか」」
                …米中の「新たな戦争の「防波堤」に」(その1)
    《しかし、三上監督は最新作『標的の島 風かたか』で、さらに切迫した
     問題を沖縄から日本全国へ提起する。それは現在、安倍政権が
     進めている石垣島、宮古島、奄美大島、与那国島への
     大規模な自衛隊とミサイル基地の配備についてだ。政府は南西諸島の
     防衛強化を謳うが、その実態はアメリカが中国の軍事的脅威に
     対抗すべく打ち出した「統合エアシーバトル構想」にある》

   『●「防波堤」としての全ての「日本全土がアメリカの「風かたか」」
                …米中の「新たな戦争の「防波堤」に」(その2)
   『●三上智恵さん「結局は止められなかった」という現実…
           でも、《人々は分断されている》ことを止めなければ
    「マガジン9の記事【三上智恵の沖縄〈辺野古・高江〉撮影日誌 第71回:
     高江から宮古島へ~雪音さんと育子さんからのエール~】(…)」
    《『標的の村』の主人公、高江の安次嶺雪音さんと伊佐育子さんだ。
     …そう思って特集を連打し、放送用ドキュメンタリーの限界を超えよう
     と映画にまでして突っ走ってきた私は、「結局は止められなかった
     という現実に、正直に言ってまだ向き合えていない。…でも、
     ひしゃげている私にもわかることがある。これから自衛隊の
     ミサイル基地建設着手、という局面を迎える宮古島石垣島で、
     何とかそれを止めようともがく人々にとって、
     高江の人たちは大事な存在になるということだ》

   『●米中戦争の「防波堤」: 
     与那国駐屯地による「活性化」? 「島民との融和」か分断か?
   『●「武力によって平和を創造することはできない」…
       「真の平和をつくっていく…「憲法宣言」を採択」
   『●「戦争マラリア」…いま再び自衛隊配備で先島諸島住民を分断し、
                      「戦争や軍隊の本質」の記憶を蘇らせる…
    《島中央部では、陸上自衛隊宮古島駐屯地(仮称)の隊舎などの工事も始まり、
     近い将来、警備部隊やミサイル部隊などが配備される。
     「島では軍隊と『カジノ』がやってくるとささやかれています」。駐屯地前で毎朝、
     抗議活動をしている上里清美さん(62)が皮肉交じりに語る》

   『●沖縄デマによる市民の分断: 『沖縄スパイ戦史』の両監督
               …「反基地運動は中国のスパイ」デマも同根
    《一方、安倍首相は基地負担軽減に全力を尽くすと述べた。嘘だ
     政権に辺野古新米軍基地の建設強行を止める気配は微塵もない。
     石垣島、宮古島、与那国島への大規模な自衛隊とミサイル基地の
     配備も推し進めており、石垣市では中山義隆市長が7月18日に
     陸自配備受け入れの方針を正式に表明した》

   『●「武力によって平和を創造することはできない」…
         「真の平和をつくっていく…「憲法宣言」を採択」
    「《石垣島宮古島への陸上自衛隊配備などを念頭に
     「沖縄の基地負担への影響が大きい」》…壊憲が及ぼす影響は、
     沖縄では計り知れない。「森」を殺し、「美ら海」を殺し続け、沖縄の
     市民を分断、基地から出撃する番犬様は「人」を…。
       沖縄の地で、《「武力によって平和を創造することはできない」とし、
     日本国憲法の精神米軍基地のない平和を求める沖縄の心
     大切にし、真の平和をつくっていくことを掲げた「憲法宣言」を採択》
     にも肯ける」

   『●現在進行形の「身代わり」: 「反省と不戦の誓いを…
             沖縄を二度と、身代わりにしてはならない」
    《先島諸島と呼ばれる沖縄県南西部の島々が自衛隊配備で揺れて
     います。蘇るのは戦争による悲劇の記憶です…宮古島には
     七百人規模、石垣島には六百人規模のミサイル部隊と警備部隊を
     配備する計画です。地元では…住民の意見は割れているのが実情です。
     …有事には自衛隊が標的にされ、周辺住民が巻き込まれると心配する
     声が聞こえてきます。底流にあるのは先の戦争の悲惨な記憶です。
     大戦末期、米軍の攻撃を避けるため、この地域の住民はマラリア発生
     地帯への疎開を軍部によって強制され、多くの人が罹患して亡くなり
     ました。患者数は当時の人口の約半数とも言われています。同じく
     大戦末期には、軍命により石垣島から台湾に疎開する際、船が米軍に
     攻撃され、多くの犠牲者が出ました。
     自衛隊配備でこうした戦争の記憶が蘇るのです》

   『●石垣島陸上自衛隊ミサイル部隊配備: 
       《菩提樹》を切り倒すのか? ささやかな願いさえも打ち砕くのか?
    「子どもさへSLAPPSLAPP)する国・ニッポン。こんな国でいいのですか?
     宮古島石垣島に《標的の島》を押し付けて恥じぬ「本土」…。
     答えは一つだけではない」

   『●事実誤認の常習犯…《聞きたくない質問、
      都合の悪い質問を遮るような、その先に国民がいることを無視…》
    《進む米軍との一体化、つけは子どもたちの世代へ…弾一発1.6億円する
     巡航ミサイルの導入、護衛艦いずもの「空母化」など、専守防衛を
     逸脱する動きは加速し、沖縄本島には新たにミサイル部隊が配備され、
     宮古島には巨大な弾薬庫をつくることが決まりました》

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https://dot.asahi.com/aera/2019031900089.html

宮古島の軍事要塞化に募る懸念 有事に「島中が敵の標的」リスクも
桐島瞬 2019.3.21 17:00 AERA #沖縄問題

 宮古島への陸上自衛隊配備が3月中に始まる。だが島が軍事要塞化していくことへの島民の懸念は消えない。

【弾薬庫が置かれる保良の射撃訓練場は、集落の目の前】

*  *  *

「3月2日、平良港に100台ほどの陸上自衛隊車両と50人ほどの隊員を乗せた船が入ってきました。いよいよ来たかという感じです」

 宮古島への陸自配備に反対する市民で作る「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」の清水早子事務局長は、怒りを含んだ声でそう話した。

 沖縄は名護市辺野古だけでなく、宮古島もまた国防のために政府に翻弄されている。宮古島など南西諸島への陸自部隊配備は、2013年12月に閣議決定された防衛計画の大綱中期防衛力整備計画で打ち出された。中国の海洋活動の強化や核・ミサイル開発を進める北朝鮮の動きを念頭に、空白地域となっている南西諸島に部隊やミサイル配備を進めるのが狙いだ

 計画では、奄美大島宮古島石垣島に、警備部隊、地対艦(空)誘導弾部隊を合わせて合計2千人規模で配備を進める。このほか与那国島には、すでに16年3月から160人規模の沿岸監視隊が置かれている。

 宮古島に造られるのは2カ所の施設だ。島の中央部に近い上野野原に隊庁舎、東側の保良鉱山跡地に弾薬庫や射撃訓練場を置く。このうちの隊庁舎がほぼ完成し、今月26日には開所式が開かれる予定だ。

 だが、問題も多い。防衛省が調べた建設現場の土質調査結果を琉球大学工学部の複数の研究者などが分析したところ、地盤の硬さを示すN値がゼロでマヨネーズ状だと分かった。同じ軟弱地盤は、米軍普天間飛行場の移設先となる名護市辺野古の建設現場でも表面化し、改良工事を行うことが決まったばかり。

 土質調査資料を分析した土木技術者の奥間政則氏が説明する。

「700トンの燃料保管施設が置かれる地下部分に、軟弱地盤と空洞が見つかりました。島には活断層が走り地震が多いため、揺れで施設が傾くなどのリスクがある。島の水源は地下ダムですが、地震で燃料タンクが損傷して油漏れが起これば、深刻な影響を及ぼすことになります」

 また、これから工事が始まる保良地区では、防衛省の住民説明会が行われるより前の17年12月に部落会が建設に反対する決議を出している。昨年11月には防衛省との間で交渉が行われたが、納得できる説明は得られなかった。保良地区で基地に反対する住民の会の活動をする下地博盛氏が言う。

「基地から保良の集落まではわずか200メートルほど。弾薬が暴発したら住民が身の危険にさらされます。ところが、防衛省に弾薬の保管量や集落との安全が保たれる保安距離を尋ねても『機密に触れるから具体的な内容は言えない』の一点張り。建設容認など到底できません」

 さらに清水氏は、島の軍事要塞化に危機感を募らせる。

「内閣府は平良港を大型クルーズ船が接岸できるよう整備することにしましたが、これは米軍の護衛艦が接岸できるようにするためだとも言われています。上野野原の隊庁舎には弾薬を保管することも最近分かりました。軍事施設が広がれば有事の際に島中が敵の標的になる。建設容認派は声を上げても変わらない現状に諦めただけで、本音は反対の人が多いのです」

 一方、防衛省は軟弱地盤について、「関係法令に基づいて適切な建設工事をしている」と安全性を強調。隊庁舎の弾薬庫は「警備に必要な小銃弾などを安全に保管するための保管庫。誘導弾を保管する弾薬庫は整備しない」(報道室)と話す。

 沖縄県議で宮古島の自衛隊配備の問題に取り組む亀浜玲子議員が言う。

「防衛省は当初、造成工事だけ進めると話していたが、納得いくような住民説明もしないまま結局は基地を造ってしまった建設ありきのこうした姿勢を許すことはできません」

(ジャーナリスト・桐島瞬

※AERA 2019年3月25日号
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●石垣島陸上自衛隊ミサイル部隊配備: 《菩提樹》を切り倒すのか? ささやかな願いさえも打ち砕くのか?

2018年12月20日 00時00分19秒 | Weblog

[※ 『沖縄スパイ戦史』(三上智恵大矢英代共同監督) (LOFT)↑]



マガジン9のコラム【三上智恵の沖縄〈辺野古高江〉撮影日誌 第85回:地図の上から島人の宝は見えない~市民投票に立ち上がる石垣の若者たち~】(https://maga9.jp/181121-1/)。

 《もう一つはまだ条例制定の署名が始まったばかりだが、石垣島への陸上自衛隊ミサイル部隊の配備の賛否を問う石垣市民だけの住民投票…。…つましい生活を守りたいだけの、人々のささやかな暮らし削るショベルカーは、ずっとこの地域で唸り声をあげている。なんて無力なんだ…魅力や可能性を感じる新しい力が結集してきたことに希望を感じた。それは、今回石垣市民投票の立ち上がりを目の当たりにして、なおさらはっきりと感じた》。

   『●三上智恵さん「結局は止められなかった」という現実…
           でも、《人々は分断されている》ことを止めなければ
    「マガジン9の記事【三上智恵の沖縄〈辺野古・高江〉撮影日誌 第71回:
     高江から宮古島へ~雪音さんと育子さんからのエール~】(…)」
    《『標的の村』の主人公、高江の安次嶺雪音さんと伊佐育子さんだ。
     …そう思って特集を連打し、放送用ドキュメンタリーの限界を超えよう
     と映画にまでして突っ走ってきた私は、「結局は止められなかった
     という現実に、正直に言ってまだ向き合えていない。…でも、
     ひしゃげている私にもわかることがある。これから自衛隊の
     ミサイル基地建設着手、という局面を迎える宮古島石垣島で、
     何とかそれを止めようともがく人々にとって、
     高江の人たちは大事な存在になるということだ》

 アベ様らの何が何でも破壊する愚行を、何とか止めたい。
 《辺野古の基地建設の是非を問うもの…その前段に沖縄全体でこれから取り組む県民投票について触れないわけにはいかない。しかし、この話題になると私は筆が進まない》…「本土」からではありますが、ブログ主も《県民投票》に対してどうしても前向きになれなかったのですが…このコラムを読んでみて、少し気が変わってきました。何とか良い方向に向かってほしいと思います。

   『●普天間米軍のCH53E大型輸送ヘリの窓落下…
      「子どもを園庭で遊ばせたい」「当然の日常がほしいだけ」
    「米軍普天間飛行場所属のCH53E大型輸送ヘリの窓が落下…
     しかも、子供たちの居た小学校の校庭に。沖縄の人々、特に、
     子を持つ親としての願いは、《子どもを園庭で遊ばせたい
     《当然の日常がほしいだけ》。そんなささやかな願いさへ、
     いつまでたっても叶わない、沖縄」

 平気で、幼き娘さんの愛する《菩提樹》を切り倒すのか? とても、とてもささやかな願いさへも打ち砕き、人々を分断してゆく…。子どもさへSLAPPSLAPPする国・ニッポン。こんな国でいいのですか? 宮古島石垣島に《標的の島》を押し付けて恥じぬ「本土」…。答えは一つだけではない。

   『●子供にもSLAPPする国: 三上智恵監督
     ・映画『標的の村 ~国に訴えられた沖縄・高江の住民たち~』


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https://maga9.jp/181121-1/

第85回:地図の上から島人の宝は見えない~市民投票に立ち上がる石垣の若者たち~三上智恵
By 三上智恵  2018年11月21日



《石垣島住民投票へ》(https://youtu.be/XvwN9PRLP1s

 今、沖縄では二つの住民投票の手続きが進んでいる。いずれも軍事基地の建設に絡むものだが、一つは、辺野古の基地建設の是非を問うもので、すでに10月30日に公布された県民投票条例に基づいて来年2月に実施予定。そして、もう一つはまだ条例制定の署名が始まったばかりだが、石垣島への陸上自衛隊ミサイル部隊の配備の賛否を問う石垣市民だけの住民投票だ。

 今回は、たぶん全国にはほとんど伝わっていないけれど、とても面白いことになっている石垣の住民投票のことを書くつもりなのだが、その前段に沖縄全体でこれから取り組む県民投票について触れないわけにはいかない。しかし、この話題になると私は筆が進まない。だからマガジン9の読者の皆さんにも、今年5月から署名が始まっているのにその動きを全くお伝えできていない。それはなぜなのか。少し書いてみる。

 この4年の流れを思い出してほしい。何があっても辺野古は造らせないと公約した翁長雄志知事が当選し、国政選挙では辺野古容認の議員がゼロになるほどはっきり民意を示しても政府は全く態度を変えなかった。次の手段は埋め立て承認の取り消しだったが、その効力を国に取り消され、県と国の対立構造は深まり、法廷闘争になっていく。並行して取り組まれたあらゆる行政、市民運動各レベルの抵抗。国内外の学者文化人からの応援も、全国から辺野古基金へのカンパも集まった。しかし、国はさらに圧力を強めて高江ヘリパッド工事の強行リーダーらの不当逮捕に長期拘留と抵抗する人々を弾圧した。

 そして、じりじりと護岸工事が加速し辺野古の海が灰色になっていく中で、「県民投票をしてはどうか」という提案がオール沖縄をけん引する側から出てきたときに、現場に歓迎する声はほぼなかった。私も、とてもじゃないが飛びつける話じゃないと思った。両刃の剣になりかねない。リスクも小さくはない。知事がいつ、「撤回」のカードを切ってくれるのか、と疲労困憊の体に鞭打って工事現場で抵抗する人々からすれば、知事や県が動かないで、県民投票という下からの運動をさらに盛り上げていけと言われても、もう余力などない、と泣きたい気持ちだったと思う。そして辺野古に反対する者同士なのに「県民投票」をめぐる意見の対立で有力者が離れていくなど、「県民投票」は心労の種ですらあった。

 私は個人的に「住民投票」へのアレルギーがある。1996年の県民投票と97年の名護市民投票をがっつり取材して報道して、「住民投票」という新たな民主主義の手法に大いに期待し、法的拘束力がないという欠点を超えていく可能性を信じてエネルギーを注いだものの、「基地はたくさんだ」という民意を示したところで、それが何の役にも立たなかったと認めざるを得ないその後の展開を一つひとつ、何年もかけてまた自分で報じていくことになった。その苦さを忘れることができない。「あの住民投票は、いったい何だったのですか!」と泣きながら叫んだ名護市民たちの修羅場をいくつも取材しながら、私も一緒に悔し涙を流してきたのだ。あの時は今より若くて、すぐに希望を持ったり信じ込んだりした。だから落胆も並じゃなかった。もちろん、私以上に傷ついた人たちが大勢いた

 住民投票の中心人物だった男性で、東海岸の自然を生かした開発の絵図を描いていた方を私は取材していた。名護市民が住民投票で堂々と辺野古基地建設にNOを突きつけたとき、一緒に歓喜した。これで苦しみは終わる。ジュゴンの見える丘を中心にハングライダーやエコツアーでみんなが笑顔になる地域づくりも夢ではないと思った。しかし当時の名護市長が住民投票の結果を完全に無視してその直後に基地受け入れを表明し、事態は急展開した。その男性が自殺を図ったと聞いた時には凍り付いた。幸い命はとりとめたものの、すっかり無口になり、もとの元気な姿をみることはなく、早逝された。

 私は仏壇に手を合わせながら、その時は歯ぎしりしながら耐えて、奥さんに挨拶して車に戻ってから号泣した。彼の人生を削り取った犯人は誰だ。それを突き止めて、謝らせて土下座させて、二度と同じことをするなと言いたい。でも犯人を挙げることは私になかなかできなくて、つましい生活を守りたいだけの、人々のささやかな暮らし削るショベルカーは、ずっとこの地域で唸り声をあげているなんて無力なんだ。彼の家の前を通るたびに、今も私は息を止め、一通りここに書いたような荒れ狂う記憶をやり過ごす。わたしにとって「住民投票」はその体験の中にある。

 そんな後ろ向きな私の話はこの辺にして、今の勢いのある話をしよう。県民投票を求める市民団体の中心に元シールズの元山仁士郎君をはじめ若い人たちが入って、疲れた大人たちをしり目に今年の春から独自に動き出したのだ。県内大手スーパーが賛同して各店舗の前で署名活動ができ、これまで既存の辺野古反対運動の輪には入っていなかった市民たちが一票を投じ始めた。新聞の投書にも、私たち一人ひとりの意見を表明する機会を歓迎したいという声が増えてきた。過去の傷とか、疲弊した大人たちとか、どうせ……なんて言ってみたくなる私のような弱虫が足踏みしてる間にも、彼らは実に頑張って10万もの署名を提出するに至った(有効署名数は9万余り)。

 この間に現職知事の病死、玉城デニーさんの当選など予測不能の激動があって、県民投票の位置づけも当初とはずいぶん変わった。でも何より、私にとってはシミがついて擦り切れて見える住民投票という手法に対し、魅力や可能性を感じる新しい力が結集してきたことに希望を感じた。それは、今回石垣市民投票の立ち上がりを目の当たりにして、なおさらはっきりと感じた。負の歴史を見すぎた濁った水晶体では見えてこない世界を見せてもらった。

 「住民投票なんて、危険よ。相手にこっちの手の内を教えるようなもの」

 石垣島の自衛隊ミサイル基地建設に早くから反対の声を上げてきた山里節子さんは、以前から住民投票否定派だった。白保の海を守る運動の中心にいた節子さんは、安易に署名活動に手を出すと命とりだと警戒していた。実際、自衛隊配備問題をめぐってはすでに一度、石垣市議会に必要数をはるかに上回る1万以上の署名が提出され、6月に条例制定の審議が行われたが、誘致派の与党会派が優勢のため13対7で否決されている。今の議会構成の中ではいくら署名を集めても否決されるのに、反対する人たちの名前と住所など個人情報を相手に教えてあげたようなものだと節子さんは冷ややかだった。

 しかし先月末、「石垣島の自衛隊基地 年度内着工」の記事が一面を飾った。来年度から環境アセスの条件が変わり、基地建設もアセスが義務付けられることから、駆け込みで着工するだろうと予測はしていたものの、中山市長の受け入れ表明に続きいよいよ動きが慌ただしくなってきた。しかし同じ頃、石垣の自衛隊配備予定地に近い於茂登、嵩田の農家の息子たちを含む20代の若者が中心になって「石垣市住民投票を求める会」が立ち上がったというニュースも入ってきた。代表を務める金城龍太郎さんのことはよく知っていた。署名開始の大集会をやるというので、私は早速石垣に飛んだ。

 空港まで迎えてくれた山里節子さんは、その前日に起きた出来事に憤懣やるかたない様子だった。配備予定地に隣接する4つの字は反対しているにもかかわらず、人目を盗むように測量が進められていた。その印があちらこちらに出現して包囲網が狭まっていく中で、予定地のど真ん中なのに用地提供を拒否している「ダハズ農園」の草木が勝手に伐採され、測量に入られていたことがわかった。農園主の木方さんは激怒して防衛局に説明を求めたところ、担当の業者が分からないなどと1ケ月放置されて、その日ようやく防衛局の担当者が農園にやってきたという。木方さんを一人にしてはいけないと、節子さんや周りの農家の人たちなどが急遽立ち会う中、説明を聞いたが「測量はしていないという認識だ」など、のらりくらりとかわすだけで、文書による謝罪を要求したものの誠意のない対応だったという。

   「オン・アラートで、いざ! という時にぱっと集まれる人を増やさないと
    だめね。おばあたちは何人かは行けるけれど……。こんなやり方じゃ、
    辺野古で闘っている方々には呆れられちゃうわ。お行儀が良すぎる、
    石垣の人は」

 業者が来たら、ガンガンガン! と銅鑼を鳴らして村人を結集させ、白保空港建設の阻止行動を闘い抜いた経験があるだけに、80歳を数えても節子さんには熱量がある。自らも戦争マラリアで苦しみ、家族を失った節子さんは「南西諸島防衛」の名のもとに自分たちに降りかかった辛酸の正体をずっと睨みつけて生きてきたのだ。生まれ島がまた毒牙にかけられてたまるか! という覚悟がある。

   「ダハズ農園の木方さんはおとなしい方。でも三上さん。
    彼の大事な、娘さんの誕生を祝って植えた木があるの。それを見てきて。
    彼は絶対その木を切らせたくないのよ

 節子さんと農園を訪ねると、木方さんは快く案内してくださった。そして昨日、ここで行われた防衛局とのやり取りを悔しそうに再現してくれた。自分の農園が自衛隊基地のど真ん中に来ることが分かった3年前から、心労は絶えない。土地は絶対に提供しない、と伝えてからずいぶん音沙汰なかったので、計画が変わって予定地から外れたのだろうと思いかけていた。ところが9月に、無断で伐採やマーキングが行われていたことが発覚した。6歳になる娘は、農園に来たら真っ先にその菩提樹に向かって走り、これ私の木よね? と抱き寄せるそうだ。ここで撮る家族写真の蓄積は、木方さんたち家族が生きている証でもある。いったい誰に、大事な家族の営みをぶった切る権利があるというのだろうか?

   「まるで僕たちは透明人間のように、いないもののように扱われている
    防衛局の人たちは痛みはないのか。娘に、なんでこの木を切るの?
    と聞かれて答えられるのか。ここに、繊細な感情を持った人間が普通に
    生きているんだということをわかってほしい」

 そう言って涙を落とす父親の姿を私のカメラがとらえる。ごく普通に家族で娘の成長を祝う幸せを誰かが奪うそれは表面上は無断で敷地に入った業者であり、知っててそれを指示した防衛局員である。この動画を見る人は木方さんに同情し、防衛局のやり方を憎むだろう。しかし、石垣島がどこかも知らない日本の多くの国民が、政府の考える国防を肯定し、南西諸島に実力部隊を置くことは自分たちの安心だと思っている。アメリカ軍でもいい、自衛隊でもいい。中国も怖いし北朝鮮もまだまだ怖いってテレビで言ってたし、備えあれば、ね……。と漠然と思っている。

 菩提樹を見て泣く父親の映像は、できれば見たくないだろう。誰が悪いのか、周りまわって自分だなんて話は全く聞きたくもない。というわけで、私が石垣島のことを書くと、その記事のアクセス数はいつも割と低い。でも、娘を思う父の想いを踏みにじってまでも安全保障という果実を貪り食いたいとは思わない! と言ってくれる読者もいるだろう、そう信じて動画を編集する。だからこの動画はぜひ見てほしい。

 そして今回のハイライトは、市長も市議会も自衛隊容認という逆境の中で、大事なことはみんなで考えよう、島の未来は自分たちで決めよう、と立ち上がった20代の若者たちの姿である。それは、動画の後半をじっくり見てもらいたい。代表の金城龍太郎さんは、実は3年前から取材している嵩田のマンゴー農家、金城哲浩の息子さんで、彼が留学先のアメリカから戻って農業を手伝い始めた25歳の時に長々とインタビューをさせてもらった。穏やかで口数は少ないけれども、笑顔が印象的な青年だった。世界の国々から戦争の恐怖をなくしたいと国連の職員になりたいと思ったこともあったという。でも生まれた島と農業に正面から向き合っていきたいと、石垣に戻ってきたと話してくれた。ハウスの中で柔らかい光を浴びながら両親と3人でマンゴーの世話をする姿が何か美しい絵のようだった。それでも、自衛隊の話になると彼の顔は曇った。

   「同級生にも入隊した人が何人かいて。その話は同年代でもなかなか……」

 もう一人、『標的の島 風かたか』の中に登場する青年がいる。当時、於茂登の公民館長だった嶺井善さんがウコンの畑で若者に指導する場面だ。嶺井さんは、地域の若者が農業を覚えてここで暮らし、結婚し、子どもを育てる。そうならないと僕たちの地域がなくなってしまうからと、後輩の育成に余念がなかった。そこでトラクターを持っていたのが、伊良皆高虎さん、当時25歳だった。その時に高虎さんは、たまたま同級生の龍太郎さんの話をしてくれた。とても優しくて人格者で、英語もできて、将来は島を背負う男になるというような話だった。私は、ずいぶん仲よしで、お互いに農家の跡取りとして助け合ってるいい関係の二人なんだなあとしか思っていなかった。でも今回、住民投票を求める会の代表になった龍太郎さんを見て、どこにこんな力があったのかと目を見張った。

 ♬
 話そうよ 話そうよ    今日の出来事 未来の夢
 咲かそうよ 咲かそうよ  色とりどりの花 みんなの心に
 話そうよ 話そうよ    大切なこと 島のこと


 「市民大署名運動会」と題したイベントは歌から始まった。ハルサー(畑人)ズ、というバンドを、金城龍太郎さん、伊良皆高虎さん、そして白保の宮良央さんという農家の3青年で組んでいて、この歌は龍太郎さん作だとか。運動会に見立てた署名開始セレモニー、生演奏に、オリジナルビデオでは笑いも取りながら署名集めのルールを会場に伝えるなど、若手の手作り感あふれる集会は終始笑い声に包まれた。この種のイベントには足が向かない人たちも覗いてみたくなる、まつりのような明るさで、住民投票にネガティブな私の心も晴れてきた。法的拘束力はないけど? 市議会で否決されたら? とか意地悪な質問をしてはみたけど、それが場違いだと思えるほど肯定的な空間だった。そのパワーは、眉間にしわを寄せていた節子さんの表情の変化を見ても明らかだろう。頑張ってきた島のお年寄りたちもどんなに救われたことか。

 元気をもらって沖縄本島に帰ろうとした翌日、地域の雑誌に投稿した龍太郎さんの文章を読んで私は頭を殴られたような気がした。「闘う農民のバラッド」というタイトルで彼が島の未来を思って書いた長文。その中にこんな一文があった。

   「もし僕が死んだら、この世の権力によって殺されたんだと思ってください。
    一応冗談です」

 父親の哲浩さんは、「表に立つな」と彼を止めたという。狭い社会の中で顔と名前を出して国家権力と対峙する。お父さんも自衛隊問題が勃発した時の公民館長としてずっと表に出てきただけに、国からだけでなく島内からも飛んでくる矢の痛みをよく知っている。それは傍で見ていた龍太郎さんこそ誰よりわかっているだろう。この明るい運動会の背景にはどれほどの覚悟があるのか。彼らはこの3年でそこまで追い込まれたのだ。結局、私たちの世代は、基地の島の苦しみを次の世代に引き渡したに過ぎないのか。この3年、先島の軍事基地化を全国に知ってほしいと頑張ってきたことも、次世代の防波堤にはならなかったのか

 実は、今回は女の子たちの声も取材しているが出さなかった。すべて覚悟して名前も顔も出す、と決めた3人までにしてほしいという声があったからだ。賛成でもいい、反対でもいい、中立でもいい。でも、島の未来を考えようぜ? と問いかけることが、なぜ「すべてを覚悟」するほど悲壮なことになってしまうのか。しかし前半に書いたように、悲壮なのだ国策に盾をつくこと折れていく周りを見ること無関心という暴力に打ちのめされ、人を信じられなくなること。「基地を造らないで」という闘いは、尋常な神経で長期間向き合い続けられるものじゃない。だからこそ、例えば辺野古の闘いの20年が、石垣や宮古の軍事化に抵抗する人たちの土台になり、身体を投げ出して頑張ってきた大先輩たちの築き上げた台地の上から、次世代の若者たちにはずっとましな闘い方をしてほしいと願う。せめて汗と涙の蓄積は彼らをいくぶん楽にしたと思いたい。しかしそんなことも老兵の部類に入った私レベルの、安っぽい自己肯定願望なのかもしれない。

 でも、今回分かったことは、彼らは本気で何もかも受け止めるつもりで、なおかつ明るく楽しくやろうと決めたということだ。「ビギン」や「きいやま商店」を生んだ石垣島はほかの島とは違う。ハルサーズが音楽でこれをやれるのは、それこそ島人の宝を受け取った島の若者だからこそ。芸と情けの島の本領を、まだ私などは知っちゃあいないのだ。

 「ちょうどよい。盾になるからこの島々にミサイルを置きなさい」と言ったのは、遠い安全な大陸から太平洋を牛耳りたいと思う権力者たちなんだろう。「となりの国が怖いし、この島なら回りも海だから我慢してくれ」と同意したのは、73年前の出来事を反省する力もないこの国のトップなのだろう。「とにかく警備員が多い方が、安心じゃない?」と思考停止した多くの国民がそれを可能にしている。しかし、みんな地図の上に浮かぶ小島のことを、何にも知らないこの島の宝を知るはずがない。それを知っている島人で島の未来を決めよう。彼らの主張はどこまでも正しく、真理であり、最大限に尊重されるべきだし、何の心配もなく最後までやり遂げる環境を作る手伝いを、せめてやらせてくれまいか、と思っている。

 ………。
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●大矢英代さん「私たちは、過去の歴史からしか学べません…私たちが何を学ぶのかが今、問われている」①

2018年10月03日 00時00分20秒 | Weblog

[※ 『沖縄スパイ戦史』(三上智恵大矢英代共同監督) (LOFT)↑]



マガジン9http://maga9.jp/)の仲藤里美氏によるインタビュー記事【この人に聞きたい/大矢英代さんに聞いた:戦後73年。今こそ「沖縄戦」から学ぶべきことがある】(http://maga9.jp/180808-2/)。

(その②はコチラ

 《8月15日といえば、結びつくワードは「終戦」、そしてヒロシマ・ナガサキです。でも、石垣島の一面トップは「戦争マラリアの犠牲者に黙祷を捧げる」というものでした。「戦争マラリアって何?」と思って読んでみると、沖縄戦のとき八重山諸島では地上戦がなかったのに、軍の命令で強制疎開させられた結果、風土病のマラリアで3600人もの人が亡くなった、と書いてあった。まったく知らない話でした。そもそもなぜ米軍が上陸しなかった島々で強制疎開」なのか》。

(『沖縄スパイ戦史』劇場予告編)

http://www.spy-senshi.com
https://youtu.be/Tsk9ggz-BoY


 三上智恵さんとともに、ドキュメンタリー映画『沖縄スパイ戦史』の共同監督の大矢英代さん。コラム【マガ9備忘録/その145)「沖縄のマスコミは“民”のもの」高江で語ったQAB大矢記者の心】(http://www.magazine9.jp/article/biboroku/30180/)で初めて、大矢英代元QAB記者を知りました。その時のスピーチにとても感動しました。

   『●「戦争のためにカメラを回しません。
      戦争のためにペンを持ちません。戦争のために輪転機を回しません」
    《私たち(沖縄)マスコミ労協は、
     あらゆる戦争につながる原稿は1本たりとも書かないことを約束します
     戦争のためにカメラを回しません
     戦争のためにペンを持ちません
     戦争のために輪転機を回しません
     ……
     そして、それを支えているのは沖縄の皆さんです。
     沖縄のマスコミは、皆さん県民のものです。
     “民(たみ)”のものです。
     私たちには武器もありませんし、権力もありません。
     でも、伝え続けることはできます。抗い続けることはできます。
     その一歩一歩が、沖縄の歴史、そして本当の意味で
     この国の、この日本の民主主義を勝ち得る手段と信じて、
     これからも一生懸命、伝え続けていきたいと思っています。》

 「本土」ではほとんど知られていない戦争マラリアが修論のテーマであり、今回のドキュメンタリーの大矢さんの主な担当部分。いま、先島諸島などでの自衛隊配備を受け、島々の市民の皆さんは分断されつつある…《戦争や軍隊の本質》を「本土」の皆さんも考えてみるべきだ。

   『●『銃を持つ権利は子どもが生きる権利より重い』?
        普天間で起きている、辺野古で起きようとしていること
    「辺野古で、今現在まで、ずっと起き続けていること、そして、辺野古で
     確実に起きること、起きつつあること。普天間飛行場の撤収か、
     辺野古移設か、という二者択一を迫るアベ様や最低の官房長官ら。
     普天間を撤収し、番犬様に本国へお引き取り頂けば、
     「森」を殺すこともなく、辺野古の「美ら海」を殺すこともない
     沖縄の人々を分断することもないし、基地から出撃したん番犬様が
     「人殺し」することもない。沖縄の大幅な「負担削減」が実現できる
     というのに。「本土」では大騒ぎされないが、沖縄の人々があれ程の
     反対運動をしている辺野古では、生物多様性の破壊が引き返せない
     ところまで来てしまいつつある。
       「在日米軍特権」を放置する「日米共犯」。「子どもを園庭で遊ばせたい
     「当然の日常がほしいだけ」、そんな極当たり前のことなのに…
     《愛僕者》達のやることときたら。何が愛国者か! ヘイト者・ヘイト屋や
     デマ者・デマ屋らに支えられた、トンだ《愛僕者》達」

   『●「武力によって平和を創造することはできない」…
         「真の平和をつくっていく…「憲法宣言」を採択」
    「《石垣島宮古島への陸上自衛隊配備などを念頭に
     「沖縄の基地負担への影響が大きい」》…壊憲が及ぼす影響は、
     沖縄では計り知れない。「森」を殺し、「美ら海」を殺し続け、沖縄の
     市民を分断、基地から出撃する番犬様は「人」を…。
       沖縄の地で、《「武力によって平和を創造することはできない」とし、
     日本国憲法の精神米軍基地のない平和を求める沖縄の心
     大切にし、真の平和をつくっていくことを掲げた「憲法宣言」を採択》
     にも肯ける」

 《「ボランティアに行って戦争で傷ついた人を助けたい」と思っていながら、紛争地に爆弾を落としている軍隊の飛行機が自分の国にある基地から飛び立っているという事実についてはまったく意識していなかったことにも気付かされました。海外で人を助ける前に、まず自分の国のことと向き合わないといけないんじゃないか、と感じましたね》…「森」を殺し、「美ら海」を殺し続け、沖縄の市民を分断、基地から出撃する番犬様は「人」を…。「本土」の自公支持者が考えようともしない、新たな《記憶の澱》を生み出し続けている。
 《私たちは、過去の歴史からしか学べません。その歴史を語れる人がいなくなりつつある中で、私たちが何を学ぶのかが今、問われていると思います》…そして、《学んだ者としての責任がある》と。

   『●現在進行形の「身代わり」: 「反省と不戦の誓いを…
             沖縄を二度と、身代わりにしてはならない」
    《先島諸島と呼ばれる沖縄県南西部の島々が自衛隊配備で揺れて
     います。蘇るのは戦争による悲劇の記憶です…宮古島には
     七百人規模、石垣島には六百人規模のミサイル部隊と警備部隊を
     配備する計画です。地元では…住民の意見は割れているのが実情です。
     …有事には自衛隊が標的にされ、周辺住民が巻き込まれると心配する
     声が聞こえてきます。底流にあるのは先の戦争の悲惨な記憶です。
     大戦末期、米軍の攻撃を避けるため、この地域の住民はマラリア発生
     地帯への疎開を軍部によって強制され、多くの人が罹患して亡くなり
     ました。患者数は当時の人口の約半数とも言われています。同じく
     大戦末期には、軍命により石垣島から台湾に疎開する際、船が米軍に
     攻撃され、多くの犠牲者が出ました。
     自衛隊配備でこうした戦争の記憶が蘇るのです》

   『●「防波堤」としての全ての「日本全土がアメリカの「風かたか」」
               …米中の「新たな戦争の「防波堤」に」(その1)
    《とくに石垣島の場合は地上戦がなく、空襲で178人が亡くなっている
     のですが、一方で、日本軍の命令によって住民たちがマラリアが
     蔓延する山奥に押し込められ、しかも日本軍は特効薬を大量に持って
     いたにもかかわらず住民に使うことはなく、結果3647人も亡くなって
     います。これは米軍が上陸してきたときに住民が捕虜となり、情報が
     筒抜けになることを避けるため、ゆるやかな集団自決を住民に強制した、
     ということでしょう。じつは沖縄でも、この一件は「たまたま疎開した先に
     マラリア蚊がいて、マラリアが蔓延してしまった」というくらいにしか
     捉えていない人が多い。映画のなかで山奥に押し込められた体験を
     証言してくださった方が出てきますが、この映画での新証言なんです。
     この部分は、どうしても映画のなかに残しておきたかった。
     軍隊がいたから、石垣島ではマラリア地獄が起きた。軍隊の論理で
     死ななきゃいけない人が出てきてしまった、ということですから》

   『●『沖縄スパイ戦史』(三上智恵・大矢英代共同監督): 
           「「スパイリスト」…歪んだ論理が生み出す殺人」
    《今回は、そこに大矢監督の静かな怒りが加味された
     日本軍の命令による、マラリア地獄への住民強制移住という事実の
     掘り起こしである。1944年暮れのある日突然…波照間島民たちの
     西表島への「疎開という名の強制移住」だった。西表島は今でこそ
     明るい観光地になってはいるが、当時は「マラリア地獄」と呼ばれる
     ような死病の蔓延する島だった。強制された移住先で何が起こったか》

   『●三上智恵・大矢英代監督映画『沖縄スパイ戦史』…
       「戦争というシステムに巻き込まれていった人たちの姿」

    《「戦争や軍隊の本質を伝えたい」…戦争中に多くの住民が罹患した
     「戦争マラリア」について大矢さんは、「陸軍中野学校出身者の命令に
     よって、波照間島の住民が当時マラリアが蔓延していた西表島
     移住を強いられた。米軍ではなく、日本軍の命令によってあれだけの
     被害がでた。そこに軍隊の本質が見えるんじゃないかと思って取材を
     しました。苦しみを抱えて語りたがらない体験者に、頭を下げて話を
     聞きました」と話します》

   『●「改めて身に迫るのは、軍隊というものが持つ狂気性」(高野孟さん)と、
                     いまも続く沖縄での不条理の連鎖
   『●「戦争マラリア」…いま再び自衛隊配備で先島諸島住民を分断し、
                     「戦争や軍隊の本質」の記憶を蘇らせる…

   『●『沖縄スパイ戦史』と《記憶の澱》…
     「護郷隊…中高生の年頃の少年たち…スパイと疑われた仲間の処刑…」

    《▼日本軍第32軍の周辺で起きた本島中南部の激戦を「表の沖縄戦」と
     すれば、映画が描くのは北部の少年ゲリラ兵部隊護郷隊」や八重山
     戦争マラリアなどの「裏の沖縄戦」。綿密な取材による証言と資料映像で、
     6月23日以降も続いた遊撃戦の実相をつづる》

   『●自衛隊配備・ミサイル基地建設…
     『沖縄スパイ戦史』「自衛隊…昔と同じく住民を顧みない軍隊の本質」暴露

   『●沖縄デマによる市民の分断: 『沖縄スパイ戦史』の両監督…
                    「反基地運動は中国のスパイ」デマも同根

インタビュー本編②へ】

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●沖縄デマによる市民の分断: 『沖縄スパイ戦史』の両監督…「反基地運動は中国のスパイ」デマも同根

2018年09月27日 00時00分43秒 | Weblog

[※ 『沖縄スパイ戦史』(三上智恵大矢英代共同監督) (LOFT)↑]



リテラの記事【『沖縄スパイ戦史三上智恵監督・大矢英代監督インタビュー/「反基地運動は中国のスパイ」デマも同根だ!『沖縄スパイ戦史』監督が語った”スパイ”という名の分断】(http://lite-ra.com/2018/07/post-4150.html)。

 《“戦争に備える軍隊”は、本当に人々を守るのか。…沖縄戦における少年ゲリラ兵、軍が住民を強制移住させた「戦争マラリア」の問題、本土から送り込まれた陸軍中野学校出身者の暗躍、そして、軍統制下での秘密保持と相互監視のもとで起きた住民虐殺の真相に迫る》。

(『沖縄スパイ戦史』劇場予告編)

http://www.spy-senshi.com
https://youtu.be/Tsk9ggz-BoY

 《スパイに仕立てられた少年兵を仲間に銃殺させたり》…。《記憶の澱》…《軍隊というものが持つ狂気性》。
 そして、現代の、アベ様の《我が軍》も、自衛隊の配備やミサイル基地建設など、《昔と同じく住民を顧みない軍隊の本質》を発揮しようてしてはいないか? 「戦争マラリア」…《ゆるやかな集団自決を住民に強制》。(木下昌明さん)《大矢は、波照間島の住民約500人を死に追いやった犯罪を追及している。…米軍は現れず、彼も姿を消した。スパイだったのだ。…今日、沖縄南西諸島自衛隊が配備され、ミサイル基地が建設されつつある。三上と大矢は、自衛隊が当時の法規を踏襲し、昔と同じく住民を顧みない軍隊の本質を暴いている》。

   『●百田尚樹氏、沖縄の地で「デマを並べ、
      沖縄への米軍基地集中を正当化」…態度・人間性・思考のお粗末さ
   『●「アベ様広報」…安田浩一さん「現地の人に話を聞く、
         裏取りするという取材の基本ができていない…デマ」
   『●東京MXテレビ「沖縄デマ」宣伝…
     「目的がデマの拡散による沖縄の反基地運動への不信あおりにあった」
    「【海鳴りの島から 沖縄・ヤンバルより… 目取真俊東京MXテレビ
     「ニュース女子」の虚偽報道に対する抗議の記者会見。】…
     《殴られた女性はカヌーメンバーでもあるので、二日後に怪我の様子を見た。
     顔に青黒いあざができて痛ましかった。番組の視聴者の大半は
     そういうことを知らないだろう。「反対派の暴力などとよく番組で扱えたものだ
     こういうメンバーをそろえること自体番組の目的がデマの拡散による
     沖縄の反基地運動への不信あおりにあったことを示している》」

   『●確信犯…「ジャーナリストが極右的言動で
      活躍しはじめたことのほうが、より事態の深刻さを物語っている」
   『●放送法「四条の規律を撤廃することは、
     自由の拡大ではなく、自由縮小」…報道へのアベ様の不当な政治介入
   『●「亡命」させられた辛淑玉さんは
      「一時帰国するにも勇気がいる…」とは、一体ニッポンはどんな国なのか?

    「〝罰〟を受けるべきは、一体どちらなのか? ヘイト屋・デマ屋の醜さ、
     醜態、醜悪さ…《態度・人間性・思考のお粗末さ》、どうにかならないものか」
    《番組「ニュース女子」は辛さんと沖縄の基地反対運動へのデマを並べていた》

 また、いまも止まず。病んだ沖縄デマ、沖縄ヘイトによる市民の分断。ニッポンの保守を自称する人達は、番犬様の在日米軍特権には沈黙し、アベ様の「我が軍」が沖縄や島嶼の人々を「防波堤」代わりにしても、何にも感じないらしい。『沖縄スパイ戦史』の両監督は《「反基地運動は中国のスパイ」デマも同根!…”スパイ”という名の分断》であることを指摘。

   『●加害者性と被害者性…「私たち一人一人が被害者となり、
              加害者となり得る戦争。戦争はどこかで今も…」
    「【記憶の澱/NNNドキュメント’17】…。
     《先の大戦の記憶を、今だからこそ「語り、残したい」という人々がいます。
     …心の奥底にまるで「」のようにこびりついた記憶には「被害」と「加害」、
     その両方が存在しました》」

   『●「戦争のためにカメラを回しません。
      戦争のためにペンを持ちません。戦争のために輪転機を回しません」
   『●『沖縄スパイ戦史』(三上智恵・大矢英代共同監督): 
           「「スパイリスト」…歪んだ論理が生み出す殺人」
   『●三上智恵・大矢英代監督映画『沖縄スパイ戦史』…
       「戦争というシステムに巻き込まれていった人たちの姿」

   『●中山きくさん「戦争は体験してからでは遅い」、
       城山三郎さん「平和の有難さは失ってみないとわからない」

   『●「改めて身に迫るのは、軍隊というものが持つ
      狂気性」(高野孟さん)と、いまも続く沖縄での不条理の連鎖
    《マガジン9連載コラム「沖縄〈辺野古・高江〉撮影日誌」でおなじみの
     三上智恵さんが、大矢英代さんとの共同監督で制作した
     映画『沖縄スパイ戦史』が7月下旬からいよいよ公開…
     「軍隊は住民を守らない」…「戦争や軍隊の本質を伝えたい」》。

   『●「安倍政権が旗をふる「極右プロパガンダ映画」が 
      世界中に発信されるという恥ずかしい事態が現実に」!?
   『●『沖縄スパイ戦史』と《記憶の澱》…
     「護郷隊…中高生の年頃の少年たち…スパイと疑われた仲間の処刑…」

    《▼日本軍第32軍の周辺で起きた本島中南部の激戦を「表の沖縄戦」と
     すれば、映画が描くのは北部の少年ゲリラ兵部隊護郷隊」や八重山
     戦争マラリアなどの「裏の沖縄戦」。綿密な取材による証言と資料映像で、
     6月23日以降も続いた遊撃戦の実相をつづる》

   『●自衛隊配備・ミサイル基地建設…
     『沖縄スパイ戦史』「自衛隊…昔と同じく住民を顧みない軍隊の本質」暴露


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http://lite-ra.com/2018/07/post-4150.html

沖縄スパイ戦史三上智恵監督・大矢英代監督インタビュー
「反基地運動は中国のスパイ」デマも同根だ!『沖縄スパイ戦史』監督が語った”スパイ”という名の分断
2018.07.27

     (7月28日より東京でも公開されるドキュメンタリー映画
      『沖縄スパイ戦史』を監督した大矢英代氏(左)と三上智恵氏(右))

 県民の約4分の1が死亡した沖縄戦。6月23日の慰霊の日に行われた沖縄全戦没者追悼式で、翁長雄志知事は「辺野古に新基地を造らせないという私の決意は県民とともにあり、みじんも揺らぐことはない」と力を込めた。
 一方、安倍首相は基地負担軽減に全力を尽くす」と述べた。嘘だ。政権に辺野古新米軍基地の建設強行を止める気配は微塵もない。石垣島、宮古島、与那国島への大規模な自衛隊とミサイル基地の配備も推し進めており、石垣市では中山義隆市長が7月18日に陸自配備受け入れの方針を正式に表明した。
 安倍政権の建前は防衛強化」だ。過去最大、約5兆3000億円の来年度予算を要求する防衛省の長・小野寺五典防衛相は、沖縄全戦没者追悼式の直後に「我が国の平和と安全は自衛隊が担っている」との訓示を出した。
 しかし、“戦争に備える軍隊本当に人々を守るのか
 7月公開のドキュメンタリー映画『沖縄スパイ戦史』は、過去と現在の双方からこの問題をえぐった。沖縄米軍基地や自衛隊ミサイル基地配備問題などを追い続ける三上智恵監督と、三上監督の琉球朝日放送時代の後輩にあたる大矢英代監督、ふたりの女性ジャーナリストによる共作だ。
 両監督の丹念な取材で一次証言や資料を集めた本作は、沖縄戦における少年ゲリラ兵軍が住民を強制移住させた戦争マラリアの問題、本土から送り込まれた陸軍中野学校出身者の暗躍、そして、軍統制下での秘密保持と相互監視のもとで起きた住民虐殺の真相に迫る。
 共通するキーワードは、表題にあるとおり「スパイ」。周知の通り、昨今では新基地や自衛隊配備に反対する人々が、右派やネット右翼から「工作員」「回し者」と攻撃され、テレビや新聞などのマスメディアまでもが沖縄をめぐるデマに加担している。両監督はそうした安倍政権下の状況をどう見ているのか、自衛隊の問題にも踏み込んで話を伺った。ぜひ、最後まで読んでもらいたい。

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──これまで『標的の村』や『戦場ぬ止み』『標的の島 風かたか』で、高江のヘリパッドや辺野古新基地の建設、先島諸島の自衛隊・ミサイル基地配備の問題を描いた三上監督が、今作では大矢監督とともに沖縄戦を扱いました。なぜいま沖縄戦、それも「スパイ」をテーマに選んだのでしょう。

三上 みなさんそれを聞きますよね(笑)。三作の映画をつくってみて、まだこれではダメだと思ったからです。辺野古や高江の問題は、沖縄が大変だということではない。もう日本自体が壊れていて、民主主義も国民主権も三権分立も手放そうとしている。そのことの警鐘としてやってきました。
 だけれども、その危機感はほとんど浸透していない。たとえば一作前の『標的の島 風かたか』は、具体的に始まっていく宮古・石垣の自衛隊による要塞化が日本の運命をどう変えていくかということを打ち出したのに、ほとんど後追いもされませんでした。だから、基地建設反対運動や沖縄や離島の文化というのを絡めてドキュメンタリーとしていく手法は、もう甘いんだなって思ったというのがひとつ。
 もうひとつは、日本人は「次の戦争はピカっと光って終わりの核戦争だ。いまどき白兵戦をやるわけがない」と決めつける人が多いですけど、いま、世界中で戦われている戦争って、実際には核戦争じゃないですよね。テロであり、ゲリラであり、スパイによる秘密戦なんです。秘密戦というのは恐ろしい世界で、言わば、敵兵の顔も見ずに、弾に当たる前に殺される人が出る。そうしたいま起きている、起ころうとしている恐怖を知ってもらうために、私たちが放送局時代から取材してきた沖縄戦に何を学ぶべきかと考えて、この題材を選びました。

大矢 実は当初のタイトル候補は「沖縄裏戦史」だったんですよ。でも「裏」というよりかは、全編を通して「スパイ」の話なんですね。陸軍中野学校という本土でスパイや秘密戦、ゲリラ戦などの教育を受けた青年将校が沖縄に赴任し、10代の少年たちを集めてゲリラ兵にした「護郷隊」。私が学生時代から取材してきた戦争マラリアの問題もそうです。たとえば、波照間島の住民は日本軍によって悪性マラリアの蔓延する西表島に強制移住させられ、島民の3分の1が命を落としましたが、実は、その前に中野学校出身者が学校の先生として偽名で赴任してきて、住民の生活を秘密裏に監視していました。強制移住は住民を守るためではなく食料確保や情報を漏洩させたくない軍の都合だった。
 つまり「スパイを防止するという名目で住民のスパイをしていたのです。人々を守るためじゃなくて、日本の国体を守るためですよね。軍が住民に住民を監視・密告をさせて作成したスパイ容疑者リスト」の存在と、疑心暗鬼になった住民同しによる虐殺も、背景には機密を保持するという軍の論理がありました。


■「沖縄にスパイが入ってる」というデマがもつ本当の恐ろしさ

──住民たちを疑心暗鬼にさせて「あいつはスパイらしい」みたいな流れをつくることは安倍政権もやっています。一例をあげると、公安調査庁は報告書のなかで、中国の大学やシンクタンクが沖縄独立を求める団体の関係者との交流を深めているとして〈日本国内の分断を図る狙いが潜んでいる〉などと言いふらしています。他にも、基地新設に反対する人たちや翁長知事に対して「スパイ」とか「回し者」みたいな誹謗デマが飛んでいる。たとえば昨年、作家の百田尚樹氏が〈テント村の中には、漢和辞典も。日本語を勉強している人たちなのかも〉とツイートして、あたかも高江に「中国のスパイ」が紛れ込んでいるかのようにほのめかしていました。


三上 えっ、そんなことを言っていたんですか……。低俗すぎて論外ですが、たしかに「沖縄にスパイが入ってる」というようなデマはいま、再燃しています。しかし、そういう話が流布されていくと、本当に、自分たちの所属している社会が根から腐っていく。
 「スパイ」という言葉の怖さがわかっていないんでしょう。それはジェームズ・ボンドの「スパイ」ではなくて、戦争のときは命取りになる言葉。いや、戦争の前から「スパイ」とされて、いじめ殺されたりということが日本中であった。だからこそ、魔女狩りみたいな危険な集団心理として肝に命じておかなくちゃいけないはずなのに……。

──でも、百田氏の言うような話は現状、かなり流通してしまっています。たとえば「基地反対派は金をもらっている」というネトウヨのデマを本当に信じてしまっている人は少なくないです。

大矢
 もちろんネットの恐ろしさはわかります。私が琉球朝日放送に入局したときから、それこそ“沖縄バッシング”と言われるものは始まっていました。日々のニュースのなかで、普天間基地がつくられる前にはもともと村があって、住民の生活があって、それを米軍が接収したのだというニュースを伝えても、「普天間基地」とgoogleで検索したら、「普天間基地の真実」とか「普天間基地の嘘」みたいな話がたくさんでてくるじゃないですか。
 私は伝える側ですが、受け取る側から見たら、普天間の歴史をもっと知りたいなと思っても、ネットで調べたら事実とはまったく違う嘘にたどり着いちゃうわけですよね。そういう恐ろしさをネットは常にはらんでいると思うし、結局はリテラシーを身につけないと状況は変わらない。
 ただ、一方で、映画を作るようになってからは、正直、あんまりネット右翼と言われている人たちの声は、もう無視してもいいんじゃないかと思うようになってきていて(笑)。


■沖縄デマに乗っかれば、自分が加害者であることに向き合わなくていい

     ((C)2018『沖縄スパイ戦史』製作委員会)

──ネトウヨのバッシングはあまり意識しないということですか。

大矢 はい。だって単なる卑怯じゃないですか。こっちが実名で顔までだしてつくっているものに対して、どこの誰かもわからない、ネットがなければ存在すら証明できない人たちが書き込むわけですよね。それって、対等な関係にならない。だからあんまり、ネットでこんなバッシングが……というのは気にしていないし、相手にしなければいいんじゃないか。そうも思うんですよ。
 もちろん、そうした言説がなぜこれほどまでに出てきているのかということについては、社会の闇の部分としてもっと取材しないといけないですが。誰かを攻撃することで安心している、あなたのなかのその気持ちはなんなんですか? そう問いたいですね。

三上 「あいつらは中国のスパイなんだってよ」みたいなデマって、『沖縄スパイ戦史』の「スパイ」にも共通しますが、ものすごく無責任にアドレナリンが出る話なんですよ。それで知ったような気になる。実際、「翁長知事の娘は中国に留学し、中国共産党の幹部と結婚した」というような有名なフェイクに多くの人が飛びついた。念のため言っておきますが、翁長知事の娘さんは中国に留学どころか一度も中国に行ったことがないですからね。
 しかし「翁長はスパイ」と思いたい人は、「娘が中国人と結婚しているらしい」なる話をフェイクだろうとなんだろうと拡散する。いいね!されることが生きている実感になっちゃっている。そんな病んだ社会がありますよね。「辺野古で反対している人たちはお金もらっているんだぜ」みたいなデマもそう。こういうことさえ言っていれば、自分たちは辺野古の人たちに同情することもないし実は加害者だということに向き合う必要もないから。
 沖縄のことを考えたくもないし、政治的な感覚も本当は0点なんだけど、それをどこか恥ずかしいと思ってるからこそ、そこは悟られたくない。どっちかと言えば、楽してかっこはつけたい。そういう人が群れを成してデマやバッシングに向かう。負の連鎖ですよね。


■世の中に政治的じゃないものなんてありますか?

──そうしたデマとはまた違った角度のバッシングとして、基地反対や日本軍の戦争犯罪を批判すると「政治的なプロパガンダだ!」みたいな言いがかりも飛んできます。『沖縄スパイ戦史』では、石垣島への自衛隊配備を容認する中山氏が当選した石垣市長選のシーンも出てきますね。選挙も入れようというのは最初から考えていたんですか。


三上 もちろんです。ひょっとして、いま現在の選挙を入れると後から古びてみえるとか、そういう違和感を感じましたか?

──いえ、そうではなくて、「政治的な映画だ!」みたいなことを言い出す連中が出てくるのではないかと……。

大矢 うーん、想定はしていましたね。最初は、石垣市長選をどういう風に扱うかは結構悩んでいて。本編を終えたエンドロールのところに入れるというプランもあったのですが、するとまったく違う印象になりますから。まあ、中山市長が映画をみたら怒るだろうなとは承知の上でつくってますけどね(笑)。
 でも、現在とつなげなければ意味がないなぜ、2018年のいま、この映画をつくっているのか。目の前で起こっている石垣の市長選があって、自衛隊基地をどうするの?というところは撮らなければいけない。そう思っていました。
 だいたい「政治的だ!」というバッシングがあると言いますけど、世の中に政治的じゃないものなんてありますかね?

三上 というか「政治的だ!っていうバッシング自体、実は政治的でしょう。

大矢 そうそう。八重山の選挙に限っていえば、右とか左とか、そういう問題じゃなくて命の問題なんです。自衛隊基地を置くことで、どういう風に自分たちの生活が脅かされていくのかどういう風に作戦に加担させられていくのか。映画で過去を掘り下げたように、戦争では「軍の秘密を握る住民」とされて、住民も子どもたちの生活も一変してしまったから

三上 生活や命が脅かされると心配することを「政治的だ!」とか「プロパガンダだ!」と責めて楽しいですか。自分はこの島にずっと住み続けていくし、そこは先祖の土地だし、未来の子どもたちも守りたい、そういう思いを持つは自然でしょう。あなたがこの島にいたら心配しませんか。右往左往しませんか。自衛隊基地についてのいろんな意見を聞いて、迷ったり、怖くなったりしませんか。
 メディアの問題にも通じますが、「政治的中立」みたいな無重力の場所が仮にあったとして、自分はそこを探してそこに立って、公平に世の中にあるすべてのことを見渡すことができる、なんて考えているとしたらかなり傲慢ですよ。そんな人間がいるはずがない。あなた自身が偏っていないというのならば、その意味のない自信はどこからくるのでしょうか。


旧日本軍と自衛隊が同質であるかどうかは重要な問題

     ((C)2018『沖縄スパイ戦史』製作委員会)

──映画をみれば、自衛隊についてもいやが応にも考えざるをえないです。

大矢 自衛隊のことについて目をつむり、耳を塞ぐのは、罪悪感をとりはらいたいがための自己暗示でしかないと思っています。

三上 たとえば、先の戦争で散々なことをした旧日本軍と自衛隊が同質であるかどうかはとても重要な問題なのですが、みんなそこを検証せずに「まさか同じなわけないじゃないか」と思っている。
 この映画をみて、何が同じで何が変わったのか、考えてみてほしい。少なくとも、旧日本軍が何をやったのかということが知られてなさすぎるし、もっと多くの人の目で検証しないと信用できないはず。だからこそ、私たちは『沖縄スパイ戦史』のようなドキュメンタリーをつくっているんです。

(取材・構成/編集部)


■『沖縄スパイ戦史』
7月21日(土)より那覇・桜坂劇場にて先行公開中、7月28日(土)より東京・ポレポレ東中野にて公開。ほか、全国順次公開(公式サイトhttp://www.spy-senshi.com)。

未曾有の犠牲を出した沖縄戦の裏には、知られざる「秘密戦」があった。本土から沖縄へ送り込まれた、諜報員を養成する陸軍中野学校の出身者。ある者は年端もない1000人もの子どもたちをゲリラ兵にし、スパイ活動をさせた。ある者は教師になりすまして村に潜入し、悪性マラリア地帯の離島へ住民を閉じ込める軍命を実行した。18歳の少女までもがスパイリストなるものに載せられた。軍の監視と密告で疑心暗鬼になる住民たち。そして発生した「スパイ虐殺」。当時を知る証言者たちが、三上智恵・大矢英代両監督の取材で口をひらく。はたして軍隊は住民の命を守るのか、それとも──。沖縄で進められている自衛隊とミサイル基地配備の現実。映画が映すのは、過去の話ではない
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●『沖縄スパイ戦史』と《記憶の澱》…「護郷隊…中高生の年頃の少年たち…スパイと疑われた仲間の処刑…」

2018年08月15日 00時00分11秒 | Weblog

[※ 『沖縄スパイ戦史』(三上智恵大矢英代共同監督) (LOFT)↑]



沖縄タイムスの田嶋正雄記者によるコラム【[大弦小弦]ジャーナリストの三上智恵さんと大矢英代さんが…】(http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/289056)。

 《ドキュメンタリー映画「沖縄スパイ戦史」が那覇市の桜坂劇場で公開中だ…10代半ばの千人が召集された護郷隊。中高生の年頃の少年たちが背丈より長い銃を担ぎ、敵陣への突撃、スパイと疑われた仲間の処刑などに追い込まれたという。生存者の生々しい証言に胸が痛む》。

 《軍隊は同じことをするし、住民も協力するし、軍隊は住民をまた殺すことになる》(マガジン9)し、《軍隊は地域に忍び入り、住民同士を監視させ、物資を徴用し、機密を知った者や邪魔になった者は「始末」する》(田嶋正雄記者)。《▼北部各地から10代半ばの千人が召集された護郷隊中高生の年頃の少年たちが背丈より長い銃を担ぎ、敵陣への突撃、スパイと疑われた仲間の処刑などに追い込まれたという》…沖縄の人々にとっての《記憶の澱》だろうか…。
 《沖縄戦は「日本軍という組織と、それに虐げられた住民」という構図で語られることが多いけれど、ほんとうにそれだけなのか?》(鈴木耕さん)…あの壮絶な戦場を経験した沖縄、つまり、田嶋正雄記者の言う《表の沖縄戦》…そして、《裏の沖縄戦》では、「スパイリスト」に載ることの意味を知る人々の心の中に、《記憶の澱》として、こびりついているのでしょうか…。

   『●加害者性と被害者性…「私たち一人一人が被害者となり、
              加害者となり得る戦争。戦争はどこかで今も…」
    「【記憶の澱/NNNドキュメント’17】…。
     《先の大戦の記憶を、今だからこそ「語り、残したい」という人々がいます。
     …心の奥底にまるで「」のようにこびりついた記憶には「被害」と「加害」、
     その両方が存在しました》」

   『●「戦争のためにカメラを回しません。
      戦争のためにペンを持ちません。戦争のために輪転機を回しません」
   『●『沖縄スパイ戦史』(三上智恵・大矢英代共同監督): 
           「「スパイリスト」…歪んだ論理が生み出す殺人」
   『●三上智恵・大矢英代監督映画『沖縄スパイ戦史』…
       「戦争というシステムに巻き込まれていった人たちの姿」

   『●中山きくさん「戦争は体験してからでは遅い」、
       城山三郎さん「平和の有難さは失ってみないとわからない」

   『●「改めて身に迫るのは、軍隊というものが持つ
      狂気性」(高野孟さん)と、いまも続く沖縄での不条理の連鎖
    《マガジン9連載コラム「沖縄〈辺野古・高江〉撮影日誌」でおなじみの
     三上智恵さんが、大矢英代さんとの共同監督で制作した
     映画『沖縄スパイ戦史』が7月下旬からいよいよ公開…
     「軍隊は住民を守らない」…「戦争や軍隊の本質を伝えたい」》。

   『●「安倍政権が旗をふる「極右プロパガンダ映画」が
      世界中に発信されるという恥ずかしい事態が現実に」!?

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http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/289056

[大弦小弦]ジャーナリストの三上智恵さんと大矢英代さんが…
2018年7月26日 07:26

 ジャーナリストの三上智恵さんと大矢英代さんが共同監督を務めたドキュメンタリー映画「沖縄スパイ戦史」が那覇市の桜坂劇場で公開中だ。初日の舞台あいさつは満員の約300人が詰め掛けた

▼日本軍第32軍の周辺で起きた本島中南部の激戦を「表の沖縄戦」とすれば、映画が描くのは北部の少年ゲリラ兵部隊護郷隊八重山戦争マラリアなどの「裏の沖縄戦」。綿密な取材による証言と資料映像で、6月23日以降も続いた遊撃戦の実相をつづる

▼北部各地から10代半ばの千人が召集された護郷隊中高生の年頃の少年たちが背丈より長い銃を担ぎ、敵陣への突撃、スパイと疑われた仲間の処刑などに追い込まれたという。生存者の生々しい証言に胸が痛む

▼映画は住民同士の密告のシステムを暴き、軍への協力を拒めなくなる過程も描く。無垢(むく)な被害者という側面だけではなかった住民の姿が浮かび上がる

軍隊は地域に忍び入り、住民同士を監視させ、物資を徴用し、機密を知った者や邪魔になった者は「始末」する。映画が掘り起こした史実は、特定秘密保護法ができた現在とつながる

先島では国防強化の名のもと、自衛隊配備が進む。「情報戦」は既に始まっているかもしれない。70数年前、やんばる波照間島で何が起きたか。再び誰かに利用されないために知る必要がある

(田嶋正雄)
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