まいにちはなたば

キレイな花、枯れた花、トゲだらけの花。
毎日いろんなことがあるけど、遠くから見れば、やっぱりきれいな花束だと思うよ?

社会の縮図

2010-03-18 10:11:43 | こども
昨日、エくんが「おべんと、たべたよ!」と
おねーちゃんに報告しようと待ちかまえているのに

下校してきたユの目からは大粒の涙がボロボロボロボロ
「おにーちゃん、ひどい!!」
と、かなりお怒りのご様子です

訊けば

「わたし、おにーちゃんに、なわとびを下駄箱のところに持ってきてって、
 たのんだのに、おにーちゃん、持ってこないし。
 なんで?って聞こうとしたのに、目をあわせただけで逃げていくし。
 やぐぞぐ、じだのに、おにーぢゃん‥」

そういや、その前の日、
ユが、今使っているなわとびは使いにくいと言うので、
タの体操服入れには同じようななわとびが2つ入っているから、1つもらったら?
って話をしたような‥

「だがら、がっごうにいぐどぎに、朝やすみにもっでぎでっでいっだのに、
 朝やすみににも、長やすみにも、じらんふりじて、にげるんやもん~」


それはそれは
タがえらい酷いことしてるように聞こえますけど
タは、そんな約束破って、知らん振りして逃げるような子じゃないし

「その、目をあわせただけで、知らん振りして行ってしまうって、
 普段いつも、学校では、タはそうしてるんと違うの?」

「そうやげど。」

「たぶん、タは約束してるなんて、全然思ってなかったんだと思うな?
 ユちゃんに頼まれたってことが、わかってなかっただけだと思うけどな~?」

「ぞんなごどないっっ!!ぜっだいに、ゆったのっっ!!!」


少し遅れて下校してきたタに話をきくと、案の定、
「へ!?なんのこと!?」
と、全然わかっていない

「だから、ユちゃん、ちゃんとお願いできてなかったんだよ~?
 タ、何のことでそんなに怒られてるか、全然わからないってよ?」

でも、ぜったいに、ゆったんだもんっ!!


‥もうこうなると、テコでも動きませんからね~

「おかーさん、それで思い出したことがあるんやけどさ。
 ここのおうちのじいじじゃない、じいじ、な(私の父)。
 ばあばによく、『お茶!!』とか叫んではってな。
 もちろん、聞こえたら、
 ばあばは、ちゃんとお茶をじいじのところへ運ぶんやけど。
 時々、聞こえてないことがあってな。
 そうしたらもう、『お茶やって言うたやろっ!』って、
 ものすごい勢いで怒ってはるねん。
 ばあばが『いや、聞こえなかったから‥』って言っても、
 『言い訳するなっ!!言うたといったら、言うたんやっ!!』って、
 とにかく怒ってはるねん。
 ‥なんか、それ、思い出したわ。
 
 ひとに何かをたのむときには、ちゃんと何をたのむか、 
 はっきりしっかり言わなアカンし、それをわかってくれたかどうかを
 ちゃんと確かめとかな、アカンと思うわ。
 返事なかったら、こちらが言ったことがちゃんと聞こえてるかどうか、
 わからへんやん?
 だからいつも、おとーさんもおかーさんも、
 『聞こえてるんやったら、返事しなさいっ』って、言うてるんやで?」

(このあと、タがこっそりと
 「さっきの話で、ぼく、返事せなあかんな、っていう気になったわ。」
 と言いに来たのは、今日は余談にしときましょう。
 ‥かといって、今日から劇的に元気に返事をするようになるかといえば。
 そんなことは、あるはずがないのでございます

‥それでも、ユのほうは
「でも、タは!!」
と、自分の非を認めようとしない

「いや。だからね。 
 タが悪くないって言ってるわけやないんよ? 
 確かに、タも、ユの言っていることをよく確かめて、
 ちゃんと聞かなきゃいけなかったのに、ええかげんに聞いてたんやと思う。
 でも。ユちゃんもはっきり『朝休み』とか『下駄箱のところ』とか、
 『私、待ってるから』とか、言わないと。
 『なわとび、1つちょうだい。』は、ちゃんと言ったんやろうけど、
 いつ、どこで渡して欲しいか、それ、ちゃんと言ってないんやろ?
 そしたらな。
 どっちかが『悪い』じゃないやろ?どっちも『足りなかった』んやって。」


それでも
自分もちょっと悪かったこともわかるけど、
いくらタに謝ってもらったところで、やっぱり治まらないらしく

「もうひとつ、思い出した話があるわ。
 おかーさんが子どもの頃に教会に居はったシスターから聞いたんやけどな。
 もうすっかりおばあさんのシスターやったけど、
 修道院に入りたての、若い、若い頃にな?
 院長さんって、一番偉いシスターが大事にしている花瓶を
 割ってしまったんやって。
 もう、『どうしよう‥』って、ものっすごく怖くて申し訳ない
 気持ちでいっぱいになって、院長さんのところへ謝りに行ったんやて。
 入学したばかりの1年生が、校長先生お気に入りの花瓶を割るようなもんやん?
 わかるやろ??
 そしたらな、院長さん
 『‥あぁ。もう、その顔を見れば、何も言わなくても、それで充分です。』
 って許してくれはったんやて。
 
 おかーさん、この話を思い出すたびに、
 すごい院長さんやな~、偉いな~、と思うし、
 この話をしてくれたシスターも、
 院長さんが一目見てわかるくらい『ごめんなさい!!』っていう気持ちで
 いっぱいの顔をしてはったってことやん?
 すごいな~って思うんよ?どう?」

って話をしたらタもユも
「そう思う。」
って言ってました。

「‥けどな。ユちゃん、あなたには
 『でっでも、そんなところに花瓶があるなんて知らんかったし!』とか
 『そんなところに、置く方が悪いんやんかっ!』とか、
 そういうことを、言うところがあるやろ?」
 
(ここでタが、思わずぷっと吹き出したので、
 また、ひとしきりユに怒られてはったのも、
 余談にしときます。)

「‥うん。」

「そんなん言うの、カッコ悪いの、わかるやろ?」

「‥うん。」



その渦中には、
「絶対に、お父さんが帰ってきたら、この話、しといてっ!」
と、タの非を責めたくて仕方なかった様子のユちゃんでしたが

寝る前、まだオトウチャンは帰ってきていなかったので、
「あの話、お父さんに、する?」と尋ねると、
「‥もういい。」と、恥ずかしそうに答えていました。



本当に
タとユの、このテの下らない揉め事は。
人と人とのトラブルの原型、縮図やと、つくづく思います

揉めに揉めていることって、
どちらかが一方的に悪いことなどは、ほとんどなく
たいがいは、どちらにも少しずつ非があるもの
でも
お互いに自分の害された感情にばかり目がいき、
自分にもあったはずの非にはフタをしてしまって直視しようとしないから

いつまでも平行線のままになってしまったりするのだと思います


タとユなんか、まだまだこんな経験は、経験してなんぼ。
いちいちつきあってやるのは、心底、しんきくさいんですけど
この兄妹ゲンカにつきあってやれるのは、アタシしか居ないんやし

辛抱強く、この、重要な社会勉強につきあっていきたいと思います



※しんきくさい【辛気臭い】
 〔おもに関西地方で〕思うようにならなくて、じれったい。
 気がめいってしまうさまである。