まいにちはなたば

キレイな花、枯れた花、トゲだらけの花。
毎日いろんなことがあるけど、遠くから見れば、やっぱりきれいな花束だと思うよ?

三歳の誕生日ケーキ

2013-06-18 12:20:33 | 想い

昨日、BOOK OFFで手に入れたこの本。

【トミーが三歳になった日】

〜ユダヤ人収容所の壁に隠された
   ベジュリフ・フリッタのスケッチブックから〜



時は、第二次世界大戦中。

アウシュビッツへ送られるまでの中継点として造られた
テレジンのユダヤ人強制収容所には、
10万を超える人々が詰め込まれていた。

この絵を描いた人物は、絵を描くことができたので、
ドイツ兵から製図の仕事を任され、
家族で暮すことができるという、
他の人たちよりも、恵まれた環境で暮していた。



とはいえ、充分な食料や、
また衛生状態を保つための水なども与えられず。

生き延びた「トミー」は当時のことを振り返り、こう書いている。

なぜ、母が死んでしまったのか、
なぜ、いつもひもじいのか、
なぜ、便器の水をのまなければならないのか、
なぜ、寒さにこごえなければならないのか
なぜ、ベッドがないのか。
わたしには、わからないことばかりでした。


そんな、生きる希望をも失いそうな日々の中で、
父親は、いつか戦争が終わったなら‥と。

深夜、ドイツ兵に見つからないように、
のちの日のために、かわいい息子のために、
描きつづける。

くだものだらけの、くだものやさん。
これはおとぎ話?
これは、ほんもの‥ぜーんぶ、ほんものさ。

ねる前に話してくれた、おとぎの国?
いやいや‥これは、おまえが住んでいる、世界だよ。

父親はきっと、描き続けたのでしょう。

「すててしまおうか。燃してしまおうか。
 いや、だめだ‥‥もしも、ここの人たちが、
 誰ひとり生き延びられなくても、
 みんなに知ってもらわなければならない。
 覚えておいてもらわなければならない。
 こんなことが、けっして、二度とふたたび、
 おこらないように。」


結局、父親は、
絵を描いているところをドイツ兵に見つかり、
政治犯として「帰還無用」の列車に乗せられ
アウシュビッツで亡くなった。

しかし。
このスケッチブックは、収容所仲間の手によって守られ
壁の奥に封じ込められ、残されていた‥。

         

トミーは、壁の向こうから生きて戻ってきた、
数少ない子どものの一人だったそうですが。

私たちの想像を絶する環境で暮した数年間は、
彼の心にも、また、彼を引き取った、父親の友だち夫婦にも
深い深い傷を残しました。

トミーは長い間、食べ物も受け付けず、
犬の鳴き声や鍵のガチャガチャいう音を、体中が痙攣するほど恐れ、
また、心の傷を負った養母からは虐待を受ける‥。

戦争が終わっても、苦くて苦しい人生を送ったトミー。

トミー本人筆の「思い出」は、
結婚後、4人の子どもに恵まれた幸せな人生を送っていることで
締めくくられていますが。


ほんわか幸せな気持ちになって読み終えることは、
できない本でした。

         

これらの絵は、
現在プラハのユダヤ美術館に所蔵されている、とのこと。

この本では、これらの絵をもとにして、
説明文としてのお話が、綴られています。

その一節から。


三歳の誕生日は、ひとつおおきくなるということがどんなことか
生まれて初めて、はっきりとわかるときです。

ほしいものや、おいしいものを、はっきりいえるようになりました。
三歳の誕生日は、一日中、きれいなものや、おいしいもの
だいすきな人たちの笑顔、すばらしいことばにみちあふれています。

そんな三歳の誕生日。
トミーがもらえたのは、紙のケーキ。


これから先ずっと、ずっと。

世界中の子どもたち、誰もが
幸せな三歳の誕生日を迎えることができますように‥。


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