これまでの防衛白書は日本の安保環境を「不透明」「不確実」などと表現してきたが、初めて「厳しい」と踏み込んだ。防衛相は閣議後の記者会見で「安倍首相から領土、領海、領空を断固として守ってほしいとの任務が自衛隊、防衛省に与えられている」と述べ、首相の強い姿勢を白書に反映したと力説した。
中国が沖縄県の尖閣諸島周辺での活動を増やしている実態を記述。中国の領有権主張を「国際法秩序とは相いれない独自の主張」とし、「力による現状変更の試みを含む高圧的とも指摘される対応」と批判した。1月に中国海軍艦船が海上自衛隊の護衛艦にレーダーを照射した問題を念頭に「不測の事態を招きかねない」と懸念を示した。
12年12月に「人工衛星」と称したミサイルを発射した北朝鮮の分析では「長射程化の技術の進展が示され、弾道ミサイル開発は新たな段階に入った」と記した。「日本を含む東アジア全域の安全保障にとって重大な不安定要因」と結論付けた。
在日米軍が沖縄県宜野湾市の普天間基地に配備した垂直離着陸輸送機オスプレイの高性能さを説明。「地域の平和と安定に大きく寄与する」と強調した。普天間基地の移設先として名護市辺野古沿岸部の埋め立てを3月に同県に申請したことに触れ「移設・返還が早期に実現できるよう誠実に努力している」とした。
安倍晋三首相は9日のTBS番組で、尖閣諸島を巡る中国の対応について「自分たちの海洋権益を増やすために歴史認識問題を活用している」と批判した。「尖閣問題で(日本に)譲歩させようということが起こり得るが、我々は一切妥協するつもりはない」と強い姿勢で対応する考えを示した。
米国予算の強制削減が実施された。1年前までは、いずれは妥協が成立すると思われていた。しかし、医療保険制度改革で一歩も譲らないオバマ大統領の強い意志が背後にあったのだろう、民主党は社会保障、医療で譲らず、小さな政府を信奉する共和党は増税を許さず、先行きは全く見えない。
≪集団的自衛権の出番が来た≫
最大の影響を受けるのは国防費だ。最近、新アメリカ安全保障センター(CNAS)など4シンクタンクが行った評価では、空母2~4隻、巡洋艦7~9隻、駆逐艦4~14隻を削減する必要があり、妥協が成立して削減が半分になっても米国の戦力低下は避け難いという。「アジアへの軸足転換」で他の地域から手を抜くにも限界がある。中国の海空軍力の急速な増強による軍事バランスの変化に対応するには十分でないだろう。
そこで、報告書が期待するのは同盟国がそのギャップを埋めることである。その意味で、日本が潜水艦を16隻から22隻に増やそうとしていることに大いに期待を表明している。いよいよ集団的自衛権の行使が、日米同盟の中心的課題となるときが来たように思う。
米第7艦隊が随時行う、横須賀からペルシャ湾に至るパトロールのタスクフォースに、日本のイージス艦が常時1隻参加するだけで米海軍の負担は軽減する。それにプラスしてヘリ搭載の護衛艦も付ければ、その分、さらに軽減する。大西洋ではカナダは米国のタスクフォースに参加しているという。今の日本の海上自衛隊にはそうした協力をする能力がある。
潜水艦の増強はもちろん米国に歓迎されている。対潜作戦としては、現在も東アフリカ・ジブチの基地を中心に事実上行っているP3Cによる哨戒を全石油ラインに沿って行えば、なお有益である。それで日米の防衛体制は一体となり、揺るぎないものとなろう。
思い出せば、ソ連海軍がベトナム・カムラン湾に基地を設け、中東でイラン・イラク戦争が勃発した1980年頃、米海軍横須賀基地幹部が、当時防衛庁参事官をしていた筆者に語ったことがある。
≪「なぜ日本は参加しない」≫
石油ルートのパトロールは辛(つら)い任務である。哨戒のために甲板に出ると夏はセ氏50度を超す。夜も冷房が効かない。ところが、高度成長期で、来る船、来る船、みんな日本のタンカーだ。自分は日本の政治的事情は分かる。しかし、水兵たちには分からない。「どうして日本の艦船はパトロールに参加しないのだ」と言っておさまらない。そういう雰囲気のあることだけは知っていてほしい、と。
しかし、集団的自衛権を行使できないので、たとえ日本がパトロールに参加しても、日本の艦船は守れても米国やインドネシアなど他国の艦船は守れない。また、そもそも日本の船なるものがない。ほとんどがパナマかリベリア船籍であり、それを守ると、集団的自衛権行使の疑いがあるという。
当時は、「疑いがある」と言われればそれでおしまいであった。こんなばかばかしい事情は、米国の水兵でなくても、部外者には分からない方が当たり前である。
ソ連の脅威の下、中国も日本の防衛費を国内総生産(GDP)の3%にしろと言っていた時代である。カムラン湾までソ連海軍が来ていた状況では、中国も、日本によるシーレーンの防衛にはもろ手を挙げて賛成だったであろう。
もしあの時から30年にわたり、日本が石油の海上輸送ルートのパトロールに参加していれば、東南アジアをはじめ沿岸諸国の人々から見て、海自がいかに規律正しく能率的であり、一部が言うようにもう一度攻めてくるような海軍でないことは一目瞭然であり、それまで経済面では深い関係を持ちながら、軍事力、政治力では無能力者のように思われていた日本に対する信頼度が一挙に上がっていたであろうことは、間違いない。
≪石油ルート哨戒を最優先に≫
その後、そのチャンスは永久に失われたと思っていたが、米国防費の強制削減で、また、そのチャンスが巡ってきている。今度の機会は見逃すべきでないと思う。
参議院選挙後、集団的自衛権行使の問題について進展があることが期待されている。それに際しては、何よりも、石油輸送ルートのパトロールに、日本がフルに参加できるようにすることが、最優先課題であると思う。
集団的自衛権の行使が認められても、出先の艦艇は、自衛隊の最高司令官たる内閣総理大臣の許可を得る時間的余裕もない、急迫不正の侵害に対して、自己または他の権利を防衛するため以外には、自己の判断で武力を行使することは許されない。また、行使した場合には、それと同時に、総理大臣に報告してその後の行動について指示を仰がなければならない。
その総理の決断に際しては、日本という国家民族の長期的利益、その中における日米同盟の重要性を最優先に考えるべきである。集団自衛の権利はあるが、その行使はできないなどという支離滅裂な小理屈が、総理の判断を妨げてはいけない、ということである。(おかざき ひさひこ)
海水注入、実は原発・吉田所長が独断で継続
東京電力福島第一原子力発電所1号機の炉心を冷やす海水の注入が、東日本大震災の発生翌日に一時中断していたとされる問題で、東電は26日、「実際には海水注入は継続していた」と発表した。
同原発の吉田昌郎(まさお)所長が、事態の悪化を防ぐため必要と判断し、東電本店の意向に反して独断で継続したという。この問題をめぐっては、政府・東電統合対策室が中断の根拠として示した班目(まだらめ)春樹・内閣府原子力安全委員長の発言内容が訂正されたばかり。政府・東電の情報発信のあり方が改めて問われそうだ。
統合対策室は21日、海水注入中断の経緯を公表。その中で、東電は3月12日午後7時4分に海水の試験注入を始めた後、原子炉の再臨界を懸念した官邸の意向に配慮し、7時25分に独断で注入を中断。その後、首相の指示を受け、8時20分に再開し、55分間の中断が起きていたとしていた。しかし、実際には、官邸詰の東電社員から「首相の了解が得られていない」との連絡を受け、東電は東電本店と第一原発を結んだテレビ会議で中断を決定。吉田所長は、この場で反論はしなかったが、独断で注水を継続した。
午後8時20分に注水を再開したとの連絡が、吉田所長名で入ったため、東電は中断が起きたと判断した。東電は今月24、25の両日、吉田所長らに聞き取り調査を実施。吉田所長は事実を明かした理由について「国際原子力機関(IAEA)の調査もあり、正しい事実に基づき評価が行われるべきだと考えた」と説明したという。吉田所長は1979年入社。昨年6月から所長を務めている。
東電の松本純一・原子力立地本部長代理は「最初に公表した調査結果は、本店の関係者と、本店に残っているメモだけを基にした」と調査が不十分なまま公表したことを認めた。
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1.「集団的自衛権行使の問題について」憲法違反であっても、命令違反であってもやらなければならない時はやらねばならないのです。
2.その場に置いて正しいことを行う。そして裁きを受けるか。やるべきことをやらないで非難を浴びるのか・・・・私は、死後もほめられる吉田精神に学ぶべきだと思います。
3.その内日本を救った英雄として国民栄誉賞が贈られるのではないでしょうか。管元首相に反抗して正義を貫いた男として。
The Huffington Post | 投稿日: 2013年06月12日 11時50分 JST | 更新: 2013年06月12日 11時50分 JST