米統合参謀本部議長ダンフォード・ジュニア大将は、ISIL (Islamic State of Iraq and the Levant) が占拠しているモスル(Mosul)奪還に向けた作戦準備が進んでいることを明らかにしている。また、Operation Inherent Resolveのクリストファー・ガーバー米陸軍大佐も、新生イラク軍は有志聯合の支援を受けつつ奪還作戦の準備を進めていると明言している。
モスル奪還作戦で、最も期待されているのがクルド部隊である。米軍は、シリアのクルド地区に2つの航空基地を建設し、稼働し始めている。場所はハサカとコバネの近郊。因みに空港は、軍民間共用であるが、当面は軍事作戦が優先する。特にヘリコプターによる偵察・攻撃や補給物資の搬入等がメイン。特にクルド向けの軍事物資(武器・弾薬)などは、これらの基地から供給される。
米軍は、北シリアのクルド部隊に対し軍事指導をしており、今やクルドYPG民兵組織は、対ISIL作戦における最重要パートナーで、大統領特使ブレット・マクガ―クもクルド地区を訪問している。
モスル奪還に向けた作戦準備が進みつつある中、サイバースペースでISILとの交戦が拡大している。米軍のサイバー部隊だけでは、心もとないのでカーター国防長官は、シリコンバレーのIT企業を訪問し、今後のサイバー戦について意見交換を実施。NSAのサイバーセキュリティ関係者も同席し、今後、具体的な攻撃と防御技術について連携する。また、国防総省(DOD)は、「Hack the Pentagon」を4月に立ち上げ、民間のセキュリティ専門家やホワイト・ハッカーを募集・事前登録後に米軍のWebサイトへの攻撃を実際に行わせて、脆弱性評価を行う。
カーター国防長官は、「対ISILでのサイバー戦に用いられている手法は全く新しいもので、驚くような内容もある」と語っている。これらの手法は、ISIL以外でのサイバー戦に利用できるともしており、ロシア、中国、北朝鮮などの国名を挙げてもいる。また「サイバー戦の運用は、ISILの指揮統制を撹乱し、通信手段や通信系統の機能を喪失させることを主眼としており、各部隊への指揮命令系統を妨害し、占拠している住民など地域への支配力を低減させている」と述べた。