阿部ブログ

日々思うこと

“きのこ”とセルロース系バイオエタノール

2011年07月16日 | 日記
セルロースは植物細胞壁の約50%を占める炭水化物で、地球上で最も豊富に存在するバイオマスといわれる。

当然、このバイオマス資源を利用しようとする研究は数多く、特にシロアリがセルロースを分解する能力があることから分野ではシロアリを研究対象とする事が多い。

そんな中、東京大学の鮫島正浩教授と五十嵐圭日子准教授の研究は“きのこ”の酵素を利用してセルロースを分解してバイオマス・エネルギーとして利用とする研究を進めている。
“きのこ”は木に寄生し木の細胞壁のセルロースなどを分解して自らの栄養源としているが、“きのこ”がセルロースを分解するプロセスを科学的に解明出来れば、莫大な資源量を誇るセルロースを分解してバイオエタノールを生成出来るので、木質バイオマスを石油の代替として利活用が可能となる。

セルロースを分解するのは“きのこ”が内在する「木材腐巧菌」よばれる菌類で、特に白色腐巧菌と呼ばれる菌は木を水と二酸化炭素レベルにまで分解する能力があると言う。
鮫島・五十嵐両氏は、この白色腐巧菌から効率的にセルロースを分解する酵素(糖化酵素)を取り出し、セルロースの分解(糖化)を従来よりも30倍早める事に成功し、更にセルラーゼ“Cel45A”と言う酵素を加えると最大50倍の糖化速度を得る事に成功している。

また五十嵐准教授の研究は医薬の分野に広がりを見せている。
抗癌剤として利用されているβグルカンは“きのこ”が木を分解して生合成した物質であるが、この他“きのこ”は様々な化合物を生成する事から、木質バイオマス由来の医薬品開発の研究が新たな分野として注目されるだろう。

日本では“きのこ”を食用にし品種改良などが進んでおり、“きのこ”研究では世界一である。

この“きのこ”以外にも、南方熊楠が紀伊の森で研究し昭和天皇にもご進講した粘菌など、今まで日の目を見る事が無かった植物由来の微生物や酵素などを対象とした研究を加速させ、我が国独自のバイオマス利用を推進する政策が是非とも必要である。

また三井物産も国内73ヶ所に4万4088ヘクタールの社有林を保有しており、年間11億円の費用をかけて維持しているが、従来の間伐材利用などに留まる事無く、木質バイオマスを活用した研究を環境基金などを通じて支援し、真の国土保全に寄与する事が重要である。