阿部ブログ

日々思うこと

いまさらですが、電力会社の経営に与える原発停止の影響

2011年07月08日 | 日記

最近良くNHKオンデマンドを見るが、その中で、中部電力の三田会長が浜岡原発の停止を受け、緊急にLNG供給を依頼する為、カタールに飛んでいた。交渉はうまく言ったようだが、気になるのはその値段だ。

近年のシェールガス革命により、天然ガスの価格も下落傾向が著しい中、中部電力をはじめとする日本の各電力会社は、非常に高いLNGを買わされている。日本以外だと4㌦以下だろうが、日本向けのLNG価格11㌦~12㌦と言われている。

緊急にLNGを必要とする中部電力は、これより確実に高い価格帯で買っている筈。
以前、三菱総研の『国土幹線ガスパイプライン』と言う本を見た事があるが、これによると日本は国内に幹線パイプラインがない唯一の先進国だと言う。

普通は、パイプラインによるガス輸入とLNG輸入を併用して価格競争をさせているが、日本はLNGのみ調達すると言う構造で、これには電気事業連合会、特に東京電力の強い政治力が効いているという。これは対ガス業界への対抗策で、安価なガスがパイプラインで供給されると困るわけだ。

これには根拠がある。一般的にガスの輸送距離が3000km以内だと、LNGよりパイプラインによるガス供給の方が安価である為。即ちLNGは-162度に冷却して輸送するだけで15%のエネルギーを損失する事の影響が大きいのだ。

さて日本の電力会社は、LNGを「スポット市場連動型調達」ではなく「原油価格連動型調達」で購入している。これはS字カーブ契約と呼ばれている。つまり、LNGの安定調達を確実にする為、割高になる原油価格に連動させる事で、LNG輸出国への買取価格を補償する方式だが、これが完全に裏目に出ている。

原発を動かせないと必然的に火力発電に頼る事になるが、この燃料となるLNGを世界市場価格の3倍以上で買う羽目になっている。所謂、足元を見られているわけだが、今までの歪で戦略なきエネルギー政策のつけが、この最悪期に巡ってきた。
同じような事が石炭にも言える。

日本は世界最大の石炭輸入国だが、中国の石炭高値買いの影響が大きくなりつつある。既に中国での電力不足、一説には3000万キロワットに達するといわれ深刻の度合いを増す中、石炭火力による発電がメインの中国は、原料炭1㌧当たり150ドル以上、一般炭でも100㌦で購入しており、日本の価格交渉に大きな影響と言うか、そもそも石炭を今までどおりの価格で買えない状況になっている。

ドイツの脱原発政策の背景にあるのは、ルール地方など国内に豊富に存在する石炭資源の存在がある。ドイツの電力の約47%は石炭火力によるものだ。中国の発電構造と似ているドイツだが、通常の石油、ガス、豊富な水力などの発電能力もあり、これらにより様々なリスクのある原発に頼る必要がない訳だ。

日本の場合には、今までの3倍以上の価格で石炭をBHPビリトン、リオ・ティント、エクストラータ、アングロ・アメリカンの4社に集約された石炭メジャーから買うほか手が無い。

電力会社は、如何に価格が高騰しようとも、商社などを通じてLNG、石炭、石油を調達しなくてはならず、これは会社経営に大きく影響する事は避けられない。特に中部電力への影響は大で、密かに関電との経営統合の話を耳にするようになっている。

電力業界の再編のみならず、エネルギー戦略の新たな構築と共に資源戦略とのあわせ技により、当面の危機を打破していく必要がある。

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