阿部ブログ

日々思うこと

銅と銀

2010年11月07日 | 日記
不勉強だが最近、銅と銀の凄さに興味津々です。

最初は、銅。
日本人宇宙飛行士の山崎直子さんが宇宙で2週間着用していた靴下が一部で注目されている。それは一般には余り良く知られていない「銅」のもつ高い制菌・抗菌作用を利用したもので、靴下に高純度の銅線を編み込んだ生地により細菌や白セン菌など、菌の増殖が抑制され、ニオイのもととなる雑菌を減らす。このため宇宙船と言う閉鎖空間でも十分に防臭効果のある靴下が製品化されている。
この靴下を開発した企業のHPによればメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、肺炎桿菌 黄色ぶどう球菌などは18時間後には菌減少率99.9%。白癬菌についても91.3%と言う高い制菌・抗菌作用を発揮するとしている。この銅と言う金属そのものが持つ抗菌作用については、米国環境保護庁(EPA)が2008年3月に金属としての銅そのものが抗菌作用のある素材として認定し、銅の以外の優良な銅合金も282種が登録されている。

銅の利用は医療に止まらない。例えば養殖の漁網には合成繊維が使われているが、この素材だと表面に藻などが付着するため、魚に必要な酸素量が減少する事もあり、数か月に一度網を陸揚げして洗浄作業している。この魚網の素材を銅に変える事により、抗生物質を大量に与える必要がなく、また耐蝕性に優れるため藻が付着しない。このため、洗浄のための陸揚げが不要となる。既にこの銅を用いた魚網が開発されている。

それと銀。
『電線一本で世界を救う』(山下博著:集英社新書、ちなみに700円(税別))によると銀も凄い。
最近スマートグリッドと言われる次世代電力網が注目されているが、その送配電を構成する電力線は銅で出来ている。また身の回りの電気製品の配線に使われる電線にも銅が用いられている。これは電気抵抗性が低い事と加工がしやすいと言う特性があり、また古代から利用されてきたごく身近な金属元素である事も影響しているだろう。

山下氏の著書によると、銀の電子平均速度は、銅のそれを大きく上回ると指摘する。銅のそれは4.4cm/secで、銀は66.33cm/secとその移動速度の違いが鮮明だ。この電子移動速度の違いの意味するところは、制御信号やデジタル信号などを伝導する導線としては、短時間で与えられた電圧で電流を流し始める性能に直接関わるため、遅い銅より銀の方が導線として圧倒的に優れる。それと重要なのは銀は静電気除去能力が非常に高い事。

現在の導線を銅から「銀」に変えるとどのような事になるか?
例えば自動車の配線を銀線にすると、燃費が10%程度向上し、窒素酸化物も85.7%削減されると言う。現在9億7000万台の自動車の1割に、この銀線を用いてガソリンの使用量が節約できると100万kwの火力発電所200基が1年間に排出する規模の二酸化炭素排出を抑制できる。
またディーゼル自動車の場合には、先ほどの窒素酸化物など環境汚染物質の生成を抑制出来る。

船舶にこの銀線配線と静電気除去装置を用いると、アースの亜鉛板が溶けにくくなり燃費も向上し、燃料の節約にもなる。医療分野では、がん治療に有効な重粒子線治療の装置の電磁磁石のコイルを、電圧変動ロスの少ない銀線に変える事により、現在の超伝導線よりエネルギーをかなり節約することが可能と推測され、これはJR東海が構想する東京=名古屋間のリニアモータ構想にも適用でき、電磁磁石の数を減らす事ができるので、建設コストも削減されるだろう。

ただ銀線の最大のネックは銀の価格だろう。
貴金属である「銀」、銅線ですら盗まれる時代に「銀」となれば、どうなるかは議論の必要はないだろう。反面、都市鉱山と言う視点ではどうか~金も銀もとれるとなればビジネスとして成立するだろう。

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