阿部ブログ

日々思うこと

ユダヤ教の秋の祭礼が終わり、ガザは紛争の危機に瀕する

2018年10月08日 | 雑感
米トランプ大統領は、イスラエル建国70年周年となる、5月14日にエルサレムへ米大使館を移転した。その後、パレスチナへの圧力を高め続けている。
移転後から、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRAW)の支援資金を減額し続け、最終的に2018年9月1日、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRAW)への支援を完全に止め撤退した。10日にはワシントンにあるパレスチナ代表部を閉鎖し、東エルサレムのパレスチナの病院への資金援助2千万ドルを停止した。UNRAWの閉鎖に伴い西岸地区154人、ガサでは113人のパレスチナ人が解雇。エルサレム市のバルカット市長は、UNRAW施設の閉鎖に伴い、対応策としてエルサレム市による教育、福祉、医療サービスを提供するスキームに移行することを明らかにしている。UNRAW撤退により、UNRAWのクラヘンブール代表とヨルダンのサファディ外務相が会議をを行い、今後は、ヨルダンが主導して支援を継続すると発表した。英国の労働党コービン党首は、米トランプ政権を「恥知らず」と非難し、英国が穴埋めすべきだと主張。国連総会と並行開催されたパレスチナ支援調整委員会では、EU、ドイツ、フランス、クウェートなどがUNRWA継続事業に1億ドルの寄付を決愛知している。因みに米国は、UNRAWの活動費用の1/3を支援していた

今回のUNRAWの撤退に就いては、イスラエル国防軍も懸念を表明している。UNRAWが運営する学校が休校・閉鎖となれば、時間を持て余した若者がテロに走る可能性があると指摘。また支援打切りで、教育や医療サービスなどが行えなくなると、特にガザにおいては大量な人命に関わる危機を回避するための対応策が喫緊必要であるとしている。この発言の裏には、今年春以降のガザでの緊張状態を深刻に受け止めているイスラエル当局が、ユダヤ教の秋の例祭が終了したタイミングで、何かしらハマス側からの軍事的アクションがあれば、直ちにハマスの攻勢を完全に防御しつつ、ガザへの攻撃を行う意図がある。イスラエルのリーバーマン国防相は「ガザ国境の暴動で苦労させられたが、無事にユダヤ教秋の例祭を終えた。これで休暇は終わった。ハマスはそれをよく心得るべき。」とTwitterに書き込んている。事実、イスラエル軍は、ガザ蜂起に伴い発生する全てのシナリオに備える必要があるとの指令により、イスラエル国防軍の南部軍は、ガザ国境に展開する第143師団の歩兵部隊を前衛増強し、狙撃手や地対空ミサイルシステム「アイアンドーム」2個中隊を配備。ガザに続く4本の道路を完全閉鎖し、イスラエル国防軍が完全にガザ周辺を掌握した。この防衛強化では、予備役のロテム対テロ特殊戦部隊も動員されている。

表面的にはイスラエルの国防と諜報能力は完全に観える。が、もし、ガザに軍事的攻撃をイスラエルが行うならば、イラク国内のシーア派地区に配備されているイランの戦術弾道ミサイル(射程700km)や、シリア国内のイラン革命防衛隊の戦術ミサイル、そしてレバノンのヒズボラ所有のミサイルからの一斉攻撃を受ける可能性がある。これは、中国が考えている飽和戦術と一緒である。安い囮のミサイルを大量に撃ち込み、機を見て本物のミサイルを何発か発射する。地下からの国境越えや、海岸防衛も欠かせなく、米軍の無償供与に頼るイスラエルにとっては、失うモノが多い作戦となるだろう。
しかし、ユダヤ人もパレスチナ人も同じアラブ人で同族同士で殺し合いをしている、恐ろしく悲しむべきことだ。

※国連パレスチナ難民救済事業機関(United Nations Relief and Works Agency for Palestine Refugees in the Near East:UNRWA)は、パレスチナ難民を救済する目的で1949年に設立され1950年5月に活動を開始。

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