阿部ブログ

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ペンス米副大統領がハドソン研究所で演説〜ボーンアゲイン・クリスチャンであるペンスが宗教弾圧を批判

2018年10月10日 | 雑感

ペンス米副大統領が、ハドソン研究所で講演を行い、大きな反響を巻き起こしている。ペンスを招いたのは、ハドソン研究所の中国戦略センター所長で、『China 2049 ——秘密裏に遂行される世界覇権100年戦略』の著者であるマイケル・ピルズベリー。ペンタゴンのヨーダと呼ばれた稀代の戦略家アンドリュー・マーシャル(Andrew Marshall)の下で核戦略や対中国防衛政策を担当してきた中国専門家で、典型的なPanda hugger(親中派)であった。ピルズベリーは、CIA、DIAなど諜報機関の資料、北京の中南海や北戴河会議も盗聴していると言われるNSAの傍受記録、中国政府の機密文書や反体制派などへのインタビューなど膨大なデータを分析した。その結果、1840年のアヘン戦争以降の欧米日による侵略と屈辱に復讐すべく、中華人民共和国建国100周年に当たる2049年までに、米国から政治・経済・軍事の主導権を奪取しパックス・チャイナを目指すという長期戦略を見出している。
米国では過去にも、中国の諜報活動に関するCox Report(1999年)があり、現在は、米議会の超党派諮問機関「米中経済安全保障再考委員会」が調査活動を行っている。つまりトランプ政権になって初めて中国の脅威を認識しているのではない。現在も親中派は少数ながら存在するものの、2015年までには反中国派が大勢を占めるようになったと言われている。今回のペンス演説で訴えている内容は、米国の国家的な共通認識と考えて良い。ピルズベリーも現在はDragonslayer(反中派)である。

ペンス副大統領の演説は、トランプ大統領の発言を援用する形で、中国による米国の政治・政策への介入や、世界における悪意ある影響と干渉について様々な事例を挙げて語っているのが特徴だが、ボーンアゲイン・クリスチャンであるペンス副大統領の面目躍如たるのは、中国におけるキリスト教、仏教、イスラム教に対する迫害について語っている点である。
「中国政府は先月、中国最大級の地下教会を閉鎖した、全国的に。中国当局は十字架を取り壊し、聖書を燃やし、信者を投獄していている。そして、明白な無神論者である共産党がカトリック司教任命という直接的な関与についてバチカンと合意に達した。中国のクリスチャンにとって、これらは絶望的な時代である。」
この中国とバチカンとの合意に達した背景には台湾問題がある。中国は台湾と国交を持つ国々に対し断交するよう工作を行っており、最近でもドミニカ、エルサルバドル、パナマなどが台湾と断交した。米国はRobin Bernstein駐ドミニカ大使、Jean Manes駐エルサルバドル大使、Roxanne Cabralパナマ代理大使を本国に召還している。ペンス副大統領は、仏教とイスラム教の弾圧についても言及。
「中国はチベット仏教も厳しく取り締まっている。過去10年間で150人以上のチベット僧侶が、中国による信仰と文化への弾圧に抗議するために焼身自殺した。新疆ウィグル自治区では、中国共産党が収容所に100万人のウィグル人イスラム教徒を投獄・収監し、思想改造を行っている。その収容所の生存者たちは自らの体験を、中国政府がウィグル文化を破壊しイスラム教徒の信仰を根絶しようとする意図的が明白である」。
ペンス副大統領は、自国民を抑圧・弾圧する国が長続きした事がないことは歴史が証明しているとし、ピルズベリーの『China 2049』を引用し、「中国は米国の行動と目標に明確に反対した動きをしており、米国の同盟国や敵と独自の関係を築きつつあり、それは中国のいかなる平和的、生産的意図とも矛盾している」と。

最後に、今回のペンス演説は、11月の中間選挙にどのような影響を及ぼすだろうか? 一つは中国が対米措置として課した関税は、中間選挙において重要な役割を果たす産業と州が対象となっている。中国の関税ターゲットの80%以上の郡が、2016年の大統領選でトランプとペンスに投票しているとの推計もある。中国は、明らかに中間選挙に影響を及ぼす意図がある。仮にロシアと共同しサイバー攻撃やプロパガンダなどで選挙工作を成功させたとしても、米国の対中認識や安全保障戦略が揺らぐことはない。米国の覇権に挑戦する中国への明確な対抗と言うことで一致しているからだ。中国はトランプ現象を表層的に捉えると言う状況認識の誤りを犯している。今後、中国は如何にして平和的な台頭に政策移行するかがポイントとなろう。

ボーンアゲイン・クリスチャンのペンスは、ハドソン研究所での演説をこう締めくくった。
「天が未来を見るという信仰、そして神のお恵みによって、アメリカと中国はともにその未来を満たすだろう。アメリカ合衆国に神のご加護がありますように」。

○主要参考文献(含むURL):
『China 2049 ——秘密裏に遂行される世界覇権100年戦略』
https://www.amazon.co.jp/China-2049-%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%B1%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%94%E3%83%AB%E3%82%BA%E3%83%99%E3%83%AA%E3%83%BC/dp/4822251047/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1539906008&sr=1-1&keywords=%E4%B8%AD%E5%9B%BD+2049 

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