阿部ブログ

日々思うこと

シリアのS-300問題 ~イスラエル、ロシア、CIA、そして中国~

2013年05月19日 | 雑感
ロシアが、シリアに対して、射程距離300キロの対艦巡行ミサイル「ヤホント」と、対空ミサイルS-300を契約通りに輸出。特にイスラエルが最大の脅威と認識しているS-300システムは、6台の発射装置と、5N55系ミサイル×144発。イスラエルは、シリアへのS-300輸出を阻止する為に、ネタニアフ首相がロシアを訪問しシリア支援を止めさせる魂胆だったが、失敗。ロシアは、過去S-300の契約不履行の代替としてシリアに対し近距離対空防御システムや中高度防空ミサイルS-125を、2011年に提供している。

ロシアは、シリアと2010年に合意した契約を履行しただけで、2012年にはS-300の提供を一旦は中止した経緯があるが、今回は、欧米のシリア反政府軍への軍事支援の増大と、アサド政権維持を懸念したロシアは、契約を履行した。シリアは、既にS-300購入の為に9億ドルをロシア外国開発銀行を通じて支払っている。S-300はシリアだけでなくアルジェリアにも輸出された。

シリアに提供されたのはS-300P型でシリーズの初期ヴァージョン。NATOコードネームは、SA-10グランブル。5N55対空ミサイルの最大有効射程は、47kmで最大有効射高25,000m、重量1500kg。ミサイル自体は全長7.11m、直径0.45m、固体燃料式。弾頭には130kgの高性能炸薬が装填されているタイプ。今回のシリアのS-300Pシステムは、ウラル375トラックで牽引される5P85T発射機と、30N6E1目標捕捉・追尾レーダー、64N6Eミサイル追尾・誘導レーダーなど一式で運用される。

現在、ロシア太平洋艦隊が東地中海を遊弋中だが、こんな中、CIA長官(John O. Brennan)長官が、5月16日にイスラエルを訪問し、モーシェ・ヤアロン国防大臣と会談している。討議されたのは、シリア内戦に乗じてヒズボラが戦力を充実させ、対イスラエル攻撃の準備をしている状況を看過できないとの評価と今後の対応の摺り合わせとされるが、実態は米国としてイスラエルの好戦派の抑制を企図しているのだ。

既にイスラエルは、シリアへの空爆作戦を2回実行しているが、ヒズボラへの武器供給ルート遮断は、限定的で失敗しているのが現実。そこにS-300システムがシリアに存在するとなると、中東における軍事バランスに影響が無いわけはない。イスラエルは万難を排して絶対にS-300システムを破壊するか、サイバー戦闘能力を駆使して無力化するだろう。多分、後者だろう。何故なら、S-300システム一式を中国から入手してイスラエルは対抗策を練っているからだ。

最新の画像もっと見る