阿部ブログ

日々思うこと

第2の原子燃料 トリウム

2010年07月15日 | 日記
4月5日にチェコ共和国においてオバマ大統領が核廃絶に向けた宣言を発表したのは記憶に新しいが、この核廃絶宣言したチェコはトリウム溶融塩炉という原発開発において最前線を行く国の一つであることはあまり知られていない。このトリウム溶融塩炉については、当の米国においても7月に上院を通過した海軍の予算の中にトリウム溶融塩炉開発費が計上され2011年までに国防委員会に報告する事になっている。何故、今トリウム溶融塩炉が注目されるのか?それは偏在するウラン資源にある。特に原子力により社会基盤を整備し経済発展をより確実にしたい中国、インドにとっては悩ましい問題となっている。両国とも有力なウラン資源を持たないためオーストラリアなどに頼っているのが現状で、NPT非加盟のインド、軍事利用の懸念によりウラン資源の輸入に難がある中国などは、第2の原子燃料であるトリウムに必然的に注目するようになっている。このトリウムならば両国とも自国で調達できる。モナズ石などレアアースがそれである。レアアースにはトリウムが含まれており、放射性物質であるトリウムはレアアース抽出後の残土に残留したまま利用されず廃棄されている。インドは世界第2位のトリウム埋蔵量を誇り、中国はレアアースの57%を埋蔵する。もともとトリウム溶融塩炉は、冷戦期、米空軍において原子力を推進源とする爆撃機のエンジン開発の為に構想されたもので、1950年代から70年代にかけて実験炉を国立オークリッジ研究所に建設し実験を行い技術としては既に確立している。このトリウムに着目するのには十分な理由がある。ウランを燃料とする現在の原発と違い放射性廃棄物の発生量は約半分で、プルトニュウム(以下、Pu)も80%ほど減らせる事から核不拡散にも有効である。さらにPuをトリウム溶融塩炉で燃焼させる事も可能で、使用済み核燃料からPuを抽出後、トリウム溶融塩炉で二次利用する事ができる。今後、東芝など国内軽水炉企業とは一線を画して、三井物産の総合力を遺憾なく発揮し、このトリウム溶融塩炉の開発を進めている国と連携して、特に小型原発プラントの商用化に取組むべきである。これを核として電力インフラが未整備な地域におけるスマートなローカル・グリッドを構築・運用する一貫したインフラ・ビジネスを世界に先駆けて展開することはCo2を削減し、核不拡散を確実にしつつ、地球環境にも優しい意義ある事業となるものと思量する。