阿部ブログ

日々思うこと

海水資源開発

2010年07月14日 | 日記
日本の排他的経済水域の広さは世界第6位と言われ、この海底にはコバルトリッチクラストやマンガン団塊、熱水鉱床、メタンハイドレートなどの豊富な海底資源が眠っている。但し海洋資源は、海底に存在するだけではなく「海水」自体が莫大な資源の宝庫であり、様々な元素が溶け込んでいる事は良く知られている。この海水から資源を回収する研究は1960年代から行なわれており、特に日本では45億㌧とも言われる海水ウランを捕集するプロジェクトが継続して行なわれ、現在では世界の最先端を行く研究実績がある。
海水ウランの資源化には、原子力研究所と電力中央研究所(電中研)が中心となり様々な実証実験を繰り返し、実用化の一歩手前にきている。鉱石ウランの価格が1.5万円程度とすると海水ウランは3.8万円と高額である事は事実である。但し、電中研の常盤井氏によれば、今の原子力発電原価は8円/kwhであり、この発電原価に占めるウラン費用は、実は0.17円/kwhに過ぎないと指摘する。同電中研の試算によれば海水ウランを原子力発電に利用すると発電原価は現行原価より1円~2円/kwh程度、上昇するとしているが、鉱石ウランについては採掘時に膨大なエネルギー消費とCO2を排出している事を考えれば海水ウランの利用は地球環境負荷軽減の観点から現実的な対応策であると評価できる。
またウラン吸着材料に天然由来のタンニンを用いると低コストかつ高効率で捕集する事ができる事がわかっており、前述の常盤井氏は、東京工業大学とベンチャー企業「NuSAC」を立ち上げ、海水ウランを捕集後、化学法濃縮技術で海水ウランを濃縮し、国産海水ウランによる原子燃料ビジネスの確立を目指している。
今のところウランの他、海水からはバナジウムを吸着する事が出来ているが、今後、中国国内の需要増により資源が逼迫する事が予想されるレアアースなど、戦略的に重要な資源を捕集する吸着材を官民挙げて研究開発する事で、100%海外に依存している鉱物資源を、日本近海の海水から資源化できる可能性がある。特に日本の場合には黒潮が高濃度の資源の運び屋となっており、将に海水資源は今後の資源開発のフロンティアであると言える。

レアアース大国 中国と日本

2010年07月14日 | 日記
レアアース大国・中国と日本

「中東には石油があり、中国にはレアアース(以下、REE)がある」と1992年の南方視察の際に小平は語った。事実、国際REE市場における中国のシェアは80%以上を占めており、我が国はREEの世界需要の半分を占め、その輸入先は殆ど中国からの風化花崗岩に頼っているのが現状である。その中国の工業情報化部が『2009~2015年希土工業発展計画改訂』を策定中であると8月17日、中国有色網が報道した。内容は毎年の輸出総量規制(3.5万t/年)とDy(ジスプロシウム),Tb(テルビウム)他3種類のREEの輸出禁止を検討していると言うもの。これらREEがないと話題の電気自動車のモーターなどが製造出来ない。昨年、中国政府は、輸出許可証の発給先を半減させ、さらに自国の自動車産業育成などのため輸出税を0~10%だったものを20%~25%に引き上げている。このREEの輸出規制は今後も強化されるのは間違いない。これを受け1990年代に安価な中国産のREEの流入により閉鎖されていたMolycorp Minerals社の鉱床(米国)が採掘再開に向けて準備を始め、8月12日付日経の報道の通り住商・豊田通商などが、脱中国に向けて対応を始めている。三井物産はどうすべきか?REEの問題は資源の偏在性にはない。REEの問題は偏在性よりもREE分離など中間工程の中国企業の寡占にある。REE分離は、原鉱石から磁力や浮遊などで選鉱し,希土精鉱にしてから焙焼・酸浸出などで化学処理した後,混合希土酸化物を得る。これを溶媒抽出で希土類酸化物の分離品にして,溶融塩電解で希土類金属にする。こうした工程は,実は中国企業が大部分を担っている。しかも中国政府主導によりREE企業は大手4社に再編(包鋼稀土、五鉱有色、中国有色鉱業、江西銅業)されようとしており、脱中国と言いながらREE分離工程は中国企業となっては真の調達多様化にはならない。

REEの採掘からREE分離・加工・輸送・販売など総合商社の総合力を活かした一貫したソリューションを提供するべきである。REE分離については信越化学工業が先駆的にREE分離精製工場を福井県に20億円かけて建設しており、こうしたノウハウ・技術を有する企業との幅広い連携により、他国の動向に左右されない、我が国先端技術産業の安定的かつ持続的な発展に寄与する事ができる。
以上

※米国は国家安全保障の観点から、中国以外で軍事用途に耐えうるチタンの新たな供給先を見つけることが国防高等研究計画庁(DARPA)の最優先課題となっている。