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礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

どちらがプトレマイオスで、どちらがクレオパトラか

2024-10-20 00:39:41 | コラムと名言
◎どちらがプトレマイオスで、どちらがクレオパトラか

 石原純編『世界の謎』(新潮社、1936)から、第三編の第一部「謎の文字」を紹介している。本日は、その五回目。昨日に続いて、第七章「謎はどうして解かれたか」を紹介する。昨日、紹介した部分のあと、「一行アキ」があって、さらに次のように続いている。
 なお、エジプト象形文字の入力ができなかったので、以下では、これらを、□・*などの記号、あるいは塚・鷹などの漢字によって代用した。

 第一に解かなければならない謎は、二つある楕円形の枠の、どつちがプトレマイオスで、どつちがクレオパトラか、といふ問題である。
 先づプトレマイオスとクレオパトラといふ言葉をABCであらはして見ると、次のやうになる。
  PTOLEMAIOS(プトレマイオス)
  KLEOPATRA(クレオパトラ)
 この両方のどつちにも用ひられてゐる文字のあることは、諸君にもすぐわるに違ひない。第一にP【ピー】といふ文字が、プトレマイオスの最初と、クレオパトラの第五番目に用ひられてゐる。次にT【ティー】がプトレマイオスの方では二番目に、クレオパトラの方では七番目にある。それからO【オー】はどうかといふと、プトレマイオスの三番目と九番目にあり、クレオパトラでは四番目にある。またL【エル】は、前者プトレマイオスの四番目、後者クレオパトラの二番目にある。E【イー】は前者の五番目と後者の三番目にある。最後にAが、前者の七番目と後者の六番目及び九番目にある。これを纏めて表にあらはして見ると、上の第一表のやうになる。(この表で一二三など日本数字であらはしてあるのはプトレマイオスのなかにある文字の順序で、123などアラビア数字で書いてあるのはクレオパトラの方の順序である。)
 これだけ先づ用意しておいて、そこで楕円形の枠の中の文字を調べて見る。二つの枠の中の文字のうちに、両方に共通なものがあつて、しかもその順序がABCで書いたプトレマイオスとクレオパトラの場合と同じ順序になつゐたら、どつちの枠の文字がプトレマイオスで、どつちの枠の文字がクレオパトラか見当がつくわけである。同時にエジプト文字のどれが、ABCのどれにあたるかも見当がつくわけである。
 A図とB図とは、シャンポリオンが調べたオベリスクにある王と王妃との名前を写したものである。これを見較べてみると、A図の第一番目と、B図の第五番目とに□のしるしがあることはすぐわかる。これと前の第一表とを比べて見よう。一と5といふ数字のついてゐるのはとPいふ字である。して見ると□はPといふ字にあたるらしい。従つて、Pが一番最初にあるのはプトレマイオスの方だから、A図がプトレマイオスと判断してよさゝうである。しかし、さう決める前に、ほかの字も調べておかなけばならない。
 A図とB図とを比較して、前と同じやうに共通な字を拾ひ出し、A図の方では何番目か、B図の方では何番目か、一つ一つ調べて見給へ。その結果を表にすると、第二表のやうになるであらう。(前と同様一二三の日本数字はA図の方の順序、123のアラビア数字はB図の方の順序である。)
 そこで第一表と第二表とを比べて見ると、もちろん、ぴつたりとは一致しないけれどど、四字だけは大体一致してゐる。その一致してゐる字を、第一表と第二表とから取出して並べて見ると、第三表のやうになる。この第三表をよく見てみ給へ。□がPであり、蛇がOであり、獣がLであり、鷹がAであることは、どんな人にだつて見当がつくではないか。A図がプトレマイオスで、B図がクレオパトラであることは、もう間違ひない。【以下、次回】

 A図、B図、第一表、第二表、第三表は、それぞれ、画像によって紹介すべきところだが、第一表、第二表、第三表の紹介は割愛し、A図およびB図のみ、そのイメージで紹介するということで、ご勘弁いただきたい。

A図  □ 塚 蛇 獣 梟 羽 羽 杖    
    一 二 三 四 五 六 七 八

B図  △ 獣 羽 蛇 □ 鷹 * 唇 鷹 塚 卵
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