礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

謎のエジプト文字とロゼッタ・ストーン

2024-10-16 00:25:12 | コラムと名言
◎謎のエジプト文字とロゼッタ・ストーン

 石原純編『世界の謎』(新潮社、1936)を紹介している。本日は、第三編「歴史の謎」の第一部「謎の文字」の導入部分を紹介してみよう。

     一、謎 の 文 字
   ― 一 千 年 の 謎 エ ジ プ ト 文 字 ―
   ―ロゼッタ石の秘密とシャムポリオンの苦心―

 ロンドンの大英博物館には、世界中から集めた珍しい美術品、工芸品、その他、学術上貴重な参考品などが無数に集めてあつて、その数の多い点からいつても、その行きわたつてゐる点からいつても、この博物館に及ぶものは世界にないといはれてゐる。その数多い貴重な品の中でも、取りわけ大切にされてゐる幾つかの宝のうちに、ロゼッタ石【ストーン】といふものがある。縦一・一四メートル、横七〇センチばかりの玄武岩のかけらに過ぎないが、これはエジプトのロゼッタといふ所で掘出されたもので、昔の石碑の一部分なのである。見た所、その一方の面が平らになつてゐて、そこに何やら奇妙な文字が細かく彫りつけられてあるばかり、これといつて人目を驚かすやうな所は何もない。
 では、なぜこんな石のかけらが、高価な美術品の中にまじつて、特別に大切にされてゐるのであらうか。
 それには、一つの長い物語がある。実はこの石こそ、千余年人類の解き得なかつた大きな謎を解いた鍵なのである。人類が長い間知ることの出来なかつた遠い遠い昔の事が、この石のおかげで明るい光の中に照らし出されたのである。
 その謎とは何か。どうしてその謎が解かれたのか。それがこの一篇の物語である。手のつけやうもない不可解な問題と見えたものが、学者の苦心と忍耐とによつて、つひに見事に解かれてしまふ、その道筋を辿つてゆくと、私たちは今更のやうに人間の知力のすばらしさに驚く。今日疑ひもない事として教科書に記されてゐる簡単な事でさへ、実は並々ならぬ努力の結果、始めてわかつた事なのだと知つて、私たちはその意外に驚かずにはゐられない。
 だが、さういうことは、この話を読んでゆくと自然と諸君にわかつて来ることである。前おきはこの位にして、すぐ物語に取りかゝらう。話はエジプトの話である。【以下、次回】

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