ON  MY  WAY

60代になっても、迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされながら、生きている日々を綴ります。

「終止符のない人生」(反田恭平著;幻冬舎)

2023-01-14 19:02:01 | 読む


サッポロビール・黒ラベルの「大人エレベーター」。
新年になって、新しいCMになった。
今度の階は、28。
28歳の大人代表は、ピアニストの反田恭平氏。

反田氏といえば、2年前のショパンコンクールで2位に入賞した、今勢いのあるピアニスト。
つい先日は、同じピアニストの“幼なじみ”の小林愛実氏との結婚が発表された。

その注目のピアニスト、反田氏が去年著した本があった。
その書名を「終止符のない人生」という。
「終止符」なんて聞くと、ずいぶん年輩の人が書いたような本のタイトルだと思った。
ちょっと興味をもって読んでみることにした。

第1章ののっけから、「反田恭平が死んだ日」というまとまりから始まる。
生まれてきたとき、一度は心肺停止状態に陥ったのだそうだ。
だから、そのとき「一度死んであの世へ逝き、そして生まれ戻ってきた」のだという。
11歳まで、「本業はサッカー、ピアノは趣味」だったのが、サッカーの試合で右手首を骨折して、サッカー選手になる夢をあきらめたとのこと。

そこからは、どのような音楽人生を歩んできたのかが、順を追って書いてあった。
桐朋学園の音楽教室に始まって、桐朋学園の高校・大学、ロシアの国立モスクワ音楽学院、ポーランド・ワルシャワ音楽学院と進んでいった。

そして、中心となるのは、やはりショパン国際ピアノコンクール。
第1次予選から2次、3次の予選、そしてファイナルのステージへと進んだ彼が、それぞれ演じた曲目について、どのような思いと作戦で臨んでいったかを述べていた。
それがまたとてもよく考えられていることに感心した。
やはり入賞する人は、そこまで深く考えているということだ。
彼は、ショパンコンクールに出なくても、すでに他のコンクールで輝かしい成績を収めていたから、その名前は多くの人に知られていた。
それゆえに、もし上位入賞できなければ、今まで築いた地位が崩れていく危険性も大きかった。
だが、そのプレッシャーに打ち勝って、よくぞ2位になったものだ。

そのための努力は、惜しまずにやってきていたことも披瀝していた。
スポーツジムに通って、肉体改造に取り組み、体感を鍛えたこと。
サムライ・ヘアにして、注目されるようにしたこと。
そして、何よりすごいのは、過去2回のショパンコンクールで参加者800人が弾いた曲4000回をリストアップして、どの曲が何回弾かれているのかまで調べたこと。
それをもとに、自分なりのストーリー性と物語性が出るように選曲していたのだった。

このような自分の強い思いをもった積極性とは、彼の生き方にも様々に表れている。

「瞬間瞬間を後悔しないで生きる。今この瞬間、自分が出した音に悔いのない生き方をしたい」
「今日はこれだけピアノを弾けたのだ。もう後悔は何一つない。演奏が終わった瞬間、ステージ上で倒れて死んだとしても本望だ」
 極端な話、僕は「いつ死んでもいい」という覚悟で昔からずっとピアノを弾いている。会場が大きかろうが小さかろうが、聴衆が2000人だろうがたった一人だろうが、コンサートを差別しない。絶対に手抜きをしない。すべてのステージで、毎回全身全霊でピアノを弾き切る。
 この姿勢を失って慢心するようであれば、死んだ方がマシだとさえ思う。


この考え方、生き方に最も感銘を受ける。
プロフェッショナルとしての、手を抜かない生き方、常に前に進もうとする生き方は、現在進めている事業や、近い将来やろうとしている夢に対しても出てきている。
それも、音楽界の未来のためを思って、様々なアイデアを生み出している。
それらのなかには、すでに実行に移しているものが多い。
まだのものは、これからどうすれば可能になるか、その道筋も具体的に考えている。
実にポジティブだ。

本書のタイトルに関係する1行が、最後のページに載っていた。

人生とは、終止符のない音楽なのだ。

反田氏のストレートな思いがビシビシと伝わってきた。
若さと、夢の実現に向けた実行力のすばらしさを感じる1冊だった。


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