ON  MY  WAY

60代になっても、迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされながら、生きている日々を綴ります。

「物語の種」(有川ひろ著;幻冬舎) …10編の短編小説を楽しむ

2024-06-05 09:57:35 | 読む

COVID-19感染症禍の息苦しい期間に、読者から「物語の種」になりそうなものを募集し、そこから芽吹いた物語をネット上で発表するということに著者はチャレンジした。

本書は、そうやって10の種から生まれた10編の短編小説集。

 

1つ1つの話の終わりに、どんな物語の種だったのかも明かしている。

読者から提供を受けたものばかりでなく、担当編集者から、というのもあった。

種の種類には、お手紙あり、写真(ヤモリとか薔薇とか)あり、質問のような言葉あり(「胡瓜と白菜どっちが好き?」)、連続した単語あり(宝塚 双眼鏡 顔が良い 恥ずかしい 見れない)で、確かにいろいろな種をもとにしていた。

そういった種をもとに、想像を膨らませて小説を創造するのだから、やっぱりすごいわ。

しかも、登場するのは、私たちのように何気ない日常生活を送っていてその辺にいそうな人物が登場したり、日常生活の中でありそうなエピソードばかりをうまく使って、意外性のある物語を作っていた。

さすがは人気作家の有川ひろさんだと、ひたすら感心した。

 

そんななかで、本書で目を引いたのが、「宝塚愛」である。

短編集10篇のうち、3編も宝塚歌劇団が深く関わる短編が入っている。

その中で、「Mr.ブルー」と「恥ずかしくて見れない」という作品はつながっていて、続編に当たるとも言えそうだ。

登場する人物も、意外なほど宝塚にハマっているのだが、そのハマり具合がなんとも楽しい。

しかも、出てくるスターには、きっとモデルとなるスターが実在するのだろうな、そうでなければここまで詳しく書けないよな、なんて考えてしまった。

きっと、この感染症禍に有川さんも宝塚にどっぷりハマっていたのではないか、と思わせるものだった。

 

10編の物語は、短編なので読みやすかった。

それぞれの話を読み、それがどんな「種」から芽吹いたのかを1つ1つ知ることによって、日常の中で一人一人にさまざまな物語があるのだな、と思った。

きっと、自分の中や周辺にも、「物語の種」はたくさん存在しているのだろう。

だけど、その種が芽吹いていたり、実にまでなっていることに、案外気づいていないのかもしれないな。

 

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« さびれた通りをさびしい思い... | トップ | GK吉満にビックリだったが、... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (りゅーと)
2024-06-05 12:04:15
 宝塚歌劇団と言えば、私は「銀河英雄伝説」の東京公演に行ったことがあるんですけど、素晴らしかったですね。こられていたのは女性8割と言う感じだったと記憶しています。

 宝塚歌劇団のパンフレットは本当に充実していて、「これで千円?、ファンを大切にしているんだな〜」と感心しました。それから宝塚歌劇団銀河英雄伝説シリーズのDVDを買いましたね。今度、プロジェクターを導入するので、大画面で楽しみたいと思っています。
 これからもよろしくお願いします。
返信する
実際体験!素晴らしい (50fox)
2024-06-06 07:06:45
>りゅーと様
そうですか。爺際に宝塚歌劇団の公演を見たことがあるのですね。しかも、その素晴らしさを実感したのですし、DVDまで持っているから、うーん、なかなかです。
私はかつて一度宝塚を訪れたことがあったのですが、その日は休演日で残念でした。もっとも、その分、同じ宝塚にある手塚治虫記念館でたっぷり時間を過ごすことができたのですけどね。
男性にとっては、公演にも行きにくいものがありますけど、きっと一度見るとその素晴らしさがわかるのかもしれませんね。私はそれ以降なかなか機会がないままではありますが…。
返信する

コメントを投稿

読む」カテゴリの最新記事