日本男道記

ある日本男子の生き様

母 (角川文庫)

2008年04月29日 | 読書日記
母 (角川文庫)
三浦 綾子
角川書店

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【一口紹介】
◆出版社/著者からの内容紹介◆
明治初め、東北の寒村に生まれた小林多喜二の母セキ。
大らかな心で多喜二の「理想」を見守り、人を信じ、愛し、懸命に生き抜いたセキの、波乱に富んだ一生を描く。
感動の長編小説。(久保田暁一)

◆内容(「BOOK」データベースより)◆
「わだしは小説を書くことが、あんなにおっかないことだとは思ってもみなかった。
あの多喜二が小説書いて殺されるなんて…」明治初頭、十七歳で結婚。
小樽湾の岸壁に立つ小さなパン屋を営み、病弱の夫を支え、六人の子を育てた母セキ。
貧しくとも明るかった小林家に暗い影がさしたのは、次男多喜二の反戦小説『蟹工船』が大きな評判になってからだ。
大らかな心で、多喜二の「理想」を見守り、人を信じ、愛し、懸命に生き抜いたセキの、波乱に富んだ一生を描き切った、感動の長編小説。
三浦文学の集大成。

◆著者◆
1922‐1999。旭川生れ。17歳で小学校教員となったが、敗戦後に退職。
間もなく肺結核と脊椎カリエスを併発して13年間の闘病生活。
病床でキリスト教に目覚め、1952(昭和27)年受洗。
’64年、朝日新聞の一千万円懸賞小説に『氷点』が入選、以後、旭川を拠点に作家活動。
’98(平成10)年、旭川に三浦綾子記念文学館が開館。

【読んだ理由】
三浦綾子作品。

【印象に残った一行】
「世の中には、いろんな悲しい思いをしてる人があるべな。そりゃあ、重い病気で死なれたり、苦しんで死なれたり、自殺されたり、人に殺されたり、海や山で災難に遭ったり、いろんな死に方はあっても、多喜二ほど惨たらしい死に方をした息子をば持った人は。そうは多くないなべな」

「布団の上に寝かされた多喜二の遺体はひどいもんだった。首や手首には、ロープで思いっきり縛りつけた跡がある。ズボンを誰かが脱がせたときは、みんな一斉に悲鳴を上げて、ものも言えんかった。下っ腹から両膝まで、墨と赤インクでもまぜて塗ったかとおもうほどの恐ろしいほどの色で、いつもの多喜二の足の二倍にもふくらんでいた」

【コメント】
この小説は、権力の不正と戦い献身的な活動をし、当時の特高警察の拷問によって虐殺され、二十九歳四ヶ月で命を閉じるという、痛ましい犠牲者の一人となった、小林多喜二の生涯と人間性が、母親セキの目と口を通して朴訥に語られている。
そして、セキの生涯、母親としての愛情と苦しみと悲しみが語られている。
著者の、多喜二を虐殺したような、多数の人名が奪われ、その運命を狂わされた暗黒の時代と社会を再びもたらしてはならないという祈りが行間から伝わってくる。
 



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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (latifa)
2008-06-26 21:20:49
こんにちは、これを読んで、涙、感動してしまいました。蟹工船は気にはなっていたのですが、まだ読んでいなかったんです・・・
でも、「母」を読んだら、絶対読まねば!と思いました。
こちらの蟹工船の感想の記事のところで、読むに至った理由が、同じく「母」を読んで・・・と書かれていたので、動機が同じだ~と、勝手に嬉しくなってしまいました。
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latifaさんへ (日本男道記)
2008-06-28 00:05:05
こんばんは!

コメント、TBありがとうございます。

凄い読書量ですね。

今後本選びの参考にさせていただきます。
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