【まくら】
江戸時代の結婚では、どんな階級であろうと仲人が非常に重要な存在だった。仲人のいない結婚は公に認められない結婚なのである。嫁や婿の候補を知人として紹介する場合もあるが、商売としてやっている人もいる。いずれにしても、女性が嫁入り時に持って行く持参金の一割が、仲人に支払われる。結納も仲人の仕事である。江戸時代では、本人たちは結納に出ない。仲人が柳樽や目録を持って、双方の家を往復するのだ。
お嫁さんは夕暮れに、提灯や蝋燭と一緒に実家を出る。明るいうちに出る時も必ず松明か提灯か蝋燭を使う。また江戸時代は今のような宗教的な結婚式はおこなわない(神前結婚は西欧の影響)。夫婦、親子が酒を酌み交わすのが、結婚儀礼なのである。人前結婚なので、婚礼当日も、仲人は重要な証人である。
出典:TBS落語研究会
【あらすじ】
何の因果か、物知らずな八五郎がひょんな事から仲人を仰せつかる事になった。相手は伊勢屋という豪商。
着ていく服もなく、困った八五郎、知り合いの隠居に羽織を貸りに行った。
ついでに仲人の心得を教えてもらい、「ご祝儀に『高砂や』ぐらいはやらなくてはいけない」と言われる。
『謡』などに縁のない八五郎は頭を抱えるが、隠居に「ほんの頭だけうたえば、あとはご親類方がつけるから」と言われてしぶしぶ歌う事になる。節が似ていると言うので、豆腐屋の売り声を試し声とし、なんとか出だしだけはうたえるようになった。ひどい練習もあったものである。
さて本番。婚礼の披露宴なかばで「ここらでご祝儀をひとつ」。
頼まれた八五郎、いきなり「とーふー」と声の調子を試したあと、「高砂や この浦舟に 帆を上げて」をひとくさりやって、「あとはご親類方で」と逃げようとした。ところが「親類一同不調法で……仲人さんお先に」といわれ、思わず「高砂やこの浦舟に帆を 下げて」と謡ってしまい、「下げちゃ、だめですよ」と突っ込まれる。
「高砂や この浦舟に 帆をまた上げて 高砂や この浦舟に……ウゥ……助け舟ェ!!」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
【オチ・サゲ】
間抜け落ち(会話の調子で間抜けなことを言って終わるもの。また奇想天外な結果となるもの。)
【噺の中の川柳・譬(たとえ)】
『袖ふれあうも他生の縁』
『つまづく石も縁の端』
【語句豆辞典】
【高砂】能の『高砂』に出てくる謡で、高砂の松と住吉の松とが同じ根元から二本の幹の出た、相生の松であるとし、夫婦和合をうたっている。
住吉の松の精である尉(じょう)と高砂の松の精の姥(うば)が遠く離れていても通い馴れて、松もろとも夫婦であるという伝説に基づいて作られた。
【この噺を得意とした落語家】
・八代目 雷門助六
・六代目 春風亭柳橋
・十代目 柳家 小三治
【落語豆知識】
【釈台(しゃくだい)】講談で用いる机のこと。