半沢直樹は実に面白かった。毎回欠かさず見続けた初めて観続けた日本のテレビドラマだった。大げさすぎる展開ながら、そこには実ビジネスが角度の異なるプリズムで映し出され、迫力とリアリティーが感じられた。
倍返しも痛快で、溜飲を下げた人も多かったのでは。日本ではあり得ない事だったから、仲間内の会話や飲み屋や学校やあらゆるところで、10倍返し、100倍返し宣言が飛び出した。
ハリウッドアクションのようで、同時並行で起こる場面が短時間で切り替わり、刺激的で、飽きさせない。非現実的なストーリーを混ぜながら、現実的な瞬間を連想させる。
ルーズヴェルト・ゲームと半沢直樹は、製造業と銀行という舞台の違いに加えて、主人公の唐沢寿明と堺雅人の持ち味の差が有るものの、実際の商習慣を織り交ぜたストーリーの組み立て、レンジの広さ、テンポの速さなどは共通である。
半沢直樹の面白さは矢張り、堺雅人という浮世離れしたスマイル役者が、正反対の超人的でハードすぎる主人公を演じたギャップの大きさにあると思う。厳しい表情や激しいアクションに惹きつけられ、場面展開が驚きの連続だった。
唐沢寿明は魅力あるルックスだが、堺雅人と比べると一般人との距離感は少ない。しかし堺雅人ほどのギャップが無い分、大袈裟過ぎず生活感やリアリティーは増す。
第2話:仕事一筋の剛速球ピッチャー沖原が濡れ衣を着せられ、首になりかけたものの事実解明で助かった場面では、自分と重なる部分が有り、熱いものを感じた。日本はまだまだ正直者が馬鹿を見る仕掛けだし、ずるい奴が幅を利かせている。
電力社員10万人ほどの中で、私ほど事実無根の嘘情報を激しく流された人間はいなかっただろう。殆ど闇から闇で処理されたが、例外的に出向時に掛けられた嫌疑では取締役が徹底調査し身の潔白が証明された。嬉しかった。
また、親会社への復帰を希望した際は、突然常務から「お前はいったい何をやらかしたんだ」とすごい剣幕で電話が有った。メーカーが仕掛けた無理筋の裁判の話だったので、弁護士への確認(殺人現場に通り合わせた通行人のようなもの)で完全クリアされ何とか復帰できた。
調べれば根も葉もない事は証明できるが、大抵は嘘で潰される。裁判の件は、元官房長官の後藤田正晴氏をバックに、後に電力常務になった藤木正雄(仮名)が伝えた嘘話だった。要は私を電力本店へ復帰させたくなかったのだ。
藤木は営業部課長時代 全営業所に産業需要のデータを捏造させ、部長時代 大々的に推進した需要家をネットで結ぶプロジェクトは大失敗(数十億円の損失)。
私は全電力に呼びかけ、金をかけず電池利用照明の負荷平準化システムを共同開発し、見通しを得たが報告書の受け取りを拒否される。当時私は、「小さなミスでも命取りになる」と伝えられていた。失敗は無かったが実績無しで評価は最低になった。
藤木はどうなったか?大嘘、ねつ造、大失敗のお蔭?で常務に昇進。子会社の社長にもなった。電力会社では事実が殆ど意味を持たない事がご理解頂けると思う。99%の電力社員は物凄く真面目であることは申し添える。
事実は小説より奇なりと言うらしいが、電力組織の中では、しばしば想像を超える事が現実として突きつけられ、それが重要な人生の方向を変え、人生そのものになるのである。
ルーズヴェルト・ゲームは録画してあり、順番に見るのが楽しみ。それよりも半沢直樹のラストはいかにも続きが有りますよと思わせるシーンだった。本では続きが分かるようだが読まない。待ってますよ。