国民の間にも、いかに官僚が税金をむさぼり、国民を痛めつけているかが次第に分かってきた。国民年金を滅茶苦茶にした社会保険庁や、異常に高い無駄な道路を作り続ける国土交通省などのことが、茶の間の非難の種になってきたのである。
しかし、国民はまだまだ、官僚の深刻な欠陥については気付いていない。彼等は何しろ幼少期から知識を詰め込まれ、役に立たない知識は豊富にあっても、バランス感覚が無く社会の具体的なことが分かっていないから、税金のばらまきや不正はできても、課題や新たな問題を解決できない。
1990年代を想い出して欲しい。大蔵省の馬鹿官僚が、何の戦略も、何の勝算も無く、総量規制で自らバブルを無理やり壊したあと、経済政策で税金バラマキ以外は何の政策も打てなかった。このため、日本経済は見事失速し、地方と合わせて1000兆円を超える借金を残しただけで、アメリカの意図したとおり、普通の国になりつつある。
アメリカは日本の経済的挑戦を退けるため、バブル崩壊を企て、馬鹿官僚を動かしただけでなく、世界の製造工場を中国にシフトさせたのだ。ビルクリントンは実際、中国中を飛び回り積極的に動いた。日本に対しては、製造業を中国に立地するよう強力に圧力をかけた。かくして、日本の製造業の大半が中国に立地するに至った。中国は激安の労働力が無尽蔵とも言うべく豊富であり、クリントンの意図したとおり、日本の製造業を圧倒する世界の工場になったのだ。
中国を世界の工場にしたことは一時的にアメリカの利益に寄与した。しかし、自由選挙の無い共産体制の国を選択したことが決定的に21世紀の中国支配を決定的なものにしつつある。中国のGDPはやがてアメリカを上回り、軍事力もアメリカのそれを凌駕する日が来る。早晩、アメリカは中国にひれ伏すことになる。
アメリカ人は確かに能力が高いし、論理性もあり、タフである。しかしながら、アメリカの有能さは、自国のための短期間の場面において発揮されるが、ロングレンジを想定していないので、その場面場面では良くても、将来的にはハチャメチャになることが分かってきた。また、20世紀におけるアメリカの大きな過ちは、原子爆弾を広島と長崎に投下したこと、世界の工場を日本から共産圏の中国に移したことだろう。いずれも日本が関係している。
日本は成長エンジンを失い、無能・欠陥の官僚が自らの既得権確保画策し日本を支配する中、ただただ地盤沈下するのみだ。自民党は利益誘導、および選挙マシーンである土木建設企業を動かすために、官僚と結託して、税金ぼったくりのトライアングル既得権を維持させる。
自民党が政権を維持し続ければ、鉄壁の既得権構造はびくともしない。政権交代は当然すぎるほど当然であるが、次の政権を担うべき民主党にもどのような国を目指すのかの戦略的ビジョンが無い。日本を救うには、経済成長しかなく、それには国家戦略が欠かせないが、官僚にはそのベースが無く、民主党にも希薄である。