子供の頃、親類のおばさんが「まー、よーきんさったねー。はよー上がりんさいや」と言っていたのを想い出す。広島本来の、のんびりとした風潮と人の良さだ。あれから半世紀。当時は郡部だった安佐南区の「こころ」という広島ではちょっとしたブランドの住宅地に居を構えた。明るくて、スマートな町なんだが、中心部からはちょっと距離がある。道は広いし景色は良いが、アストラム(新交通システム)の大塚駅付近からは高速に繋がるタフな長い坂を2kmも登らなければならない。坂の途中に30階のツインタワーを含むアジア大会の旧選手村、本格的なテニスコート、マックスバリューなどがある。
引っ越しして来た時はまだ空地も多少あったのに、ほとんどが売れ、2期工事が始まったようだ。最終的には3000世帯となるという。敷地として残っていた区画の最も大きいところを選んだが、71坪しか無く、家の必要面積(事務所+2世帯)を確保するのに苦労した。その後、売主の広島ガスと交渉して、例外的に12坪を買い増しした。この辺で一番広いと思っていたら、2区画を買った家が当家の西隣を含めて2か所ぐらいあるという。東隣の3軒めにはサッカー全日本の佐藤選手(サンフレッチェ)が家を建て、住み始めたらしい。あいさつに来ないからどんな若者なのか分からない。
電信柱や視界をさえぎる垣根がなく、人優先の道路が整備され、家々はまだ新しく今風で美しい。散歩に適した公園、無料で使用できるテニスコートなど出来すぎだが、都会的な人の集まりや賑わいを求める向きにはちょっと寂しいかな。小さなパトロールカーが夕方から朝まで?走っているのは安心感を与える。犬を散歩させていると、多くの人がこんちわとかこんばんわとあいさつし、あわててこちらも応じる。この町の住人は優しい。ただ、家内は犬を散歩さていて、排出物のことなどを車で通りかかった女性にヒステリックに注意されたようで全員が暖かいわけではない。
普通の家は税金を取られるばかりだから、へそ曲がりな私は、家は利益を生み、人が集めるところでなくてはならないと考え、2世帯に事務所を併設した。トイレとキッチンが3か所、小さな商品倉庫も3か所ある。各部屋にインターネットのケーブルを這わせた。電話は受け専用(通常電話)と、話し専用(IP電話)に分けるために、FAXを含め7回線の有線電話とし、事務所や各部屋に端末を置いた。(ビジネスフォンでは結構複雑でわがままなニーズに対応できる)
私のこだわりは、断熱や設備にある。壁には75mm、屋根には155mmのロックウールを入れた。ロックウールは意外に安価であり、断熱効果が高かった。24時間換気を取り入れ、3か所で全熱交換が行われている。24時間換気の誤算は、ドアの下を少しづつ開けなければならないので、やや音がリークすることだった。1階と2階にはそれぞれヒートポンプの床暖房、併せて2台のヒートポンプ温水器を設置した。ヒートポンプは第1種冷凍機械責任者としてのこだわりだ。2階の台所用にディスポーザを設置し、生ゴミ運搬を無くした。ディスポーザには浄化槽併用が義務付けられており、結構な負担になった。最も負担が大きかったのはセントラルクリーナーで、これは家内が譲らなかった。排気が無いから理想的にクリーニングできる。空調機を全部屋に付けたので驚くほどの室外機を置くことになった。家は木造だが、設備としては、広島市内でもあまり例が無いほど充実させた。
家内はシックハウス症候群をかなり気にし、設計段階から問題無いとの説明を受けていたが、現実には引っ越し後・頭が痛くなると訴えた。ただ、24時間換気のおかげで、間もなくこの問題は解決した。私は1階と2階間の防音が気になっていた。防音材が入っており気にならない程度と聞いていた。確かに2階から1階の音は聞こえないが、1階の母の部屋では、2階で人が歩くたびに、音質は変わっているものの、音が響く。私の部屋で大声で電話していると、家の壁にへばりついた人には聞こえる事が分かった。ただし、全部屋の窓は2重ガラスなので、社長室も向かいの小学校で放送していてもほとんど。聞こえない防音を考えるならコンクリートにするしかない。木の床は傷がつきやすいことが分かった。対策としては絨毯を引くしかないので、傷はつくものと割り切ることにした。
屋根はコストと地震対策で、軽量のカラーベストを採用した。私は見かけや常識的な瓦へのこだわりは無かった。第一に瓦のような重いものを上部に置く、合理的な理由が無い。壁は一般的なサイジングであり、ロックウールの厚みも考えると、外からバーナーであぶっても、木の柱が焦げることはあれ、火災に至る心配は少ない。事務所倉庫の窓は破られないよう特殊ガラスとなっている。
小さな事務所にもキッチンとトイレ、そして3か所の小さな倉庫、その他の収納スペースを用意した。十分なように思えた倉庫だが、ビジネスが拡大すると、厳しいように思える。社長室の下に1.4mの倉庫があり、その下に事務所があるので、上下の音は完璧に遮断され、社長室は2.5回の高さとなり見晴しが良くなった。
前述したインターネット用のケーブルは自分で計画し、ハブやケーブルなどを用意して、電気工事業者に施工させたので、費用をかなり安く済ませることができた。もし、通信専門業者に全部を委託すれば、相当の費用となっただろう。ビジネスフォンは東京の業者から中古を購入したが、性能機能は高く、業務だけでなくプライベートな使用においてもわがままな要求を満たせるので重宝している。
最後に、広島のアイフルホームには、思い切った低価格設定と、家族全員のわがままを実現していただいた親切、多くの新しい試みに果敢に挑戦していただいた積極性に感謝する。特に、寺川設計師にはこの場を借りて、お礼申し上げたい。彼がいなければ、絶対、このような家はできていない。