練習オタクの日々

3日ぼうずにはしたくありません!この日記とピアノのお稽古。練習記録とその他読書などの記録をつけておきます。

『がらくた』 江國香織

2008-03-04 | 読書
江國さんの「大人の男女が出てくる」小説を読んで、いつも思うのは、
「なにかメッセージがあるのか、あるとすればそれが何なのか、よく分からない」
ということだ。
メッセージなんて最初からないのかもしれない。
ただ、その場を流れる雰囲気を読めばいいだけなのかも。

ひとつ思えるのは、これらの小説に登場する主たる人たちの世間から浮いた感じ、
確固たる雰囲気が、私は嫌いではない、ということだ。

江國作品に出てくる奥様たちは大抵、おそらく相当経済的に恵まれているような設定で、お金持ち特有のなんともいえずぼ~っとした感じが出ているなぁ、といつも思うのだけど、
そのお金持ちぶりがいやな感じではない、私は嫌いじゃない、といつも思っている。

なら、なにが嫌な感じのお金持ちなのか、と考えると、多分「見せびらかしたい」気持ちを持っているお金持ちなのかも、と思う。
見るからに「高価そうな」、しかし雰囲気のない所有物、それを人前に恥ずかしげもなく提示する人、それを見たら、江國作品のヒロインたちはこう言うだろう。
「悪趣味ね」

恋愛に関しても同じかもしれない。
作品の中で、他の人に自慢したくて、見せびらかしたくて、話したくてしょうがない人は主人公にはなり得ない。
どちらかというと、江國作品の主人公たちは自分たちだけの世界に入りこんで、他の人は寄せ付けないようなムードの中で愛し合っている。
ダブルデートとか、夫婦同伴のホームパーティとか、旦那の悪口に終始する井戸端会議とか、実はその裏では旦那を自慢しあうおしゃべりとか、あり得ないのだ。

で、なにが「がらくた」なのか、ということだが、
たぶん、他の人にはなんの価値もない「がらくた」だけれども、
私、私たちにとっては大切な宝物(物も気持ちも存在も)。
そんながらくたに囲まれて暮らしている。
というようなことなのかな?なんて思った。

あ~、これが江國さんのメッセージなのかも。
やっと分かった(ような気になった)。
一時期は、なんだか余裕がありすぎて鼻に付く感じの江國作品だったけれど、
最近少し、以前より楽しめるようになったかもしれない。