まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

創造都市(CREATIVE CITY)08-背後にある社会・経済のイメージ-

2009-10-19 17:14:15 | 講義・レクチャー Lecture

 

創造都市の背後にある社会・経済のイメージ

 

      

 

私は建築に携わるという立場から第一に公共空間や建築・まちなみのデザイン(の質)に関心を持っています。そういうことで創造都市という話題を取り上げる場合にも、世界的な建築家ノーマンフォスターが橋やコンサートホールを設計したニューカッスル・ゲイツヘッドQuaysideの公共空間から話を始めました。一方で私は、人々が社会・経済活動を行う場として建物や広場をデザインするのですから創造都市がどのような社会や経済のあり方を前提にした議論なのかというところには興味が及びます。

 

 

今まで興味の赴くままに創造都市を見てきました。おおむね次のような社会・経済の姿が創造都市の背景に浮かび上がってきます。だんだん専門外の領域に入り込んで(迷い込んで)しまって思い違いもあるでしょうがまとめてみます。

 

 

行政や大企業が丸ごと面倒を見てくれるサービスの受身社会ではなく、自分たちの地域の問題解決には地域の人々が協働で主体的に取り組むことが求められる社会。

 

 

 

今までの国家から自治体に至る竪の統治機構の中で生活サービスを享受するのではなく、地域に密着した単位(自分達のまち、都市、基礎自治体)のなかで相互性を持ったサービス供給を行うということ。それは現在脚光を浴びているコミュニティビジネスや社会的企業家の活動が地域の経済活動の主軸になっていく社会でもある。

 

 

 

大企業の大量生産によるフォーディズムではなく柔軟に専門特化(この言葉は都市計画家協会の機関紙Planners622009の中で編集者が田中夏子氏を講師とした勉強会を紹介する中で使っている)された組織が有機的に連合している経済のありかた。

 

 

 

ボローニャで井上ひさし氏が見たようにグローバル経済の流れにあっても地域社会の中で生きる人の労働感、価値観や人生観と両立できる社会経済システム。

 

 

 

身近な地域社会の伝統や文化を大事にすることが地域の魅力を増し、人々の誇りにもつながり、結果的に人を呼び込む産業にも結びつくこと。抽象的であり、グローバル経済やEUの統合理念の中で存在基盤のゆるぐ国家ではなく人々の顔の見える地域が基盤となる社会・経済。

 

 

     ・・・・・以上です。

 

 

日本の地方都市の多くは、横浜や金沢のようにアートや人々の創造的な活動が目に見える成果を上げるところまでは到達していませんが、上記のような社会変化の兆しは読み取れます。その社会・経済のイメージは必然的な方向性なのかまたはそうあるべきものなのか、私にはよくわからないところがあります。しかし、少なくとも私たちのように疲弊する地方都市の活性化に関わるものは、上記のような方向性での変化には敏感であるべきであり、その変化を背景に創造都市の構築が行われていることに大いなる注意を払っておく必要がありそうです。

 

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高谷時彦記 Tokihiko Takatani


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