創造都市(CREATIVE CITY)―ニューカッスル・ゲイツヘッド―その3
(続き)
北の天使の成功がベースにあることで、その後のキーサイドQuaysideに対する投資は順調に進んだようです。
ここからの開発は、ニューカッスル・ゲイツヘッド両市のカウンシルと「英国の実質的な文化政策の執行機関」であるアーツ・カウンシルと中央政府の地域開発局に相当するone northeastが共同(パートナーシップ)で宝くじ資金をうまく活用しながら行いました。住民意識に隔たりのある二つの市が協力したことは画期的でした。協力できたのはパブリックアートが両市の再生にとって共通の目標となるという信念だということです。
小麦工場の外観を保全しながら内部を大胆に改装したバルチックセンターは2002年にオープン。バルチィックセンター(Baltic Center for Contemporary Art 投資額70億円)は収蔵品を持たず、そこにアーティストが滞在し現代美術作品を作っていくというコンセプトで運営されており、英国最大の現代美術館といわれています。年間40万人を集めるそうです。
2004に開館したthe Sage Gateshead Music Center(投資額100億円)はノーマンフォスターの設計です。両市を結ぶミレニアムブリッジ(投資額30億円、2001完成)は、信じられないことですがミレニアムブリッジは歩道部分が船を通すために持ち上がります。チャップマン先生によるとブリッジの高い帆船が通るわけではないので今はそんなに高くクリアランスをとる必要はないのだが、これがほかの橋から受け継いだ伝統なのだとのことです。また「ロンドンのテムズ川にかかる同名の橋と違いこちらは振動問題がおきていないことが地元にとっての慶事だ」とはvan der Graaf氏の皮肉をこめたコメントです。このほか河岸には高級なアパートやホテルが建設されています。リバーサイドウォークには多くの人々が集まり、かつての荒廃が信じられないような光景が出現しています。
この地区の整備は、NewcastleGateshead Initiativeにより内外に広報されるとともに、両市が住むのにも学ぶのにも働くにも訪れるのにも世界水準の魅力を備えた場所であるというブランドの確立に力が注がれています。こうした試みにより、「ロンドンやパリのような完成された都市ではなくゲイツヘッドのような混沌とした都市に芸術家は集まってくるようになっており、それが経済的な成生産性や雇用の創出にとってもプラスになっている。アーティストだけでなく学者や起業家や旅行者にとって魅力ある都市になっている」という評価が高まり、ニューズウィークでは世界の創造都市(creative city)の中のトップ8都市のひとつに選ばれました(2002)。
2000年に出されたCities for a small country (建築家R.ロジャーズとLSEの社会政策の先生であるA.パワーの共著Faber and Faber Ltd. London 2000。鹿島出版から1997年に出ている『都市 この小さな惑星の』の続編として位置づけられる)ではニューカッスルは都市再生に成功したビルバオと状況は似ているがこの時点では再生途上として位置づけられていましたがその後見事な成功を収めたといえます。
高谷時彦記 Tokihiko Takatani
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