春の妖精
Spring Ephemeralというとカタクリなどに代表される春植物が一般的である。がもともとの語義は「春先の短い、儚い命」とでも言ったもので、その意味では植物だけでなく、春先にだけ成虫が出現するギフチョウやウスバシロチョウにも当てはまる。ここ数年、数の少なくなったギフチョウを求めて、関東の低山をさまようことが春先の恒例となってしまった。
河原の土手では土筆が勢ぞろいして迎えてくれた。
崖の枝垂れるレンギョウが目を奪う
細い山道を入っていくと、近年多くなったガビチョウの囀りが喧しく鶯やシジュウカラの鳴き声を圧倒している。
山道にはセンボンヤリ
赤い色が目立つ株も見かける
ヒトリシズカやスミレも多い
これはキランソウ
おなじみのシュンランやヤブレガサも、あちらこちらで厚く積もった枯葉から顔を出し始めている。
低木の花も多い。ヤマツツジの花はほころび始めたばかり
キブシ
カエデの若葉も美しい
キイチゴも花を咲かせ始めた、葉先でハエがこちらを窺っていた。
4,500mほどの標高になったあたりから蝶が周囲を飛び始めた。越冬して羽がぼろぼろになってしまったタテハチョウの仲間
ヒカゲチョウの仲間
林床に食草のカンアオイが見え始めると、そこはギフチョウの生態ゾーンだ。春先に羽化したばかりのギフチョウは、交尾してすぐに青い翡翠のような卵をこの葉の裏側に産み付ける。
先ほどからギフチョウの姿は見かけるのだが、交尾相手を見つけるのに忙しいのか一向に止まってくれない。飛んでる姿を撮る腕は僕にはないので、仕方なく持ってきた弁当を食べながら、止まるまで気長に待つことにした。
その甲斐あってやっと地上に止まってくれた。
近づいてアップを撮ることができた。相変わらず尾羽の部分が色鮮やかだ。
もう少し先に行ったところ茂みの中で、数頭のギフチョウがバタバタと激しく絡み合っているのに出会った。
暫くすると一頭が諦めたのか離れて行った。あとに残されたのは仲睦まじげな雌雄のつがいのギフチョウ。どうやら先ほどまでは一頭お邪魔虫がいたようだ。
数年通っているが交尾シーンを見たのは今回が初めて。動画に撮りたかったのだが、カメラが不具合で上手く撮ることができなかったのが残念。それでもこんなシーンに巡り合えただけで嬉しかった、うーん時にはいいこともあるものだ。
まぁ、こんなところで。