2012/10/22(月)
あたらしくうまれたうたをひとつぶと数えて枝にのせておきます
(「さなぎの数え方」やすたけまり 短歌研究二四年一一月号)
ふたひらの掌と掌のなかに息吹あれあなたの性は星を孕める
10/23(火)
ヘブンリーブルーは雑草、という意見もあるらしいが。
廃屋を覆う蔓には十月の異国の藍のしたたりやまず
10/24(水)
冬の大三角形を、全部言える人。
カラマーゾフの兄弟の名を、全部言える人。
焼尽の星という名にただようはシトラス・フローラルみどりの香
10/25(木)
一年は長いようで、やっぱり長い。
帰ろうを四つつぶやき戸を開ける椅子の一脚ひとつの軋み
10/26(金)
なぜみんな平気なんだろ寒くなる十一月が死ぬほど嫌い
(「恋する歌音」佐藤真由美)
心から寒さを恋うるときがあるシリウスの火くらりさびしく
10/27(土)
書くことが何もない。そんな一日が嬉しい。
今はもう路地に沿いゆく十月の最後の風であれと月光
10/28(日)
前の空き地に鳥が群れる。雀、鳩、烏、鶺鴒、椋鳥。
今日は、名前の知らない鳥も。
ディズニーのチーズのように歳月が人はなかなか空になれない
(空=から)