はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

「選」について(3)

2008年09月04日 21時47分03秒 | インターミッション(論文等)
(続き)

 笹さんは『念力短歌トレーニング』の中で
「僕はなるべく疵のない歌は採るように心がけています」
と言われている。
 ということは、採られた4首にはとりあえず目立った疵は無かったということだ(採られなかった1首には明確な疵があったということでもある)。

 そのうちの1首。

  台上に左腕(かいな)をりんと挙げ黒い水着の伍代夏子は

「熟女好きにはたまらない光景と見た。」
というコメントが付けられているが、その中の「光景」がキーワードだろうか。
 風景を描写しただけの歌ではあるが、一読して「光景」が脳裏に思い描ける。
 そしてその光景は、先に挙げた3つの基準のうち
  2 説明しがたい凄みがある
に当て嵌まっていなくもない。

 次の歌。

  朝焼ける分水嶺に跨れば二つの海に尿(しし)は流るる

「この意味不明な行動が魅力的。」
とのコメントだが、ここでのキーワードは「行動」だろう。
 確かに変で意味不明な行動ではあるが、小便は遣り過ぎとして、分水嶺に来れば誰でも何か液体を流してみたくならないだろうか。
 そして、先の基準で言えば、
  1 ハッとするような発見がある
  3 考えさせる深い何かがある
に、少しではあるが当て嵌まっているように思う。

(続く)

「選」について(2)

2008年09月04日 18時15分59秒 | インターミッション(論文等)
(続き)

 「笹短歌ドットコム」をまとめた本『念力短歌トレーニング』(扶桑社)の中で、歌人の笹公人さんは「理想とする短歌の基準」として

  1 ハッとするような発見があるか
  2 説明しがたい凄みがあるか
  3 考えさせる深い何かがあるか

を挙げている。
 この観点から、採られなかった自作

  擦り傷にかかる吐息よなまぬるき過酸化水素水は泡だつ

を改めて眺めると、いくつかのことが見えてくる。

  ・発想が陳腐
    オキシドールの泡立ちは、他の歌でも何回か見た。
  ・設定がありきたり
    それに艶話を絡めるのは、昔の少女マンガ的。
  ・作りが平坦
    説明的であり、突っ込んだ描写が無い。

 普段、自作をここまで客観的に眺めることはあまりないが、なるほどと思う。
 おそらくこういった理由と、まだ私が気づいていない幾つかの理由により、この歌は採られなかったのだろう。
 それでは逆に、他の4首はなぜ採られたのだろうか?

(続く)