腕時計修理専門店・トゥールビヨン店主のブログです
腕時計の修理の詳細や腕時計のトリビア、店主の個人的な趣味の話などを気の向くままに書いております。
 



先日、時々郵便物を届けてくれる郵便局員さんが「手巻きの懐中時計が動かなくなったので修理お願いします」と持ってきてくれました。

こちら↓


裏表スッケスケの手巻き懐中時計。東大阪市在住のS様所有。

表側もスケルトンになっていると、内部構造がよくわかります。
こちらがゼンマイ↓
 時計の動力源です。

薄くて細長い板状の鉄板が蝶の触覚のように渦巻いて、“香箱”と呼ばれるケースに収まっています。この香箱には“1番車”がくっついています。

こちらが裏側↓


右の一回り大きい歯車が“角穴車”で、その奥(表側)には香箱があります。角穴車の左上にあるのが“丸穴車”
リュウズを回すと、“キチ車”→“丸穴車”→“角穴車”と伝わり、ゼンマイを巻き上げます。


そしてこちらが脱進機構↓


写真ではちょっと解り辛いですが、写真下の輪っか(中央にピンク色の人工ルビーが付いています)が“テンプ”で、その右斜め上に鉤状の歯車が付いているのが“ガンギ車”。このテンプとガンギ車を繋いでいるのが“アンクル”と呼ばれるパーツ。

これらを“脱進機”と言い、昔の車で例えるとキャブレターの部分でしょうか。(今はインジェクションと呼ばれ、電子制御でガソリンと空気を混合させていますが...)

ゼンマイが蓄えた力を制御して一定の速度に保つ機構。
これが無ければ、ゼンマイ仕掛けのオモチャの車と同じ。最初は「ワーッ!」と猛スピードで走りますが、段々スピードダウンして、ゼンマイの巻きが少なくなると止まってしまう。
時計がこれでは全く役立たず。脱進機は時計のペースメーカー、心臓部と言えます。


いやはや、いつに無くお堅い話になってしまいました。
もうちょっとオゲレツで下世話な内容の方が実は大好きな腕時計修理専門店トゥールビヨン店主。
時々真面目。

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