津村記久子 「ポトスライムの舟」講談社文庫
420円
芥川賞受賞作とのこと。
ストーリーに引き込まれて読み進む、という小説ではなく、小さなエピソードを
重ね合わせながら、物語を進めていく手法。
好感が持てたところは、気負わない、等身大の主人公と、周りの人物の描き方。
この文庫本には、2つの短編が収められているが、どちらも、人との繋がり方に
不器用で、それがもとで、職場であくせくしている、普通の人間である。
かたや、それを払拭させようと世界一周旅行の資金作りに精を出し、かたや、
「いじられ役」として、上司からパワハラを、同僚からは「無視」に近い立場を
得ている。
おそらくは、津村さんの、直接、間接体験がベースとなっているのだろうが、
「弱い」、よく言えば「精細な」主人公は、「芯」を失わない。
そのヒーロー性のなさが、多くの読者を惹きつけているのだろうと思った。
ハラハラ、ドキドキもない。
謎解きもない。
それでも最後まで読ませるのは、文のうまさと(優れた観察力と文章力)と、
働く者への、こよない愛情があるからだろう。
追記 例えば、この小説に、「組合」とか「裁判」「労働基準法」などが入ると、
文学的な価値がさがるのであろうか。
それらも含めて、ダイナミックに現代を描くことと、それを受け入れる
文化は、日本にはまだ育っていないのだろうか。
420円
芥川賞受賞作とのこと。
ストーリーに引き込まれて読み進む、という小説ではなく、小さなエピソードを
重ね合わせながら、物語を進めていく手法。
好感が持てたところは、気負わない、等身大の主人公と、周りの人物の描き方。
この文庫本には、2つの短編が収められているが、どちらも、人との繋がり方に
不器用で、それがもとで、職場であくせくしている、普通の人間である。
かたや、それを払拭させようと世界一周旅行の資金作りに精を出し、かたや、
「いじられ役」として、上司からパワハラを、同僚からは「無視」に近い立場を
得ている。
おそらくは、津村さんの、直接、間接体験がベースとなっているのだろうが、
「弱い」、よく言えば「精細な」主人公は、「芯」を失わない。
そのヒーロー性のなさが、多くの読者を惹きつけているのだろうと思った。
ハラハラ、ドキドキもない。
謎解きもない。
それでも最後まで読ませるのは、文のうまさと(優れた観察力と文章力)と、
働く者への、こよない愛情があるからだろう。
追記 例えば、この小説に、「組合」とか「裁判」「労働基準法」などが入ると、
文学的な価値がさがるのであろうか。
それらも含めて、ダイナミックに現代を描くことと、それを受け入れる
文化は、日本にはまだ育っていないのだろうか。