福井利佐blog

切り絵アーティストの日々

週刊文春連載

2008年11月25日 | 過去のBLOG記事

1年以上に渡り、「週刊文春」(文藝春秋社発行)内の桐野夏生さんの連載小説
「ポリティコン」の挿絵を担当させていただいたのですが、この度最終回を迎えました。



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最終回の号。11月27日号です。



私の担当している切り絵は2点。




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メインはこちら。ページを大きく使わせて頂いています。



タイトルも切りましたねえ。
桐野さんと文春の担当波多野さん、文春のデザイナーの方達とやりとりしながら
タイトルデザインを最初に決めました。連載中、ずっと使う要のイメージですからね。



今回は、最終回ということでちょっと感傷的な場面。
主人公の東一(といち)が鳥海山を眺めているシーンです。
連載している間、あまり風景のシーンは切りませんでしたが、
最終回はこれしかないなあという気持ちでした。



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次ぎのページにも小さめの物が入っています。
この写真、私の影がばっちり入ってますね(笑)。



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そうです。遂に最終回なんです!



お話を頂いたときは、週刊連載の挿絵なんて本当にできるのだろうかと
不安ばかりでしたが、無事にやりきることができ、安堵しています。
1年間のお話の予定でしたが、少し延びて1年3ヶ月の連載になりました。
実質やりとりはもっと前からだったので1年半くらいかかったでしょうか。



毎回、悩みに悩みました。
一度も「今回は楽勝だった。」と思う事はありませんでした。
毎週お話が届いて読んで、明瞭に切りたいシーンが思い浮かぶ時もあれば、
まるっきり見えない時もあったり、読者側の立場になって考えてみたり、
毎回試行錯誤の連続でした。



桐野さんのファンは本当にたくさんいらっしゃるし、
文春の愛読者も考えられないくらい多くて、
週刊という回転の速い媒体の中で
いかに目のこえた読者を惹きつけられるかが大きな課題でした。
そして、あくまでも桐野さんの作品なのだから
失礼があってはならないと緊張しっぱなしでした。



連載が始まって半年が過ぎたくらいに、
文春チームと忘年会的なお食事会があり、
そこで初めて桐野さんや文春の方達に「いいよ!」と声をかけていただき、
少し安心したのを覚えています。
その後、一緒に取材旅行に連れて行ってもらったりして、
みんなで作り上げている感じがしました。
極めつけは、桐野さんの谷崎潤一郎賞受賞でした。
授賞式に行ってみて「THE 文学界!」という世界を味わい圧倒されました。
そして、そこで多数の出版社の方に
「あの絵をあなたが!」という驚きと共にお褒めの言葉を頂き、嬉しい反面
「こんなに多くの方が見ていられるのだから益々がんばらねば!」と
気合いを入れ直したものでした。
桐野さんからも「もう終わるなんて何だか寂しいわね。」なんておっしゃて頂き、
私もちょっと「終わるのか・・・。」と感傷的になってみたり・・・。



1年半っていろいろありました。
週刊連載をしたら他に何も出来なくなるだろうと思っていたにも関わらず、
N.Yの合同展に参加したり、作品集を2冊もだしたり、
個展をしたり、北海道や京都に巡回したりと、
多分連載する以前よりも激しく活動しました。



しかし桐野さんはもっとお忙しくて、仕事に切れ目がないし
(週刊誌の前は新聞に連載されていました。この後も別誌で週刊誌の連載のようです。)、
ポリティコン連載中も月刊誌や他の雑誌で連載を同時進行されていて、
文春の取材旅行だけでなく他の小説の取材旅行で海外に行かれたりと、
すごいパワーウーマンっぷりなんです。
そしてお美しくて、気さくで明るい方なのです。
私も桐野さんのように、年齢を重ねてもなお輝いていられるよう、頑張りたいです。



今回、私がやりきることができたのも担当の波多野さんをはじめ、
マネージャーの増賀さん、フィルの市川さん、週刊文春のデザイナーの皆様、
文春の大沼さん、吉田さん、そして桐野さんのおかげです。
大変でしたが、学ぶ事が多かったです。
いい経験になりました。本当にありがとうございました。



というわけで、週刊誌はひとまず終了。
しかし、桐野さんの創造の世界は止まりません。詳しくはまた!



私も、今回の原画達128枚を何らかの形でお見せ出来ればと思います。




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さて連載を終え、早速でかけたのは「国立能楽堂」。
ただいま、住友コレクションを3期に渡り公開しております。能面好きにはたまりません。
只今第2期の展示に入っています。第3期も絶対見に行きます!もう一回行こうかな(笑)。



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